はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

白百合の香

2018-06-21 21:32:25 | はがき随筆


 今年も白のエラブ百合が咲いた。虫の害にも遭わず、つぼみのまま切って仏壇にあげる。それが一斉に開花して部屋中に百合の香りが満ちて、どこか切ないような、それでいて幸せな気分を堪能した数日だった。
 この白百合が咲く頃に母の命日が近づく。64年前の母の葬儀に白百合が飾ってあったことを鮮明に思い出す。親戚の方が家に咲いたものを持参してくださったものらしい。
 母の年を30年以上も越えて生きていることに感謝しつつ、温暖化で百合の開花が少しずつ早まっていることに今更気づくのである。
  鹿児島県霧島市 口町円子(78) 2018/6/19 毎日新聞鹿児島版掲載

母の日を過ぎて

2018-06-21 02:19:22 | 岩国エッセイサロンより


2018年6月19日 (火)
   岩国市   会 員   片山清勝

 私が結婚したのは、父が急逝した年の翌春だった。ほどなくして妻から「母の日の贈り物は何にしましょうか」と相談を受けた。
  「母の日」 「父の日」があることは知っていた。だが、両親への感謝の気持ちを贈り物に変えたことはなかった。「心配を掛けず、真面目に勤めることが何よりの親孝行」。それが信条だった。仕事に対する父の真摯な姿を見ていたために違いなかつた。
 初めての母の日の贈り物が何だったか、記憶していない。その後、妻の考えで毎年贈り物は続いた。
 母は20年余り私たちと同居して、最期は望み通り、妻に手を握られて入院先で亡くなった。
 贈り物のことを思い出したのは、母の三十三回忌を母の日の直前に済ませたからだ。長男の務めの一つを済ませたという以上に、今回は思うところがあった。
 私ら夫婦は、祖父母と父の五十回忌を無事済ませてきた。次は母の五十回忌。その時、私ら夫婦は90代半ばになる。長い時間の向こうにある。行えるかどうか何とも言えない。
 今回の務めが「最後の母の日の贈りもの」になるかもしれないと、少し弱気かもしれないが、そう考えずにはいられなかった。参列した身内も知らない母のことを妻は話していた。
 母の日、京都に住む息子と嫁の連名で花が届いた。息子から妻への初めての母の日の贈り物だった。
 わが家の母の日は、2代続いて長男の結婚から始まった。

    (2018.06.19 中国新聞セレクト「ひといき」掲載)

感性が大事

2018-06-21 02:17:18 | 岩国エッセイサロンより
2018年6月20日 (水)
  山陽小野田市  会 員   河村 仁美

 はがき随筆大会の帰りに、随友とバスに乗った。途中で3人組のユニークな客に出会う。会話に始まり、することなすこと全てがおかしく笑いながら眺めていた。すると、隣の随友がエッセーが書けそうだねとつぶやいた。そうだ。習ったではないか。この感性が大事なんだ。
 「毎日、のんべんだらりと生きていて、身の回りの出来事や物をただ見ているだけではエッセーは書けません。それらを丁寧に観察し。そこから何かを感じ取る心が必要です」
 感性を磨くことに気づかせてくれた随友に感謝。どんなエッセーを書いたのか楽しみだ。
(2018.06.20 毎日新聞「はがき随筆」掲載)