私の闇の奥

藤永茂訳コンラッド著『闇の奥』の解説から始まりました

リビアのこと憶えていますか?

2014-06-11 22:09:59 | インポート
 リビアは大変なことになっています。アフリカ大陸の諸国の中で一般大衆が飛び抜けて快適な豊かな日常生活を享受していたリビアという国はもはやすっかり姿を消してしまいました。この3月はじめにトリポリのリビア政府の首相Ali Zeidan は議会から身分を剥奪されて命からがらドイツに逃れました。それぞれに武器を大量に抱え込んだあれこれの民兵軍団の間で衝突や暗殺行為が続き、ほとんど内戦の状態です。カダフィの時代には国民生活の豊かさをしっかりと支えた石油資源からの収入の争奪が内部抗争の根幹にありますが、ゼイダンが逃げた丁度その頃、北朝鮮の旗をつけた大きな石油タンカーが東部の民兵軍団から船倉一杯の石油を買い付け、リビア政府の反対を無視して出航したのですが、途中の公海洋上でアメリカ海軍の特殊部隊ネイビー・シールによって捕捉されてしまいました。大英帝国の輝かしい海賊行為の伝統を見事に継いだ作戦で、アフリカ土人によるソマリア沖の素人海賊のお手並みとは格が違います。
 ところで、最近大きな動きがありました。Khalifa Hafter (Hifter とも綴る)という元リビア軍の軍人がLibya National Armyなるものを率いて東部の重要都市ベンガジから行動を起こし、瞬く間にトリポリに軍を進めて議会を事実上解体してしまいました。リビアでは6月25日に一般選挙がおこなわれることになっていましたが、どんな選挙になることか。
 今日はここでリビアの現状の分析解説を行なうことはいたしません。ただ指摘しておきたいのは、このハフター(ヒフター)という人物が米国の支持と差し金の下で動いていることに全く疑いの余地はなく、今後について一言いえば、エジプトのアル・シシ将軍(今度の選挙で圧倒的得票率で大統領に当選)とカリファ・ハフター将軍はペアにして考えておくとよいでしょう。シシ将軍がエジプトでそうしたように、ハフター将軍は、米国の意向の下に、リビアでクーデターを行なっているのです。米国という国は何という冷酷な恐ろしいテロリスト国家でしょう。自分が気に入らない状況になっている国なら、その国民がどんなむごい苦しみを味わおうと全くお構いなし。
 日本ではよく「カダフィ大佐」と呼ばれていた男、ここではムアンマル・カダフィと呼んでおきますが、これがどんな人物で何をしたか、について私の考えはこの3年の間にほぼはっきり固まりました。私の頭の中では、カストロ、チャベス、サンカラ、ルムンバ、カダフィ、アフェウェルキ(エリトリア)などの名前が並びます。誤解を怖れずに言えば、カダフィは“良き”独裁者の一人であったというのが私のほぼ終局的な判断です。近いうちに又お話をいたしましょう。

藤永 茂 (2014年6月11日)