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はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ブログの更新が遅れて…

2014-07-29 20:59:37 | アカショウビンのつぶやき



ブログの更新が遅れて申し訳ありませんでした。

実は、膝の痛みで歩行困難となり、2週間ほど入院しました。
車椅子、歩行器と体験しましたが、あちこちにぶつけそうで怖かったです。
病室の窓から、高隈連山が美しい姿を見せてくれました。
我が家からは見えませんので、毎朝、心が慰められました。

特に梅雨明けの山々の美しさ…カメラを向けるのも忘れて見入りました。
退院の朝、やっとカメラを向けましたが、山頂に雲がかかり
美しい姿をお見せすることができません。ゴメンナサイ。

今はボツボツ体を慣らしながら頑張っています。

日々是好日

2014-07-29 17:19:23 | はがき随筆
 企業戦士として活動していた頃、定年を迎え去ってゆく先輩たちを見て、時分のゆく末を考えたり、仲間と語り合った。あの頃思い描いた老後、そして今、現実の中に身を置く境遇を思い較べしみじみ幸せを感じる。
 ぼくには孫に囲まれてなどという夢は無かったし、健康でたれからも干渉されず、妻と2人楽しく暮らせる日々が夢だった。早朝ランニングで汗を感じ、妻の手料理に箸を運び、旅の宿で朝を迎える時など、漫然と考えた老後とは比べ物にならないほど充実している。こんな日々が一日でも長いことを願うのみである。
  志布志市 若宮庸成 2014/7/29 毎日新聞鹿児島版掲載

姉の背は偉大

2014-07-29 17:11:37 | はがき随筆
 姉は7年前にがんで他界。私とは10歳違う。姉の背中で戦火の日々を過ごした。生後11ヶ月目で終戦を迎えた。焼夷弾で我が家は全焼。悲惨な戦争に腹は常にひもじく、食料はひえ、あわ、サツマ芋のつるで命をつないだ。父母は10人家族を養うため仕事に追われた。長女は軍需工場へ動員され、次女は私を背負い、防空頭巾にもんぺ、ズック靴で働く。「ねーぼ」サツマ芋と小麦粉を炊いて練った物は乳幼児食にも良く、スプーンで口に運んでくれた。おむつも古布で縫った。器用な姉はどもまでも気が付く心温まる存在だった。姉に感謝の念でいっぱい。
  姶良市 堀美代子 2014/7/28 毎日新聞鹿児島版掲載

父譲り

2014-07-29 17:05:21 | はがき随筆
 晩年の父は近所の人と立ち話をしながらしきりに目やにを取る仕草をしていた。朝は大きな音を立てて洗面をするのにどこを洗っているのやら、あきれて眺めていたこともあった。
 今朝、顔を洗いお化粧しようと鏡をのぞくと、目の縁に小さな皮のようなものがある。眼科に行くと「目の周りは柔らかいので優しく洗うように」と。
 若い時分、「お父さんはよかにせだけど、あんたは似てないね」とよく言われた。年を重ねて父に似たところがあるなんて。十三回忌が済んだばかりの父。生きていれば99歳になる。目の皮のことで話をしたかった。
  いちき串木野市 奥吉志代子 2014/7/27 毎日新聞鹿児島版掲載

益荒男派出夫

2014-07-29 16:58:03 | はがき随筆
 益荒男派出夫などと聞いても、今どき理解できる人は少ないだろう。先日、テレビに佐藤弘道氏が出演。洗濯物は徹底的にたたいてから干すと実演していた。実はウチのカミさんもたたく。同じようにするよう益荒男派出夫自認の私にも強要する。
 干し方にもカミさん流のこだわりがある。色別に分ける。下着類は目立たない位置に干す。色落ちするものは直射日光に当てないなどだ。取り入れてからの畳み方にもチェックが入る。
 今では子育てをする男を“育メン”と称するようだが、洗濯係など、家事手伝いをする男は何と呼ぶのだろうか……。
  西之表市 武田静瞭 2014/7/26 毎日新聞鹿児島版掲載

2014-07-29 16:52:21 | はがき随筆
 葬儀に参加して、花束を頂いて帰った。菊、カサブランカ、アカプルコ、カーネーション、かすみ草などを二つの花瓶に挿した。
 カサブランカの心地よい香りが、花に目を誘う。花の向こうから、故人の柔和な顔が現れては消え、消えては現れる。彼女の温かさがしのばれて、美しく咲き誇る花々が、心に悲しく映える。
 葬儀が、彼女との最期の別れだった。しかし、頂いた花々が枯れた。20日後の今日が、私と彼女とのとわの別れになった。美しい花を、悲しくめでる。何よりも、つらいことである。 
  出水市 道田道範 2014/7/25 毎日新聞鹿児島版掲載

はがき随筆6月度

2014-07-29 16:25:12 | 受賞作品
 はがき随筆の6月度の入賞者は次の皆さんです。(敬称略)

【月間賞】3日「娘にありがとう」萩原裕子(62)=鹿児島市中央町
【佳作】▽15日「挽歌―友へ」奥村美枝(54)=鹿児島市桜ヶ丘
    ▽20日「卓上の花」竹之内美知子(80)=鹿児島市城山


 「娘にありがとう」は、優しくて温かい家族愛の一光景です。かつて夜中に布団をかてくれた、病没した夫の優しさが、娘さんに引き継がれていることに、感謝している内容です。半睡の状態とはいえ、娘さんの行為をご主人の行為と勘違いするところは、小説の一節のようです。文章に流れている雰囲気が、読む者の心を和ませてくれます。
 「挽歌―友へ」は、死因がよく分からない友人への哀悼の気持ちです。友の死後、苦悩の叫びともとれるメールの文章だけが残った。友情の証しとして、この文章は消さないでおこうという張りつめた気持ちが書かれています。このように、死が新しい事態を引き起こすということは、考えようによっては恐ろしいことです。
 「卓上の花」は、娘婿に母の日の赤いカーネーションをもらった喜びが書かれています。その花が、婿の自分への優しさ、婿の亡母を思う優しさ、亡母の優しさを感じさせてくれたという、人と人との間にある親和感が流れている文章です。
 他に3編を紹介します。
 種子田真理さんの「『御』の安売り」は、銀行員がやたらに「御」をつけて話す事への嫌悪感が、軽い調子の叱責として書かれていて、同感できる内容です。これは銀行の指導自体が悪いのではなく、そのマニュアルと指導員が悪いのでしょう。
 内山陽子さんの「遺言」は、7年余も誕生日に遺言を書いているが、それは物を残すという内容ではなく、今まで生かされてきたことへの感謝の気持ちを書きつづったもので、そしてそのことが、これからその日までの自戒になっているという、好感のもてる内容の文章です。
 高橋誠さんの「内緒のツクシ」は、子供の頃、秘密の場所からたくさんのツクシを採って帰って、母にありがたがられたという内容です。そこは、禁止されていた鉄道の敷かれた土手なのですが、こういういたずらに近い子供の時の秘密は、思い出すだけでも、童心に帰ったようで、懐かしいものですね。
 (鹿児島大学名誉教授 石田忠彦)


輝いていた頃

2014-07-29 15:02:16 | はがき随筆
 ベン・E・キングの「スタンド・バイ・ミー」を口ずさみたくなるような中学時代を僕らは過ごした。仲間は林田、松下、原と私の4人。舞台は静岡県西部を流れる大河天竜の河口。季節は夏。鉄橋下に集合した僕らは、初めての町へ初めての自転車の旅をした。そして夢を語った。好きな子の話をした。悩みを分かち合った。「青春」だった。夏休みに入ると、たった1人泳げない私は、彼らに特訓を受ける。毎日毎日、勉強そっちのけで川に入った。夕暮れに眺めた河口の夕日は美しかった。50年も前の川も僕らもきらきら輝いていた頃の話である。
  霧島市 久野茂樹 2014/7/24 毎日新聞鹿児島版掲載

いよいよ甑島へ

2014-07-29 14:39:10 | はがき随筆


 椋鳩十提唱の「親子20分読書運動」に端を発する私たちの読書会も34年目に入った。
 甑島―川内間の高速船就航のニュースを聞いてから、行きたいと願ってきた。会の年間計画の研修旅行に提案してみると、既に数人は行ったという。でも、あちこちを回ろうということで甑島行き決定。
 まず椋作品の「孤島の野犬」を読んでいない人は回し読み。物語に出てくる美しい海岸や島の風景。断崖、奇岩の眺め、野犬像、おふくろさん歌碑。何よりカノコユリを見たい。会員内外の人たちの骨折りで計画は煮詰まり、その日を待つばかり。
  霧島町 秋峯いくよ 2017/7/23 毎日新聞鹿児島版掲載