はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

孝と不幸と

2017-10-10 22:17:34 | 岩国エッセイサロンより
2017年10月 9日 (月)

岩国市  会 員   吉岡 賢一

  その朝は、ちゃぶ台に卵が1個置かれていた。「これを飲んで滋養を付けて徒競走を頑張って」という家族の願いが込められた生卵である。台所では仕事を休んだ母が、運動会の弁当を手際よくこしらえている。
 「ヨーシ、今年こそはいいとこ見せよう」と気張ってはみるが、生来の鈍足。生卵のかいもなく孝行できないままに終わった。
 夢に描いた都会生活も俊足の兄に先を越された。夢を封印し同居を選んだ。父も母もこの手でお浄土へ送り届けお墓も仏壇も守っている。少しの孝と遠い昔の不幸が思い出される秋半ば。金木犀の香りが心潤す。
   (2017.10.09 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2 コメント

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お世話になります。 (Yattaro-)
2017-10-12 22:36:29
いつもいつも、岩国エッセイサロン仲間に対するご厚意厚く御礼申し上げます。
もの思う秋という季節柄でしょうか、つい遠い昔がよみがえったりします。
それもどちらかというと負の思い出の方が多いようです(笑)これからも、アカショウビンさんのお気持ちに応えられるようがんばります。
いよいよ季節の変わり目です。どうぞご自愛あってお元気にお過ごしください。
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Unknown (アカショウビン)
2017-10-14 12:08:27
ようこそyattaro-さま
行きつ戻りつの今年の秋ですが、なにやかやと想いだされるこの頃です。

いつも楽しくブログ拝見しています。夏休みも既に終わってしまい、じいちゃん学校もまた来年のお楽しみですね。いつまでもお元気に!
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