飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

厳戒態勢の中、モスクワで戦争反対の大規模デモ!

2014年09月22日 11時40分46秒 | Weblog
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   プーチン政権の対ウクライナ政策に抗議する反政府デモが21日、モスクワで行われ、市民約2万人が参加した(警察当局は約5千人と発表)。政権側はデモ参加者を極力減らそうと早くから主催者側に圧力をかけた。当日も警察官を大量動員して空と陸からデモ隊を抑え込もうとしたが、昨年秋にウクライナ紛争が起きて以降、最大規模の反政府デモとなり、反戦機運が盛り上がっていることを裏付けた。

   このデモ行進は、民主派野党の「ヤブロコ」や「連帯」が「ロシア政府の対ウクライナ政策に抗議する平和行進」と銘打ち、モスクワ市民に呼びかけて実施された。中立系の独立新聞によると、プーチン政権は主催者側に対し、事前にスローガンなどを告知しないよう何度も警告したほか、空からヘリでデモ隊を監視するなど、異例の厳戒態勢を敷いた。

   デモ行進は、モスクワ市内のプーシキン通りからサハロフ通りまでのコースで行われた。参加者はウクライナ東部の戦闘で亡くなった人々の写真を貼ったプラカードやロシア国旗、ウクライナ国旗を掲げ、「戦争反対」とシュプレヒコール。中には「プーチンは出て行け」と叫ぶ人も。参加者の中には、女流人気作家のウーリツカヤさん、ロックシンガーのマカレビッチさんらの姿もあった。

   デモ行進の参加者数は主催者側と警察当局とで大きく食い違い、主催者は当初予定の約5万人に迫っていると表明したが、当局はその10分の1の約5千人と発表した。モスコー・タイムズ紙は中立系団体の「2万6千人以上」という数字を掲載している。いずれにしろ、反政府デモとしては12年の反プーチン運動以来の盛り上がりを見せたと言えそうだ。

   また、同紙によると、モスクワの他、サンクトペテルブルク、サラトフなどでも反戦デモが行われたが、シベリアのノボシビリスク市ではデモが許可されず、参加者は警察により解散させられたという。なお、各地のデモでケガ人などが出たという報告はない模様だ。

   ウクライナ紛争でロシア、ウクライナ、欧米とも停戦で合意しているが、東部での戦闘はまだ終結に至っていない。東部での親ロシア系住民の自治権付与などを巡って今後も戦闘が続く可能性が高いだけに、プーチン大統領は指導力を発揮して完全停戦に向けて全力を挙げて欲しい。それこそ、大統領の支持率をアップする最善策ではないだろうか。(この項おわり)
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プーチン大統領の対ウクライナ政策に厳しい批判相次ぐ!

2014年09月15日 15時14分06秒 | Weblog
 
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  プーチン・ロシア大統領はウクライナ紛争で停戦に応じたものの、東部では依然戦闘が続き、欧米側は追加の対露経済制裁に踏み切った。こうしたプーチン大統領に対し、国内の反プーチン派から厳しい批判が相次いでいる。プーチン大統領はこの紛争をどう決着させようとしているのだろうか。

   プーチン大統領に批判的な英字紙モスコー・タイムズ(電子版)は、このところ大統領を批判する寄稿文を連日のように掲載している。その中からまず、リベラル派の論客として知られる元下院議員、ウラジーミル・ルシコフ氏の意見をご紹介したい。

   同氏の寄稿文は「ウクライナ紛争はロシアに災難を招く」とのタイトルを付けて掲載された。それによると、プーチン政権はウクライナ東部のドネツクとルハンスク「人民共和国」を支持し、兵器や施設ばかりでなく、正規軍まで派遣している。その結果、双方に数千人の犠牲者を出す戦争に発展したと批判。「これは終わりの兆候がない戦争であり、西側はロシアを交戦国の一員とみなしている」と決めつけている。

   さらに、軍隊を使って外国の領土を占領し、参加者に勲章を贈る行為は国連総会の決議に基づく侵略の典型であるばかりでなく、ロシア憲法によっても侵略を決定した個人の責任問題が生じると断罪している。

   また、国際紛争に詳しいジャーナリストのイワン・スホフ氏は「プーチンのナショナリズムと拡張戦略は失敗が運命づけられている」とのタイトルの文章を寄稿している。その中で、ロシアが4百年にわたって1日当たり50平方キロの割合で領土を拡張してきたとの西側歴史家の試算を公表し、こうした歴史的記憶がロシア人のアイデンティティー構築を助け、クリミア半島を併合する際、プーチン大統領に利用されたと指摘している。

   だが現在、国内のロシア人の割合が減り続けていることから、国家を拡張・発展させるためにロシア人のナショナリズムを利用することが難しくなっている。そこでプーチン大統領はロシア人とその他の民族グループの利益のバランスをとろうとしているようだが、ウクライナ紛争勃発後はこうした手法も取れなくなっている。このため、プーチン大統領の戦略も失敗する運命にあると結論づけている。

   プーチン大統領が今回の紛争で何を狙い、どこで決着させるつもりなのかはまだはっきり見えてこない。だが、相次ぐ欧米の経済制裁でロシアの経済力は相当ダメージを受けている。ロシア国民の忍耐力も我慢の瀬戸際に近づいており、大統領が決断するまでに残された時間はそう長くはないだろう。(この項おわり)






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「ロシア国民に国家への犠牲的精神高まる」との世論調査!

2014年09月10日 14時59分09秒 | Weblog
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  ウクライナ紛争を政治的に解決するプロセスが進行中だが、その一方、ロシア国民の間で国家への犠牲的精神が高まっていることが最新の世論調査から浮かび上がった。紛争が長期化する中で、公平な解決策を求めて愛国主義が高揚してきたためとみられる。

   この世論調査は、中立系の調査機関レバダ・センターが国家と国民の関係をテーマに毎年定期的に行っている。最新の調査は、全国46地域で1600人を対象に行った。その結果が10日付けのイズベスチヤ紙(電子版)に掲載された。

   それによると、国家はまず何よりも国民の世話をすべきか、それとも国民は自ら自分のことを心配すべきかを尋ねたところ、「国家に責任がある」と答えた人が最も多く72%。次いで「国民は自分のことは自分で心配すべき」と答えた人が13%。「国家のために自分が犠牲になる覚悟がある」と答えた人が11%にのぼった。

   昨年の調査結果と比べると、「国家のために犠牲になる覚悟がある」と答えた人が4%から11%に約3倍に増えているのが目立つ。「国家に責任がある」との回答は83%から11ポイント減り、「自分のことは自分が心配するべき」と回答した人は4ポイント増えた。

   また、国民の大半は国家の世話・保護なしで生きることができるか、との質問に対し、74%が「できない」と答え、「できる」と回答した人は19%だった。同じ質問に対し、ソ連崩壊直前の1990年には62%が「できない」と回答、2008年の経済危機の際には81%が「できない」と答えていた。

   レバダ・センターのグラジダンキン副所長は「このテーマについての世論調査は25年間続いているが、今の状況は尋常ではない。なぜなら、国家の責任を問う回答がこれまでで一番低率な半面、国家のために犠牲になる覚悟があるという回答が一番高率だからだ」と語り、ウクライナ危機が影響していると分析している。

   また、政治学者で市民社会発展財団総裁のコスチン氏は「国家のために犠牲になってもいいという回答が増えているのはまず第一に、政治日程と関係していると思う。公平さの欲求はナショナリズムの深部にあり、我々が正しいと思えば圧力を受けても耐え抜くことができる」と述べ、欧米の経済制裁への不満が背景にあるとの見方を示唆している。

   この世論調査から、ロシア国民の欧米への怒りや反発が聞こえてくるようだ。「ウクライナ紛争でなぜロシアだけが悪者にされているのか」「相次ぐ欧米の経済制裁は不公平ではないか」…。紛争がさらに長引けば、こうした国民の犠牲的精神が大規模戦争の引き金を引かないとも限らない。(この項おわり)


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ウクライナ紛争で相互不信の連鎖を断ち切れ!

2014年09月06日 20時56分14秒 | Weblog

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   ウクライナ東部の戦闘は、ウクライナ政府と親露派武装勢力との合意により6日未明(日本時間)から停止された。今後、拘束された戦闘員や兵士らの相互解放が行われ、真の解決に向けた交渉が始まる段取りだが、欧米側は依然としてロシアへの不信感が強く、追加制裁を構えてロシアに圧力をかけている。ロシアにもウクライナを全面支援する米国への不信感が根強く、このまま全面停戦に向かうとは思えない状況だ。

   今回の停戦交渉は事実上、プーチン大統領のイニシアチブで進められた。ということは、親露派勢力がロシア軍の支援を受けて各地で攻勢を強め、ウクライナ軍を追い詰めたことから停戦がまとまったといえる。つまり、プーチン大統領の外交的、あるいは軍事的勝利ともいえるものだ。

   これに対し、オバマ大統領は5日のNATO首脳会議後の会見で「(合意を)親露派が実施し、ロシアが(軍事)介入を止めるかどうかは過去の経験からすれば懐疑的だ」と述べ、露骨にロシアへの不信感を示した。EU側はこの日、ロシアに対する追加制裁で合意したと発表、停戦に対するロシアの出方をみて制裁を発動するかどうかを決める方針だ。

   米国やEUからすれば、ウクライナ東部の戦闘はロシア軍が8月に入って「軍事介入」(ロシアは否定)してから激化し、ウクライナ軍の敗色が濃くなったということになる。それだけに、親露派勢力、さらにその裏で糸を引くロシアがすんなり手を引くとは思えないのだろう。

   一方、ロシア側にも欧米への不信感が強く残っている。ウクライナ紛争の発端ともなった親露派・ヤヌコビッチ政権への反政府デモを扇動し、政権打倒にまで追い込んだのは米国ではないかという疑いがあるからだ。米国務省職員がキエフで暗躍していたとの情報もあり、ロシア人の反米感情はかつてなく高まっている。

   こういう状況からロシア側が攻勢に出れば出るほど、プーチン大統領の支持率がアップし、それを背景に大統領はさらに強気に出るという悪循環になっている。逆にオバマ大統領は口ではロシアを強く批判するが、実力行使が伴わないこともあって大統領の支持率はさらに下がるという傾向にある。

   双方がこういう不信感に陥っていては、やっと停戦にこぎつけても、どちらかが破って再び泥沼に落ち込むということになりかねない。欧州では米露が再び全面対決する「新冷戦」への不安が広がっているという。欧米、ロシア双方とも、この停戦を大事にして最終的な政治解決につながるよう努力して欲しい。(この項おわり)

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プーチン大統領、ウクライナ東部の独立容認に方針転換か?

2014年09月01日 14時53分24秒 | Weblog
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   長期化するウクライナ紛争でプーチン大統領は8月31日、ウクライナ政府に対し、東部地域の国家化を和平協議の議題とするよう求めた。親ロシア派武装勢力が支配し、「ノボロシア」(新ロシア)と呼んでいる同地域の独立を容認する意向と受けとれるが、大統領報道官はその後、国家化には言及していないと否定した。ロシア側は「軍事介入」を背景に東部分離をゴリ押ししてくる可能性があり、紛争は大きなヤマ場を迎えつつある。

   プーチン大統領は31日の国営テレビ「第一チャンネル」のインタビュー番組で、ウクライナ政府はルガンスク州とドネツク州の「義勇軍」指導者と幅広い協議を行い、地域住民の法的権利を保障するため、東部地域の国家化についても触れるべきだと語った。大統領が東部の将来について「国家」という表現を使ったのは初めてである。

   大統領は現在、親ロシア派武装勢力を「ノボロシアの義勇軍」と呼んでいる。これらを重ね合わせると、18世紀末にロシア帝国が征服し、「ノボロシア」と命名した黒海北岸部地域にならい、東部地域をウクライナから分離させ、国家として確保する狙いかもしれない。大統領はこれまで、ウクライナを連邦制国家に移行させ、東部を連邦共和国にしてロシアの発言権を確保する意図とみられていたが、ここに来て方針を転換した可能性がある。

   ただ、プーチン大統領のテレビ発言後、ペスコフ・ロシア大統領報道官は「大統領は東部地域の地位について言及したわけではない。ウクライナ側と包括的な協議をするよう述べただけだ」と釈明した。親ロシア派勢力の独立を容認したと受け取られることを避けようとしているが、あの慎重な大統領がロシアで最も視聴率の高いテレビで不注意な発言をするとは考えられない。

   米国やEUは、ロシアが東部地域に装甲車や対空ミサイルなどの兵器とともに軍部隊を徐々に投入していると非難している。こうしたロシアの手法はクリミヤ半島を独立・編入した時のやり方に似ている。これまでプーチン大統領は東部の独立を否定してきたが、EUや米側が経済制裁を強化し、さらにNATO軍を動員する構えを見せているため、東部を独立させることもやむを得ないとの判断に傾いたのではないか。

   一方、ウクライナも「後戻りできない地点に達しようとしている」(ポロシェンコ大統領)とみて、ロシアとの「全面戦争」まで視野に入れている。この状況をどこかで食い止めないと、それこそ百年前の第一次世界大戦の二の舞になりかねない。今こそ国際社会は事態を真剣に受け止め、全面的な和解工作を進めるべきだ。(この項おわり)




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