はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

平凡な日常こそ

2018-06-02 16:37:09 | はがき随筆
 毎日9時就寝。モフモフの毛布に包まれた時の心地よさ。思わずこのまま目が覚めなくてもいいと思ってしまうほど。
 屋根の下で心配なく暮らせる事を当然と思っていた。それがどれほど幸運なのか再認識する。
 熊本の災害後、何年もビニールハウス暮らしと言うご夫婦。決して若くはないお2人の夏の暑さを思うと胸が騒ぐ。
 私にできることはないのか。なぜ経済大国の我が国なのに救済できないのかと、もどかしさはつのるばかり。そんなことを考えていると、目がさえてきて心地よい時間は、失われていく。
 宮崎県日南市  永井ミツ子(70歳) 2018/6/2  毎日新聞鹿児島版掲載

我が家に帰れた

2018-06-02 16:25:38 | はがき随筆


 あの恐怖の熊本地震から2年が過ぎた。心身ともにこんなよわいになっての疲労こんぱいでどうしようもなかった。
 不安の中でいろいろな支援を受けて元の地に帰れた。まだまだ苦労しておられる方々を思うと感謝せねばと心から思う。
 亡夫が植えたマキの木、ツバキ、梅などの緑が輝き、鮮やかな紫陽花が紫色の笑顔で迎えてくれた。この場所に住みたいという私の願望に応えた娘2人が懸命に協力してくれたことだった。「新しくなった我が家に無事帰りました」と主人に心の中で報告する。高齢の残りの日々を大切に生きよう。
  熊本市 中央区 川口紋子(90歳)  2018/5/31 毎日新聞鹿児島版掲載

野外ライブ

2018-06-02 16:06:08 | はがき随筆


 春とはいえ低気圧の影響で風混じりの冷たい雨が降る都城観音池公園。68歳の私と61歳の妻はスターダストレビューの野外ライブ会場にいた。
 私たちにとってこの手のコンサートは初。すると何と雨にも負けず客は合羽姿で立ちっぱなし。しかも11時半開場を見込んで早めに到着したのに、お目当ての登場は夕方5時。元より体力に自身のない私。老体にムチ打って頑張るも2時間ほどで白旗をあげる始末。ひたすら妻にわびて帰路につく。
 「年寄りの冷や水」の戒めをつくづく思い知った一日でした。
  鹿児島県霧島市 久野茂樹  2018/5/31 毎日新聞鹿児島版掲載

さくらんぼ

2018-06-02 15:54:33 | はがき随筆


 亡き母が約30年前に植えたさくらんぼの木が今年は満開になり、沢山の実が付きました。
 昨年までは少しの実しか付きませんでしたが、すべて鳥に食べられていました。
 しかし今年は母が亡くなったので、鳥たちが遠慮したのか、多くの実が赤くなりました。
 孫一号二号三号とさくらんぼ狩りをしました。
 さくらんぼの下の枝の実だけ取りましたが、100粒以上になりました。
 さくらんぼ狩りが終わった後は実家に行き、孫たちのひーばあちゃんに線香をあげて、皆で手を合わせました。
  宮崎県日南市  宮田隆雄  2018/5/31 毎日新聞鹿児島版掲載

超ミニ級会

2018-06-02 15:48:27 | はがき随筆
 福岡在住同級生の娘さんから「母が同級生に会いたいとのことで、お伺いしてもよいか」と電話があり、承諾したが、本人の声がなく心配だと友より電話が来た。娘さんに電話すると「母は認知症でグループホームにいる。対話ができるうちに希望をかなえてあげたい」。
 日程を約束した。市内の10人の同級生も、亡くなっていたり、入院やケア通いしていたりで当日は結局2人で迎えることに。食事会での思い出話では大喜びしてくれた。不自由な体を支え、思いをかなえてくれた娘さんに感謝。「超ミニ級会」でもよかったね。
  熊本市中央  原田初枝  2018/5/31 毎日新聞鹿児島版掲載

老けた顔

2018-06-02 15:41:19 | はがき随筆
 高校からメガネをかけた生活だったが、ピリオドを打った。最近目がかすんでぼやけて見えていた。運転免許の更新が迫り眼科で検診。結果は加齢による白内障。早速手術を願ったが4カ月待ち。4月初旬を指定された。万難を排して手術を受けた。先生が手術の進捗状況を逐一説明しながらの手術で安心の30分だった。
 翌日眼帯をはずした瞬間、感嘆の声を上げた。明るい光景と人々の顔がはっきり見えてびっくりした。しかし、鏡でわが顔を見て更におどろいた。そこには細かいシワと老けた顔が映っていた。
  鹿児島県出水市  畠中大喜  2018/5/31 毎日新聞鹿児島版掲載

散歩道

2018-06-02 15:29:38 | はがき随筆


 小川に沿って小さな道がある。私の散歩道の一つだ。田んぼは田植えが終わり、日毎に苗が伸びカエルの合唱も始まった。
 野ばらの下でキンポウゲやアザミが競い合って咲き乱れている。突然「ギィー」けたたましい鳴き声。姿は見えないが小さなコゲラだ。山桜の枝をカラスが揺らし実をついばんでいる。
 やがて橋梁の下に出る。橋の陰でひと休み。日毎に伸びる植物たち。にぎやかに、時には穏やかに鳴く鳥たち。自然に癒され、一日を振り返る。もやもや気分もすっきり。夕日に押され、落ち込んでいた絵画制作も「明日からまた頑張ろう!」。
  宮崎市 川畑昭子  2018/5/31 毎日新聞鹿児島版掲載

ヘルスリテラシー

2018-06-02 12:30:38 | はがき随筆
 Kさんからの年賀状には、家族全員が元気に暮らしている様子と「今年も健康第一で」と記されていた。
 2月になり、Kさんが入院していると伝え聞いたので見舞いに行ったが、病は深刻でがくぜんとした。
 ヘルスリテラシーとは「自身の健康について正しく理解認識し、そのことに適切に対処する」と私なりに理解しているが、そう簡単なことではない。
 健康はみんなの願い。であるならば、このヘルスリテラシーについて、よくよく考えてみる必要があるようだ。
  熊本市北区  岡田政雄  毎日新聞鹿児島版掲載

天道虫

2018-06-02 12:20:51 | はがき随筆


 帰宅するなり、息子は「天道虫を捕まえて」と言ってきた。同級生が学校で育てている苗に油虫がつき、困っていると言う。農薬ではなく、天敵を使うなんてなかなかやるね、と息子は十数匹を捕まえ、揚々と登校した。ところが、虫が逃げないよう持たせたネットの使い方がわからす、天道虫は皆、どこかへ飛んで行ってしまった。
 「飛ばない並天道」を知ったのはその後だ。遺伝的に飛翔能力を欠き、害虫駆除に貢献するという。こどもの夢を具現化したような生き物ではあるが、もうしばらく息子には内緒にしておこうと思う。
  鹿児島市  堀之内泉  2018/5/31 毎日新聞鹿児島版掲載