飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

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ガルージン駐日ロシア大使が日露関係について講演!

2018年06月30日 16時56分11秒 | Weblog

  (講演後、プレセントを受けるガルージン大使)

ロシアのミハイル・ガルージン駐日大使は6月29日、東京・六本木の国際文化会館で、日露関係と日露外交の行方について講演した。大使はロシア外務省切っての知日派で、講演・質疑応答とも日本語で行い、北方領土問題に対する日露間の認識の違いなど、いくつかの問題点が浮き彫りになった。

ガルージン大使は、 01年から08年まで駐日公使を務め、さらに日本担当の外務省第3アジア局長を歴任した対日専門家だが、北方領土問題などでは強硬派と見られている。

大使は開口一番、「私は親日露友好家といってもいいと思う」と述べ、日露友好を目指して行動する考えを示した。
まず国際関係全般について「紛争が発生しやすい状況になっていて、心配感を抱かせる時代に入っている」と指摘した。特に、世界が多極化の傾向を強めている中で、米国中心の一極主義的な考え方が強まり、西側諸国のルール違反の行為が目立ってきていると警告した。

その一方、日露関係については「内政不干渉や国家の対話の原則がきちんと守られ、G7の中でも日露関係は良好な状態にある」と持ち上げた。とりわけ、プーチン大統領と安倍首相との首脳会談が21回に上るなど、首脳外交が順調に進められていると指摘した。

懸案の平和条約締結問題、つまり北方領土問題についても、四島の共同経済活動、ビザなし交流などで両国の合意が進んでいるとし、「過去から引き続いた大変敏感な問題解決のための条件、環境が作られると期待している」と述べた。

ガルージン大使の講演について主催団体の一つ、安全保障問題研究会の袴田茂樹会長がコメントした。最初に「日露間のパイプが細くなっている点に危機感を持っている。政府で検討している計画の多くが名目に終わっている」と警鐘を鳴らした。また、ロシア側が最近、北方領土問題で、「戦争の結果、北方領土はソ連(ロシア)領になり、それが受け継がれてきているので、返還要求は受け入れられない」などと発言している問題を取り上げ「歴史的にみても、おかしい」などと反論した。これに対し、大使は「4島がソ連に引き渡されたのは戦争の結果、ということはずっと前から言っている。その一方、プーチン大統領は最近の会見でも『日露双方が歩み寄って妥協的合意に到達する必要がある』と発言している」と述べた。

この後、会場から北方領土問題やロシアの軍事費などについて多くの質問が出された。外務省時代、ロシアとの領土交渉を何度も経験している東郷和彦・元駐オランダ大使は「プーチン大統領の時代に領土問題が解決できなければ、ロシアにとってもマイナスではないか」と質した。ガルージン大使は「領土問題の未解決は不健全だ。どちらが損か得かの問題ではない。仲良く進めていきたい」と話し合い解決に期待感を示した。

講演会では大使の講演が約1時間、質疑が約1時間と質疑応答にかなり時間が割かれたが、論点が多く、日本側の参加者が納得するようなところまでは進まなかった。だが、大使はこれからもこうした機会を持つことに同意しており、対話を重ねることで日露両国民の理解が進むことが期待される。今回主催した安保研、ユーラシア21研究所、後援した日本ロシア協会、日ロ交流協会、日本対外文化協会にご検討をお願いしたい。(この項終わり)