はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

バイキング

2008-11-27 23:22:38 | はがき随筆
 秋晴れに誘われランチにでかけた時のこと。普段は小食だと言いながら、バイキングともなればなぜか胃袋が膨らんでいくと娘に笑われる。それって欲張りのせいでしょう。並べられた料理に目を輝かせながらテープルに着く。さすがにクリやマツタケにはお目にかかれなかったが娘との会話は盛り上がり、味の異なる食べ物はストップなく胃袋に収まっていくから不思議である。紅茶に浮かせたレモンの香りに息を吸い込み、今は何も考えられないと言いつつ、よたよたと店を出る。車はスーパーへ向かって走り出した。
<夫には一品大くサンマ焼く>
   鹿児島市 竹之内美知子(74) 2008/11/20 毎日新聞鹿児島版掲載

なんだかうれしい

2008-11-27 23:15:36 | はがき随筆
 8月末、篤姫様ブームにのって出水武家屋敷群を見学。静かなたたずまい。門をくぐっていざ、お屋敷へ。遠い昔に思いを寄せて、ゆっくりと時間が流れていく。 10月末、出水ツル観察センターに行った。五千羽余りのツルが来ていた。広い広い泉平野。そこで人と共に幸せに冬を過ごすツルたち。千羽、二千羽とやって来て舞い降りる姿は、壮大なことだろう。「ツルはとても仲がよく家族を大切にします」「ツルは平和な鳥です」という係の方の言葉が心に残った。
 二つの場所に行けて、何だかうれしかった。
   出水市 山岡淳子(50) 2008/11/19 毎日新聞鹿児島版掲載

後期を後輝に

2008-11-27 23:08:29 | はがき随筆
 「後期高齢」の表現は、余り評判が良くない。語意にこだわる世代には冷たい感じがする。
 反面、人生の後期を覚悟する意味とも受け取れるが、多くの人が後期を輝きながら、立派に活躍されておられる。日野原重明先生、瀬戸内寂聴さんなどすばらしい。加齢すると意欲、体力は衰えるけれど、可能な限り「輝いて」生きる願望を心の底に秘めている。
 「後輝」は広辞苑にはないけれど、後期より後輝こそ大切な発想。決して多くない時間の後期を横に置き、心の輝きを終わりまでと願い、悔いのない人生に。雲一つ無い秋空に思いを。
   鹿屋市 小幡晋一郎(76) 2008/11/18 毎日新聞鹿児島版掲載

秋の夕暮れ

2008-11-27 22:56:27 | はがき随筆
 彼岸が過ぎて2ヶ月が過ぎようとしている。季節のうつろいは実に早い。例年になく暑かった夏の日々が信じられないように、朝夕は肌寒い。
 馬齢を重ねたせいなのか、秋は人生を思索させ、哀愁にひたるような複雑な思いをさせる。
 夕暮れ時、モズがけたたましく鳴く声にも、むしろ静寂を覚える。夕日は赤々と燃え、やがて静かに沈んでゆく。秋の夕暮れの風情やそよく風にも人生の無常を感じ、古稀を過ぎた夫婦が共に元気で生かされている幸せに思わず合掌してしまう。
 もうカレンダーも2枚になった。
   志布志市 一木法明(73) 2008/11/17 毎日新聞鹿児島版掲載
   写真はwisteriaさん

秋日和

2008-11-27 22:49:20 | はがき随筆
 孫とのふれあいは、老いの日々を潤してくれる。さわやかな秋晴れには程遠かったけれど、時折暗雲が頭上に重くのしかかる中、予定通り保育園の運動会は決行された。
 全員が見渡せる程良い広さの運動場は教師、保護者の工夫を凝らした設営が随所に見られ大会を盛り上げる。プログラムの進む中、いつしか保護者も童心に返り、本気で園児と向き合う感動的な情景はあふれる観衆を魅了し、拍手喝さいが続いた。 親子ペアのお遊戯では、出産を控えた母親の代役を楽しくこなし、心身のリフレッシュがうれしい収穫……。
   鹿屋市 神田橋弘子(71) 2008/11/16 毎日新聞鹿児島版掲載