褒めまくる映画伝道師のブログ

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映画 肉体の冠(1952) 人生の不条理さを感じさせる 

2018年10月23日 | 映画(な行)
 俺なんかはタイトル名が『肉体の~』というのを見ると、すぐにエロ映画かと思ってしまうが、そんな発想の貧困さに自分が情けなくなってくる。ちなみに原題はフランス語でCasque d'orであり、黄金の兜の意味。
 原題の意味するところは、主演女優のシモーヌ・シニョレが長い金髪を頭上に結っているヘアスタイルから来ているのだが、邦題の付け方がダメダメ。しかしながら、タイトル名から想像できないぐらい人生の辛さを感じさせるストーリーが展開されるのが今回紹介する映画肉体の冠
 原題からしてシモーヌ・シニョレ演じる女性の生き様が中心に描かれているのかと思いきや、実は悲しき男の性を描いている映画。真実の愛を得て幸せだったのも束の間、一度罪を犯したがために悲劇へ向けて突っ走るストーリーだ。

 これぞ昔のフランス映画だと思わせる結末が訪れるストーリーを紹介しよう。
 パリにおいて。娼婦であるマリー(シモーヌ・シニョレ)はヤクザのロラン(ウィリアム・サバティエ)の女だったのだが、大工職人のマンダ(セルジュ・レオニ)と出会い、お互いに好意を抱くようになる。
 ヤクザの親分であるルカ(クロード・ドーファン)はマリーに好意を持っており、ロランとマリーの関係が冷め切っている事を知って、一味のたまり場である酒場にマリーを呼び出す。しかし、その場にマリーはマンダを呼び出していた。
 成り行きでマンダとロランは、ルカや子分でありマンダの親友であるレイモン(レイモン・ビュシェール)が見ている中で決闘をする。マンダはロランを刺し殺す。
 マンダはパリを逃げるように去るのだが、誰からともなく手紙を渡され、そこに書いてある場所に行くとマリーが居た。二人は田舎暮らしを楽しみ、愛し合う。しかし、親友のレイモンがロラン殺しの罪で警察に捕まっていることを知る。マンダは親友が自分の罪を被っているのに耐えきれずに、マリーの説得にも顧みずに、警察に自首しに行くのだが、実はルカがマリーを奪うための策略であり・・・

 とにかく大工職人のマンダ(セルジュ・レオニ)が男らしくて恰好良い。ヤクザの女だと知っていながら好き同士になったマリー(シモーヌ・シニョレ)を殺し合いの決闘をしてまで自分の彼女にしようとするだけでなく、親友レイモンとの仁義を貫き通す熱き友情にも感動する。そんな男の中の男であるマンダに訪れる運命は仕方ないのかもしれないが切ない。しかし、多くの人は知っている。人生は不条理の連続であることを。
 一方ではヤクザの親分であるルカ(クロード・ドーファン)のクズっぷりが凄い。下衆で卑怯者であり、これだけの悪人が登場する映画も珍しい。だいたいこの世の中、卑怯者がのうのうと生きていけるのがダメだ。平気でウソついて人を陥れる卑怯者の存在こそ、人間の良心を失わさせている。こんな奴が居なくなれば、犯罪なんか今よりもっと少なくなる。本作を観れば多くの人が俺と同じような考えを持つはずだ。
 人生って甘くないということを改めて感じたい人、世の中不条理の連続だと嘆いている人、なぜこの世の中から凶悪犯罪が無くならないのかと悩んでいる人、綺麗な頃のシモーヌ・シニョレを見たい人・・・等々に今回は映画肉体の冠をお勧めとして挙げておこう。

肉体の冠 [DVD]
シモーヌ・シニョレ,セルジュ・レジアニ,クロード・ドーファン,レイモン・ビュシェール
ジュネス企画


 監督はフランス人のジャック・ベッケル。個人的には彼の映画をそれほど見ていないが、観た映画は外れがないどころか傑作ばかり。ジャン・ギャバン主演のフレンチ・フィルム・ノワールの傑作現金(げんなま)に手を出すな、ジェラール・フィリップ主演で画家モディリアーニの伝記映画モンパルナスの灯、緊迫感がハンパない脱獄映画が良いです。
 

 
 

 

 



 
 
 

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