飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

日露首脳会談:平和条約交渉は「対話継続」が精一杯!

2019年06月30日 10時50分50秒 | Weblog
安倍首相とプーチン露大統領の首脳会談は6月29日夜、大阪市内で行われたが、北方領土問題を巡る平和条約交渉は進展がなく、「対話継続」で合意するのが精一杯の状態だった。今後、安倍政権が目論んだ2島返還の戦略立て直しを迫られるのは必至の情勢だ。

この日の首脳会談後の共同会見で、安倍首相は平和条約締結問題で「乗り越えるべき課題の輪郭は明確になってきている」と語り、いかにも進展があったかのような発言をした。だが、プーチン大統領は「この対話は両国にとって簡単でなく、細心の注意や辛抱強さを要する問題である」と、交渉の困難さを強調し、「この対話は継続される」とだけ述べた。今後の交渉の見通しや合意の期限については言及せず、両首脳の交渉への意気込みの違いが浮き彫りになった。

これで、安倍首相が目指した北方領土4島のうちの2島返還での合意は事実上、とん挫した。安倍首相の任期が今後伸びるかどうかはともかく、プーチン大統領の権力基盤も揺らぎつつあり、大統領の任期中の解決も危うくなってきた。それでも安倍首相は北方領土問題の任期中の解決に固執するのか、しばらく様子を見るのか、思案のしどころだろう。

一方のプーチン大統領は、ロシアの安全保障上の観点から日米同盟への危惧を前面に打ち出し、日本側に圧力を掛けるとともに、ロシアとの経済協力強化に向けて、日本側をけん制している。今後もこの方針に大きな変化はないと見られ、平和条約交渉は当面、開店休業状態になるのではないだろうか。

日本の政治状況はすでに参院選に集中していて、選挙戦の焦点は安倍政権の失態から始まった年金問題に絞られつつある。野党側は年金問題と消費税増税問題を絡めて与党を追い込む戦略と見られるが、安倍政権としては憲法改正問題に焦点をずらしたいところだろう。だが、せっかく盛り上がってきた北方領土問題の解決方法について、与野党とも論戦を続けて欲しい。外交は百年の計を考える重要なテーマであり、今後の世界情勢を考えるきっかけにもなるからだ。(この項終わり)



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

プーチン露大統領、日露平和条約交渉の早期解決困難を示す!

2019年06月07日 09時46分19秒 | Weblog
プーチン・ロシア大統領は6月6日、サンクトペテルブルグで開かれた世界の主要通信社幹部との会見で、日露平和条約締結問題について「日米軍事協力が締結を困難にしている」と改めて指摘。日本政府に対し、ロシアの懸念に配慮するよう求めた。大統領は6月29日の大阪での日露首脳会談を前に、現状での早期解決が困難であることを内外に示したといえよう。

プーチン大統領は共同通信社の質問に答えた。同社の記事によると、プーチン大統領は日本には自国の安全保障に関する権利があると認める一方、日本もロシアの懸念に配慮するよう要求した。その上で、この問題について専門家による慎重な交渉が必要と指摘した。この発言から、今後日露両国の専門家による安全保障問題に関する協議機関設置を提案してくる可能性もある。

今回のプーチン発言により、安倍首相が目論んでいた、大阪での日露首脳会談での平和条約締結合意は不発に終わることになった。それだけに止まらず、平和条約交渉を継続するには、米国をも巻き込んだ交渉が不可欠な状況になってきた。米国のトランプ大統領との蜜月関係を維持して、米国との関税交渉を有利に運ぼうという安倍政権の目論見も揺るぎかねない。

一方、プーチン大統領は北方領土返還を執拗に求めてくる日本の弱みを逆手にとって、日本を米国追随の関係から引き離す好機であると捉えているに違いない。米中関税交渉で中国を支援し、北方領土交渉で日本を自国に引きつけようというプーチン政権の戦略が功を奏すかどうか、目が離せない。

では、こうしたロシアの戦略に安倍政権はどう対応するのか。安倍首相はイランに外遊し、トランプ大統領に有利な根回しをしようと努力したものの、その最中に日本の海運会社が運航するタンカーがオマーン湾で攻撃される事態が起きた。トランプ大統領の尻馬に乗って米国とイランの仲介をしようとした結果、仲介どころか、火に油をそそぐ事態となった。自分の政権を守るためなら何でもやろうという安倍首相の近視眼的外交では、米露の大国外交に振り回されるだけではないか。目の前の選挙に勝つことだけに血道をあげる安倍政権に、国家百年の計の外交は任せられない。(この項終わり)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする