その庭に歴史ありけり白粉花 ひよどり 一平
(そのにわにれきしありけりおしろいばな)
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私は転勤の都度、会社の社宅を転々としていた。
子供が中学校に入ったころ「転々」を止め、私の「単身」赴任生活が始まった。
この街に家を建てて引っ越しをして来たのは、その会社を辞める頃だった。「昭和」から「平成」になったころだ。
それ以降、「転々」も「単身」もなくなった。
この白粉花は、引っ越した家からほど近い小児科の庭に咲いていた。
ある日、この白粉花を刈り取ろうとしている老夫人がいた。
「どうして刈り取るのですか?」と訊いたところ、「面白くもない花だから・・・・」と、老夫人が言った。
「以前はもっと綺麗な花が咲いていたのですよ」と言っていたが、少しだけでもいいからと頼んで、残して貰った。