はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

川の流域の生物生き延びて

2015-08-06 23:35:03 | 岩国エッセイサロンより
2015年8月 6日 (木)

    岩国市   会 員   片山清勝

 国の名勝、錦帯橋で知られる錦川の流域にすむ野鳥をテーマに、写真展が開かれた。私は、流域の自然の豊かさに目を見開かされる思いがした。
 撮影地域は、錦川の源流から瀬戸内海に至る100キロ余り。作品は、野鳥の美しさだけでなく、生息環境や野生ならではの生態も捉えているのが印象的だ。
 ブッポウソウがトンボを捕らえ巣へ向かう連写、アカショウビンが抱卵している穏やかな姿。人と変わらぬ親子愛を感じさせる。
 錦川の支流で撮ったというオシドリ300羽が群れる1枚は、自然環境が保たれている様子がみてとれ、うれしくなった。カワセミが羽ばたき空中に浮く姿は、羽の色彩が美しく溶けあい、まるでアニメの世界から飛来したようだ。
 野鳥たちに共通するのは、油断のない鋭い目。野生の力強さを感じさせる。撮影者の写真家からは「何時間も待機して撮った1枚ばかり」と聞いた。
 野生生物の減少が各地で危惧されている。錦川も上流で新たなダムを建設中だ。川の流域の生き物が生き延びて欲しい。そう思いつつ、帰路についた。

    (2015.08.06 朝日新聞「声」掲載)

ご近所のお陰

2015-08-06 23:31:59 | 岩国エッセイサロンより
2015年8月 1日 (土)
 
岩国市  会 員   上田 孝

 孫の顔を見に東京に住む娘の家に出かけた折、庭木の剪定を頼まれた。カミさんと小さな鋏でパチンパチンと始めたところ、隣のご主人が大きな剪定鋏を、向かいの奥さんが脚立と高枝鋏を持ってきてくれた。伸び過ぎていたので心配していたという。猫の額の庭とはいえ結構重労働になったが、ご近所のお陰で見違えるほどすっきりした。
 たまたま多めに買って来ていた土産を手に返しにいったが、「ご近所だからお互い様」の言葉とともに庭でとれたというトマトまでいただいた。人のつながりが薄いといわれる東京でこんなご近所に囲まれて安心。

   (2015.08.01 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載

平和の灯永遠に

2015-08-06 23:29:28 | 岩国エッセイサロンより
2015年8月 6日 (木)

岩国市  会 員   吉岡 賢一

ちぎれるほどに手を引っ張られ「もっと早う!」。兄の悲痛な叫びに、こけつまろびつたどり着いた暗闇。ひしめき合う大人の足元で息をひそめた切ない時間。唯一私の戦争実体験としてかすかな記憶にある。
 つなぎ留めた命は3歳半で終戦を迎え、ひもじい子供時代をくぐり抜けた。大きく発展する日本経済の流れに乗って成長した。人々を奈落におとしめた愚かな戦争を顧みながら、汗と脂にまみれた企業戦士たちが70年かけて築き上げた復興と繁栄。今、破壊と殺りくを旨とする戦士など、永遠に無用な世の中にするのも私たちである。
(2015.08.06 毎日新聞「はがき随筆」戦後70年特集掲載)岩国エッセイサロンより転載