はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

砂に埋もれて

2015-07-20 22:38:52 | はがき随筆
 指宿温泉に1泊で出掛けた。心ウキウキで砂蒸し風呂にいったのですが……。
 浴衣の上にのせられた砂があまりにも重く、そのうえ熱い。砂に埋もれた痩身をもがきながら手足を砂から出して我慢した。脱出の時がきたが、起き上がれない。砂蒸しされた身体はふにゃふにゃ。息子に手を引き上げてもらったが足元が定まらない。「だめだこりゃ」と慌てて渡された冷水を飲んだ。
 ようやく乱れていた鼓動も落ち着いた。気持ちで思うほどの体力のなさに「こんなはずでは」と思いつつも,年相応かもと思った。
  鹿児島市 竹之内美知子 2015/7/20 毎日新聞鹿児島版掲載

新緑

2015-07-20 22:38:13 | はがき随筆
 カモメに迎えられた復員船は新緑映える久里浜に着いた。5年にも及ぶ大陸の荒野を駆け回った思いを胸に、夢にも見た祖国の土を踏んだ。言い得ない安心感。天をつかむような解放された空気が去来する。空虚の感に浸るを覚える。
 国鉄に復職間のない頃、妻を迎え隼人国分に人生を謳歌するなか、池田、西富の両友人と新妻を伴い霧島ツツジを見に行った。当時神宮最高段本殿左の入り口から小暗い木立の小道を小一時間、高千穂河原へ。左新燃裾野のツツジ。新妻の手をとり深呼吸をした。忘れ得ない新緑、懐かしくよみがえる。
  鹿屋市 森園愛吉 2015/7/19 毎日新聞鹿児島版掲載

うれしい雨

2015-07-20 22:37:36 | はがき随筆
 雨が小降りになるのを待って、網戸をはずす。そして2枚ひと組として庭の敷石の上に、バンガローの形に建てる。再び降り出す雨にこの網戸を洗ってもらうのだ。
 その間に私はサッシの溝を吹いたり、台所の片付けなどをする。つゆ時の雨は網戸をすっかりきれいにしてくれる。
 この作業が梅雨時の我が家の風物となっている。長雨を憂えてばかりでなく、逆手に捉えて生活を楽しむ。もっといえば、自然を味方につけた気分になっている私である。だからストレスとは無縁。この年齢で肩こりも知らない。ありがたい。
  鹿屋市 門倉キヨ子 2015/7/18 毎日新聞鹿児島版掲載