頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

アカデミー賞と直木賞にケンカを売る。

2007-02-25 | film, drama and TV
さーて、たまには大きなモノにケンカ売ってみますか。
(コメントレス遅れてますが後で返します。しばしご容赦を)


目次:
1.アカデミー賞
2.直木賞
3.共通点と結論



1.【アカデミー賞】

まずはハリウッドの歴史から。

東海岸で映画の興行していたのはユダヤ系アメリカ人たち。しかし、エジソン・トラストが器材の使用許可をしないとか、もめごとが多く、困っていた。

ちょうどそこに、LAにハリウッドという土地を開発したんだけどこっちに来ないというお誘いがあり・・・西海岸ならやりやすいだろうと・・・

→どーんとハリウッドにやってきた。そこでスタジオを作って、映画製作して大儲け。

映画の都ハリウッドと言うが、ハリウッドという街に映画屋がやって来たって訳だ。
めでたしめでたし・・・とはいかない。


メジャーの映画スタジオ(映画製作会社とは本来意味が違う)はすべてユダヤ系ばかりが所有してた。大儲けをしたはいいが、社会的に認めてもらえない。人々から尊敬を受けない。それでどうしたかと言えば

→ 賞だ!

自分たちが作った映画に、自分たちで賞を与えるというすばらしいシステム!

自分たちの 自分たちによる 自分たちのための ご褒美

アカデミー賞がそんな風に始まったということを知ると、少し斜めから見ざるを得ない。

アカデミー賞への批判は過去に多くあったのでここでは繰り返さない。メディア・コングロマリットが生む弊害など新しい問題もあるのだが、下に別の話もあるので、今回は思いきって割愛させていただく。しかし不純な動機から始まったものが何を生み出すのだろう?(以下アカデミー賞については3につづく)


2.【直木賞】

宮部みゆきの「火車」が直木賞を取れなかったときに、腰がくだけた。

俺の記憶では、選考委員の某大物作家がコメントで「○○が最後まで出て来なかったからそれで落とした」

il||li _| ̄|○ il||li  そこに意味があるんだろうが・・・

で、調べてみたら、選考委員の藤沢周平、井上ひさしは高い評価をしていた。しかし渡辺淳一のはヒドイ。五木寛之に至ってはこの作品にコメントがない・・・

火車が受賞しなかったことで、当時評論家たちからの非難が多かったのは言うまでもない。また、ミステリーが直木賞を当然のように取る時代ではまだなかったのかも知れない。その時に受賞した某作家、悪くはないんだが、その後の活躍ぶりを比較すれば、宮部さんに大きく差をつけられてしまった・・・


さて、

直木賞 = 発端は新人賞だったのに、いつのまにか中堅作家のための賞になっていた。大物作家でもなく、新人でもない、中途半端な不可思議な賞。

宮部女史を例に挙げると、後に、

「理由」で直木賞を受賞した。

しかし、書店で直木賞受賞作だからと買ってしまった人にはちょっと不幸だったのではないだろうか。

宮部ワールドは多岐に渡るが、「理由」はかなり読みにくく、最初に読む宮部作品としてはふさわしくないと思う。だから、他にせっかく山のように面白宮部ワールドがあるのに、一冊だけ読んで(たぶん途中で投げ出して)、この作家はもう読みたくないと思われてしまう。直木賞が犯した罪だと言ったら言いすぎであろうか?


なぜこんなことになるかと言うと、

直木賞 = 功労賞的側面が強いから。


それまで宮部さん頑張ったから、じゃこのタイミングであげよう。

もらう方は直木賞作家というタイトルがもらえるのだからまだいい。

不幸なのは読者

業界内功労を、一般読者に広く知らしめる意味がない。

同じような例は枚挙にいとまがないが、大沢有昌が「新宿鮫 無限人形」で直木賞受賞したのも同様であると思う。自分が知る限り新宿鮫シリーズでシリーズ4作目の「無限人形」が最高到達点であると評した者は寡聞にして知らない。第1作、あるいは第2作の「毒猿」の段階で受賞に充分ふさわしい地点に到達したと自分は思ったが。また最初から読んでない読者はいきなりシリーズ4作目が直木賞だとしたら、一体どの作品から読めばいいか困惑するのではないだろうか?ドクター伊良部シリーズの2作目「空中ブランコ」で受賞した奥田英朗も同様。東野圭吾の作品を多く読んでいる人なら「容疑者Xの献身」が功労賞的に与えられたという感想を持ったのではかなかろうか?過去にもっと賞にふさわしい東野作品がいくらでもあったはずである。


もう一つは、選考委員は全員小説家。小説家がいい作品を選ぶにふさわしいだろうか?

小説を書くプロ = 小説を読むプロではない。

そのために本読みのプロ、評論家や書評家という職業の人たちがいるではないか。

功労賞的側面と選考委員の問題があるから、過去の受賞作のある一部は名作、また一部は凡作と玉石混交になっている。


さらには、主催しているのがある出版社であるので、その出版社が出した本が受賞しやすい傾向にあると言う者もいるが、これについては自分で検証していないのでなんとも言えない。

個人的オススメは、もし直木賞作家の作品に興味があるのなら、受賞前に書いた作品を先に読んでみることである。それでどうして「功労」に報いることになったか分かるから。


3.【共通点と結論】

1であえて書かなかったが、2と同様功労賞的側面は同じように強い。また投票をするアカデミーのメンバーに映画を評する資質があるのかについては同様に大きな疑問がある。しかし、疑問の段階を超えないのは、メンバーが非公開であるから資質が「ない」と言いきることもできない。

さて、共通するのは

・功労賞的である
・選考する者の資質に疑問
・だから、年間の最優秀と果たして言えるか?


だからどちらの賞も受賞作だと言う「それだけの理由では」、ぜひ見よう、読もうという気にはなれない。


※しかし、アカデミー賞受賞作品がくだらないとはどこにも書いてない。直木賞受賞作がくだらないとも書いてない。ハリウッドスターが一同に会するお祭り的側面は否定していない。



クダラナイのはその発端やシステムにある。

さて最後に結論を


自分の価値観を他人の価値観と混同させない方がいい。
誰かが決めた「いいモノ」と自分の「いいモノ」が一致することなどめったにない。
ましてや、自分の価値観を多数に合わせることもない。





※以下余談:


自分の目で確かめるのが一番。しかしここはブログ。インターネットと言う名のバーチャルな空間なので、

小説でも映画でもあるいは他の作品でもブログを参考にするのなら、

・そのブロガーが薦めた作品に自分で触れてみて、同感だったのか?
・あるいは自分が既に触れた作品を自分では決して表現できない、心の中に入り込んで来るような言葉で評してくれているか?

もしそんなブログに出会えれば、そのブログが一つ、自分の参考になるであろう。それは、音楽でもドラマでも同じ。俺のような戯言を放つだけのブログでも同じことが言えるかも知れない。

これは価値観を合わせているのではなく、価値観を共有できる者の発見。しかし、自分がよくないと思っているモノを褒めてるブロガーがいたとすれば、すぐに読むのをやめるのではなく、どのように説明しているのかをよく読んでみよう。自分では見つけられないことがあったのかも知れない。自分とは違う考えにも耳を傾けてみよう。


異論を受け入れることで もしかすると 自分が成長できるのかも知れない。


以上で戯言を終わる。





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追記:
アカデミーの作品賞が「ディパーテッド」に与えられた。
リメイク作品が作品賞にノミネートされていることに疑問を抱いていたが、もしこの作品に作品賞を与えるなら、オリジナルの「インファナル・アフェアー」にそれなりのリスペクトをすべきだと思う。


コメント (29)    この記事についてブログを書く
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29 コメント

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太字のところに・・・。 (かえる)
2007-02-25 11:16:59
アメリカだな・・・と感じました。

オイラ、自分の事すら信じられない(笑)。
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昔から天邪鬼で・・・ (saera)
2007-02-25 13:43:43
映画にしろ文学にしろ「○○賞受賞作!!」「△△賞ノミネート!!」等々の謳い文句には少しも引きずられずに(むしろ背を向けて?)観る映画、読む本を選んできたような気がします。その結果、ベストセラー小説を読んでない、みーんなが知ってる作品を知らないという「変わり者」になってしまったような気がしますが、世間の評判はちょっと置いておいて、自分の感性の惹かれるままに自分が観たいものを観、読みたいものを読む、というのが一番なんじゃないかなぁと思います。と言いつつも、一番読むのが新聞の書評欄だったりするのですが・・・(苦笑)あ、ふる様のレビューも参考にしてますもちろん
返信する
そうなんですか (あお空)
2007-02-25 16:36:32
 直木賞は功労賞だったんですか。なるほどねー。

 「火車」はホントすごいと思いましたね。「理由」はまだ読んでません。いずれ読むでしょう。

 新宿鮫は一作目か二作目か忘れましたが、かなり面白かった記憶があります。

 さて、それで「容疑者Ⅹ」なのですが、評価が高くて帯にもいいことが書いてあって、楽しみにして読んだんですが、正直言って肩すかしな感じでした。

 本当にみんな、これを素晴らしいミステリーだと言ってるのか? と信じられませんでした。これが東野を読む初めてだったので、これで評価されてる作家ならこれ以上読む必要なし!とまで思いました。

 ふるさんの言うように、こんなことになっちゃうんですねー。

 この記事には後でTB送ります。
返信する
どうも! (ジグソー)
2007-02-26 02:49:18
ほぉ~いい言葉が多いですね。
特に青い文字からラストまではかなりいいです!
僕も【受賞≠自分にとっての名作】だと思います。

ブログは同じ趣味の人が見付けやすくて、なおかつ自分と同じ感想を持ってる人も結構いたりするんですよね。
そしてふるさんの言うように例えその人が自分と意見がわかれたら「どこがどう自分と違うんだろ?」って興味が湧きます。
返信する
ど~も~ (ふるちん)
2007-02-26 12:32:23
★かえるさん、

アメリカとは、アメリカの価値観のこと?
アメリカの「都合」は押し付けられてるかも知れないけれど、「価値観」を押し付けられてるかどうかは、よく分からないけど。意味あってる?

★saeraさん、

私のレビューが参考になるか、はなはだ疑問ではありますが(苦笑)
多くの人が「現在」読んでいる=いい本 とは決して言えないので、自分の感性のおもむくまま読むというのは極めて清く美しいと思います(笑)
また、評価というのも一過性のものなので、何十年あるいは百年と言う年月が経たないと、確固たるものにならないの「かも」知れません。

★あお空さん、

随分本読んでおられますね。
直木賞=功労賞ではなく、功労賞的側面が強いと書いているはずです。全ての作品が功労賞というわけではないと思います。デビュー作ではないにしても新人の登竜門江戸川乱歩賞と直木賞のダブル受賞を藤原伊織の「テロリストのパラソル」が果たしてますから。

記事と全く無関係なTB3回連続。スパムですか?(苦笑)

★ジグソーさん、

映画ブロガーさんは全員スルーかと思ったのですが、コメントありがとうございます。
自分と似た感性を持つ人だと「違うときに」興味がわく。
自分とは異質の感性を持つ人だと「同じときに」興味がわく。
という面白い現象があります。

>【受賞≠自分にとっての名作】

名言ありがとうございます。
返信する
詫び状 (あお空)
2007-02-26 17:53:35
 コトバのブログを標榜しながらの、単純な言葉の使いよう失礼しました。功労賞的側面、わたしなりに理解していたつもりです。底が浅いのはわたしの責に帰することですので平にご容赦を。

 いやー、TB3回も飛んでましたか?

 >・そのブロガーが薦めた作品に自分で触れてみて、同感だったのか?

 という一文のみに引っかかったTBだったのです。以前のエントリとの合わせ技一本ということでして。わかりにくくてタバコです。いえ、すいません。

 大変ご迷惑をおかけしました。しかし、どうして3回も飛んじゃったんだろう?

 愛かな…
返信する
誤解があるようです。 (ふるちん)
2007-02-26 18:36:03
★あお空さん、

「側面」うんぬんは重要なことではないので、面を上げてください(笑)

TB3回とは
「Amazonのバナー」「ブログってなに」のTB二つ。私の記事との関連性が全く見出せませんでした(苦笑)

上記2回については、コメントでそれをオブラートに包んで書きました。

そして今回のTB。

>>・そのブロガーが薦めた作品に自分で触れてみて、同感だったのか?

>という一文のみに引っかかったTBだったのです。以前のエントリとの合わせ技一本ということでして。

そう明記していただければ分かりますが(苦笑)

>愛かな…

そうそう。こんな風に苦言を書けるのも、長年培った愛からですよ。
自分がTB送るときには気をつけないと、と気づかせてくれたという意味でもあお空さんに感謝(イヤミじゃないですよ)
今後ともよろしくお願い致します。
返信する
 (kazupon)
2007-02-26 20:11:57
ふるさんコメントどうもです!
いつも
アカデミーに選ばれる映画ってそんなに好きじゃ
ないのが多く、好きな映画=名作とは限らないなぁって思ってます!でもいつも賞そのもの
よりあの異次元のような
授賞式を観るのを楽しんでおります。
アカデミー「ディパーテッド」は驚きでしたが脚色賞
取ったときに現地のアナウンサーが「日本の映画を
脚色」みたいに言ってたんですよ(苦笑)
でこの映画で受賞した人の誰も「オリジナルの
インファナルアフェアが素晴らしい作品で・・」
みたいなスピーチを言わなかったのがちょい残念
でした。
直木賞は選考委員が阿刀田高・五木寛之・井上ひさし・北方謙三・林真理子・平岩弓枝・宮城谷昌光
そして「愛ルケ」の渡辺淳一
先生なのであんまり興味なかったりします(笑)
アカデミー予想の記事TBさせて貰いますね!
返信する
Unknown (へー太)
2007-02-26 20:30:34
おおー、ふるさん、カッコいい!特に余談あたりとか。

日本人は特に「権威」と「海外の評価」ってやつに弱いですから、アカデミー賞をことさらにありがたがる人は多いでしょうね。

>リメイク作品が作品賞にノミネートされていることに疑問を抱いていたが、もしこの作品に作品賞を与えるなら、オリジナルの「インファナル・アフェー」にそれなりのリスペクトをすべきだと思う。

というのはホントにそう思いますねえ。

作品賞受賞はやはり違和感がありますし、受賞の様子等を聞くと敬意が足りないように感じました。
返信する
Unknown (りお)
2007-02-26 20:51:27
>自分たちの 自分たちによる 自分たちのための ご褒美

そうそう、だからアメリカ人以外がそんなにありがたがる必要はないのよね。
日本は、日本独自の賞をもっと盛り上げてありがたがればいいんだろうと思うけど、
いかんせん、日本アカデミー賞自体がちょっと…って感じだからなあ…

「火車」で最後まで出てこなかった○○って彼女のこと?
もしそうなら、的はずれなコメントだなあ。
あれは、出てこないからいいんだと思うんだけど。

直木賞が功労賞的な側面があるというのは、同意です。
一応目安になるので読んでみるけれど、読んだ後に
「えーこれが賞を獲ったの?」って感じになることも多いよね…
返信する

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