飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

ロシアの民主系メディア総支配人、四半世紀前の市民権はく奪される!

2017年07月22日 15時09分28秒 | Weblog
国際政治・外交ランキング


タス通信は7月22 日、ロシアの民主系メディア総支配人、デミヤン・クドリャフツェフ氏が裁判所の決定で市民権をはく奪されたと伝えた。連邦移民局へ提出した書類に不備があったためと信頼すべき筋が述べたとされる。来年春の大統領選に向け、民主系メディアを締め付けるのがプーチン政権の狙いとみられる。

タス通信によると、クドリャフツェフ氏は民主系経済新聞「ベードモスチ」と英字新聞「モスコー・タイムズ」の総支配人を務めている。1992年2月、旧ソ連からロシアに国名が変わる際、ロシアに在住していた国民は自動的にロシアの市民権を受けたが、同氏は当時イスラエルの市民権しか所持していなかったという。

新生ロシア誕生から四半世紀も経ってから市民権をはく奪されたのは異例で、プーチン政権が政治的な意図を持って摘発した可能性が高い。

クドリャフツェフ氏は旧ソ連崩壊後、新興財閥になった一人で、2011年には経済新聞「コメルサント」系の雑誌「ブラスチ」(権力)編集長としてプーチン首相(当時)を中傷する写真を掲載、解雇処分を受けている。

「ベードモスチ」「モスコー・タイムズ」とも民主系の新聞で、プーチン大統領への批判を強めていることから、政権側は市民権はく奪の強硬手段に出たとみられる。信頼すべき筋によると、市民権はく奪により半年間に90日以上、ロシアに滞在できなくなるという。

一方、プーチン大統領は若者との対話集会に出席し、来年3月に予定される次期大統領選への立候補について「まだ決めていない」と述べている。だが、プーチン政権内では立候補は既定方針とされており、早くも反プーチン派への締め付けが始まったと言える。(この項終わり)
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日露共同経済活動にロシア側が不熱心な理由は?

2017年07月01日 23時55分04秒 | Weblog

国際政治・外交ランキング

北方領土での日本とロシアの共同経済活動の実現に向けた、長谷川栄一首相補佐官を団長とする官民現地調査団は6月下旬、北方3島での調査を終え7月1日、根室港に戻った。調査はロシア政府の消極的姿勢が響き、十分な成果が得られないまま終了した。今後もこの状況が変わらない限り、調査は中途半端に終わる可能性が強い。

今回の調査は今年4月、モスクワで開かれた安倍首相・プーチン大統領の首脳会談での合意を受けて行われたが、ロシア政府側の調整がつかないなどの理由でサハリン州での調査を“見切り発車”することになった。このため、調査開始が6月にずれ込んだ上、渡航手段が限定され、調査団の人数も縮小された。

さらに予想外だったのは、地元ともいうべき根室市の長谷川俊輔市長が現地調査に同行できなかったことだ。外交筋の話では、長谷川市長がロシア側に批判的なためというが、長年北方領土問題に取り組み、事情に詳しいだけにロシア側が煙ったい存在として敬遠したらしい。日本の外務省もこの件については「調整の結果」として拒否理由を明確にしていない。

また、視察予定に入っていた国後島の地熱発電所や燃料保管施設が直前にキャンセルされた。その理由として地元当局は、ロシア国境警備隊の立ち入り制限区域付近を通る行程だったことを上げているが、それらは事前に分かっていたことで、ほとんど嫌がらせに近いものだ。同島の地熱発電所はエネルギー資源に関係する重要な施設であり、ロシア側の共同経済活動に対する「やる気のなさ」を象徴する出来事といえよう。

振り返ってみれば、ロシア側の北方領土問題に対する潮目が変わったのは、米国大統領に選出されたトランプ氏の対露政策が迷走し、強硬姿勢に転じてからだ。対シリアや対欧州政策を巡って米露が対立を深め、世界大戦の可能性さえ論じられるようになったためだ。最近はプーチン大統領自身が北方領土を日本に返還すれば、日米同盟により北方領土に米軍基地ができる危険性に言及するようになっている。そうなれば、ロシアの原潜基地であるオホーツク海の抗たん性が損なわれ、ロシアとしては絶対認められない。

こうした中、トランプ大統領とプーチン大統領の初の首脳会談が7月のG20で行われることになった。この会談結果いかんによっては緊張緩和の可能性がゼロとは言えないが、両首脳の性格からしても楽観は許されない。安倍首相としても、これまでのような“擦り寄り外交”ではプーチン大統領の岩盤に穴を開けることは不可能だ。事態打開のためには根本的な対策が必要だ。(この項終わり)




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