終戦の翌年に私は誕生した。食糧難の中、両親は弱体の私を手厚く育てた。復興へ経済優先の槌音を聞きながら、つかの間の上り坂があり、長い下り坂があった。凸凹道もあった。その上、風雨もあった。一昔前、弟・親との永久の別離もあった。半面、家庭を持ち、家族が増え、娘が嫁ぐ祝賀があり、親戚が広がる喜びもあった。おかげで、今年も春夏秋冬を過ごせている。振り返ると、何の変哲もない道だけど、過ぎた道程には足跡が残っている。まだ当分、明日を迎えられそうだから、たまには立ち止まり、楽しみながら七十路を妻と歩いて行く。
出水市 宮路量温 2016/11/20 毎日新聞鹿児島版掲載
出水市 宮路量温 2016/11/20 毎日新聞鹿児島版掲載