飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

ロシアがキルギスのバキエフ政権打倒をそそのかした理由!

2010年04月22日 10時48分03秒 | Weblog
 中央アジアの小国キルギスのバキエフ政権が崩壊してから2週間経過し、ようやく政権打倒の真相が明るみに出てきた。政権崩壊以前からロシア政府の影がちらつき、早くからロシアの積極的な関与がうわさされていたが、その裏にはバキエフ大統領への激しい恨み・つらみがあったというのだ。

 ロシアの英字紙モスコー・タイムズによると、ロシア政府はバキエフ大統領に対し、強い恨みを抱いていた。なぜかというと、バキエフ大統領が昨年、メドベージェフ大統領に対し、米軍に貸与しているマナス空軍基地を閉鎖し、集団安保条約のための軍事訓練センターを設置すると約束しておきながら、それを守らなかったからだという。

 さらに、ロシア側が怒っているのは、ロシアから受け取った何億ドルもの資金をバキエフ氏と側近が横領し、キルギスで展開していたロシア企業の資産を押さえるために使ったからだという。このため、クレムリンは今回の政変の何ヶ月も前からキルギスの野党勢力と接触し、バキエフ退陣工作を秘密裏に支援していた。
  
 クレムリンとしては、バキエフ政権に対し徐々に圧力を加え、議会での抗議行動を強めてバキエフ大統領を退陣に追い込もうと考えていた。ところが、野党勢力は唐突に主要都市での街頭抗議行動を実施したため、クレムリンの思惑より早く政権が崩壊してしまったというわけだ。ロシア側の深謀遠慮が、現実の動きに押しつぶされてしまったというのが真相らしい。

 こうしたドタバタ状態で臨時政府を設立し、ロシア側と親しいローザ・オトゥンバエワ元外相を首相に押し立てたが、野党勢力をまとめきれず、全土掌握も進んでいないというのが現実だ。さらに、バキエフ氏に大統領辞任と交換に外国への出国を認めたが、ベラルーシの首都ミンスクに着いたバキエフ氏は依然、大統領を辞任しないと言い張っている。踏んだりけったりというわけだ。

 ロシアは西側の臨時政府に対する対応も気になるところだ。臨時政府は、米軍が駐留しているマナス空軍基地の貸与期間の1年延長を決めたが、米国とすれば中央アジアへの影響力が低下することは避けられず、困惑している状況だろう。欧州でも様子見状態が続いていて、臨時政府承認が遅れているというのが実情だ。

 ロシアとしても、いま欧米と事を構えるのは得策ではない。米国とは新核軍縮条約に調印したばかりで、肝心な議会の批准が残っている。中央アジアの大国であるウズベキスタンやカザフスタンの対応もはっきりしない。ロシアも飛んだ「火中の栗」を拾ったものだ。







 
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