褒めまくる映画伝道師のブログ

映画の記事がメイン。自己基準で良かった映画ばかり紹介します。とにかく褒めることがコンセプトです。

映画 アスファルト・ジャングル(1950) 破滅っぷりが凄いです

2016年04月24日 | 映画(あ行)
 チームを組んで大金強奪を企む犯罪映画というのはハリウッドのみならず昔からたくさん撮られてきた。まさにその分野において映画史に燦々と輝く名作が今回紹介するアスファルト・ジャングル。ちなみにタイトルの意味は、ジャングルで野生の動物が生存競争を繰り広げているのに引っ掛けて、人間の弱肉強食の世界を浮き彫りにする大都会のこと。本作に登場する強盗団やそこに関わってくる人物などが、まさにアスファルト・ジャングルの世界で負け犬に成り下がっているいる連中が大半。どいつもこいつもクズみたいな奴ばかりだが、どん底から這い上がるために宝石を強奪しようと目論むストーリー展開が繰り広げられる。
 まあ、正直な感想として強盗シーンからして大してスリルを感じないし、そもそもこの強盗計画が綿密さから程遠くて適当すぎる。しかも最初から仲間割れしているようにチームワークがボロボロ。サスペンス的な楽しみを求めると大して面白くない映画に思える。
 しかし、本作の特徴は登場人物達のキャラクター設定が丁寧に描かれていること。普通に見れば悪人だらけの登場人物だが、こいつ等がチョッとした瞬間に良心を見せたりするから憎み切れない。 善悪を併せ持つ人間描写のお陰で、破滅へ一直線に向かっていく強盗達の結末は非情なタッチで描かれているが、観終わった後には複雑な余韻が残る。

 さて、負け犬たちが一発大逆転を狙って、更に落っこちていくストーリーを簡単に紹介しよう。
 パトカーが走り回っているアメリカのある大都会において。刑務所から出所したドク(サム・ジャッフェ)は早速賭博場へ向かい、宝石強盗計画を賭博業者のコビー(マーク・ローレンス)に打ち明ける。資金提供者として弁護士でありながら暗黒街を牛耳るエマリック(ルイス・カルハーン)、腕っぷしが強いディックス(スタンリー・ヘイドン)を用心棒、更に金庫破りのルイ(アンソニー・カルーソ)、運転手としてガス(ジェームズ・ホイットモア)を仲間に引き入れる。
 手ごまは整い、計画もバッチリでいよいよ宝石強盗を実行に移し、宝石を盗み出す事に成功するのだが・・・

 この強盗のメンバー達だが、借金まみれ、生活苦と悲惨な状況に陥っている奴ばかり。まあ、それぞれに諸事情があるのだが、それにしても人生に再起をかける方法が強盗しか思いつかないとは本当に困った奴等だが、もう少しマトモに働けよ!と思ったのは俺だけではあるまい。だいたい負け犬になる前にもっとマシな選択はなかったのか?とか、何でまた強盗!?と思ったり、今からでも真面目に働けよ!と観ていてツッコミたくなったが、まあ一発大逆転の発想がアメリカ人らしいと言えばそれまでか。
 しかし、この映画の真骨頂は強盗シーン以降だろう。強盗に関わった人間達に天誅を降すような破滅っぷりの様子、結末に色々な想いが重なる。ダメな時は何をしてもダメだよね~とか、カネって人間をダメにするよね~とか、アメリカ人って個人の能力は高くてもチームワークが悪いよね~とか、日本も一極集中じゃなくて地方創生が大切だよね~・・・等などを思わせる。そんな訳で犯罪映画から人生訓を感じてしまう俺の頭の中って、どうかしてるんじゃないか?と不安になったりする。それはさておき、そう言えば本作にはまだ大して有名ではなかった時のマリリン・モンローが出演していたんだった。
 なんとかして大金持ちになりたいと思っている人、故郷を省みずに都会に出たがっている人、昔の事を何時までもクヨクヨ考えている人には映画アスファルト・ジャングルを今回のお勧め映画として挙げておこう

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サム・ジャッフェ,マリリン・モンロー,スターリング・ヘイドン,ルイス・カルハーン
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 監督はジョン・ヒューストン。骨太のタッチが魅力的な監督さん。ハンフリー・ボガード主演のマルタの鷹黄金、ジャック・ニコルソン主演の女と男の名誉がお勧めです。





 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 



 
 
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映画 大いなる西部(1958) 大自然と人間同士の争いの対比が強烈です

2016年02月11日 | 映画(あ行)
 古今東西を問わず人間同士の争いごとが無くならない世の中だが、その理由を探ってみると本当にチッポケなことが大半。そんなことぐらい直ぐにでも解決できるだろうと思ったりするのもあったりするのだが、どうやら人間なんて想像以上に愚かな生き物らしい。表向きは完全な西部劇を装っているが、人間同士の争いを非常に皮肉的に描いている映画が今回紹介する大いなる西部。従来からあるような勧善懲悪の単純な形式の西部劇ではなく、現代に生きる我々にも何かと多くのことを教示してくれるテーマが本作にはある。

 さて、血湧き肉踊るような壮絶なガンファイトを期待すると肩透かしを喰らってしまいそうになるが、西部劇の分野にヒューマニズムを叩き込んだストーリーとはいかなるものか。
 アメリカの東部から、いかにも洗練された紳士の出で立ちでジム・マッケイ(グレゴリー・ペック)がアメリカ西部の町にやって来た。地元の有力者であるテリル少佐(チャールズ・ビッグフォード)の娘パット(キャロル・ベイカー)と結婚するためである。ところがジムは到着して早々に西部の荒れくれ男達から手荒い洗礼を受けるのだが、ジムは彼らを相手にすることなくそのまま何事もなかったかのようにやり過ごす。
 ところがジムはこの西部の町で厳しい現実を知ることになる。それは町の水の利権をめぐってのテリル家とヘネシー家の暴力辞さずの縄張り争い。テリル家に婿入りしたジムだったが、彼はそんな両家の争いを止めるために、水源地であるビッグマディの持ち主であるジュリー(ジーン・シモンズ)にある提案をするのだが・・・

 東部からやって来たグレゴリー・ペック演じるジムだが徹底的に暴力を嫌う男。そんな男が日常茶飯事的に拳銃を発砲している西部にやって来たらどうなるのか?という設定が面白い。売られた喧嘩を買う勇気も無い腰抜けかと思って観ていると、実はけっこうタフな男。直ぐに西部から逃げ出して東部へ逃げ帰るのかと思っていたら、意外にも西部のことを理解しようと気性の悪い馬に乗ろうと挑戦したり、あれほど否定的だった殴り合いに挑んだり、広大な西部をちょっとばかし観光したりして、体を張って西部の事を少しでも理解しようと勉強する姿はなかなか頼もしい。この男の異なる文明を全て否定するのでは無く、理解しようとする姿勢に現代に生きる我々は見習うべき点が多々あるような気がする。
 印象的なシーンが多い映画だが、そんな中でもグレゴリー・ペックチャールトン・へストンが、ひたすら殴り合うシーンの俯瞰的ショットは人間同士の争いを大自然が悠然と見下しているかのように思わせるし、ラストシーンにおける争っていたテリル家とヘネシー家の親分同士の一騎打ちは時代の波に流されてしまった西部の男たちの最後のプライドを垣間見ることができる。そして冒頭から流れる音楽は、馬車が疾走するシーンと相まって雄大さがありテンションが勝手に上がる名曲だ。
 ちょっと異色的な西部劇を観たいと思っているレアな人、ウィリアム・ワイラー監督の作品と聞いて心が躍る人、争いごとが嫌いな人には映画大いなる西部は観たらきっと満足できる作品としてお勧めしておこう

大いなる西部 [DVD]
グレゴリー・ペック,ウィリアム・ワイラー,ジーン・シモンズ
20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント


 監督は前述したようにウィリアム・ワイラー。あらゆる分野で多くの名作を遺したが、今回は彼の演出家としての熟練したテクニックが見られる作品として探偵物語を挙げておこう。

 


 
 
 
 



 
 
 

 
 
 
 
 

 
 
   

 




 
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映画 オペラハット(1936) 主人公の純粋な気持ちに心が洗われます

2016年01月24日 | 映画(あ行)
 貧乏人である俺が、時々妄想してしまうことがある。それはいきなり俺の手元に何億円というお金が転がり込んでくること。もし、俺が急に大金持ちの大富豪になったら楽して得たお金を果たして何のために使えば良いのだろうか?多くの貯蓄が大好きな日本人と同様に金を貯め込むか、それとも私利私欲のために使い込むか、他にもっと有意義な使い方があるのか。
 まあ、いきなりそんな大金が転がり込んでこなくても、日本の元総理大臣のように毎月1500万円が気付かないうちに手元に入ってくるだけでも充分に嬉しい気分になると思うのだが、カネに群がる人間たちの卑しさを感じる映画が今回紹介するオペラハットだ。
 本作のゲイリー・クーパー演じる男性主人公だが、ひたすらピュアな気持ちを持ち続けていて善人という設定。確か俺の周りにもこんな朴訥な人格の知り合いが居たよな~?と考えていたのだが、な~んだ俺のことだった。しかし、いつの世の中でも純粋な気持ちを持っている人間をバカにする奴等が多すぎる。

 さて、決して損得勘定で動くことなく、小さな喜びに大きな幸せを見い出そうとする俺みたいな人間にとっては非常に勇気づけられるストーリーの紹介を。
 ある日のこと、大富豪が乗っていた自動車が崖から転落して死亡。その遺産が大富豪の甥にあたり、ヴァーモント州のマンドレイク・フォールスという田舎に住んでいて、地味に暮らしていたディーズ(ゲイリー・クーパー)の元に入ってきた。急に大金持ちになり、ニューヨークに住むことになった彼の元にカネを欲しがる人物、ネタを欲しがるマスコミなどが押し寄せてくる。
 大手新聞会社のやり手の女性記者であるベネット(ジーン・アーサー)は巧みに自分が記者であることを隠してディーズに接近することに成功。ディーズはベネットの事を好きになるのだが、ベネットは彼の純粋な気持ちから表れる行動を面白おかしく新聞記事に載せる。
 ところがベネットはいつの間にやら都会の男性にはない素朴で実直なディーズのことが好きになってしまい・・・

 やっぱりカネって人間にロクなことをもたらさない。人間のモラルを崩壊させる拝金主義的な考え方が古今東西において蔓延っているのが本作を観ていて感じさせるし、カネに群がってくる人間には本当にロクな奴がいない。それにしても本作の主人公が転がり込んできた遺産の使い道が素晴らしい。日本の政治家も好き勝手に金をバラ蒔くことを止めて、労働を生み出すことに金を使え。
 しかし、最近は正義が報われない場面に出くわすことが多くなってしまったが、本作の監督でもあるフランク・キャプラの映画はそんな俺の嘆きをぶっ飛ばしてくれる。もちろん本作の結末は非常に気持ちの良いところに落ち着くし、ユーモアセンスも抜群で本作もけっこう笑える。
 大金を持て余している富豪層の人、ハッピーな気分になりたい人、フランク・キャプラ監督の映画が好きだけどまだ未見の人、金持ちになりたいと半永久的に願っている人に映画オペラハットはお勧めだ

オペラハット [DVD]
ゲイリー・クーパー,ジーン・アーサー
ファーストトレーディング


 監督は前述したようにフランク・キャプラ。大いなる理想と正義を描いた名作及び傑作が多数の監督。今回は彼の作品にしては異色的なブラックユーモアに満ちた毒薬と老嬢をお勧めしておこう。





 
 

 

 

 

 

 
 
 
 
 


 

 

 
 
 

 











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映画 アフター・アワーズ(1985) まさしく悪夢です

2016年01月03日 | 映画(あ行)
 明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いします。年末年始において殆んどの人が忙しいと思うが、ちなみに俺の場合はかなりヒマ。飯を食っては寝るの繰り返し。寒くて昼間でもちょっと暖かい布団の中に入ってしまい、二度寝、三度寝は当たり前の休日を過ごしています。そんな俺は普段の日でも不眠に襲われることがないのだが、中には平日も休日も眠れないという人も居るだろう。すっかり不眠症に陥ってしまった人にお勧めしたい、いや逆に毎日が眠たいと感じている人にお勧めしたい映画が今回紹介するアフター・アワーズ。なかなかストレートに笑わせてくれないブラックコメディであり、ニューヨークを舞台に現代人にも襲いかかってきそうな狂気が描かれている傑作だ。
 だいたい夜な夜な男が喫茶店で独りで本を読みながらコーヒーを飲むなんて、本当の目的は、読書でもノドが乾いているわけでもなく、ナンパ!もしくはこの映画の主人公の男性のように女性から逆ナンされるのを待っている奴が殆んど。そう言えば俺も学生の頃、読みもしない村上春樹の『ノルウェイの森』の赤と緑のハードカバーの本を二冊持って、女の子から声を掛けられないかな~と思いながら突っ立っていた事を思い出した。

 ちょっと気弱そうでシャイな俺のような男性なら本作の主人公の気持ちが痛いほどわかるが、そんな下心に痛烈なしっぺ返しを喰らわせられるストーリーとは如何なるものか。
 ニューヨークに住み、そしてニューヨークの大きな会社でワープロの使い方を教えているポール(グリフィン・ダン)は、仕事が終わった後に喫茶店に寄って、本(ヘンリー・ミラーの北回帰線)を読んでいる。そこへ、若くて綺麗なマーシー(ロザンナ・アークウェット)が声を掛けてくる。2人は本の事で意気投合し、マーシーはポールに電話番号を教える。
 毎日退屈な日を過ごしていて、大して女性に縁の無かったポールは自宅に帰るとマーシーが教えてくれた番号に電話をし、マーシーから『来て~』なんて言われるのだが、時計を見ると11時半を過ぎている。しかし、それでもラッキーとばかりに有頂天になって、やたらぶっ飛ばす運転手のタクシーに乗って彼女の所へ向かうのだが、それは悪夢の始まりだったのだが・・・

 そりゃ~、綺麗な女の子から電話番号を教えてもらったら俺でもすぐに電話をかける。なんだかヤバイよな~と思っても、普段は発揮しないチャレンジ精神がこんな時だけは沸き起こってくるから不思議だ。しかし、本作の主人公の男性も別のところでチャレンジ精神を発揮すれば良いのに、使うタイミングを間違ってしまっているから、さあ~大変だ。
 だいたい彼が出会うことになる女性は、外見は綺麗でもドン引きさせる生活及び悪趣味を持っていたり。当然、この男性もすっかり萎えてしまって、明日は仕事だし、もう遅いから深夜の地下鉄に乗って帰ろうとするのだが、ここから派手に次々と悪夢が襲いかかってくる。まさに危ない深夜のニューヨークを見ている気分に我々もなるし、なぜか自宅に帰ることができないこの男性の迷宮入りの様子はストレートには笑えない。
 人殺し、盗みの現場を観てしまうだけならチョロイもの。多勢の人間から追いかけられたり、自分が盗まれる?ようなありえないことが起こったり。いつもなら寝ている時間に今日に限ってとんでもない事が主人公の男性に降りかかってくる様子を見ていると、やっぱり人間は寝れる時にしっかり寝ないといけないんだと感じることができる映画だ。
 ごく平凡な主人公に対して、登場する脇役達はぶっ飛んだ奴ばかりの設定が笑えるし、最後のオチもバッチリのところへ収まった。一連の流れもハチャメチャなように見えて、なかなか計算されている。人間の狂気を描いた作品で多くの傑作、名作を遺している現在でもバリバリの現役である名匠マーティン・スコセッシ監督の珍しいコメディ作品。なんだかいつも眠れない人、いつも眠いと思っている人、マーティン・スコセッシ監督の作品が好きな人には楽しめるが、もしかしたら彼の作品に今ひとつのめり込めない人の方が楽しめるかもしれない。
 とにかく俺みたいな寝正月を過ごしている人は新年の一発目に観る映画としてアフター・アワーズをお勧めしておこう

アフター・アワーズ 特別版 [DVD]
ジョセフ・ミニオン
ワーナー・ホーム・ビデオ


 監督は前述したようにマーティン・スコセッシ監督。お勧め映画が多いが、比較的最近の作品として、とっても素敵な気分になれるファンタジー作品のヒューゴの不思議な発明がお勧めとして挙げておこう。

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映画 裏切りのサーカス(2011) 激シブのスパイ映画

2015年10月28日 | 映画(あ行)
 ソ連が崩壊してしまって以降、すっかり緊張感に満ちたスパイ映画というのが無くなってしまった。まあ、それでもジェームズ・ボンドが超人的な活躍をする007シリーズは健在だし、トム・クルーズが素敵な笑顔を振り撒くミッション:インポッシブルシリーズも新作を公開する度に大ヒット。仕掛けがド派手で見た目が楽しいスパイ映画の需要は現在においても映画産業を活気溢れるものにしている。
 しかし、中にはノーテンキなだけのスパイ映画は飽きたと言う人も居るだろう。派手な撃ち合い、爆発するシーンは俺の記憶ではなかったような気がするが、とにかく普段は使わない脳ミソをフル回転させる知的興奮を味わえるスパイ映画が今回紹介する映画裏切りのサーカス。スパイ小説の第一人者であるジョン・ル・カレによる原作小説の映画化作品だ。
 前述したような007シリーズ、ミッション:インポッシブルシリーズとは雰囲気が全く異なり、非常に懐かしい気分にさせるスパイ映画。それもそのはず、1970年代の東西冷戦が時代背景だ。

 さて、諜報機関内において二重スパイの存在をめぐって熾烈な抗争が描かれるストーリーとはいかなるものか。
 1970年代の冷戦時代において。イギリスの諜報機関サーカスは長年に渡り、ソ連の諜報機関KGBと激しい情報戦を繰り広げていた。サーカスのリーダーであるコントロール(ジョン・ハート)は、毎度の作戦失敗、情報漏れからサーカスの組織内部にソ連諜報機関の二重スパイ、通称”モグラ”が存在していることを確信。彼はモグラの情報を得るために部下のジム・ブリドー(マーク・ストロング)をハンガリーへ派遣。しかし、ジム・プリドーは背中から銃で撃たれ、またもや作戦失敗。コントロールは作戦の失敗の責任をとって、彼の長年の相棒であるジョージ・スマイリー(ゲイリー・オールドマン)を連れて引退する。
 しかし、程なくしてコントロールは謎の死亡。引退していたジョージ・スマイリーのもとにモグラを探し出せとの命令が下される。スマイリーは今は左遷されてしまっているが信頼のおける元部下のピーター・ギラム(ベネディクト・カンバーバッチ)の協力を得て、モグラ探しを始める。コントロールは生前において、幹部の5人の内の1人がモグラであることを確信していたことを突き止める。しかし、その5人の中にスマイリー自身の名前があることを知ってしまい・・・

次から次へと人物が登場し、過去と現在が交錯するシーンが多くて、別の意味で脳ミソを使うことになる人が多いかもしれない。名前と顔が一致しないのに、おまけに疑わしい幹部の5人には、あだ名が付けられているのだから尚更ややこしい。しかしながら、登場人物たちはネームバリューのある役者ばかり。俺が知らない俳優も出ているが、見た目からしてインパクトのある奴等が登場するから最初から顔と名前、そしてあだ名も最初から覚えるつもりで気合いを入れて観ると、けっこう理解しやすいかも。
 本作の主題となるところは、諜報機関組織サーカスの中に存在する敵国ソ連の二重スパイ、通称モグラは果たして誰なのか?という一点のみ。見終わった後に意外性があるかどうかは評価の別れるところだろう。俺なんかは出てきた瞬間から、こいつが一番怪しいと思って観ていたのだが、やっぱりその通りの結果だった。
 しかし、その過程におけるサスペンス感は観ている我々に心地良い緊張感を与えてくれる。そして、本作が丁寧に描かれているのが人間関係。友情、恋愛、ライバルなどを観終えた後に思い返すと言葉にできない深い余韻を残す。特に忘れかけていた過去の因縁が今までの自分の人生に付きまとっていたことを悟った時のジョージ・スマイリーの気持ちを考えると、単なるスパイ映画に飽き足らず人間ドラマとしても非常に優れものだ。
 大人が観賞するのに相応しいスパイ映画が観たい人、そうとう記憶力に自信のある人なんかにはお勧めしたい、そして実は既に観ているけれど『よくわからん?』と感じた人も映画裏切りのサーカスを再見することを勧める。ちなみに俺も実は今回が2回目の観賞です。

裏切りのサーカス コレクターズ・エディション [DVD]
ゲイリー・オールドマン,コリン・ファース,トム・ハーディ,ジョン・ハート,トビ―・ジョーンズ
Happinet(SB)(D)

 
 ちなみに監督はスウェーデン人のトーマス・アルフレッドソン。彼の代表作と言えば、残酷ながらも美しい結末が印象的なぼくのエリ 200歳の少女がお勧めです。

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映画 アミスタッド(1997) スピルバーグ監督の渾身の力作

2015年10月14日 | 映画(あ行)
 1839年のキューバ沖付近において、スペイン籍の奴隷輸送船アミスタッド号が航海中にアフリカ人奴隷が反乱、乗っ取りを起こす事件がアミスタッド号事件。実際に起こった事件を背景にスティーヴン・スピルバーグ監督が放つ渾身の力作が今回紹介するアミスタッドだ。我々のような日本人からすれば、あまりにも馴染みが薄くて、そんな事件があったの?程度ぐらいで済ましてしまいそう。しかし、スピルバーグ監督が凄いのは船の中での惨殺事件から、更にテーマをを大きく膨らませたこと。
 黒人に対する人権問題、奴隷制度が描かれているのは勿論のこと、アメリカの司法制度の矛盾、権力を握るアメリカ大統領のあり方、司法と行政の独立、自由及び正義とは?!、自らの魂を突き動かす信仰心の尊さ、先人達の偉大なる功績、俺の頭の中ではザッとこれぐらいの事が思い浮かんだが、他にも重要なことが抜け落ちていたかもしれない。

 さて、アミスタッド号事件から歴史、政治、宗教など多くのことを学べる非常に有りがたいストーリーとは如何なるものか。
 1839年のキューバ沖を航行中のスペイン籍の奴隷輸送船のアミスタッド号において、シンケ(ジャイモン・フンスー)をリーダー格とする黒人達が乗組員を次々に惨殺して乗っ取り、生かしておいた舵取り役の2人のスペイン人に故郷アフリカの方へ舵を取るように指示をする。
 しかし、6週間後にシンケ達はアメリカの沿岸警備船に拿捕され、アメリカのコネチカット州で投獄され、彼らは海賊行為及び殺人の容疑で裁判にかけられる。シンケ達は死刑確実だと思われたのだが、裁判は意外な方向へ動き出す。スペインの女王イザベル(アンナ・パキン)はアミスタッド号の積荷としてシンケ達の所有権を主張、舵取り役の2人は自分たちが買った奴隷として所有権を主張、アメリカの沿岸警備船の乗組員もシンケ達の所有権を主張、いつの間にか裁判の目的がシンケ達の所有権争いに様変わりしてしまう。
 いずれにしろ黒人奴隷制度が横行するアメリカの法廷においてはシンケ達にはロクな結果をもたらすはずが無いが、そんなシンケ達を助けようとする人たちが現われる。奴隷解放論者であるタバン(ステラン・スカルスガルド)、元奴隷だったジョドソン(モーガン・フリーマン)の2人である。彼等はシンケ達を助けるために元大統領のジョン・クィンシー・アダムズアンソニー・ホプキンス)に手助けを求めるが、アッサリ拒否。仕方なく法廷で出会った若い弁護士ボールドウィン(マシュー・マコノヒー)を雇い裁判に臨むのだが、彼らの前に巨大な権力が立ち塞がり・・・

 いきなりスピルバーグ監督らしく冒頭からぶっ飛ばす。嵐が吹き荒れる中でのアミスタッド号内での反乱シーンだが、観ている我々をショックのどん底に叩き落とす。時々スピルバーグ監督作品には最初が面白くて中だるみが続いてしまうという欠点があるが、本作はそんな心配は無用。随所に感動的なシーンを散りばめる。
 例えば言葉が通じないシンケとボールドウィンの地べたに下手な地図を書いてのやり取り、カトリックの家系である回し者の判事の信仰にすがり自分の良心に問いかけ決断するシーン、シンケと元大統領ジョン・クィンシー・アダムズの魂を感じさせる会話、絶妙なキルティ・ジョイフォの登場シーン、法廷でシンケ達が自由を叫ぶシーンには多くの人に本当の自由とは何かを感じさせ、黒人の2人が聖書を解読するシーンではお互いの信仰を理解しあう寛容さが描かれる等、心が震えるシーンが連発。しかも、感動させて持ち上げながらも突き落としたりするが、そのサジ加減のバランスが絶妙なのも良い。そして本作が更なる価値を高めているのはラストシーンだろう。歴史とは時に非情な結末を用意しているということを観ている我々は痛感する。
 それにしても、シンケが語るアフリカからアメリカにやってくる道のりの出来事がビックリ仰天。黒人奴隷の扱い方が人間扱いされていなくて粗大ゴミ同然の扱い方。流石にこれは誰が見ても酷いと思うだろう。しかし、当時の奴隷制度賛成の立場の人間の黒人に対する見方はこんな感じだったのだろうか?日本に生きる我々にはちょっと理解し難いものがある。
 それはさておき、スピルバーグの盟友であるジョン・ウィリアムズの音楽は非常に安定しており気持ちを高ぶらせるし、大してCGを使っていないのも良い。そして本作の出演時点では無名だったジャイモン・フンスー、キルティ・ジョイフォ、ステラン・スカルスガルド等が現在では立て続けに傑作、話題作に出演しているのも非常に感慨深い物があるではないか。そう言えばピート・ポスルスウェイトが憎たらしい検事役で出演していた。今思うと最高の演技派を揃えた豪華キャストだったことに気付く。
 とにかく俺が観たスティーヴン・スピルバーグ監督作品で一番好きな映画がコレ!それだけの理由だけでも映画アミスタッドは全ての人にお勧めだ

アミスタッド [DVD]
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ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン


 監督は前述したとおりスティーヴン・スピルバーグ。あらゆるジャンルで名作、傑作を撮る大監督。今回はお勧めとして本作とテーマが共通している部分があるリンカーンを挙げておこう。

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映画 運命の女(2002) 余韻バッチリの不倫映画です

2015年09月02日 | 映画(あ行)
 よくある不倫映画の類で、ストーリー自体も大したことが無かったような気がする。しかし、この映画に惹きつけられる魅力はエロシーンの数々。エロイことをしている場所はトイレ、映画館、廊下などベタだが、手のしぐさ、表情、女性の体への書き込み、光の陰影・・・等々を効果的に使ったシーンは綺麗でドキッとさせる。ちなみに俺のブログは後世に残したいぐらいのお勧め映画ばかり紹介しているのだが、もちろん本作もエロイだけの理由でお勧めではない。非常に意味深なラストシーンがこの映画を傑作にまで高めた。

 さっそくだが、不倫にはまっていくのが旦那ではなく、奥さんの方というのがチョッと珍しく感じるストーリーの紹介を。
 郊外に専業主婦として暮らすコニー(ダイアン・レイン)は結婚して11年、会社を経営する優しい旦那エドワード(リチャード・ギア)と息子のチャーリー(エリック・パー・サリヴァン )の3人暮らし。非常に幸せそうな生活をおくっていた。
 コニーは息子の誕生日のためにニューヨークへ出かけて買い物をするのだが、あいにくその日は強風が吹き荒れていてマトモに歩くのも困難な状況。そんな時にコニーはフランス人青年のポール(オリヴィエ・マルティネス)とぶつかって膝が血まみれの怪我をしてしまう。そんなコニーを見たポールはすぐ近くに自分のアパートがあることを伝え、消毒液があるよと巧みに自宅へ誘い込む。
 最初こそやばい雰囲気になりながらもコニーは自制するのだが、夫のエドワードには無い若さを持っているポールの事がどうしても頭から離れず、彼のアパートを再度訪ねて一線を越えてからは夫に内緒で毎日の如くエロ三昧。コニーの様子の変化を悟ったエドワードは妻が浮気をしているのではないかと疑惑を抱き、それが確信に変わった時とんでもない悲劇が訪れる・・・

 強風さえ吹いていなければ、こんなことにならなかったのに。なんて恨み辛み愚痴をこぼしてしまいたくなるような展開だが、それにしても後戻りできないようなショックな出来事を迎える前になんとか回避できなかったのだろうか?俺には何回も回避できるチャンスがあったように思うのだが、この夫婦のやっていることは全て裏目に出てしまう。
 奥さんが不倫に走り始めてから、旦那には嘘をつきまくるようになり、なんだか急に下着はお洒落になったりする件は、男の俺にはけっこう笑えた。俺も綺麗な女性と会うときは淡いピンク色の服を着るようにしているが、けっこう大人の女性も考えることは男と大して変わらんようだ。
 それにしても本作のエンディングは非常に優れている。なかには曖昧すぎると批判する人が居るかもしれないが、観ている我々に未来を想像させるような余韻が残る終わり方。所々で間抜けなシーンが見られたりするが上手く最後をまとめた印象だ。すっかり大人になったダイアン・レインの裸を見ているだけでも楽しい気分になる映画だが、いつまでも余韻に浸れる映画。エロイシーンが多い映画が観たい人にはお勧めだし、このような映画を夫婦で観て激論を交わすのも良いのではないだろうか?何はともあれラブラブな夫婦、倦怠期に突入してしまった夫婦、新婚ホヤホヤの夫婦、熟年の夫婦、そしてその他の夫婦、別に結婚していない人にも映画運命の女をお勧めしておこう

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リチャード・ギア,ダイアン・レイン,オリヴィエ・マルティネス,チャド・ロウ,エリック・ペア・サリヴァン
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 監督はエイドリアン・ライン。歌って踊るフラッシュダンスは良い気分なれる映画。しかし、個人的にはお勧めしたいのが男女の正しい遊び方が学べるナインハーフは必見です。他にちょっとした驚きを味わえるジェイコブス・ラダーもタイトル通り宗教的示唆に富んでいて楽しめると思う。

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映画 うたかたの恋(1936) 実在の事件を題材にしています

2015年08月06日 | 映画(あ行)
 歴史上の大スキャンダルであるオーストリア皇太子ルドルフと男爵令嬢マリー・ヴェッツェラの心中事件(マイヤーリング事件)を題材にした恋愛映画が今回紹介する映画うたかたの恋。何度も映画化の題材として取り上げられ、日本人にも宝塚歌劇団でも上演されていることで知っている人が多いか。実はこの映画はけっこう最近に観たのだが、新聞を読んでいたら驚いた。なんとマリー・ヴェッツェラが母親に宛てた遺書が見つかったという。実際に映画の中でも遺書らしき物が手渡されるシーンが登場する。
 さて、この皇太子ルドルフだが日本人が思っている皇太子像とはエラク異なり、なかなかユニークな皇子様だ。俺から見れば何の不満があるのかわからないのだが、宮廷の優雅な生活を嫌い、学生の社会運動に参加したり、リベラル系の新聞の社長とお友達になったりと、なかなかの変わり者だ。
 俺なんかは日本の皇室の方々は日頃のストレス解消はどうしているのかと気になっていたのだが、ヨーロッパ全土をほぼ支配した名門ハプスブルク家のお坊ちゃんともなれば、そのストレス解消方法は凄いというか案外俺と変わらない。こっそりと外へ出かけて酒を飲み、女遊びをしている。そして酔った勢いで持っている拳銃を鏡に向かって乱射。このようなシーンを見ていて、あれほど隆盛を誇っていたハプスブルク家がけっこう早く歴史から消え去ったのも納得できた。
 ちょっと理解し難い行動が多く観ていて興ざめしてしまいそうになったのだが、さすがに同情してしまったのが、皇子様といえども本当の恋愛ができないこと。無理矢理他国のブサイクな皇女と結婚させられるシーンを見ていたらちょっと可哀相。実はこの映画の主なテーマはロミオとジュリエットでも描かれているような、障害があればあるほど燃える恋愛模様。
 ちなみにルドルフは30歳、マリー・ヴェッツェラは17歳。決してひと回り以上の年齢の差が障害になっているわけではない。19世紀後半におけるヨーロッパ社会の風習、政治、宗教が2人の恋愛の前に立ち塞がっていることに悲劇を感じつつも、心中という結果に、『あ~、これで良かったんだ』と思わせる。

 さて、謎多きマイヤーリング事件だが遺書が見つかったことに今後の新たな展開に興味が惹かれる人も多いはず?それでは簡単にストーリーの紹介を。
 ルドルフ(シャルル・ボワイエ)はオーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフの跡継ぎと期待されながらも、あろうことか当の本人は社会運動にのめり込み、皇太子とは思えないような行動を繰り返す。国のためを考える父フランツ・ヨーゼフや宰相ターフェの策略もあり、ルドルフは他国の皇女と結婚を無理強いさせられる。国家のために犠牲を強いられたルドルフは他の女や酒にはけ口を求めるようになってしまう。
 ある日のこと、遊園地をぶらりと訪れていたルドルフはマリー・ヴェッツェラ(ダニエル・ダリュー)と出会い、お互いに心を惹かれるようになり、それ以来何度もコッソリと会っていたのだが、やがてそのことは父フランツ・ヨーゼフや宰相ターフェの知ることになってしまい・・・

 マリー・ヴェッツェラを演じるダニエル・ダリューが神秘的な美しさを表現し、シャルル・ボワイエならずとも多くの男性が彼女の純真な瞳に吸い込まれそうになる。それにしてもマリーという女性は17歳にしては、しっかりしているし、皇太子の方がけっこうなダメダメに見えてしまうのが今から思えば笑える。
 フランス映画らしく舞台のバレーやダンスシーンなど非常に芸術的センスが溢れている映画。1930年代のフランス映画って芸術を描きながら、同時に心に沁みるような場面を用意しているから素敵。本当にフランス映画全盛の1930年代の作品って俺の感性を磨いてくれる。
 1930年代のフランス映画が好きな人、マイヤーリング事件に興味があるレアな人、大ヒット映画タイタニックのような大きな障害があればあるほど燃える恋愛映画が観たい人、俺と同じように新聞の小さいページから偶然見つけた人等に映画うたかたの恋はお勧めしたい

うたかたの恋 [DVD]
シャルル・ボワイエ,ダニエル・ダリュー,ジャン・ドビュクール,マルト・レニエ
ジュネス企画


 マリー・ヴェッツェラを演じているのがダニエル・ダリュー。フランス映画黄金時代を代表する女優であり、今もご存命中であり、まさに生けるレジェンド。彼女のお勧めはジェラール・フィリップ共演の赤と黒を挙げておきます。

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映画 駅馬車(1939) 名作中の名作と言えばこれ

2015年08月01日 | 映画(あ行)
 西部劇として今でも語り継がれる傑作としてだけでなく、映画史上に燦然と輝く名作と言えば今回紹介する映画駅馬車。名作と呼ばれる映画の中には大して面白くない映画があったりするが、本作に関してはそんな心配は全くの無用。駅馬車に乗り合わせた人々の人間模様を丁寧に描きつつ、駅馬車に一斉にインディアンが襲い掛かってくるクライマックスのシーンはスリル、スピード感、危険度は他の映画の追随を許さない。もしかしたらマッドマックス2のタンクローリーを暴走族が追いかけてくるシーンなんかよりも凄いかもしれない。

 まさにハリウッド映画が西部劇の全盛時代の幕開けを告げる記念碑的、伝説的な名作のストーリーとは如何なるものか。
 アリゾナ州トントからニューメキシコ州ローズバーグへ向けて、1台の駅馬車が発車しようとしていた。その時アパッチ族が反乱を起こし居住区を出たとの連絡が入る。道中が非常に危険なために駅馬車の出発を見合わせる声もあったが、乗客の中には命知らずの者が居り、アパッチ族に襲撃されることを覚悟のうえで出発する。
 出発して間もなく銀行家ヘンリー・ゲートウッド(バートン・チャーチル)が乗り込んできて、しばらくすると脱獄囚のリンゴ・キッドジョン・ウェイン)がライフルを片手に持って駅馬車の前に立ち塞がる。リンゴ・キッド達を乗せた駅馬車は乗客たちの様々な思惑も乗せ、ひたすらローズバーグへ向かって大平原を突っ走るのだが、恐れていたアパッチ族が襲撃してくる・・・
 
 座席が向かい合わせで座って6人しか用意されていない駅馬車の狭い空間の中に7人(途中から8人)の乗客が詰め寄り、馬を手綱で操縦する人間が2人。そして、この乗客達がなかなかの個性的な面々。町を追い出された娼婦、体調が優れない女性、インチキ賭博士、酔っ払いの医者、気が弱い酒商人、金を横領している銀行家、そして途中から脱獄囚がライフルをぶっ放して強引に乗り込んでくる。
 いわゆる社会のはぐれ者達が多く乗り込んでいるが、一見したところダメダメな人間が実は優しさを持ち合わせた人間だったり、その逆パターンだったり、また各々が色々と事情を抱えていたりで、そんなキャラクター設定が人間ドラマとして非常に奥の深い作品として役割を果たしている。
 そういえば、グレタ・ガルボ主演のグランド・ホテルという名作があったが、それぞれの人間模様を描いているという点で実は両作品は非常に似ている作品。優雅なホテルと狭苦しい駅馬車の中という違いが目立ち過ぎて今まで気付かなかったのも無理はないっか?

 
 さて最大の見所のアパッチの襲撃シーンだが、今ではありえないスタントシーンを我々は目にすることができる。今の時代なら飛んでいる飛行機から飛行機へ飛び移るシーンなんかは特撮を使って簡単に出来てしまうが、1939年の公開される映画では大した特撮なんか使えない。本作では走っている馬から馬へ飛び移るシーンがあり、続けて撃たれて落馬し、その上を馬が走り、さらに馬車が通過するというスタントシーンが見れる。その後にスタントマンが立ち上がるシーンまで撮られているから、あれは本物の人間だ。あんなシーンを再度チャレンジしたら今度こそ命は無いだろう。

 他にも色々なシーンが印象的だが、大平原を走る駅馬車を俯瞰的に撮ったショットから一瞬にしてアパッチ族をアップで撮るシーンがあるが、あれは怖い。これから起こることの前触れのシーンとして恐怖を増長させる。社会の底辺に陥った者同士の恋愛、リンゴ・キッドが決闘のために3発の銃弾を残していたり、危険な道中で赤ん坊が生まれたり、駅馬車に乗っていた乗客の人間性とそれぞれの運命、そして2人の女性の信念の強さと勇気。そしてモノクロ映画なのにモニュメントバレーの美しさを感じることができる。
 西部劇と言えばなんだか男性が見るための映画という印象があるが、むしろ本作は心優しい女性にこそ見て欲しい。ヒューマニズムとアクションが見事に融合した名作駅馬車を今回はお勧め映画として挙げておこう

駅馬車 [DVD]
ジョン・ウェイン,クレア・トレヴァ
ファーストトレーディング


 監督は映画史に名を遺す大巨匠ジョン・フォード。豪快な作品のイメージがあるようだが、実は詩情豊かな作品を撮ることに長けている。主に西部劇で有名だが、個人的にはヒューマニズム的な作品に惹かれる。ジョン・スタインベック原作、ヘンリー・フォンダ主演の怒りの葡萄、自然豊かなアイルランドを舞台にし、野を超え、山を越え、川を越えて殴り合いが続く本作と同じくジョン・ウェイン主演の静かなる男がお勧めです。

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映画 赤と黒(1954) スタンダールの有名小説の映画化です

2015年07月27日 | 映画(あ行)
 フランスの文豪スタンダールの1830年に刊行され、現在でも世界中に広く読まれている同名タイトル小説の映画化作品。愛と野望に生きる主人公である青年ジュリアン・ソレルを通して、ナポレオン没落後のフランスの上流社会の腐敗振りを徹底的に暴き出す、というのが原作では最たるテーマ。しかし、映画の方ではかなりメロドラマ色が濃い感じがする。
 ちなみにタイトルの赤と黒の意味するところだが、赤は軍人を表わし、黒は聖職者を表わす。ジュリアン・ソレルを演じるジェラール・フィリップの衣装に注目すれば、タイトルの意味がわかるが、貧しい境遇で育ったジュリアン・ソレルが出世コースとして選ぼうとした職業が軍人になること、または聖職者の道を進むこと。貧しいなりに立派な職業に就こうとするのは良いことだと思うのだが、そんな彼の想いは、やがて上流社会に属する人間の貧乏人に対する『上から目線』に屈辱を感じ、次第に自らを滅ぼしていく様子が描かれている。
 ちなみにジュリアン・ソレルのキャラクターだが、ナポレオンに憧れいて、顔は良くて女性からモテモテ、更に頭が抜群に良くて何の仕事をさせても秀才振りを見せ付ける。嫌味なキャラクターに見える人も居ると思うが、個人的には多くの共通点が見い出せて、感情移入するところが多々あった。
 どうでも良いことだが、あえて俺と異なる点を挙げるとすれば、それは女性のタイプ。ジュリアン・ソレルの好みは上流階級に属する女性に限っている。せっかく自分の世話をしてくれるメイドさんのような女性なんかには見向きもしない。俺なんかは自分のために料理、洗濯をしてくれる女性ならすぐに好きになってしまうのだが。

 さて、野望に取り付かれ過ぎたため、真実の愛を見失ってしまったジュリアン・ソレルの運命を描いたストーリーとは如何なるものか。
 ベリエールの町長であるレナール家に家庭教師としてやってきたジュリアン・ソレル(ジェラール・フィリップ)だが、町長夫人であるルイーズ(ダニエル・ダリュー)と惹かれ合う。しかし、ルイーズは罪の意識に悩まされ、そんな彼女を見ていられなくなったジュリアン・ソレルは憧れだった聖職者の道を目指すために神学校に入る。
 しかしながらジュリアン・ソレルは神学校において自分の貧しい生い立ちに悩む出来事が起こり、神学校を辞めることを決心したピラール神父(アントワーヌ・バルペトレ)の誘いに応じて一緒にド・ラ・モオル侯爵家へ向かう。ド・ラ・モオル侯爵から、その才能を認められたジュリアン・ソレルは彼の助手として信頼を得る。しかし、ジュリアン・ソレルが入り込むことになった上流社会にとって、貧しい生い立ちの彼には屈辱の対象でしかなかった。上流社会に対して憎しみを感じるようになったジュリアン・ソレルはド・ラ・モオル侯爵の娘マティルド(アントネラ・ルアルディ)に手を出してしまうのだが・・・

 なんだかんだ言っても非常に被害妄想だらけのジュリアン・ソレルの心の叫びはハア~?と思ってしまう人が多いのかもしれない。日本人が観ていてヨーロッパと日本の違いを感じることが多い映画。聖職者になることが出世への道だったり、日本の三審制とは違って、いきなり最初の裁判で死刑判決が出たり、やたら信仰心が強くて自分の行いを責め続けたり・・・等、時代、国が違えばこんなに異なる要素が多いことに驚きを感じる。
 今回俺が観たのはデジタルリマスターされた3時間ぐらいのバージョン。文芸作品の映画化で3時間はチョッときつい気がしたのが正直なところ。昔、俺が観たのは2時間ぐらいだったのだが、なんだか余計な贅肉が付いただけのように思えたり、その割にはストーリー展開が急過ぎたりで、良くなったように思えなかった。
 しかし、構成的な面で章ごとの冒頭でスタンダールや詩人たちの名言(例えば、『人の心に触れることはその人を傷つけるということ』)が述べられる件は、なかなか人生訓として興味深く感じられるし、そして自分自身をすっかり見失ったしまっていたジュリアン・ソレルが真実の愛に目覚めるシーンは結末と重なり感動できる。そして冒頭の裁判シーンでのジュリアン・ソレル(ジェラール・フィリップ)が述べる反対尋問?は金持ちの既得権益について考えさせられたのは俺だけか?
 スタンダールの原作に特別の思い入れのある人、ジェラール・フィリップと聞いて心が躍る人、昔のフランス映画に興味がある人、ちょっと時間に余裕のある人等には映画赤と黒はお勧めしたい映画です

赤と黒 [DVD]
ジェラール・フィリップ,ダニエル・ダリュー
アイ・ヴィ・シー


 監督はクロード・オータン=ララ。この人のお勧めは、これもまたフランス文学小説の映画化でありレイモン・ラディゲ原作の肉体の悪魔(本作と同じくジェラール・フィリップ主演)が良いです。
 
 主演のジェラール・フィリップは36歳という若さで亡くなったこともあり、伝説的な大スターであり、1950年代のフランス映画を代表する二枚目俳優。若くして亡くなったものの名作、傑作に多く出演し、多くの名監督の作品にも出演しています。お勧めしたいのが前出した肉体の悪魔、マルセル・カルネ監督の愛人ジュリエット、ジャック・ベッケル監督で天才画家モディリアーニを演じたモンパルナスの灯がお勧めです。

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映画 明日に向かって撃て!(1969) アウトローな生き方に憧れます

2015年07月14日 | 映画(あ行)
 襲い掛かってくる原住民(インディアン)を追い払ったりするわけでもなく、強面のヤクザまがいの連中を懲らしめる保安官の活躍を描くのでもない新感覚の西部劇の傑作が今回紹介する明日に向かって撃て!。銀行強盗、列車強盗を繰り返す実在したブッチ・キャシディサンダンス・キッドの活躍?を描いた作品だ。現実的に考えたら、こいつ等のやってることは悪そのもの。しかし、この2人のキャラクターだが愛嬌があって、なかなか憎めない奴等だ。
 ブッチ・キャシディをポール・ニューマン、サンダンス・キッドをロバート・レッドフォードが演じるが、この2人が冒頭のセピア調の画面から登場するシーンがとてつもなく格好良い。大胆不敵、早撃ち、ハンサム、何気にオシャレ、まさに男が憧れる男を感じさせる。しかし、この映画の面白いところは話が進むに連れて、実はこの2人はけっこうなダメダメ人間だということが次第に明らかになっていくところ。よく考えてみれば(考えるまでもないっか)元々この2人は強盗だからダメ人間であることは最初から確定されているのだが、それにしてもこのダメッぷりは笑える。
 2人のコントのような掛け合いが笑えるが、その一方で彼らの生き方に現代を生きる我々は憧れを抱く。何かと時間に追われ、決まりごとが多い現代社会に身を置く俺なんかは居心地の悪さを感じる時もある。しかし、俺と同様に彼らのような自由奔放、楽天主義な生き方を観ればきっと多くの人が羨ましいと思うはずだ。

 さて、強盗に逃げろ~と応援したくなる不思議な気分になるストーリーとはいかなるものか
 1890年代の西部開拓時代も終りを告げる頃において。家畜泥棒、銀行強盗を繰り返すブッチ(ポール・ニューマン)とサンダンス(ロバート・レッドフォード)の2人組み。ブッチ(ポール・ニューマン)は将来において、今の強奪稼業をやめて金銀ザックザック取り放題の南米ボリビアに行くことを夢みており、早撃ちとして有名なサンダンス(ロバート・レッドフォード)にも一緒にボリビアに行こうと語っていた。
 ブッチ(ポール・ニューマン)とサンダンス(ロバート・レッドフォード)は強盗仲間からの誘いで列車強盗を試み、まんまと大金をせしめる。すっかり味をしめた2人は、またもや強盗仲間と列車強盗を試みるが今度は鉄道会社が雇った最強追跡部隊からのしつような追撃を受ける羽目に陥ってしまう。
 なんとか逃げ切った2人は、スペイン語ができる美人でセクシーなエッタ(キャサリン・ロス)を誘い、ニューヨーク経由で南米ボリビアに到着するのだが・・・

 ラストの銃撃戦などアクションシーンが楽しい映画でもある。しかし、この映画には男女の三角関係が爽やかに描かれているのが非常に印象深い。特にポール・ニューマンとキャサリン・ロスが自転車に乗りながら、流れてくるバート・バカラック作曲の雨にぬれてもは名曲だ
 時代の荒波に逆らい続けるアウトロー達の生き様に憧れ、ラストシーンは古き良きアメリカの終焉を感じさせる。アメリカン・ニューシネマと聞いて心が躍る人、西部劇の名作が観たい人、男同士の熱い友情を描いた映画が観たい人等には映画明日に向かって撃て!をお勧め作品として挙げておこう。

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ポール・ニューマン,ロバート・レッドフォード,キャサリン・ロス
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ポール・ニューマン,ロバート・レッドフォード,キャサリン・ロス
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン


 監督はジョージ・ロイ・ヒル。アメリカン・ニューシネマの旗手的存在の監督。この人のお勧めは本作と同じくポール・ニューマンロバート・レッドフォードが競演したスティング、ジョン・アーヴィング原作の同名タイトルの映画化作品でロビン・ウィリアムズ主演のガープの世界がお勧めです

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映画 エリン・ブロコビッチ(2000) 全ての女性に勇気を与える映画です 

2015年06月23日 | 映画(あ行)
 バツ2で、3人の子供を抱える失業中のシングルマザー。そんなボロボロの女性が大活躍する痛快娯楽サクセスストーリーにして実話の映画化が今回紹介する映画エリン・ブロコビッチ。主演のジュリア・ロバーツが大スターとしての圧倒的なオーラーを振り撒き、あのプリティー・ウーマンがパワフル・レディに成長していることを実感できる映画だ。これならリチャード・ギアのような大金持ちの色男と一緒にならなくても、たった1人で3人の子供を養いながら社会に貢献できると思わせるのに充分だ。

 しかし、この映画で観ている者がずっと集中して観続けることになるのが、ジュリア・ロバーツの衣装と言うよりも胸の谷間。これが意外や意外でけっこうな巨乳。しかし、彼女ってこんなに胸がでかかったっけ!?そんな驚きを感じるだけでもお勧めしたい映画として紹介するのに値すると思うのだが、本当に素晴らしいのは多くの女性を勇気づけるストーリー。なんだか結婚することが人生の最終目的であるかのような女性が大多数のような気がするが、本作を観れば結婚なんかは人生の通過点の1つに過ぎないし、ましてや離婚なんて考え方によっては人生の新しいスタート、そんな前向きさを感じさせてくれるのがこの映画の醍醐味だ。

 タイトル名はジュリア・ロバーツが演じる実在の女性の名前。エリン・ブロコビッチって言う名前を聞いても多くの日本人にはピンとこないが、訴訟大好きなアメリカでは大企業から史上最高の和解金3億3千万ドルを分捕った女性として有名人。法律の勉強なんか殆んどしていないのに、なぜそんな大金を勝ち取ることができたのか!?簡単にストーリー紹介を。
 
 離婚歴2回、3人の子供を抱えるシングルマザーであるエリン・ブロコビッチ(ジュリア・ロバーツ)は何かと支払いの請求金で追われ、毎日の如く就職の面接試験を受けるが、その奇抜な衣装、下品な言葉を連発、そして大した経歴と言えば地方のミスコンに輝いたことぐらいしかなく、ことごとく不採用の日々を送っていた。ある日、面接の帰りに自動車事故を起こしてしまい負傷、弁護士のエドワード(アルバート・フィニー)に裁判の弁護を依頼するのだが、彼女の余計な一言で和解金をとり損ねてしまう。
 すっかり貯金も無くなったエリン・ブロコビッチ(ジュリア・ロバーツ)はエドワード(アルバート・フィニー)の事務所を訪れ、半ば強引に彼のアシスタントとして働くようになる。彼の事務所でファイルの整理をしていると、なんだか怪しいファイルを発見。彼女は自力で調査すると、そこには大企業による環境汚染のために苦しんでいる人々が居る実態を知ってしまう・・・

 人間にとって重要なことは決して学力の高さや、知識が豊富なことではない。本作のジュリア・ロバーツ演じるエリン・ブロコビッチを観ていればわかるが、むしろ知識が足りないことは時にチャレンジする勇気を与える。そして、彼女が誰よりも持っているものが、やる気と正義感。この2つが全面に出ているから、やたら上司に給料アップを求めるシーンを見ていても嫌味に見えない。
 被害に遭っている住民とエリン・ブロコビッチの関係が次第に近くなっていく様子は非常に巧みな設計に思えるし、家族の絆もバッチリ描かれているし、大企業の実態を描いている社会派的な側面も見逃せない。そして、頑張る女性って素晴らしいと思わせるストーリーが良い。本作を見るまで、女は顔が良ければ良いじゃん、なんて思っていたが行動力のある女性って素敵だし、美しい。
 アメリカンドリームに憧れている人、子育てが大変でやりたいことが出来ないと嘆いている女の人、離婚歴に対して何時までもクヨクヨしている女の人、観終わった後に爽快な気分を味わいたい人は映画エリン・ブロコビッチはお勧めだ

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ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント


 監督はオーシャンズ・シリーズのヒット作で有名なスティーブン・ソダーバーグ監督。個人的には非常に当たり外れの大きい監督だと思っていますが、デビュー作品のセックスと嘘とビデオテープ、フランツ・カフカの小説が好きな人限定で楽しめるのがKAFKA/迷宮の悪夢、アメリカとメキシコの両国を舞台に繰り広げられる麻薬戦争を描いたトラフィックがお勧めです。

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映画 いとこ同士(1959) リアリティに溢れています

2015年06月02日 | 映画(あ行)
 この世の中、真面目に努力すれば、きっと報われると思っている人が多いと思うし、俺もそのように信じているようにしている。しかし、そのように思っている人が今回紹介する映画いとこ同士を観れば、きっとショックを受けるだろう。俺みたいな馬鹿正直に生きる人間は、いざと言う時にひ弱な部分が出てしまうが、好い加減に生きる人間の図太さが非常に羨ましく感じてしまう今日この頃。フランスのヌーベルヴァーグを代表する映画として語られることが多い映画だが、現在にも通用する内容だ。

 堅物とプレイボーイ、性格が全く異なるいとこ同士において、非情なる運命に呆気にとられそうになるストーリーとは如何なるものか。
 田舎から大学へ通うためにパリへ出て来たシャルル(ジェラール・ブラン)は、従兄のポール(ジャン=クロード・ブリアリ )が暮らす豪勢なアパートに移り住む。真面目に部屋に籠って勉強しまくるシャルル(ジェラール・ブラン)と毎日友達をアパートに呼んで酒池肉林のパーティーを繰り広げるポール(ジャン=クロード・ブリアリ )の生活は正反対。
 ある日の事、シャルル(ジェラール・ブラン)は一目惚れしたフローランス(ジュリエット・メニエル)とデートの約束をするが、とんだ行き違いがあってフローランス(ジュリエット・メニエル)はポール(ジャン=クロード・ブリアリ )と一緒に彼のアパートでシャルル(ジェラール・ブラン)が帰ってくるまで待つ羽目になるが、その間にポール(ジャン=クロード・ブリアリ )とフローランス(ジュリエット・メニエル)の仲が恋愛関係に発展してしまう。
 せっかくの恋愛を滅多切りにされたシャルル(ジェラール・ブラン)は、さらに勉強に打ち込むのだが、隣の部屋ではポール(ジャン=クロード・ブリアリ )とフローランス(ジュリエット・メニエル)がいちゃついている日々が続く。
 そして、いよいよ試験の日がやって来た。全く勉強せずにパーティーばかりやっていたポール(ジャン=クロード・ブリアリ )は要領良くカンニングする等して合格。そして次の日にシャルル(ジェラール・ブラン)が試験を受けるのだが、なんと不合格になってしまう。落第してしまったシャルル(ジェラール・ブラン)は自暴自棄になりパリを彷徨い、そしてアパートへ戻り拳銃をポール(ジャン=クロード・ブリアリ )に向けるのだが・・・

 この、いとこ同士だが決して仲が悪いことはなく、むしろ仲が良いぐらいだ。見かけによらず、この2人の関係はなかなか熱いものがあるし、それはラストシーンにも表われる。さて、この2人だが田舎暮らしで何かと母親想いのシャルル(ジェラール・ブラン)と、ちょっと悪そうな人間と絡みながらも何不自由なく都会での生活を楽しんでいるポール(ジャン=クロード・ブリアリ )の生き方、価値観、モラルは正反対。俺なんかは当然の如くシャルル(ジェラール・ブラン)の方に同情してしまう。
 しかし、女は横取りされ、努力はまるで報われない。そして、運命という引き鉄までも自分に向かってくるように、まさに踏んだり蹴ったりの、やってられない結末。しかし、この映画を観終わった後に我々は気付く。やっぱり現実はコッチだよね~ということに。
 正直なところ、ひたすらノーテンキでハッピーな映画を好む人にはお勧めできないが、昔のフランス映画が好き、夢物語よりリアリティのある映画が観たい、ヌーヴェルバーグと聞いて心が踊る人、このブログを読んで本作に興味が湧いてきた人には映画いとこ同士はお勧めだ

いとこ同志 [DVD]
ジェラール・ブラン,ジャン=クロード・ブリアリ
IVC,Ltd.(VC)(D)


 監督はジャン=リュック・ゴタール、フランソワ・トリュフォー、ルイ・マル等と一斉にマンネリ化したフランス映画に革命を起こしたヌーヴェルバーグを代表するクロード・シャブロル。実はこの監督の作品は本作しか観たことがないので、逆にお勧めがあれば教えてください。

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映画 アモーレス・ペロス(2000) 犬好きにはお勧めです

2015年05月04日 | 映画(あ行)
 先日バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)でアカデミー賞、作品賞、監督を受賞するなど、今や名匠の地位を得た感があるメキシコ人監督のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ。なんとも長ったらしい名前だが、まだ若くて、才能に溢れた監督なだけに覚えておいて損はないだろう。
 さて、彼の監督デビュー作にして、非常に凝った構成が観る者をうならせる作品が今回紹介する映画アモーレス・ペロス。タイトルの意味はスペイン語で『犬のような愛』。タイトルから想像できるように犬好きにはぜひお勧めしたい映画だ。
 だいたい犬をテーマにした映画といえば、犬と飼い主の固い絆を描いた作品が多い。そのようなテーマは本作においても見られるが、他の動物(犬)映画よりも突出している点は多くの犬が登場し、しかも見ていて卒倒しそうなぐらい、たくさんの犬が死んでしまうこと。また、その犬の死に方がけっこう悲惨だったりする。一匹の犬が寿命で死ぬだけでも涙が出そうなぐらい感動するのだから、本作の感動度は凄いものがある?

 実は本作は3つのストーリーで構成されていて、時間軸が同時進行で進む。その3つのストーリーが交差するある出来事の前後を描くことによって、それぞれに登場する人間たちが過酷な運命に導かれ、それぞれのストーリーで犬が非常に重要な役割を果たす。それではできるだけ簡単に3つのストーリーを紹介しよう。

 2人の若者が車で暴走中。後部座席には血まみれで瀕死状態の犬を乗せている。後ろから追いかけてくる車からはピストルで撃ってくる。追いかけてくる車を振り切ったかと思われた瞬間に交差点で別の車に激突。その現場に居合わせた3人に迫る過酷な運命とは?

 貧民街で暮らすオクタヴィオ(ガエル・ガルシア・ベルナル)は、暴力的で怠惰な兄ラミロ(マルコ・ペレス)の嫁であるスサナ(バネッサ・バウチェ)を密かに愛している。スサナ(バウチェ)にはラミロ(ペレス)との間にまだ幼い息子が居り、今も妊娠している。オクタヴィオ(ベルナル)はスサナ(バウチェ)と新天地で新しい生活を始めるために、自分が飼っている犬を闘犬場に送り出し大儲けするが・・・。

 スペインからメキシコにやって来たバレリア(ゴヤ・トレド)はモデルとして大成功。しかも広告デザイナーであるダニエル(アルバロ・ゲレロ)からの不倫の愛を勝ち取り、新しいマンションで2人の生活が始まるはずだった。しかし、バレリヤ(トレド)は自動車事故に遭ってしまい、命は助かったものの自宅での療養生活を強いられる。
 しかし、その事故のせいでバレリヤ(トレド)は仕事の契約を打ち切られてしまい、ダニエル(ゲレロ)とも口喧嘩が絶えなくなってしまう。しかも脚の怪我が悪化してしまい・・・。

 かつては大学の教授であったチーヴォ(エミリオ・エチェヴァリア)だったが反政府活動にのめり込み過ぎて、今はすっかり殺し屋に落ちぶれてしまい、廃墟のような所でたくさんの犬に囲まれて暮らしている。彼には妻と娘のマル(ルルデス・エチェヴァリア)が居るのだが、家族を捨てて反政府活動に飛び込んだために、彼はマル(ルルデス・エチェヴァリア)と堂々と会うことは出来ず、しかも彼は死んでしまったことになっていた。
 そんなチーヴォ(エチェヴァリア)の元に殺しの依頼が入ってきて、彼は殺す相手の後を何日も追いかけるが、その過程で自動車事故の現場を見てしまい・・・。

 第1話のオクタヴィオ(ガエル・ガルシア・ベルナル)は絶望的な愛を求め過ぎて何もかも無くしてしまい、第2話のバレリア(ゴヤ・トレド)は類希なる美貌を持ち、栄光の絶頂を極めながらも、偽りの幸せは彼女を一気に転落させ、第3話のチーヴォ(エミリオ・エチェヴァリア)は理想の社会の実現のために本当に大切な物を無くしてしまう。
 彼等の行動は決して褒められないが、自然と沸き起こってくる自らの欲望、欲求、理想に従ったまでのことであり、訪れる過酷な運命は非情すぎるように思える。しかし、当たり前のことだが、人間はどれだけボロボロになっても人生は続いて行くということが、本作を観ればよくわかる。
 彼等の今後を考えると絶望的状況しか待っていないような気がするが、それでもほんの少しの希望が感じられることがせめてもの救い。人間はなぜ犬が好きなのか?それは決して犬から何かの見返りを求めているわけでは無い。そこには無償の愛が存在する。考えてみれば人間同士においても、親子関係、恋人関係等には無償の愛が横たわっている。だからこそ我々は絶望しそうになっても、希望を失わないで生きていけるのだ。
 観終わった後に余韻が欲しい人、犬が好きな人、ハッピーすぎる結末の映画に飽きた人には映画アモーレス・ペロスはお勧めしたい。そして犬を飼っている人が本作を観れば、きっと我が愛犬を抱きしめたくなるはずだ

アモーレス・ペロス スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]
ガエル・ガルシア・ベルナル,エミリオ・エチュバリア,ゴヤ・トレド,アルバロ・ゲレロ,バネッサ・バウチェ
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン


 監督は前述したようにメキシコの俊英アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ。彼のお勧めは父子の固い結束を描いたBIUTIFUL  ビューティフル、命の尊さを感じる21グラム、日本人なら観ておきたいバベルがお勧めです

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映画 エル・マリアッチ(1992) ロバート・ロドリゲス監督のデビュー作品です

2015年02月26日 | 映画(あ行)
 最近も『シン・シティ 復讐の女神』などでその鬼才ぶりを発揮しているロバート・ロドリゲス監督だが、彼の名を一躍有名にした作品がたったの7,000ドルで制作された監督デビュー作である今回紹介する映画エル・マリアッチ。大した予算がなくても面白い映画を撮ることができる見本のような作品だ。アクション、ギャグ、スピード感、ラテン系の綺麗なオネエちゃん、アホっぽさ等、娯楽映画の要素がふんだんに取り入れられているのが良いのだ。
 ストーリー展開は、たまたまフラフラ~とメキシコの小さな町にやって来ただけの主人公であるエル・マリアッチ(ギター弾きの歌手)が、人違いが原因でギャングが放つ殺し屋から次々に命を狙われて追いかけられてしまう内容。『何で俺が、命を狙われるの?』なんてキョトンとした表情をしながら、とにかく逃げまくる主人公のエル・マリアッチの運の悪さが笑える。
 しかし、運が悪いと言っても、追いかけてくる殺し屋達の頭の悪さのおかげで運良く助かったり、ギターを弾きながら歌を歌うだけが取り得の主人公のはずだが、逆にいざという時には殺し屋たちも顔負けの銃さばきを見せたり、驚くほど俊敏な動きを見せて殺し屋たちを血祭りにあげるような、テキトーな展開が非常に笑える斬新なアクション映画だ。

 ハリウッド映画のような超人的な人間が活躍して悪い奴を懲らしめてスカッとした気分になるような映画も良いが、時にはショボイ奴が活躍して結果的に悪い奴を懲らしめる映画も良いよね~、と思わせるストーリーとはいかなるものか。
 メキシコの小さな町が舞台。刑務所を運良く脱獄したアズール(レイノル・マーティネス)はかつての仲間であり、自分の金を横領した町を牛耳るギャングのモーリシオ(ピーター・マルカルド)が送り込んでくる暗殺者を逆に次々と殺していた。
 殆んど時を同じくして、ギターケースを抱えたマリアッチ(カルロス・ガラルドー)が、この町にたどり着く。チープなホテルで泊まろうとしていると、なぜか銃を持った奴等が自分の命を狙ってくる。町中を逃げまくるマリアッチ(カルロス・ガラルドー)は、女主人ドミノ(コンスエロ・ゴメス)が経営するバーで隠れさせてもらうのだが・・・

 それにしても、マリアッチ(カルロス・ガラルドー)がアズール(レイノル・マーティネス)と間違えられて命を狙われる理由が笑える。顔も全く似ていなければ体形も全く違うのに、なんで人間違いだけの理由で殺されそうになってしまうのか?それは、ここでネタ晴らしをするより映画を観てもらう方が良いだろう。
 そして更にこの映画の面白いところにアズール(レイノル・マーティネス)とモーリシオ(ピーター・マルカルド)の争いにおいて活躍する2人の部下達が笑わせる。こんな馬鹿な部下ばかりいるギャングの組織が本当にあったら、直ぐに壊滅するんじゃねぇ~の!?なんて思わせるほどのお粗末な部下達。しかも、親分に対して忠誠心が全く無いのだから尚更笑えるのだ。そしてアズール(レイノル・マーティネス)の持ち物にも注目だ。 

 最近はすっかり売れっ子監督になってマチェーテシン・シティのヒットシリーズでCG使いまくり、豪華キャスト使いまくりで、やたら無駄な大金をつぎ込んでいるイメージのあるロバート・ロドリゲス監督の映画だが、もう一度本作を撮った頃のハングリー精神を思い出せ!とアドバイスをしたくなる映画エル・マリアッチは、なかなかの快作でお勧めだ

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ソニー・ピクチャーズエンタテインメント


エル・マリアッチ(Blu-ray Disc)
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ソニー・ピクチャーズエンタテインメント


 監督のロバート・ロドリゲスは前述したヒットシリーズ以外にも、本作の続編に当たるデスペラード,レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラードの2作もお勧め。
 そして逃亡物とホラーの要素を組み合わせたジョージ・クルーニー主演のフロム・ダスク・ティルドーンもお勧めです。

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