飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

プーチン大統領、また安倍首相との首脳会談に2時間半も遅れる!

2018年09月11日 09時30分16秒 | Weblog
 またまた、首脳会談に大幅遅刻!この遅刻が安倍首相との会談に対するプーチン大統領側の思いがはっきり表れているのではないか。両国メディアの報道ぶりを見ても、中身の無さをどう取り繕うかに費やされているようにさえ、うかがえる。今回の首脳会談が、自民党総裁線選の最中に、わざわざ日程を入れるほどの結果ではなかったことははっきりしている。

 日露の報道を重ね合わせてみると、ロシア側が最大の成果として報道しているのは、来年6月に大阪で開催されるG20にプーチン大統領が出席するという日程である。そして大統領は、現在両国で開かれている日露文化交流イベントの修了式に出席するということだ。大統領が訪日するというのは大きな出来事だが、G20の大阪開催はすでに決まってることで、プーチン大統領が出席することは一つのニュースだが、その際にじっくり日露の首脳が話し合うという予定はないようだ。

 日本側メディアがメインの見出しに上げているのは、北方領土での共同経済活動の対象5項目の進め方で一致したという北方領土関連が大半だ。これはすでに予想されていたことだし、これによって肝心の北方領土交渉の進展に繋がるわけではない。その上、進め方の中身についての発表も見送られた。安倍首相はこれに関連して「北方4島の未来像を描く作業の道筋がはっきりと見えてきた」などと能天気なことを述べているが、領土問題で進展がないことを糊塗しようとしているとしか思えない。

 そのことは、プーチン大統領の発言に明確に表れている。領土問題の解決は一朝一夕ではできないことを指摘した後、「両国国民に受け入れ可能な解決方法を探すという意味で共同経済活動に着手した」というのだ。だが、共同経済活動をいくら積み重ねても近い将来、領土返還に結びつく保証はなく、最近ロシア側が事あるごとに強調している「北方領土は第二次大戦の結果で解決済み」発言と符丁が合う感じが強い。

 こうした事情が、プーチン大統領の首脳会談への大幅遅刻に表れているのではないだろうか。今年7月、ヘルシンキで行われたトランプ米大統領との首脳会談にもプーチン大統領は約50分遅れたという。それでもまだ、1時間程度なら許されないこともない。だが、2時間半も遅れるというのは外交上の失態ではないか。それほどプーチン大統領は、安倍首相に会いたくなかったということでなないかと思わざるを得ない。(この項終わり)



 






安倍首相はウラジオでプーチン大統領と何を話すのか?

2018年09月04日 10時21分54秒 | Weblog
 安倍晋三首相は9月3日、ロシアの極東・ウラジオストクで開催される「東方経済フォーラム」に出席するため、10日から13日まで訪露し、プーチン大統領と会談すると発表した。大統領と北方領土問題の共同経済活動について協議し、平和条約締結を前進させる考えとされるが、大統領は最後の任期途中で、早くもレイムダックの兆しが見えており、とてもそんな余力はない。逆に利用される可能性の方が高い状況だ。

 安倍首相は自民党総裁選渦中に産経新聞との単独インタビューに応じ、プーチン大統領との会談で「北方領土の帰属問題を協議し、平和条約を締結したい」と述べた。この時期に首相シンパの新聞とだけ、インタビューに応じるというのは世論の反発を受けかねないリスクがある。それを度外視して単独インタビューに応じたのは、何故なのか。憲法改正問題で読売新聞と単独インタビューした時と同様、政府寄りのメディアしか相手にしないという意思表示なのかもしれない。それだけでも、国家の指導者としての認識のズレを感じざるを得ない。

 さらに、この時期に訪露しても、プーチン大統領とまともな議論ができないことは明らかだ。ロシアの年金制度改革問題で年金支給年齢の引き上げを提案し、世論の猛反発に遭い、肝心の年齢引き上げ案を一部修正したばかりだ。この問題で高率を保ってきた大統領の支持率も70%台から60%台に低下し、早くもレイムダック状態に落ち込みつつあるとの見方が出ている。

 その上、米国のトランプ政権が発足してから一層悪化している米露関係が足かせになり、プーチン政権は軍事力強化の方向に動きつつある。その一つの現れが、極東やシベリアで中国と共同で実施中の大規模軍事演習「ボストーク(東方)2018」だ。この軍事演習は旧ソ連時代の1981年以来の規模で、中国軍も3000人以上参加しているという。まさに軍事面の中露連携を内外に示すとともに、日米軍事同盟へのけん制であることは疑いない。

 そんな状況の中で、国家の威信がかかった領土問題を首脳同士で協議しても、事態打開に向かうような結論が出るはずはない。まして、ロシアは領土問題に関して「これは第二次世界大戦の結果だ。それを認めようとしない日本はおかしい」との論調を強めている。冷静に考えれば、安倍首相は日本側の領土返還への熱い想いを真剣に受け止めようとしないロシア相手に、無駄なパフォーマンスをしようとしているとしか言いようがない。

 安倍首相は自民党総裁を2期務めたが、経済はそれほど良くならず、かけ・もり問題では依然として世論の不信を買っており、頼みの綱は外交だけといっても過言ではない。今回の訪露でも、プーチン大統領との会談をなんとかして外交の成果につなげようという、安倍政権の末期症状が垣間見える。自民党員はこうした現状をきちんと把握し、総裁選び、つまりは首相選びをしないと、そのツケは必ず国民に返ってくることを肝に銘じるべきだ。(この項終わり)