飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

「ロシアで経済制裁の影響が広がりつつある」との世論調査結果!

2014年08月28日 19時10分26秒 | Weblog

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   ウクライナ紛争で欧米がロシアに対する経済制裁を強化しつつある中で、その影響がロシア国民の間で広がりつつあることが最新の世論調査で浮き彫りになった。欧米でも経済に影響が出ていて、我慢比べの悪循環に陥っている。こんな馬鹿げたことはお互いに早くやめる方策を考えるべきだろう。

   28日付けの独立新聞(電子版)によると、この世論調査は独立系のレバダ・センターが実施したもので、ロシアが経済制裁によって国際的に孤立していると心配している人は32%、心配していない人は65%だった。5月の調査に比べ、国民の幅広い層に影響が出ていると答えた人が増えているのが目立った。

   今回の調査結果についてレバダ・センターのグラジダンキン副所長は「紛争が激化する中で、けんかをするなら最後までやろうと対抗意識を燃やしている人が大勢を占めつつある。実際に制裁の影響を受けている人たちは限られているが、自分たちで乗り切ろうという気分が高まっている」と分析している。

   また、ロシア政府が欧米の制裁への報復措置として農畜産品輸入を差し止めたことを支持している人は78%に達している。だが、それによって農畜産品の価格がすでに上がりつつあることを知っている人も76%に上っている。それでも人々が慌てていないのは「愛国主義的な気分が高まり、権力と連携し、影響をわざと過小評価しているからだろう」とグラジダンキン副所長はみる。

   さらに同副所長は、紛争の中で多少の犠牲はやむを得ないという雰囲気が出てきて、「骨身を惜しまず働かなければ生き残れない」というソ連時代のスローガンが動き出していると分析している。

   相次ぐ経済制裁で困っているのは欧米諸国も同様である。そのため欧米、ロシアとも我慢比べの状況になっている。そうなると、二度の世界大戦を逆境の中で生き抜いたロシア人の底力が頭をもたげてきそうだ。だが、無理を続ければどこかに綻びが出てくるのは世の常である。双方とも英知を絞って平和的解決策を考え出すべきだ。(この項おわり)

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「ウクライナ紛争の唯一の勝者は中国」と露政治学者が分析!

2014年08月21日 17時03分36秒 | Weblog
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   ウクライナ紛争は「米露の代理戦争」あるいは「新冷戦の始まり」などと言われているが、勝者が不明なまま長期化の様相を示している。こうした中、ロシアの政治学者で民主派の論客でもあるドミトリー・トレーニン氏(カーネギー財団モスクワセンター所長)は露紙モスコー・タイムズに「唯一の勝者は中国」と分析する論文を寄稿した。

   この中で、トレーニン氏は「ウクライナをめぐる米露の紛争は実力的に不釣り合いで、ロシアは世界支配のライバルのフリをすることもできない」と、米国との実力差を強調している。その一方、ウクライナの運命は東欧の国々、とりわけモルドバ、グルジアのようにEU(欧州連合)と加盟に向けた連合協定に署名した国々にとって重要だとしている。

   また、EUのロシア版を目指す「ユーラシア同盟」でロシアの名目上のパートナーであるカザフスタンやベラルーシも、ロシアと国際政治の鍵を握る米国との間のバランスを慎重に測る必要があると分析する。つまり、ウクライナで起きていることは欧州でも中欧でも起きることであり、欧州大陸での安全保障問題が起きれば、EUとロシアの貿易は崩壊すると懸念している。

   その結果、リスボンからウラジオストクまでの共通市場の概念は葬り去られ、それに代わってNATO(北大西洋条約機構)や環大西洋貿易投資パートナーシップが蘇り、EUと米国との協力関係がより緊密化されるとトレーニン氏は見ている。

   つまり、米露の紛争は欧州の同盟国に対する米国の地位、さらにアジアの同盟国に対する米国の地位をも強化することにつながるが、唯一の例外は中国だと指摘する。中国は米国主導の対露経済制裁体制から唯一外れた経済大国であり、先進国との経済協力が急激に減っているロシアにとってエネルギーや天然資源の販売先として中国の重要性がますます高まっている。そこでロシアはイデオロギーや主導権争いを抜きにして、中国と同盟関係を結ばざるを得なくなるだろうと結論づけている。

   そしてトレーニン氏は中世以降のロシア史で最も尊敬される英雄として、モンゴルへの忠誠を誓いながらスェーデンと闘い、勝利したアレクサンドル・ネフスキー大公を挙げている。さらに、トレーニン氏は「ロシアがウクライナ紛争で行動への対価を支払わなければならないのは明らかだが、米国やその同盟国が行動に見合った対価を支払うかどうかが問題だ」と疑問を呈している。

   ウクライナ紛争の行方とともに世界的に関心を呼んでいるのは、中国とロシアの連携問題である。米国の論客イアン・ブレマー氏も「中国がロシアとの関係強化に乗り出すようなことがあれば『新冷戦』のリスクは高まる」と懸念している。この紛争でロシアをそこまで追い込まないためにも、国際社会は話し合いによる早期解決を急ぐべきだろう。(この項おわり)

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アクショーノフ医師の通夜に約120人が参列!

2014年08月09日 00時03分39秒 | Weblog

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   「六本木の赤ひげ」という愛称で呼ばれた白系ロシア人、エフゲーニー・アクショーノフ医師(享年90歳)の通夜が8日午後6時から東京・神田駿河台のニコライ堂で行われた。猛暑の中、日露の関係者ら約120人が参列し、半世紀以上にわたって診察を続けた医師をしのんだ。

   ニコライ堂は、日本にロシア正教を広めるため、ロシアから来日したニコライ司祭が明治中期に建立した日本最大級の聖堂である。高さ35メートルの大きなドーム屋根がシンボルで、建設当時は東京中から聖堂が拝めたと言われている。

   通夜が行われた聖堂には、以前診察してもらった患者や関係者から届けられた、たくさんの生花が並んだ。その前に、聴診器をつけたアクショーノフ医師の笑顔の遺影が飾られていた。2,3年前、テレビ局が取材に来た際、撮影された元気な時の笑顔だった=写真。

   通夜には、夜を徹して祈るという意味の「パニヒダ」と呼ばれる祈祷が行われる。司祭の祈祷と聖歌隊の聖歌が唱えられる中、参列者がローソクを手に棺の周りに集まり、永眠者の安息を祈る。聖歌隊のきれいな歌声が参列者の心を洗い流し、正教の素晴らしさを実感する瞬間である。

   司祭の訓話の後、参列者全員で棺に収まったアクショーノフ医師の拝顔をした。白衣の左胸に愛用の聴診器が置かれ、今にも医師がこれをつかんで起き上がり、ニコッとほほえむのではないかと思った。これほど白衣が似合う医師を私は知らない。

   今年4月、東京慈恵医大附属病院に入院して以来、病院暮らしが続き、最後は心不全で命を落としたという。開業以来のロシア人患者の1人、リュボーフィ・シュウエツさんによると、2週間前、病院に見舞いに行ったとき、アクショーノフ医師は「ボルシチが食べたい」と訴えていたという。

   日本人女性との間に生まれた一人息子の淳さんは「クリニックさえあれば、父はきっと帰ってきてくれると信じていた。遺言らしき言葉はなく、それが唯一の心残りです」と声を詰まらせた。今後のクリニック経営については「父が病気だった間、助けていただいた医師や親戚の人達と相談して決めたい」と語った。

   告別式(正教では埋葬式という)は9日午前11時からニコライ堂で行われる。司祭の祈祷後、棺の中に花が入れられ、車で横浜市に向かう。埋葬されるのは、港の見える公園の隣の外国人墓地で、そこには息子の後を追って旧満州から5年がかりで日本にたどり着いた両親が眠っている。    (この項終わり)
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「六本木の赤ひげ」アクショーノフ医師死去、9日に告別式!

2014年08月08日 09時08分24秒 | Weblog
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   東京・六本木で半世紀以上にわたって外国人向けに診察を続け、「六本木の赤ひげ」と親しまれてきた白系ロシア人医師、エフゲーニー・アクショーノフさんが5日夜、亡くなった。90歳だった。

   第二次世界大戦中の1943年、留学のため旧満州のハルビンから単身来日し、東京慈恵医科大に入学。苦学して医師国家試験に合格し、米陸軍病院などで経験を積み1953年、六本木で開業した。日本語、英語、ロシア語はもちろん、ギリシャ語、中国語なども出来る医師として来日する外国人の間で重宝がられた。とくにシラク元仏大統領、歌手のマイケル・ジャクソンら世界的有名人を多数診察したことで知られている。

   
   アクショーノフ医師はどんな患者も区別せずに診察し、東南アジアなどから来た貧しい若者には無料で、お金持ちからはがっぽり頂いたという。医師として優秀なだけでなく、持ち前の明るい性格からファンが多く、飯倉片町交差点にある「インターナショナル・クリニック」は外国人の社交場にもなっていた。

   その一方、冷戦時代を反映して一時、当局から「ソ連のスパイ」あるいは「米国とソ連の二重スパイ」などと疑われ、日本の警察だけでなく、ソ連官憲に逮捕されたこともある。いずれも容疑が晴れたが、本人はソ連を嫌って帰国せず、生涯、無国籍で通した。

   アクショーノフ医師はロシアのプーチン大統領とも親しく、何度かクレムリンに招かれて食事を一緒にした。大統領から、ロシアに帰国して祖国のために働いて欲しいと依頼されたが、「日本が好きだから」と断ったと言う。日露友好のために貢献したいという思いが強く、大統領に北方領土問題について持論を語ったと生前、話していた。

 
   筆者は毎日新聞のモスクワ特派員を終えて帰国した1997年、初めてお目にかかり、話を聞いているうちに波乱万丈の半生に打ちのめされた。それから約1年半、クリニックに通い詰め、話を聞いて単行本にまとめ2003年、集英社から『六本木の赤ひげ』というタイトルで出版した。その後も折に触れてクリニックに通っていた。
 

   アクショーノフ医師の通夜は8日午後6時から東京・神田駿河台のニコライ堂で、告別式は9日午前11時から同じくニコライ堂で営まれる。日本を愛し、日本人をよく理解していた白系ロシア人の重鎮だった氏に心から感謝しつつ、ご冥福をお祈りしたい。(この項終わり)
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ロシア国民の7割がウクライナへの軍事介入に反対だが…

2014年08月01日 22時08分03秒 | Weblog
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   ウクライナ紛争は停戦するどころか、戦線が拡大する可能性が出ている。ロシア国民を対象にした最新の世論調査では、約7割がウクライナ東部への軍事介入に反対しているが、東部への軍隊導入については約3割が賛成している。紛争が長引くにつれ、軍事衝突が起こる危険性も高まりつつあるといえよう。

   1日付けのロシア紙コメルサント(電子版)によると、全ロシア世論調査センターがこのほど行った世論調査では、ウクライナ東部へのロシア軍介入に反対の人が66%で、プーチン大統領がウクライナ東部の親ロシア系住民保護のため、出来る限りのことをしてくれると期待している人が70%にのぼっている。

   その半面、東部への軍隊導入については27%が賛成しており、その中でも9%がロシアからの軍隊導入を断固支持している。注目されるのは、ロシア軍のウクライナへの導入を強く支持している人がモスクワとサンクトペテルブルクの住民に多いことで、これは大都市住民ほど状況をよく知っているからだと同センターでは見ている。

   また、ロシアが軍事介入する条件について聞いたところ、3人に1人がどんな状況でもウクライナに軍事介入すべきでないと回答している。それに対し、18%は「一般住民の大量殺害」などを介入すべき理由と回答。さらに、13%はNATO軍が導入された場合をあげ、10%は東部の親ロシア系住民の要請で十分と答えている。つまり、4割以上の人は何らかの理由があれば軍事介入を妥当とみなしていることになる。

   一方、ウクライナ軍と戦っている東部の親ロシア派勢力について「大半は一般の住民だが、ロシアから参加した義勇兵や、金で雇われている傭兵もいる」と見ている人が多い。このため、ロシアからの直接的な支援がなければウクライナ軍と戦えないと思っている人が少なくない。

   マレーシア航空機撃墜事件後、ロシアは欧米からの制裁が強化され、経済全体に深刻な影響が出るとみられている。このためロシア側が追い込まれ、ウクライナへの軍事介入に踏み切る可能性も指摘されている。折しもロシア国防省は1日、軍人予備役を招集し、訓練を開始すると発表した。ウクライナ紛争は危険水域に入りつつあるといっても過言ではないだろう。(この項終わり)

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