2015年7月11日 (土)
岩国市 会 員 安西 詩代
最中の菓子箱を開け、おもむろに1個を取り出した姉は、蓋をしっかり閉めて横に置く。最中を一心に見つめモクモクと食べ始めた。私が「おいしい?」と聞くと小声で「おいしい」とうつむいたままうなずく。
自分が食べる前には必ず「どうぞ、おあがんなさい」とすすめる人だった。18歳も離れている姉だが、一途に食べる姿は、幼子のように可愛い。
きっと昔は、幼い私を慈愛をもって眺めてくれたに違いない。記憶の糸は細くなってはいるか、今は、まだ彼女の中では私は妹。
いつまでも、いつまでも妹でいられますように。
〈2015.07.11 毎日新聞「はがき随筆」掲載〉岩国エッセイサロンより転載
岩国市 会 員 安西 詩代
最中の菓子箱を開け、おもむろに1個を取り出した姉は、蓋をしっかり閉めて横に置く。最中を一心に見つめモクモクと食べ始めた。私が「おいしい?」と聞くと小声で「おいしい」とうつむいたままうなずく。
自分が食べる前には必ず「どうぞ、おあがんなさい」とすすめる人だった。18歳も離れている姉だが、一途に食べる姿は、幼子のように可愛い。
きっと昔は、幼い私を慈愛をもって眺めてくれたに違いない。記憶の糸は細くなってはいるか、今は、まだ彼女の中では私は妹。
いつまでも、いつまでも妹でいられますように。
〈2015.07.11 毎日新聞「はがき随筆」掲載〉岩国エッセイサロンより転載