アメリカ文学を代表する人物であり、ノーベル文学賞の受賞者でもあるジョン・スタインベックの同名小説の映画化作品が今回紹介する怒りの葡萄。文学作品の映画化作品としては風と共に去りぬと並ぶ名作だ。
貧富の格差がますますの拡がりを見せる中において、資本主義経済の限界が見えてきた現代社会。権力を握った者は金で何でも出来るとばかりに横暴になり、労働者はますます安い賃金で働かせられてしまい困窮の生活をたどる一方。そんな社会の不正を告発した映画が今回紹介する怒りの葡萄だ。1940年の非常に古いアメリカ映画であるが、世の中を支えているのはマネーゲームに勤しんでいる大金持ちではなく、汗水垂らして働いている労働者によって成り立っている、そんな普遍的なメッセージが感じられ、現在に生きる我々だからこそ大いに観る価値がある作品だ。
ストーリー展開は、最初から最後まで貧しい農民一家にひたすら不幸な出来事が次々に襲いかかってくる。それは大自然の災害であったり、大不況の波であったり、大規模な資本投入による農業における変革であったり、権力者の横暴であったり・・・。お~神よ、どうしてこんなにも、いたいけな貧しい農民一家に試練を与えるのか!
しかし、本作を観ていて感心するのは次々に災難に襲われても、一家がバラバラになっても決して挫けないところ。内容は絶望的なのに観ていてそれほど暗い印象は受けないし、むしろ社会の底辺で生きる労働者の逞しさ、そして小さいけれども僅かながらの希望すら感じることができるのが素晴らしい
さて、1930年代の不況真っ只中のアメリカの農民生活とは、如何なるものだったのか。
殺人罪で4年間服役中だったトム・ジョード(ヘンリー・フォンダ)は仮出獄でオクラホマの実家に帰ってきた。途中で出会った元宣教師のケーシー(ジョン・キャラダイン)を連れて帰ってみると吃驚砂嵐が酷いわ、実家には誰も居なくて、空き家状態。家の中に隠れていた老人のミューリーから、家族はジョン伯父さんの家に移って居ることを知らされる。
トム(フォンダ)とケーシー(キャラダイン)はジョン伯父さんの所へ行くと、そこには母親(ジェーン・ダーウェル)を始め、家族が居た。4年振りの再会を喜び合うのも束の間、厳しい現状をトム(フォンダ)は聞かされる。
先祖代々、農家としてこの土地に暮らしていたのだが、猛烈な砂嵐による不作、そして地主による土地の取り上げにより、長年住んでいたこの土地を手放さざるを得ないことをトム(フォンダ)は知らされる。しかし、一家は西の方にあるカリフォルニアで、農作物の収穫の仕事を募集していることを知り、ボロボロのトラックに多くの家財、そして家族とケーシー(キャラダイン)を乗せ、カリフォルニアへ向かう。
しかし、カリフォルニアまで延々2400キロを炎天下の中、ボロボロのトラックで走り続けるのだが、途中で祖父が死に、目的地到着寸前に祖母が死んでしまう。それでも何とか農場に到着するのだが、カリフォルニアの土地でも更なる苦難が待っていた・・・
せっかく豊かな自然が広がるカリフォルニアの農場を見渡し、希望に満ち溢れているように見せておいて、実はカリフォルニアに到着してからが試練の連続。仕事に就けない労働者で溢れかえり、しかも劣悪な環境で働かせられ、地主の思うままに賃金のカット。そんな権力の横暴に対してトム(フォンダ)が初めて見ることになる光景である労働スト、そして国営による農場の存在。
資本主義、自由主義社会の矛盾を、社会主義的な運動を見ることによってトム(フォンダ)が立ち上がる様子は、アメリカの社会、経済の体制を批判しており、社会派映画としての存在価値が充分に認められる。
そして、ハイライトのシーンでトム(フォンダ)が母親(ダーウェル)に語る台詞が感動的で心が震える。実は本作品を見るのは3、4回になるのだが、この台詞を聞くためだけに観ると言っても過言ではない。この台詞を聞くと、民衆の力って凄いっと誰もが思うはずだ。
そして、決してハッピーエンドでは無いが余韻を残す終わり方が個人的には大いに賛同できる。最初は13人?も乗っていたボロトラックに、最後はこれだけ!と思うと悲しくなってくるし、そしてこの後も更なる苦難が待ち受けているのかな?と考えたりするが、それでも僅かだけれど希望の灯がうっすらと見える。
金持ちになれないと絶望している人、将来に希望が持てない人、働くことが生きがいだと信じている人、この世の中は何かが狂っていると漠然にでも思っている人には怒りの葡萄はぜひお勧めしたいし、それ以外の人にも勿論自信を持ってお勧めしたい映画です
監督は映画史の残る巨人ジョン・フォード。西部劇の神様とも呼ばれているように駅馬車、荒野の決闘、捜索者など西部劇の分野で名作を多く遺しています。
しかし、個人的には本作怒りの葡萄のような西部劇から外れた作品において好きな作品が多い。ジョン・ウェイン主演でアイルランド系の魂を感じることができる前代未聞の殴り合いのシーンが見られる静かなる男、ヒューマニズム精神が全体的に漂っている我が谷は緑なりき、労働者の悲哀をユーモアを持って描くタバコ・ロード、ウェイスト・ポイントを舞台にしたアメリカ兵士に対する愛情を感じる長い灰色の線などがお勧め。
主演はハリウッドにおいて長らく一線級で活躍した名優ヘンリー・フォンダ。名作に多く出演し、お勧め作品も多数。正義と民主主義の凄さを感じる法廷映画十二人の怒れる男、単なる娯楽ではとどまらないリベラル的な描き方が印象的な西部劇ワーロック、シドニー・ルメット監督、核戦争の恐ろしさを描いた未知への飛行、ネタ晴らしは一切出来ないテキサスの五人の仲間などがお勧め。
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貧富の格差がますますの拡がりを見せる中において、資本主義経済の限界が見えてきた現代社会。権力を握った者は金で何でも出来るとばかりに横暴になり、労働者はますます安い賃金で働かせられてしまい困窮の生活をたどる一方。そんな社会の不正を告発した映画が今回紹介する怒りの葡萄だ。1940年の非常に古いアメリカ映画であるが、世の中を支えているのはマネーゲームに勤しんでいる大金持ちではなく、汗水垂らして働いている労働者によって成り立っている、そんな普遍的なメッセージが感じられ、現在に生きる我々だからこそ大いに観る価値がある作品だ。
ストーリー展開は、最初から最後まで貧しい農民一家にひたすら不幸な出来事が次々に襲いかかってくる。それは大自然の災害であったり、大不況の波であったり、大規模な資本投入による農業における変革であったり、権力者の横暴であったり・・・。お~神よ、どうしてこんなにも、いたいけな貧しい農民一家に試練を与えるのか!
しかし、本作を観ていて感心するのは次々に災難に襲われても、一家がバラバラになっても決して挫けないところ。内容は絶望的なのに観ていてそれほど暗い印象は受けないし、むしろ社会の底辺で生きる労働者の逞しさ、そして小さいけれども僅かながらの希望すら感じることができるのが素晴らしい
さて、1930年代の不況真っ只中のアメリカの農民生活とは、如何なるものだったのか。
殺人罪で4年間服役中だったトム・ジョード(ヘンリー・フォンダ)は仮出獄でオクラホマの実家に帰ってきた。途中で出会った元宣教師のケーシー(ジョン・キャラダイン)を連れて帰ってみると吃驚砂嵐が酷いわ、実家には誰も居なくて、空き家状態。家の中に隠れていた老人のミューリーから、家族はジョン伯父さんの家に移って居ることを知らされる。
トム(フォンダ)とケーシー(キャラダイン)はジョン伯父さんの所へ行くと、そこには母親(ジェーン・ダーウェル)を始め、家族が居た。4年振りの再会を喜び合うのも束の間、厳しい現状をトム(フォンダ)は聞かされる。
先祖代々、農家としてこの土地に暮らしていたのだが、猛烈な砂嵐による不作、そして地主による土地の取り上げにより、長年住んでいたこの土地を手放さざるを得ないことをトム(フォンダ)は知らされる。しかし、一家は西の方にあるカリフォルニアで、農作物の収穫の仕事を募集していることを知り、ボロボロのトラックに多くの家財、そして家族とケーシー(キャラダイン)を乗せ、カリフォルニアへ向かう。
しかし、カリフォルニアまで延々2400キロを炎天下の中、ボロボロのトラックで走り続けるのだが、途中で祖父が死に、目的地到着寸前に祖母が死んでしまう。それでも何とか農場に到着するのだが、カリフォルニアの土地でも更なる苦難が待っていた・・・
せっかく豊かな自然が広がるカリフォルニアの農場を見渡し、希望に満ち溢れているように見せておいて、実はカリフォルニアに到着してからが試練の連続。仕事に就けない労働者で溢れかえり、しかも劣悪な環境で働かせられ、地主の思うままに賃金のカット。そんな権力の横暴に対してトム(フォンダ)が初めて見ることになる光景である労働スト、そして国営による農場の存在。
資本主義、自由主義社会の矛盾を、社会主義的な運動を見ることによってトム(フォンダ)が立ち上がる様子は、アメリカの社会、経済の体制を批判しており、社会派映画としての存在価値が充分に認められる。
そして、ハイライトのシーンでトム(フォンダ)が母親(ダーウェル)に語る台詞が感動的で心が震える。実は本作品を見るのは3、4回になるのだが、この台詞を聞くためだけに観ると言っても過言ではない。この台詞を聞くと、民衆の力って凄いっと誰もが思うはずだ。
そして、決してハッピーエンドでは無いが余韻を残す終わり方が個人的には大いに賛同できる。最初は13人?も乗っていたボロトラックに、最後はこれだけ!と思うと悲しくなってくるし、そしてこの後も更なる苦難が待ち受けているのかな?と考えたりするが、それでも僅かだけれど希望の灯がうっすらと見える。
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怒りの葡萄 [DVD] | |
ヘンリー・フォンダ,ジェーン・ダーウェル,ジョン・キャラダイン,チャーリー・グレープウィン,ドリス・ボウドン | |
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン |
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監督は映画史の残る巨人ジョン・フォード。西部劇の神様とも呼ばれているように駅馬車、荒野の決闘、捜索者など西部劇の分野で名作を多く遺しています。
しかし、個人的には本作怒りの葡萄のような西部劇から外れた作品において好きな作品が多い。ジョン・ウェイン主演でアイルランド系の魂を感じることができる前代未聞の殴り合いのシーンが見られる静かなる男、ヒューマニズム精神が全体的に漂っている我が谷は緑なりき、労働者の悲哀をユーモアを持って描くタバコ・ロード、ウェイスト・ポイントを舞台にしたアメリカ兵士に対する愛情を感じる長い灰色の線などがお勧め。
主演はハリウッドにおいて長らく一線級で活躍した名優ヘンリー・フォンダ。名作に多く出演し、お勧め作品も多数。正義と民主主義の凄さを感じる法廷映画十二人の怒れる男、単なる娯楽ではとどまらないリベラル的な描き方が印象的な西部劇ワーロック、シドニー・ルメット監督、核戦争の恐ろしさを描いた未知への飛行、ネタ晴らしは一切出来ないテキサスの五人の仲間などがお勧め。
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途中で家族を亡くすなど過酷な状況でもがんばって
新天地を求めたのに、更に過酷な労働が待っていただけという現実は
どんなにつらかったか、想像もできません。
>それでも僅かだけれど希望の灯がうっすらと見える。
最初は本当にうっすら小さな灯かもしれないですが、
だんだんと大きくなっていくようにと願わずにはいられません。