飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

「安倍首相がビザなし訪問簡素化を大感謝」とロシア側が報道!

2017年09月08日 14時46分33秒 | Weblog
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 安倍首相とプーチン大統領は7日、ウラジオストクで首脳会談を行い、そのあと共同で記者会見した。タス通信はこの会見について「安倍首相は北方四島へのビザなし訪問の手続きの簡素化をロシア語で大感謝した」と伝えた。国営通信社のタス通信が北方領土返還問題については触れず、ビザなし訪問の手続きに特化して大きく報道した裏には、領土問題を意図的に小さくしようというロシア政府の狙いと、それにやすやすと乗っかった首相の安易さが感じられる。

 この記事は、記者会見で発言している安倍首相の写真をアップにし、「首相はプーチン大統領に対し、ロシア語で『ウラジーミル、大変ありがとう』と感謝」の見出しをつけている。さらに、この記事によると、首相は「これは旧島民からの感謝の言葉である」と旧島民自身がそう言って感謝していることを示唆。さらに、首相は手続きの簡素化について「120%満足している」と述べたとされる。

 記事では続けて、8月30日に旧島民57人が歯舞諸島の一部の島をビザなしで訪問したことを報じ、「以前のビザなし訪問に比べ、行程が6時間も短縮された」と強調している。だが、これは船の航路の問題で、手続きの簡素化の一部に過ぎない。それを誇張して伝えると同時に、日本全体がロシア側にこの件で感謝しているような表現になっているのは解せない。

 安倍首相はプーチン大統領が昨年暮れ、訪日し、北方領土での共同経済活動を提案、事実上、北方領土問題を先送りにして以来、北方四島へのビサなし訪問の簡素化をしきりにロシア側に要求しているように感じられる。そのため、会見の席でロシア側に簡素化について感謝の言葉を述べたのだろうが、これではロシア政府の意図をそのまま認めたように受け取られても仕方がない。あくまで北方領土返還を要求している旧島民に対して、どう説明するのだろうか。

 今回の首脳会談では、北朝鮮の相次ぐミサイル発射、さらには6回目の核実験に対し、日本とロシアがどう対応すべきかを協議するのが主要議題になったのは止むを得ない。だが、肝心の国民の悲願である領土問題を軽視するばかりか、間違ったサインをロシア側に与えるような行動は許されない。この件に関して安倍首相は国民に対し、どう釈明するのだろうか。この問題を曖昧にせず、真摯に答えてほしい。そうでないと、安倍首相への信頼はますます低下するのは間違いない。(この項おわり)
 
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