はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

6月の墓参

2015-07-01 22:11:32 | 岩国エッセイサロンより
2015年7月 1日 (水)

   岩国市   会員     吉岡 賢一

 家族が増えるという喜びと期待に胸を膨らませた第2子の誕生。
 予定日は7月半ばであった。
 6月に入って間もなく「お腹が痛くなった」という妻を急遽病院に搬送。
深夜2時、体重900グラムの超未熟児は、歓喜の産声もなく、この世に生を受けてわずか30分という短い生涯であった。
 悲嘆にくれる分娩室の妻に贈る言葉を探したが、何を思っても言葉にならない。
手を取り合いひたすら夜明けを待った。6月の早い夜明け、差し込む光と風に救われた。
 無念さと申し訳なさをお供えする6月のお墓参りは、夫婦の原点に返るひとときでもある。

       2015年 7月 1日  毎日新聞「はがき随筆」 掲載岩国エッセイサロンより転載