私の闇の奥

藤永茂訳コンラッド著『闇の奥』の解説から始まりました

エリトリアの人々に幸あれ(1)

2014-12-17 21:26:02 | 日記・エッセイ・コラム
 10月末から11月にかけて、『エリトリア:アフリカのキューバ』(1)、(2)、(3)という記事を掲げました。その冒頭に私は、
 このタイトルはトーマス・マウンテン(Thomas Mountain)から借りました。マウンテン氏は、これはアンドレ・ヴルチェク(Andre Vltchek)から借りたと言います。私がこれから書くことは、マウンテン氏の最近の論説を大いに参考にしています。
# Eritrea: The Cuba of Africa
http://www.blackagendareport.com/content/eritrea-cuba-africa

と書きましたが、嬉しいことに、アンドレ・ヴルチェク氏自身の最新のエリトリア訪問記を読むことが出来ました。13枚の興味深い写真を含み、普通にプリントアウトして21頁の長さで、タイトルも愉快です。
 DECEMBER 12, 2014
Eritrea African Ideological Ebola for Imperialists
by ANDRE VLTCHEK


http://www.counterpunch.org/2014/12/12/african-ideological-ebola-for-imperialists/print

「エリトリア:帝国主義者にとってのイデオロギー的エボラ出血熱」とは、エリトリアの人々の独立への希求(米欧は独裁者アフェウェルキの野心と言いたいのでしょうが)が、ネオコロニアリズムの桎梏の下に苦しむ他のアフリカ諸国の人々に伝染することを、帝国主義者たちがエボラ出血熱のように恐れていることを意味しています。同じ内容の記事は次の場所でも読むことができます。こちらの見出しは『エリトリアの独立への苦闘』(Eritrea’s Struggle for Independence)となっています。

http://dissidentvoice.org/2014/12/eritreas-struggle-for-independence/

 米欧諸国が恐れる独立希求エボラ熱は、実は、アフェウェルキが、1991年、エリトリア独立戦争を起こす9年前の1982年に、サンカラがブルキナファソで独立希求エボラ熱を発症させていました。そのアフリカ大陸での飛び火蔓延を食い止めるため、たった4年後の1986年、米欧は恐るべきエボラ熱ウィルスの保持者サンカラとその同士たちを暗殺して無記名の墓地に集団埋葬するという非常手段に訴えたのでした。サンカラは、米欧の支配から脱するために、外部からの食糧その他のいわゆる“援助”を一切排して、歯を食いしばって食糧の自国生産やインフラの自主整備を進め、IMFやWBの干渉を許さない政策を採用していました。1993年にエリトリアの独立を宣言したアフェウェルキも同じ苦難の道を辿っています。サンカラと同じstrainのエボラウィルスの保持者だと思われます。従って、アフェウェルキもまた暗殺によって始末される確率は大きいのです。
 しかし、先日のブログ記事『サンカラ革命とブルキナファソ』(1)(2014年11月26日)で報じた通り、ブルキナファソの民衆の体内深く潜伏していた独立希求エボラ熱ウィルスは、10月30日、突然百万人民衆デモの形をとって息を吹き返し、サンカラを裏切った独裁者コンパオレ大統領を国外に追い出してしまいました。このウィルスの感染がアフリカ大陸で一挙に猖獗を極めることになれば良いのですが。
 いや、エボラ出血熱ウィルスのメタファーへの稚拙な悪乗りはこの辺でやめましょう。アンドレ・ヴルチェクの『Eritrea African Ideological Ebola for Imperialists』は、このメタファーに関係なく、読み応え十分の現地報告です。次回から和訳を試みます。ヴルチェク氏の英文は読み易い英文ですから、英語を読むのが余り億劫でない人は翻訳を待たず、是非原文をお読みになって下さい。この好読み物の出現に時を合わせるように、少し古い(2014年7月12日)『Eritrea: Come and See』というムービーや、

http://www.tesfanews.net/eritrea-come-and-see/

マウンテン氏の論考と同じタイトル『Eritrea: The Cuba of Africa』で、T.J. Petrowskiというジャーナリスト(カナダの共産党党員)の新しい論考(2014年12月15日)がTesfaNews というサイトにでています。

http://www.tesfanews.net/eritrea-the-cuba-of-africa-2/

さらに、私が前回のブログで取り上げたAlexandra Valiente のLibya 360 というサイトには
『From Liberation to Governance: The Eritrean Experience』という表題で、
Sophia Tesfarmariam という在米のエリトリア人女性人類学者の筆になる長い論考が掲げられています。

http://libya360.wordpress.com/2014/12/13/from-liberation-to-governance-the-eritrean-experience/

この女性は熱心なエリトリア擁護論者で、その故に、賛否両論の渦の中にいる存在のようです。この論考の末尾には興味深い参考記事が多数挙げてありますので、暇があれば覗いてみて下さい。上述のように、次回からヴルチェク氏のエリトリア見聞記を訳出します。

藤永 茂 (2014年12月17日)