飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

メドベージェフ露首相、今秋までに退陣か?

2013年05月25日 23時52分04秒 | Weblog
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  ロシアのプーチン大統領がメドベージェフ首相に対し、矢継ぎ早に政府の活動全般を活発化するよう指示している。首相の腹心だったスルコフ副首相の解任後も事態が改善されないため、メドベージェフ内閣総辞職の時期が検討され始めたとの見方が強まっている。

  23日付けの有力経済紙コメルサント(電子版)は、プーチン大統領から首相への指示が再び出されたことを伝えるとともに、「これは内閣総辞職の時期が検討され始めたと同じことだ」という政治評論家のコメントをつけた記事を流した。この背景には、大統領の首相への不信感が高まっていることがあげられる。

  大統領は3期目の就任から1年経った8日、就任時に出した政府の活動計画に関する大統領令が実行されていないと批判し、スルコフ副首相兼内閣官房長官を解任した。しかし、その後も命令が実行されていないとして再度、命令を実行するよう指示を出したのだ。

  この再指示について政治評論家のクイネフ氏は「内閣総辞職の時期が検討され始めたと同じことで、メドベージェフ・グループが弱体化したことを示している」と分析している。また、メルズリキン元内閣官房長官は「お決まりの首相を落としめる言動である」と指摘している。

  メドベージェフ氏は昨年5月、プーチン氏が大統領に就任すると、大統領から首相に交代し、さらに与党「統一ロシア」の党首も兼任した。だが、経済状況がなかなか好転しないことなどが重なって「首相の仕事は大統領の仕事よりも大変だ」と嘆いていた。

  こうした状況を反映して、メドベージェフ首相の支持率が徐々に下がってきた。昨年5月の世論調査では、首相を支持している人が64%だったのに、現在は53%に9ポイントダウン。逆に不支持は1年間に35%から46%に11ポイントアップしている。

  一方、民主派陣営でも、メドベージェフ首相のリベラルなイメージへの期待があった。だが、与党の党首に就任する際、首相自ら保守主義者を宣言、プーチン陣営にとどまったことから期待が急速にしぼんだことも挙げられる。

  00年にエリツィン政権を引き継いだプーチン大統領は、エリツィン時代に任命されたカシヤノフ首相を約4年間使い続けた。それだけプーチン氏には我慢強い面があるが、当のカシヤノフ氏も「メドベージェフ氏は秋までには解任され、クドリン元財務相に代わっているだろう」と予測している。大学の先輩後輩の関係も、そろそろ我慢の限界かもしれない。(この項おわり)




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露検察庁、世論調査機関レバダ・センターに「スパイ活動」を警告!

2013年05月21日 11時06分56秒 | Weblog

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プーチン政権は今、非政府組織(NGO)の規制強化を進めているが、世論調査機関レバダ・センターが規制対象とされ、検察庁から「外国のエージェント」として登録するよう警告されていることが分かった。この機関はロシアの三大世論調査機関の一つだが、政権側から「政治的だ」としてマークされていた。

21日付けのコメルサント紙(電子版)によると、ロシア検察庁がレバダ・センターを「外国のエージェント」とみなしている理由として①外国の機関から様々な調査の注文を受けている②米国のソロス基金などから巨額の補助金を受けている③世論調査の結果を公表する際、職員に個人的な考えを述べることを容認し、世論を操作している、と指摘している。

検察庁は以上の理由により、レバダ・センターが啓蒙的な目的を目指しているだけでなく、政治的行為の実現を目指していると判断している。このため同センターが昨年11月から施行されているNGO規制法の「外国のエージェント」に該当するとして、直ちに登録するよう警告している。

この法律は、欧米の資金供与を受けて民主化や人権擁護に携わる非政府組織を取り締まるため、3期目のプーチン政権が法案化したもので、反プーチン勢力を封じ込めるのが狙いといえる。登録をしていない団体に対しては最高50万ルーブル(約150万円)の罰金、悪質なケースには2年間の禁錮が科される。

検察当局は今年2月からNGOに対する抜き打ち検査を実施しており、すでに欧米系の人権団体「アムネスティ・インタナショナル」支部など、数百団体を捜索して書類の提出や団体の登録を要求している。

三大世論調査機関のうち、レバダ・センターが槍玉に上がった理由について評論家は「政権側がいやがるテーマを取り上げて調査しているため、政権側に対し悪意があると受け止められているのではないか」とみている。その具体例として昨年、プーチン大統領が背中の痛みを訴えた問題で、同センターだけがこの問題を取り上げ、世論を調査したことを指摘している。

日本のメディア各社がレバダ・センターの世論調査結果をしばしば転載したり、分析結果を取材したりしているのも、他の2機関に比べて中立的と評価しているためである。とくに、政権側に都合の悪いようなテーマでも積極的に取り上げ、世論の動きをいち早く探ろうとしている姿勢に好感が持たれている。こうした団体まで「外国のスパイ」呼ばわりするのは、やはり“やりすぎ”という他ない。(この項終わり)

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ロシア紙記者殺害を依頼した企業家が逮捕される!

2013年05月13日 12時39分53秒 | Weblog
 
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 2000年5月、ロシアのノバヤ・ガゼータ紙記者、イーゴリ・ドムニコフさん(当時42歳)が犯罪組織に殺害された事件で、襲撃を依頼した企業家が8日、警察に逮捕された。ジャーナリスト殺害事件で依頼主が逮捕されるケースは極めて異例だ。

 13日付けのコメルサント紙(電子版)によると、この企業主はモスクワ在住のパーベル・ソポト容疑者(53)。委託殺人を専門とする犯罪組織「タギリヤノフスキー」に対し、ドムニコフ記者への計画的襲撃を依頼した疑いがかけられている。

 事件が起きたのは00年5月12日夕方で、同組織の複数のメンバーが新聞社から帰宅する記者を追跡し、モスクワ南東部の自宅アパート前でハンマーのようなもので頭を何度も殴打した。近所の人が血だらけで倒れている記者を発見、病院に運んだが、意識不明のまま2ヶ月後に死亡した。

 警察が捜査した結果、「タギリヤノフスキー」組織の犯行と分かり、5人を殺人容疑で逮捕した。事件当時、この組織はモスクワ市を中心に勢力を拡大しており、とくにリペツカヤ地域の企業に浸透していた。ドムニコフ記者はビジネスと汚職が専門で、この地域の社会的状況について批判的な記事を何度か新聞に掲載していた。

 このため警察は、記者の取材をやめさせようと何者かがこの組織に記者殺害を依頼したと見て捜査したが、逮捕されたメンバーらは口を割らなかった。その後、この組織はタタルスタン共和国警察に徹底的にマークされ、壊滅状態に陥った。この際、メンバーが記者殺害を認めたが、依頼主の氏名はガンとして明かさなかった。このため07年、裁判所は依頼主不明のまま、5人に懲役18年から終身刑の判決を言い渡した。

 その後、検察庁所属の捜査委員会が捜査を続け、ソポト容疑者を割り出し、裁判所で犯罪組織の責任者と対決させるなどして容疑者を依頼主と断定した。容疑者は否認しているが、裁判所は裁判にかけるための刑事手続きを進めている。

 ドムニコフ記者が勤務していたノバヤ・ガゼータ紙は、調査報道を掲げて取材・報道し、政権側と何度も対立している。この結果、チェチェン紛争でのロシア軍の不当な対応などを批判し続けたアンナ・ポリトコフスカヤ記者をはじめ、計5人が犠牲になっている。この中で、殺害の依頼主まで判明したのは今回が初めてとみられる。

 今回の依頼主逮捕で今後、犯罪組織による委託殺人事件の真相解明が進むことを期待している。プーチン政権も昨年から汚職・腐敗根絶を重要課題に掲げており、法の支配が徹底すれば犯罪が減り、政権に対する国民の信頼も回復に向かうことは間違いない。(この項終わり)






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反プーチン派集会に市民8千人、1年前の熱気はどこへ?

2013年05月07日 10時16分05秒 | Weblog
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  プーチン大統領が復帰してから満1年の6日夕、モスクワで反プーチン派集会が開催され、市民約8千人(警察当局調べ)が参加した。1年前の集会には約4万人が参加、治安当局との衝突で約450人が検挙された。この1年で反プーチン運動が下火になり、市民の間で“諦めムード”が広がりつつある。

  インタファクス通信によると、集会は昨年と同様、モスクワ中心部のボロトナヤ広場で開かれた。主催者は参加者3万人を目指したが、予想を大幅に下回った。ネムツォフ元第一副首相は、同一人物が大統領を2期以上務めることを禁止する憲法改正を求める決議文を読み上げたこれはプーチン氏の多選禁止を念頭に置いたものだ。さらに、野党や市民活動家に対し、テレビで演説する機会を与えるよう要求した。

  また、早くも次期大統領選(18年)への出馬を宣言したナバリヌイ弁護士が「我々は何者も恐れない。我々は家族や子供たちのために、新しい未来のために戦っているからだ」と演説すると、参加者から「彼こそが大統領だ」という歓声が上がった。

  治安当局は集会・デモで、覆面や火気を使用したことを理由に6人を拘束したが、大きなトラブルはなく終了した。主催者側は警察当局が発表した8千人より多数の参加者があったと主張しているが、昨年春ごろまでの反プーチン運動の熱気が覚めたことは明らかだ。

  7日付けのコメルサント紙は、世論調査機関レバダ・センターが先月末に行なった次期大統領選挙に関する調査結果を掲載した。それによると、18年の大統領選で「新しい指導者の当選を希望する」と答えた人が55%にのぼり、「プーチン大統領の再選を希望する」と答えた26%を大きく上回った。その理由として、社会的公正や汚職撲滅を求める意見が多かった。

  だが、実際に誰が当選するかを予想する質問に対しては、「プーチン大統領が残る」と答えた人が最も多く、31%だった。次いで「メドベージェフ首相以外の後継者」と答えた人が19%、メドベージェフ首相と答えた人が16%、中立系の大統領と答えた人が15%だった。

  「何を言っても結局、大統領はプーチン氏以外にいない」。これがロシア国民の大方の見方に違いない。プーチン氏は憲法の規定で、さらにもう1期(6年間)大統領を務めることができる。プーチン氏が大統領の座にいつまでも居座り続けていることが、再び政治への無関心を生んでいるのは間違いない。この閉塞感を吹き飛ばす妙案はないのだろうか。(この項終わり)

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北方領土問題の交渉は「面積等分方式」をベースに進めるべきだ!

2013年05月02日 10時12分04秒 | Weblog
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  安倍晋三首相とプーチン大統領の29日の会談で、プーチン大統領自ら北方領土の解決方法に関して「面積等分方式」を持ち出していたことが判明、解決の具体案としてクローズアップされてきた。日本政府はあくまで4島の帰属確認を主張する構えだが、問題を一気に解決するには面積等分方式の方がベターであることは明らかだ。

  日本の各紙は1日、日本政府高官の話として、プーチン大統領が会談で自ら北方領土問題を切り出し、ロシアが係争地の面積を2等分して境界を画定した中国、ノルウェーとの交渉例を引いて説明したと報道した。安倍首相本人はその後、「北方領土に絡めて話したわけではない」と修正しているが、大統領発言が領土問題解決の方向性を暗に示したことは疑いない。

  一方、菅義偉官房長官は「4島の帰属が日本にあると確認した上で返還交渉をスタートするのが基本だ」と発言、「面積等分方式」が広く浸透するのを抑えようとしている。さらに、「4島の主権さえ日本にあると認められれば、2島先行返還でもいい」という意見さえ、政府内に出始めているという。だが、いったん2島先行返還を認めれば、それで事実上決着してしまう危険性がある。

  元々「面積等分方式」は、ロシアが08年に中国との領土紛争をこの方式で解決して以来、北方領土の解決方法として注目されてきた。麻生政権時代の09年4月に谷内正太郎政府代表(元外務次官)が毎日新聞とのインタビューで言及した3・5島返還論もこの方式に基づいている。

  谷内氏の考えは、北方領土の歯舞、色丹、国後、択捉の4島の面積を半分に割れば、最大の島である択捉島のほぼ真ん中に国境線が引かれる。そうなると日本は歯舞、色丹、国後島と択捉島の半分を領有することになる。つまり、3・5島となり「これでもいいのではないか」と述べたのである。

  面積等分方式の隠された利点は、“落としどころ”があることだ。この方式だと択捉島は日露両国が統治することになるが、ひとつの島を2カ国で統治してもうまくいかないことはサハリン(樺太)の例で明らかである。そこで日本が択捉島の領有権を譲れば、ロシア側は最大の島を単独統治できることになる。日本からすれば3島返還となり、双方の痛み分けということで両国が受け入れやすくなるのではないだろうか。

  これに対し、日本の4島への主権を認めさせ、とりあえず2島先行返還を勝ち取ったとしても、国後、択捉島の返還問題が残ってしまう。そうなると、2島返還で事実上決着するか、あるいは残る2島の決着がどんどん先送りされることになる。それこそ、日本にとってデメリットが大きいと言わざるを得ない。

  日本政府としては、現実的かつ長期的視点に立って解決案を決める必要がある。日本側は当面、プーチン大統領自らが言い出した面積等分方式をベースに交渉を進めるのが得策といえよう。安倍首相が指導力を発揮して外務省を動かし、プーチン大統領に日本への返還を決心させるよう促して欲しいものである。(この項終わり)





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