「ファミリーツリー」小川糸 ポプラ社 2009年(書き下ろし)
映画にもなる「食堂かたつむり」と「喋々喃々」に続く第三作 舞台は安曇野 菊さんとスバルおじさんが営む恋路旅館に住む父母姉の蔦子、リュウこと僕 毎年夏になると東京から泊まりに来る不思議な女の子リリー リリーと僕、見つけた子犬 中学生になり高校生になりそして大学生へ そう簡単には行かない男の子の青春と恋愛とそして自然を瑞々しい文章で描く。
いやいやいや。まいった。実はそんなにストーリーに入り込めないなと思って読んでいたのだ。何がメインストリームの底にあるかつかめないというか。しかしそれは私がこの本を読んでいる頃に抱えていた内面的(?)な問題のせいであって本のせいじゃない。
もろもろあって、この本の終盤、菊さんが80歳を過ぎて初めて靖国神社で桜を見たいと上京することになる。それ以降の展開が私は大好きだ。素朴なばあちゃん菊さんの言動には端倪すべからざる所があるのだが、この辺りから急に一行一行の間が詰まってきたように感じた(そんなわけないけど。)この267頁からラスト330頁までの間に作者小川糸の思いがぎゅっと凝縮されている。言わば、それまではこの見せ場へのプレリュードだったのではなかろうか。すごくいい。
とか言いながら、これはかなり極端な見方なので、最初から最後まで同じテンションで読むのが普通で正常なんだろうとも思う。
「わかりました」
僕はそう投げつけるように言って立ち上がった。世界の糊しろと糊しろがくっついて、少しずつ閉じていくみたいに息苦しかった。(144頁より引用)
僕はそう投げつけるように言って立ち上がった。世界の糊しろと糊しろがくっついて、少しずつ閉じていくみたいに息苦しかった。(144頁より引用)
こんな文章もステキだと思う。(ステキなどという言葉を使っている私はステキじゃないけど)
「食堂かたつむり」では若い女子、「喋々喃々」ではもうちょい若くない女子、「ファミリーツリー」では若い男子が主人公である。次は若くない男子を期待したい。また、小川糸は新作が出たら必ずチェックする作家であり駄作が2本続かない限り読み続けるであろう作家リストに入れた。
「食堂かたつむり」
「喋々喃々」
小川糸「喋々喃々」を読んだ後、村山由佳「ダブル・ファンタジー」を読むと
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