飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

ロシアでは、北方領土よりもペットの話題で持ちきり?

2012年07月29日 11時53分50秒 | Weblog
 
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 ロシアのプーチン大統領は28日、黒海沿岸の保養地ソチで玄葉光一郎外相と会談した。インタファクス通信などによると、大統領は日露間の貿易高をさらに増やすよう求め、その上で「もっとも敏感な問題(つまり北方領土問題)で交渉を続けよう」と提案した。大統領はあくまで経済優先を強調し、領土問題は“その次”との姿勢を崩さなかったようだ。

 日本のメディアは玄葉外相とプーチン大統領、ラブロフ外相との会談について「北方領土巡り応酬」(日経新聞)などと領土問題の話題をメーンに取り上げた。だが、ロシアのメディアは、日本側がプーチン大統領に秋田犬を贈ったのに対し、大統領が返礼に「シベリア猫」を贈るという話題を大きく取り上げた。プーチン氏の犬好きは有名で、すでに2頭を飼っており、日本からの秋田犬は3頭目という。

 相撲の決まり手に「猫だまし」というのがある。立ち合いの際、相手の目の前で両手を打ち合わせて驚かす奇策のことだ。秋田県の佐竹知事から秋田犬(メスの子犬、ゆめ)を贈られたので、今度はロシア側がシベリア猫を知事に贈るという話が公表され、懸案の領土問題が薄まってしまった印象が強い。大統領は知事から「猫が好き」という話を聞き、シベリア猫のプレゼントを思いついたといい、プレゼント作戦でもロシアにしてやられた感じだ。

 日本のメディアはあまり触れていないが、プーチン大統領は今回の会談でロシアと中国間の貿易高と日露の貿易高を数字をあげて比較し、「日露関係は悪くない。貿易高も(リーマン・ショックの)危機前の水準には戻ったが、絶対額ではまだ少ない」と強調し、貿易高をさらに増やすよう要求したという。

 プーチン氏は大統領選直前の3月、外国メディアと会見した際、中国とロシア間の貿易高に比べて日本とロシア間の貿易高が少なすぎると不満を漏らし、この改善が北方領土問題解決の前提条件であるかのような口ぶりだった。今回の会談でもこの問題に言及したのは、9月のAPEC首脳会議を前に、改めて日本の政財界に経済協力関係強化のシグナルを送ったのだろう。

 さらに、プーチン大統領は玄葉外相との会談で、日本のパートナーがロシアでの仕事に満足できるよう、ロシアが出来ることはすべて行うことを力説。日本の自動車業界のロシア進出に関し、欧州地区だけでなく、極東地域でも計画を実現させるよう求めた。また、エネルギー分野でも協力できることを付け加えた。

 プーチン大統領が外国の外相と会談するのは異例で、3期目の大統領就任後では初めてという。大統領は反プーチン派を抱えて苦しい舵取りを迫られており、日本の支援を本音で求めているためではないか。こういう時こそ、日本側はプーチン政権に協力し、貸しを作るべきではないだろうか。野田首相の強力なリーダーシップを期待したい。 (この項おわり)




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ベラルーシの大統領をロンドン五輪に行かせないのは欧米のイジメだ!

2012年07月26日 11時34分47秒 | Weblog
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英国オリンピック委員会は25日、ベラルーシのルカシェンコ大統領のロンドン五輪出席を拒否した。大統領は欧米への過激な発言と国内の人権軽視で、米国などから「最後の独裁者」とも呼ばれ、国際的に孤立しているが、五輪への出席まで認めないのはいかがなものか。欧米の陰湿なイジメとしか思えない。

インタファクス通信によると、ジューコフ・ロシア五輪委員長がツイッターで明らかにした。「オリンピックの価値と伝統はどうしたのか。オリンピックの時はギリシャでは休戦したことを小学生でも知っている」と英国五輪委員会を批判した。首都ミンスクの英国大使館もこの情報を確認したという。

ルカシェンコ大統領は熱烈なスポーツ愛好家で、ベラルーシ五輪委員長も務めている。とくにサッカーとアイスホッケーが大好きで、現在は14年のアイスホッケー世界選手権のミンスク開催に全力を挙げているが、欧米の反応は冷淡で早くも開催を危ぶむ声が出ている。

ルカシェンコ大統領がそれほど欧米諸国に嫌われているのも、これまでの言動が過激だったからだ。ヒトラーを「彼のおかげで(ドイツは)残骸から立ち直った」と賞賛したり、昨年のリビアへのNATOの軍事介入を「ナチスより最悪だ」と批評したり。今年3月にはベラルーシを「独裁国家」と批判した独外相を「同性愛者になるくらいなら独裁者のほうがましだ」とやり返した(独外相は同性愛者を公言している)。

ルカシェンコ氏は1954年、ベラルーシの農村で生まれ90年、国営農場支配人から最高会議代議員選挙に立候補して当選。汚職追放運動で有名になり、94年の大統領選で圧勝し、初代大統領に就任。それ以来、大統領を4期18年間続けている。ソ連崩壊後も共産党の政策を実行し、市場経済に逆行しつつも経済危機を乗り切り、工業生産の回復などに一定の成果を上げている。

 大統領は最近、欧米への接近を強めているが、相変わらず歯に衣着せぬ発言で欧米諸国を怒らせ、EUへの入国を禁止されている。その一方で、ベラルーシを取り込もうとするロシアに対し「ギャングどもに我々の国を売り払いなどしない」などと発言、ロシアにも距離を置こうとしている。欧米とロシアとの間の微妙なバランスをどうとるかが難しいところだ。

 こういう状況の時に、欧米がロンドン五輪への出席をボイコットすれば、ルカシェンコ大統領をロシア側に追いやってしまいかねない。スポーツ好きな大統領だけに、気分良く五輪に出席させてやれば、欧米にさらに傾かないとも限らない。欧米はこんな時こそ、イジメのような政策を改めるべきではないか。(この項おわり)

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ロシア女性パンク3人の長期拘留巡り反プーチン派が直接行動!

2012年07月22日 15時28分24秒 | Weblog
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ロシアの女性パンクグループ3人が反プーチン的パフォーマンスをしたとして2月に逮捕・拘留されている問題で、作家のアクーニン氏ら反プーチン派知識人が3人の釈放を求める直接行動に立ち上がった。これに対し、検察側は追起訴する構えを見せており、政権側と真っ向からぶつかる展開になってきた。

 逮捕・拘留中の女性は、パンク・ロックグループ「プッシー・ライオット」(子猫の騒動の意味)のメンバーで、ナジェージダ、マリア、エカテリーナの3人。2月21日、モスクワ市内の救世主キリスト大寺院で、覆面をかぶって踊るパフォーマンスを行なったとして刑法213条(乱暴狼藉)違反の疑いで逮捕された。最初は6月24日まで拘留という裁判所の決定だったが、その後、今月24日まで1ヵ月延長された。

 モスクワ地区裁判所で20日、非公開で予審が行われ、スイロワ裁判官は検事の要請を認め、来年1月までの半年間、拘留を延長する決定を行なった。女性グループの弁護人によると、検察側は刑法213条違反に加え、さらに刑法282条(憎悪や敵意の高揚)違反で追起訴する方針という。前者だけなら懲役3年だが、後者も加わると懲役7年程度になる見通し。

 この日、裁判所周辺には女性グループの釈放を求める市民多数が集まり、ピケを張った。多くの人々が、胸に白い花や白いリボンを付け、昨年秋以降続いた反プーチン派の不正選挙抗議運動を思い起こさせた。参加者の中には、反プーチン運動の闘士、アクーニン氏のほか、詩人のルベンシュタイン氏、風刺漫画家のビリジョ氏らがいた。これに対し、警官多数が出動して警戒にあたり、「3人に自由を!」と叫び続けた男性ら3人を拘束した。

 拘束中の女性3人のうち、2人は子持ちという。夫を名乗る男性が姿をみせ、「裁判前の予審で長期間拘留され、3人の憤りが強まっている。その半面、ロシア正教の寺院で事件を起こし、いろいろ悩んでいる」と語り、早期釈放を求めていた。

 この事件で3人の弁護人は「裁判所の長期拘留決定は人権に反している」と欧州裁判所に提訴している。また、映画監督や芸術家約百人が地元紙に意見広告を掲載し、3人の早期釈放を求めている。反プーチン派の活動家が直接行動に加わったことで、釈放運動は今後、反政権闘争のひとつとして浮上することになろう。

 一方、プーチン政権はインターネットの規制を強化したうえ、非政府系組織(NGO)の登録を義務付けるなど、反政府系勢力の締め付けを強めている。女性パンクグループに対する長期拘束もこうした流れの一環とみられ、メドベージェフ大統領時代に一時緩んだ秩序を再び締め直す意図がみられる。こうした動きをリベラルな中流階層が黙ってみているだろうか。(この項おわり)




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ロシアで新政党の誕生ラッシュ、今秋の州知事選に向けて活動開始!

2012年07月15日 12時21分45秒 | Weblog


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 昨年秋以来の反プーチン抗議運動で政党の新規登録が簡素化され、新政党が次々に誕生している。これまでに12政党が新規登録され、既存の7政党を加えると19になった。さらに登録手続きを進めている政党を加えると、今秋までに計30政党に増える見込みという。ロシアは、ソ連崩壊直後の民主主義“開花期”に次ぐ政党乱立時代を迎えつつあるようだ。

 有力紙コメルサントによると、先週新たに国民政党「ロシアの女性のために」、ロシア農業党、ロシア国民党の3党が誕生した。夏に新政党の誕生ブームが起きているのは、州知事が大統領の任命制から直接選挙制に戻り、その第一陣の選挙が10月14日に行われるためだ。今回はアムール州、ブリャンスキー州、リャザン州など5州で知事選が行われる。このため各党とも夏休みを返上して支部づくりに懸命だ。

 新党が増えることについて政治評論家のチェルニャホフスキー氏は「与党『統一ロシア』にとっては有利だ。新政党は基本的に与党に反対票を投じる人を対象にしているので、その分、既存の野党票が減ることになる」と分析している。反プーチン派が要求した州知事の直接選挙制が、かえってプーチン支持派を利することになるとは皮肉である。

 一方、新政党誕生ラッシュで困っているのは、既存政党の選挙関係者だ。すでに州知事選挙の候補者による政見発表のテレビ撮影が始まっているが、政見発表の時間数は増やせないので、新政党が増えると各党の持ち時間が減ってしまうからだ。

 中央選管が各党の持ち時間の割り振りを検討しているが、持ち時間が減った分はラジオやインターネットで補うしかないのが実情だ。そこで大きくクローズアップされているのはインターネットだ。各党ともネットの有効利用に知恵を絞っているという。

 ロシアの有権者からすれば、民主主義と選挙を考えるいい機会である。与党とは違った草の根民主主義を一から作っていくためにも、大いに議論し、試行錯誤を恐れず、挑戦する必要がある。市民社会の伝統がないロシアにとって、この機会を大いに活用すべきだろう。(この項おわり)




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ウィキペディアのロシア語版、ネット規制法案に抗議して24時間閉鎖!

2012年07月11日 11時25分56秒 | Weblog
 オンライン百科事典「ウィキペディア」のロシア語版サイトは10日、ロシア下院で「外国人スパイ法案」が採択されようとしていることに抗議して24時間閉鎖された。この法案は、子供に健康被害をもたらすような情報サイトを排除する目的でブラックリストの作成を認めているが、ウィキペディア側は「規定が拡大されて運用される危険性がある」と警告している。

 この法案は、与党「統一ロシア」のシジャーキン議員ら6人が提案したもので、ポルノ、薬物使用や自損行為を促すようなサイトを禁止するのが狙いとされる。米国で1938年に採択された法律を事実上コピーした内容だという。

 この法案は先週、下院で審議され、賛成多数で基本的に了承された。今後、法案の語句などが吟味され、最終的に採択するかどうかが審議される。ニコフォロフ報道担当大臣は「審議は秋に再開され、法案は最終的に可決されると思う」と語っている。

 ウィキペディア側は10日、自らのサイトに黒い帯びを掛け、「自由な知識のない世界は考えられるだろうか」とのキャッチフレーズを掲げ、「この法案に反対しよう」と利用者に呼びかけている。ウィキペディア側は「この法案は中国で起きたような、インターネットの事実上の検閲につながる」と強調している。


 この法案に対し、各方面から批判の声が上がっていることから、プーチン大統領は10日夜、「法案が不備と分かれば、議会に対し、それ相当な修正を要請する用意がある」と述べた。必要なら法案の修正に応じる意向を示したもの。大統領はこの日、新設されたオンブズマンや大統領付属人権会議の代表らと会談した際に語った。

 議員立法とはいえ、こういう検閲まがいの法案がすんなり通ってしまいがちな議会の雰囲気に不安を感じる。保守的な与党に牛耳られている議会の危うい現状が浮き彫りになったと言えるが、それ以上に、与党をチェックすべき健全な野党が存在しないことが問題だ。新生ロシアが始まってから、まだ20年しかたっていないためだろうか。(この項終わり)


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ロシア首相の北方領土訪問を大袈裟に取り上げるのは意味がない!

2012年07月04日 10時40分36秒 | Weblog

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ロシアのメドベージェフ首相は3日、北方領土の国後島を再訪問したが、2010年10月と今回の訪問では意味が全く違う。前回は歴代の国家指導者として初めての北方領土訪問だったが、今回は今年9月のAPEC首脳会議(ウラジオストクで開催)に向けての視察であり、日本側が大袈裟に取り上げるのはあまり意味がないと思う。

日本のメディアは、ロシア首相の国後島訪問をNHKがトップニュースで取り上げたのをはじめ、大々的に報道したところが多かった。だが、ロシアのメディアは「日本側が(首相の北方領土訪問の)説明を求める」(インタファクス通信)などと、抑えた報道が多く、むしろ四島の開発計画が順調に進んでいるかどうかに関心が寄せられていた。

もともと今回の首相訪問に関してロシア側は「首相の通常の国内視察」ととらえ、静かに行う構えだったが、日本側が過剰気味に反応し、事態がオーバーに受け取られた印象が強い。そうなると、ロシア側は意地でも北方領土に行かなければという雰囲気になる。これはお互いにとって好ましいことではない。

プーチン大統領と野田首相との初顔合わせ(6月のメキシコでの首脳会談)がうまくいき、領土交渉がいよいよこれから始まるというタイミングで、ロシア首相の北方領土訪問が急浮上したことから、日本側が「ロシアは何を考えているのか」と、腹立たしい気持ちになるのは理解できる。だが、ロシア人にはあまりそうした繊細な心配りがないことも心得ておくべきだろう。

我々としてはこうした“神経戦”にあまりとらわれず、あくまで交渉で解決するという本筋を忘れないことが大事だ。相手の政府首脳の行動に目くじらを立てるよりも、日本側の政権基盤が低下するほうがよほど重大問題だ。野田政権が党内問題を解決して国会運営を乗り切り、早く外交問題に取り組む態勢を整えるべきだ。それなくしては、北方領土問題の解決はおぼつかない。(この項終わり)




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