無限の空間と無限の時間の中に生きている。そう考えると、人間なんてちっぽけだ。
蝉は数年間ほど地下で幼虫時代を過ごし、地上に生まれ出た後、一週間ほどで寿命が尽きる。哀れと言えば哀れだ。
しかし、蝉だけが哀れなのではない。
無限の空間と時間の中に生きている人間だって、蝉と変わりははしない。
かつての人間は、「人生わずか五十年」と言われていた。
今や平均寿命は80歳を超えている。
いや、超えていると言ったところで、50年が80年になった程度。無限の空間と時間を考えれば五十歩百歩だ。
つまり、長生きしたいと足掻いたところで、80歳が85歳になる程度のこと。
そんなことを考えると、禁酒・禁煙なんぞは虚しい仕儀。
あれほど見事に咲いていた桜が、今や見る影もない。醜い姿をさらして葉桜を待っている。
決して絶望しているのではない。自暴自棄に陥っているのでもない。
無限の空間と時間を考えたとき、日頃の些事で一喜一憂していることの虚しさを言っているのだ。
虚しさをことわりとして花は葉に ひよどり