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『デス・コレクターズ』ジャック・カーリイ

2013-08-24 | books
昔はサイコスリラー大好きでたくさん読んでたのに、最近読んでないなー、いや面白いのは出てないなー、などとたわけたことをぬかしていた私に、「百番目の男」で液体窒素と塩酸を浴びせた、ジャック・カーリイ。第2作がこれ。

冒頭、30年前に連続殺人犯が裁判の最中に乱入してきた女に射殺される様が描かれる。死ぬ間際にその男が残したのは「追え、輝かしいアートを」という言葉。そして、それから30年が経過した。前作と同じようにカーソン&ハリーのチームが登場。女が殺されたのだ。部屋には大量のキャンドルが燃えていた。遺体の目にもキャンドルが。現場に残った指紋は弁護士のものだと分かった。しかし彼は失踪していた。カーソンとハリーが足を突っ込んだのは、30年前に死んだ殺人犯マーズデン・ヘクスキャンプの遺物。ヘクスキャンプは反社会的なコミュニティを作っていた。さらにヘクスキャンプの描く絵は異様なのに、見る者を魅了した。彼の遺した絵が、現在マニアの間で高値で取引されていて…

ヘクスキャンプはチャールズ・マンソン(ブロンソンじゃないよ。実在の人物)を髣髴とさせる。



マンソンのドキュメントを見つけたので張り付けた。反社会的コミュニティを作って、映画監督ロマン・ポランスキーの妻で女優の、シャロン・テイトを殺害した。ポランスキーは「ローズマリーの赤ちゃん」とか「戦場のピアニスト」の監督。少女への淫行容疑でアメリカに戻ると捕まるのでアカデミー授賞式でも戻らない。(ロックアーティスト、マリリン・マンソンはマリリン・モンローという美とチャールズ・マンソンという悪を組み合わせた何とも言えない名前)

いやいやいや。巧妙に張られた伏線。全く先の読めない展開。サイコ・スリラー界のオベリスク「羊たちの沈黙」を超えた、と言ったら言い過ぎか。少なくとも肩を並べるぐらいのレベルの、大傑作だ。

前作よりさらに「フツー」の人には受け入れられない度が若干増しているけれど、私はグロイのはストーリー上必要ならば全然OK。グロイこと単体だと楽しめないけれど。本書は実は単にグロテスクな小説じゃない。

サイコ・スリラーの要素だけじゃなく、ストーリー・テリングの力に満ち満ちているし、さらに今回は好物の「絵画」までおかずになっている。(お代わり下さい。)エンターテイメント小説のど真ん中。ラスト近くになって、張られた伏線がすーーっと浮かび上がって来た時には、鳥肌が立ちすぎて鶏肉になったかと思った。

なぜこんな殺人事件を起こしたかというホワイダニットに特化したミステリとしても非常に高いレベルだった。いやほんと面白かった。真のエンタメ小説好きなら楽しめない人はいないだろう。

今日の一曲はこれしかない。




好きだと言うといつも不思議な顔をされる、Mariyn MansonのIrresponsible Hate Anthem

では、また。

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