子供の頃、よく木に登って遊んでいた。高い木になればなるほど、挑戦欲をそそって、いつの満仁か木登りが好きになっていた。津代も終わったある日の午後。「登ってみたいなぁ」と思っていたクスノキのてっぺんまで登ってみることにした。両手に唾をつけ、手をかけた枝が細くなるにつれて目の前が急に明るくなってきた。「うわぁ、たっか」舌をみっとめめがも。「うちもみゆい」と小米で叫んだ。青々と萌える棚田の緑、かやぶき屋根、遠くの山並みの風景をいつまでもぼんやりと枝に座って眺めていた。あの少年の日がいまでも小米に残る。
さつま町 小向井一成 2014/7/6 毎日新聞鹿児島版掲載
さつま町 小向井一成 2014/7/6 毎日新聞鹿児島版掲載