飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

ウクライナ紛争を解決するにはどうすべきなのか!

2014年04月26日 17時07分43秒 | Weblog
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   米露、EU、ウクライナの外相級4者協議でウクライナの緊張緩和と治安回復策が合意されたが、ウクライナ東部から親ロシア派武装集団が撤退せず、相変わらず一触即発の状態が続いている。この事態の解決策を巡り、ロシアなどの専門家がロシア紙に投稿しているので、その議論を紹介したい。

   スターリンやノーベル平和賞受賞者、サハロフ博士の伝記作家として知られるリチャード・ラウリー氏は「オバマ米大統領はプーチン露大統領をもっと追い込むべきだ」と述べ、強硬策を取るよう主張している。そのほうがプーチン大統領の注目と敬意を集められるというのだ。

   24日の英字紙モスコー・タイムズ(電子版)によると、ラウリー氏はトゥルチノフ・ウクライナ大統領代行が国連に平和部隊を送るよう要請しているが、「ロシアには国連安保理の拒否権があるので、この提案はナンセンスだ」と決めつけ、NATO軍をウクライナに送るべきだと主張している。

   ルーリー氏によると、ウクライナ危機でプーチン大統領は直ちにボデー・ブロー(クリミア半島の編入を指すとみられる)を西側に与えたが、西側は軽いケガを与える程度の経済制裁を課しただけで、それも時期遅れだったという。

   では、どうやったら西側はロシアと同じ強烈なパンチを返せるのか。ラウリー氏は「ロシアは、バルチック海から黒海までNATO軍に囲まれることほど怖いものはない。欧米寄りのウクライナなら、ロシア包囲を完成できるだろう」と述べている。さらに、「西側はプーチン大統領の心理を推測するより、行動を非難することに熱心だが、彼の心理を理解することで、彼の次の行動を予測し、妨害することができる」と指摘している。

   一方、イゴール・イワノフ元ロシア外相は、同じモスコー・タイムズ紙に掲載された「ウクライナ紛争の火種の爆発をどうやって防ぐか」の寄稿文の中で、どの国・機関も問題解決の全責任を引き受ける準備ができておらず、共同行動を実行する用意があることを示せなかったことが問題だと指摘している。

   このため、イワノフ氏は①暴力を終わらせ、緊張を緩和させることに全力を集中する②ウクライナの経済・金融の破綻を防ぐ③5月25日の大統領選が公平に実施できるようにする、などを急いで実行するようロシア、EUなどに要請している。

   両者の解決策のうち、前者の強硬策に惹かれるのは、ラウリー氏がプーチン大統領の心理をよく掴んでいるからだ。こうした緊急時には、強く出なければ相手を揺り動かすことはできない。ましてプーチン大統領が相手だと、このくらいの強硬策を提案して脅さなければ動かないだろう。(この項おわり)
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桜吹雪の下で15回目のハルビン学院記念碑祭!

2014年04月16日 22時36分35秒 | Weblog
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  (ハルビン学院の寮歌を歌う麻田さん=左=と卒業生ら)

 
   15回目のハルビン学院記念碑祭が16日、桜吹雪の舞う東京・八王子の高尾霊園で行われ、卒業生や遺族約120人が出席した。卒業生らは計1,412人にのぼるが、終戦・廃校から68年余りが経過し、生存者は133人を残すのみとなった。その人たちもみな90歳前後の高齢となり、出席者からは「我々がいなくなっても交流の場として記念碑祭を続けて欲しい」との声が上がっていた。

   ハルビン学院は1920年、外務省所管の専門学校として旧満州のハルビンに設立された。後に満州国の国立大学となり、対露政策を担う人材養成が主眼とされた。記念碑祭は、桜の木が茂る霊園の高台に設置された記念碑の前で挙行された。神代喜雄さん(25期)の司会で始まり、最後の卒業生である谷藤助さん(24期)が「この記念碑祭もあと10年で満25年を迎えるので、みなさん元気で頑張りましょう」と挨拶した。谷さんは現在88歳だが、杖もつかず元気だ。出席者の最高齢は同期の富田正さんで91歳という。

   続いて昨年の記念碑祭以降に亡くなった卒業生の報告があった。この1年間に6人も亡くなり、今年に入ってからだけでも死者は4人を数える。卒業生の高齢化が進み、急速に生存者が減っていることを思い知らされた。このあと、全員で黙祷してから分骨や遺品の収納が行われた。遺品の中には寮歌祭で使ったハチマキや婚約指輪などの思い出の品が多かった。

   分骨や遺品収納を取り仕切った麻田平蔵さん(24期)は、記念碑の建立や記念碑祭の運営を担っている功労者である。記念碑祭は1999年の同窓会の解散後、卒業生や遺族の交流の場として設けられ、毎年この日に行われている。まもなく90歳を迎える麻田さんは「記念碑祭の面倒を見ると言った手前、生きている限り続けるしかない」と言い切る。3人の息子や自身で創立した出版社の社員らが総出で手助けしている。

  「松花の流れ手に汲みて 東亜の淵にいざつらむ・・・」
 式の最後に、ハルビン学院の寮歌「松花の流れ」を全員で歌った。
  「興安の嶺風あれて バイカルの波騒ぐ時・・・」
   旧満州の自然を歌い上げた寮歌から、ロシア進出の尖兵として期待された若者たちの意気込みが伝わってきた。

  ハルビン学院は1945年8月、日本の敗戦とともに解散された。この学院の創設と廃校は文字通り、日本の国の運命とともにあった。司会の神代さんが「今もウクライナ紛争が起きており、我々にはなぜ非常時ばかり付きまとうのか」とつぶやいた言葉が心に残った。(この項おわり)

 
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ロシア、ウクライナとも国民投票で早期解決の道を!

2014年04月15日 16時21分22秒 | Weblog

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   ウクライナ東部のドネツク州などで武装したロシア系住民と新政権の治安部隊が衝突する事態が続いているが、ウクライナ国会が大統領選と国民投票の同時実施を提案したことから、双方で妥協できる道筋が整いつつある。この線で両国がまとまれば、これ以上の武力衝突は避けられそうだ。

   ウクライナはすでに5月25日の繰り上げ大統領選実施を決定し、選挙に向けて準備が進んでいる。ウクライナ国会の妥協案は、大統領選に合わせて重要問題に関する国民投票を実施するというもの。今のところ、国家権力機構の問題、ロシア語の公用語化の問題、EUとの統合問題の3点が国民投票の議題として浮上している。

   ロシア政府はこれまでのウクライナ政府との協議で、「今後はロシアへの編入はない」と強調。①国家体制を連邦制に改める②ロシア語を公用語にする、の2点を強く要求している。ウクライナを連邦制にすれば、ロシア系住民が多い州政府に公共サービスや徴税で独自の権限が与えられ、住民の権利が守られるとみている。また、ロシア語の公用語化は、ロシア文化の維持に直結する問題である。

   これに対し、ウクライナ政府は連邦制への移行は避けたいところだが、ロシア側がこの要求を第一にあげている以上、国民投票の議題にせざるを得ないと見ている。また、ロシア語の公用化問題もロシア側の強い要求なので、議題にする構えだ。ただ、民族派や親欧米派はこれらに反対しており、国会で妥協案が採択されるかどうかは不透明である。

   政治評論家のウラジーミル・フェセンコ氏はロシアの独立新聞に対し、「これは危機脱出の方法として賢明で、国民の声を聞くいい機会だ。ただ、全国家、全民族の声が反映されるように条件をきちんと決める必要がある」とコメントしている。

   ロシア、ウクライナとも、同じスラブ民族として今後とも助け合っていかなければならない地政学的関係にある。いつまでも角突き合わせていては解決が長引くだけである。国民投票で国民の声を聞いて問題を解決するのが最善の改善策だろう。両国とも寛容な精神で妥協の道を選ぶべき時である。(この項おわり)
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ロシア下院でゴルバチョフ氏のソ連崩壊の責任問う動き!

2014年04月10日 19時13分13秒 | Weblog
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   ウクライナ・クリミア半島のロシア編入を巡る紛争に絡み、ロシア下院でゴルバチョフ元ソ連大統領に対し、ソ連崩壊の責任を問う動きが出ている。国民投票でソ連維持の支持者が大多数を占めたのに、ソ連崩壊を招いたゴルバチョフ氏に落ち度があるとして有志議員が最高検に捜査を要請した。クリミア半島編入問題は、23年前のソ連崩壊の原因究明にまで広がりそうな勢いだ。

   10日付けのイズベスチア紙(電子版)は、エフゲーニー・フョードロフ下院議員ら与党系5議員がチャイカ検事総長宛に捜査要請書を提出したと伝えた。それによると、1991年3月の国民投票でソ連維持を支持した国民が77.85%に上ったにも関わらず、ゴルバチョフ大統領は国家評議会を開き、バルト三国の独立を決めるなどして同年12月、ソ連崩壊を招いたと指摘している。

   さらに、91年11月当時、ソ連検事総長がゴルバチョフ大統領に対する捜査開始を決めたのに、最高権力者がその翌日に開始決定を取り消したとされる。フョードロフ議員は「ソ連崩壊はこの23年間、ずっと重要なテーマだったが、ウクライナ紛争が起きている今、解決が求められる問題となってきた。現在の権力制度を評価するためにも、91年時の事情を詳しく分析しなければならない」と話している。

   また、ロシア科学アカデミー歴史学術研究所のボブコワ・センター長は「法律家だけが国家崩壊の法律問題に回答を出すことができる。この問題で最初に正しい評価を下したのはプーチン大統領で『最も大規模な地政学的な悲劇』と表現した」と語っている。

   ソ連崩壊後、保守派はその“主犯探し”を続けてきた。これまでは当時のソ連大統領だったゴルバチョフ氏と、その後を継いでロシア連邦初代大統領に就任したエリツィン氏が主犯と見られてきた。エリツィン氏が亡くなった今、存命中の責任者はゴルバチョフ氏だけとなっている。

   そのゴルバチョフ氏も83歳の高齢で、今更責任を追及するのもどうかと思う。むしろ、今回の動きは、ソ連を美化し、プーチン大統領が狙う「ユーラシア経済同盟」のようなロシア版EU構築につながるのではないだろうか。プーチン大統領を支持する与党「統一ロシア」の議員が中心になっているだけに、政権と連動した動きの可能性が高い。(この項おわり)



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プーチン大統領、力を背景にした新ドクトリンを設定か!

2014年04月05日 15時06分10秒 | Weblog


     (写真はロシア大統領府公式サイトから)

   プーチン・ロシア大統領はウクライナ・クリミア半島のロシア編入を強引に推し進め、欧米などから戦後の世界体制を大きく変えようとしているとの懸念を呼んでいる。プーチン大統領は世界をどう変えようとしているのか。そのカギを解く「新プーチン・ドクトリン」がプーチン氏の演説から浮かび上がってきた。

   新プーチン・ドクトリンは、リベラル派の元下院議員、ウラジーミル・ルイシコフ氏(47)が、ロシア紙モスコータイムズに寄稿した論文で言及している。クリミア半島のロシア編入を上下院に提案した3月18日のプーチン演説を元に同氏がまとめたもので、軍事力などを背景に旧ソ連圏の特殊権益を死守しようとの試みとみられる。

   この論文の中で、同氏は7項目の新ドクトリンをあげている。第一は「ロシアはもはや西側を信頼できるパートナーとはみていない」だ。プーチン大統領は「冷戦は終わったのに、西側はロシアに対し、冷戦時のような封じ込め政策を追求している。今後ロシアはこの厳しい現実を基に行動せざるを得ない」と主張している。

   第二は「ロシアはもはや自国を欧州文明の一部とはみなさない」だ。その理由は、ロシアは民主主義国家だが、特別な民主主義で、ニセ民主主義の教義を拒否すると指摘。具体的には、国民の90%以上がクリミア編入を支持すれば、民主主義原則に基づいて編入に合法性があると強調している。

   第三は「国際法はもはや参考にすべき傾向に過ぎない」としている。プーチン大統領に言わせると、国際法は大国が国益に合わせて自由に選べるオプションのメニューに成り下がった。ロシアは今や大国なので、米国のようにダブルスタンダード(二重基準)を誇示する権利があるのだという。

   第四は「新ドクトリンは旧ソ連の全領土に適用される」だ。これは、旧ソ連諸国のどの国でもEUやNATOに加盟しようとすれば、ロシアは行動を起こす、と警告している。世界の大国にゲームのルールを見直すよう密かに呼びかける内容という。

   第五は「大国の軍事的、政治的利益が脅威にさらされた場合、弱小国の内政に自由に干渉できる」とする内容。大国の力による内政干渉を事実上認めるものといえる。第六は「国連のような国際機関の役割は大きく後退している」と指摘している。これは米国とその同盟国が過去20年間に国連抜きで軍事作戦をいかに行ってきたかを指している。

   第七は「新ドクトリンは世界の新たなパワーバランスを基にしている」。これは西側の軍事的、経済的影響力が著しく低下した半面、アジアやアフリカの新興国が影響力を持ってきた状況に合わせた対応を求めたもので、世界が極めて不安定になり、軍事紛争が増加すると展望している。

   7項目の新ドクトリンをまとめたルイシコフ氏は、プーチン大統領がクリミア半島の編入に成功したことから、ロシアが更に他の地域を編入する危険な兆候の始まりだと警告している。これはウクライナ東部やモルドバ東部の沿ドニエストルなど、ロシア系住民が多い地域への軍事介入を示唆しているとみられる。

  この新ドクトリンは、米欧への不信感をむき出しにし、旧ソ連圏の特殊権益を守るためには国際法を無視してでも実力行使する意向を示したものと受け取れる。これまでの「旧ソ連圏への影響力維持」からグレードアップしており、「ユーラシア同盟」の構築に本格的に取り組む考えとみられる。このドクトリンが実行に移されれば、ロシア対欧米諸国の「新冷戦」が起こりかねない危険性を帯びている。(この項おわり)
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