JAZZを聴きながら ふたたび

恥も顧みないで再々開、よろしければお付き合いを

すべての夜に代わる酒

2008年06月11日 | a-c

いやいやいやいや、ビール恋しい季節がヒタヒタと迫ってまいりました。
昨晩なんてあ~た、珍しく12時過ぎまで身体を動かしていたものですから、帰って風呂に浸かって・・・ク~~~~!って、やっぱり同名の飲料水にこの座を奪われることは永遠にありませんね。
まっ、最近は毎日ということではありませんけど「午後3時以降は水分を口にしない」なんてことまでやりつつ、一杯のビールを楽しむてなことをやっておりましたから、ほんと酒飲みっていやですよねぇ。

「バブさん、やっぱ夏場美味しいっていったらビールかい?」
「う~~~ん、一杯だけね。」
「後は何?キリッと冷えた冷酒?」
「いやいや、日本酒は夏場でも常温でしょう。う~~~ん、俺がへんに恋しくなるのはテキーラかな、塩をライムにペッて付けて、カプッグイーみたな(笑)」
何故か酒の話になると盛り上がったりします。
そんなマスターとの会話に入り込んできたのがN君。
「テキーラ?テキーラって強い酒ですよねぇ・・・・・強い酒っていったら、俺はアブサンを飲んだことありますよ。」
「あっあっあっアブサン???!!!!!」

酒飲みというものは、出来ることなら世界中のありとあらゆる種類の、ありとあらゆる酒を、合法非合法問わず(実際無理だから言っでんすよ)一度は口にしたいもの
しかしながらそれは、ジャズのレコード全てを聴くよりもさらに難しく、ほぼ不可能なことです。
そんな中でも、アブサンといえばまさに『幻の酒』、『魅惑の酒』、『禁断の酒』、芸術家がこぞって酔いしれたというその酒を、一度は口にしてみたいと思うじゃありませんか。さらに、各国で生産禁止が続き、解禁後も「従来のそれとは異質のものだ」なんて話を聞くと、ますます本物を味わってみたいものだと、
できることなら、かのアーネスト・ヘミングウェイのごとく、まだスペインで本物が手に入ると聞くなり飛んでいったという、そこまでしても飲んでみたい代物です。

「どうせ偽物だろ、そんな簡単に飲めるわけないよ」
「そうだそうだ、テメェなんぞが『緑の妖精』を口にするのは千年早い!」
『緑の妖精』ってなんですか?」
「え?だから、緑色の酒だったろ?」

え~~ここで、まだ見たことも当然飲んだこともない酒、アブサンについてちょっと説明させていただきますと
アブサンとは、もともとフランスの医師ピエール=オルディネールが医薬品として生み出したもので、ニガヨモギを中心に幾つかのハーブを主成分とする薬草系リキュールなんでありまして、アルコール度数は70前後とたしかに強い酒です。
リキュールというと、なんだか甘いイメージがあるかもしれませんが、主成分の名前でもわかるように、苦みが主な味(?)これに多数の薬草の調和で非常に風味豊かな香りをもった酒なんだそうで、抗炎症作用、下熱作用、殺菌作用といった効用もある反面、幻覚性のあるアサロン、鎮静作用のあるアネトールなんて物質も含まれているというなんとも複雑な酒なのであります。

そんな苦臭い強い酒をどうやって飲むかということですが、ある種儀式めいた飲み方を紹介しますと、アブサンに浸した角砂糖をフォークやスプーンなんかの上にのせて火を着けます。アルコール度数70度ですから当然燃え上がり、溶けてキャラメル状になったものを本体のアブサンに垂らします。これに冷たい水を加えると乳白色がかった緑色の飲み物が出来上がるとそういうわけです。つまりこれが『緑の妖精』なんでありますねぇ(って、いかにも見てきたように話しますが、あくまで聞いた話ですよ...笑)
話を戻しましょう。

「いや、透明でしたよ。」とはN君
「透明?????アブサンが透明っちゃ無いだろ」
まっ、ここが今日の話のオチなんですが、どうもNさんはアブサンと泡盛を間違えたようなのでありまして、そもそもアブサンが洋酒であることも知らず、「野球マンガ『あぶさん』→焼酎→泡盛」といった勝手な感覚が先走ったようで
「だって、アブサンってけっこう旨いですねって言ったら、そうだろうってみんな言ってたんですよ。」
アブサンだアブサンだって喜んでるN君を、みんなでからかっていたのでしょうね。
「うんうん、そりゃあ、そう言って飲ませた友達が悪いよな」
と言いつつ、思わず笑ってしまった我々は、半分は彼の人の良さに同情し、半分は「俺も味わったことのない酒なんだから、こいつに先を越されなくて良かった」という安堵感に包まれたのでありました。とさ。(笑)

この一杯は夕刊紙に代わるものであり、カフェで過ごしたすべての夜に代わるものであり、この月の今頃になると花を咲かせる栗の木に代わるものだ。

花を咲かせた栗の木に代わるとはいかなる意味かわかりませんが、間違いだったとはいえ「アブサンを飲んだ」てな話を聞くと、栗の花香るこの時期に、アブサンを一度味わってみたいものであります。

さて、今日の一枚は、レイ・ブライアントです。
控えめな性格であったであろうブライアント、しかし、演奏には力強さとソウルがこもっています。
私が彼を好きなのもきっとそんな控え目の性格が、私に似ているからでしょう・・・・・・・・・・今、そこら中からブーイングの嵐が(笑)
冗談はともかく、このアルバムもそんなブライアントを感じ取れる一枚であることは間違いありません。

朝から聴けるピアノというと、あんがい有りそうで無かったりしませんか?
私にとっては、ファニアス・ニューボーンJr.の「HARLEM BLUES」や、ダラー・ブランドの「AFRICAN PIANO」、マッコイ・タイナーの「ATLANTIS」A面(これはA面じゃないとダメ~~笑)、そして同じブライアントの「ALONE AT MONTREUX」プラス今日の一枚あたりが朝用みたいなところがあって、よく目覚めに聴く一枚になっています。
(これらのアルバムになんの共通点があるのかは、私自身わかりませんが)

試しに、これから起こるであろう夏バテでボケボケの朝に、B面1曲目「HOLD BACK MON」あたりを聴いてみるなんていかがでしょうかねぇ?
私ならちょっとだけ元気を取り戻します。

HERE'S RAY BRYANT
1976年1月10,12日録音
RAY BRYANT(p) GEORGE DUVIVIER(b) GRADY TATE(ds)

1.GIRL TALK
2.GOOD MORNING HEARTACHE
3.MANTECA
4.WHEN SUNNY GETS BLUE
5.HOLD BACK MON
6.LI'L DARLIN'
7.COLD TURKEY
8.PRAYER SONG

追伸、
映画評論家の水野晴郎氏が、昨日お亡くなりになったそうで、洋画好きの私は『水曜ロードショー』『金曜ロードショー』にもずいぶんとお世話になりました。
ある意味、映画に人生を捧げた真のオタク水野氏、ご冥福をお祈りしたいと思います。