新年明けましておめでとうございます。今年は第二次世界大戦の終戦から78年。この間、人類は世界を揺るがすような戦争を起こさず、概ね平和でこられたが、ロシア・ウクライナ戦争をきっかけに世界平和が大きく揺さぶられつつある。この危機的状況を、われわれ人類はどうやってしのげるだろうか。
昨年2月から始まったロシア・ウクライナ戦争はまもなく2年目を迎えるが、両国とも戦いを止めるような状況にはない。ロシアのプーチン大統領は核兵器こそ使わない方向を示しているが、自ら戦争を中止させようという動きは見せていない。むしろ中国との連携を強め、あくまで戦い抜く意向を示している。
一方、ウクライナもゼレンスキー大統領が訪米し、徹底抗戦を表明するとともに、軍事支援を要請した。米国のバイデン大統領も「ウクライナが必要とする限り、支え続ける」と支援を約束した。米国は最新鋭の迎撃ミサイル「パトリオット」の初供与を含め、約19億ドルの追加支援を行う方針だ。
一方、中国も米国に対抗できる軍事力の強化を目指しており、当面台湾統一を目指し、武力行使も辞さない構えを見せている。隣国の北朝鮮も、米国本土を射程に収める弾道ミサイルを次々に発射し、日本や米国に圧力をかけている。金正恩総書記は核兵器を放棄しない考えを繰り返していて、日本にとっても脅威だ。
対する日本政府も各国の軍事力強化政策に便乗し、戦後の抑制的な防衛政策を変更する「国家安全保障戦略」などの文書を閣議決定した。浜田靖一防衛相は「戦後の防衛政策の大きな転換点となり、そのスタートラインに立った」と強調した。2023年度の防衛費は前年度の26%増となる見通しだ。
こうした各国の防衛力強化政策が世界中に広まれば、国連など国際機関の歯止めが効かなくなってくるのは必至だ。特に心配なのは、平和を守るべき国連安保理事会が米国、ロシアなど5カ国の常任理事国のうち、1カ国でも反対すればで何も決められず、機能しなくなることだ。
現在進行中のロシア・ウクライナ戦争でも、ロシアが拒否権を発動したため和平提案が否決され、有効な政策が打ち出せなかった。このままでは、有事の際にも国連は動きが取れなくなるだろう。こうしたことが繰り返されないよう、日本政府は各国に働きかけ、国連機能の強化に取り組むべきではないだろうか。(この項終わり)