褒めまくる映画伝道師のブログ

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映画 嘆きのテレーズ(1953) 最後に畳みかけるサスペンス映画

2022年03月28日 | 映画(な行)
 ハリウッドのようなCGを思いっきり使ってのド迫力サスペンス映画も楽しいが、フランスのCGは使わなくとも人間心理を活かしたサスペンス映画も楽しい。そんな文豪エミール・ゾラの小説テレーズ・ラカンを原作とした映画化作品が今回紹介する嘆きのテレーズ。最初は男女の不倫に端を発したサスペンス映画かと思いきや、後半の二転三転する展開が非常に面白く、想像力を掻き立てるラストシーンを見せつけられて、良い映画を観たなと心の底から思える作品だ。フランスのサスペンス映画は男女の機微が描かれ、大人の気分になれるのが良い。

 早速だがストーリーの紹介をできるだけ簡単に。
 フランスのリヨンにおいて、テレーズ(シモーヌ・シニョレ)は病弱の夫カミーユ(ジャック・デュビー)の世話に追われ、しかも姑のラカン夫人(シルヴィー)は息子を溺愛するあまり、テレーズに対しては冷たく、ひたすらつまらない日々が続いていた。
 ところがある日のことカミーユは仕事場で意気投合したイタリア人のトラック運転手ローラン(ラフ・ヴァローネ)を連れて家にやって来る。テレーズは夫のカミーユと違って逞しさを持っているローランに惹かれるようになり、ローランもテレーズが夫のカミーユを愛していないことに気付き、テレーズを愛するようになる。
 テレーズとローランは駆け落ちしようとするのだが、そのことを知ったカミーユは先手を打ってテレーズとパリの親戚の家に電車で行こうとするのだが、すっかり愛に盲目になってしまったローランは2人の後を追いかけ、ローランはカミーユを電車から突き飛ばして殺してしまう。誰にもバレてないと思っていた二人だったが、彼らを脅迫しようとする人物が現れて・・・

 自己中の男と心身ともに満たされない奥さんの不倫を描いた映画かと思いきや、電車の中で人殺しをしてからのサスペンス感が非常に楽しい。防衛本能が働くテレーズは夫殺しの疑いを掛けられローランとの関係を止めようとするのだが、イタリア人運転手のローランがテレーズのことを諦めずに一緒に駆け落ちしようとする一途さに笑える、じゃなくて泣けてきた。しかし、この映画の本領発揮は後半の更に後半だ。たまたま一緒の電車に乗っていた元水兵リトン(ローラル・ルザッフル)が、テレーズを脅迫するために、おんぼろバイクで現れてから。それにしても本作はよく考えたらロクな大人が出てこないことに気付いた。
 どう考えてもテレーズとローランが一緒に駆け落ちして暮らすことが出来ても幸せになれそうにないな~と思って見ていたのだが、予想外の事が起きて事態が二転三転する展開に驚いた。この2人の未来を想像させる終わらせ方が素晴らしい。勝手な愛やカネに目がくらんでしまった馬鹿な大人達と、言われた通りにする純粋な少女の対比が残酷な結末を表現する。ハリウッドの大袈裟なストーリーに飽きた人、良質なサスペンス映画を観たい人、いつも男を不幸にしてしまう役ばかり演じている印象のあるシモーヌ・シニョレに興味のある人に今回は映画嘆きのテレーズをお勧め映画に挙げておこう。

 監督はフランス映画史に燦燦と輝く名監督であるマルセル・カルネ。この人の映画を観ていれば、フランス映画とはこういうものなんだと少しばかり理解した気分になれる。人生の喜怒哀楽を描いた名作中の名作である天井桟敷の人々、ジャン・ギャバンが渋い霧の波止場陽は昇るわれら巴里っ子、そして安ホテルを舞台に様々な人生を描く北ホテル、チョット流行りの記憶喪失ムービーでもフランスらしさを感じさせるジェラール・フィリップ主演の愛人ジュリエットなどお勧め多数にして、フランス映画らしさを感じさせてくれます。

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