飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

就任1年!リベラル色を発揮しだしたメドベージェフ露大統領

2009年04月30日 15時20分29秒 | Weblog
 メドベージェフ氏が昨年5月にロシア大統領に就任してからまもなく1年がたつ。リベラル派を売りものにして就任したものの、強権派のプーチン首相の影で、なかなか個性が出せなかったが、ようやくリベラル色を出し始めた。

 最近の動きを拾ってみると、チェチェン独立派に対するプーチン大統領(当時)の政策などを厳しく批判し銃殺されたアンナ・ポリトコフスカヤ記者が勤めていたノーバヤ・ガゼータ紙の編集長と単独会見したり、リベラルと目される政治家や社会活動家と定期的に会談したりしている。また、大統領自身がブログを開き、国民からの生の声を聞き、すぐ対策をとることも始めている。30日付けのモスクワ・タイムズには、リャザン州の小児病院の条件の悪さを大統領ブログに投稿したところ、2日後に大統領が動き、州知事が記者会見を開いたというケースが掲載されていた。現代版目安箱というもののようだ。

 大統領就任1年を目前に行われた世論調査にも、メドベージェフ大統領就任後の変化が垣間見える。カナダの世論調査会社「グローブスキャン」が1012人に調査した結果によると、メドベージェフ氏とプーチン氏の双頭体制について「二人が権限を平等に分担している」とみる人が最も多く、41%を占め、「プーチン首相が裏で糸を引いている」と見る人は27%だった。就任当初に比べ、「プーチン氏が実権を握っている」と見る人が減ってきたことは間違いない。

 また、「人権や市民の自由がメドベージェフ政権下で改善された」と捉える人が32%にのぼった。もっとも40%の人はこの考えに同意しておらず、人権意識も西側に比べるとまだ低いのも事実だ。

 一方、外交については「ロシアは世界で望ましい国と認められている」と見る人が最も多く、6割を占めた。その半面、「隣国に脅威を与えている」とみなす人も12%いる。いづれにしろ、新政権が落ち着いてきて、国民から評価されつつあるといえる。
 

ロシア紙に批判された麻生首相の北方領土問題への対応

2009年04月25日 09時41分31秒 | Weblog
 谷内正太郎政府代表(元外務次官)の北方領土問題に関する「3・5島返還」発言がロシアでも関心を呼んでいる。ロシア国内では当初、日本側が4島返還に固執しない解決方法へのシグナルを送り始めたとの好意的な見方をしていたが、その後麻生首相が谷内発言を否定し、あくまで4島返還に固執する意向を示したとして麻生首相への失望感が強まりつつある。

 谷内発言に真っ先反応したロシアの新聞は有力経済紙コメルサントで、ゴロブニン・タス通信東京支局長の署名記事を掲載。麻生首相が外相時代に「3・5島返還論」に言及したうえ、今年モスクワを訪問した小泉元首相が北方領土分割論に関心を示したことなどを紹介。5月のプーチン首相訪日を前に、日本側で「領土分割論」が活発化していると伝えた。

 ところが、24日の中立系有力紙・独立新聞は「麻生首相が4島全部の返還を要求している」との見出しで、首相が領土問題で厳しい姿勢に戻ったとの記事を掲載した。それによると、首相は2月にサハリンで行われたメドベージェフ大統領との首脳会談で「独創的で型にはまらないアプローチ」で領土交渉を進めることで合意したのに、谷内発言を否定し、独創的な手法で解決しようと提案したことはないなどと発言、総選挙を目前にして「大向こうに取り入ろう」と懸命にロシアとの合意から逃れようとしていると批判している。

 ロシア側からすれば、谷内発言で妥協の具体策が政府側から出てきたのに、首相が選挙対策でその芽をつぶそうとしているとみえるのだろう。日本政府はこれまでも、観測気球を打ち上げては批判が出ればすぐ取り消すという姑息な方法をとり続けてきた。今回も首相がこういう対応をとれば、せっかくの「解決可能な道を探る努力」を無にしてしまいかねない。たとえ選挙が控えていようが、首相に国民をより良い方向へ引っ張っていく気概がなければ外交はできない。中途半端な気持ちで重要な外交問題に手を出されては、国民にとっては迷惑としか言いようがない。

麻生首相は北方領土問題で本音を話せ!

2009年04月18日 09時37分07秒 | Weblog
 前外務次官で現在政府代表を務める谷内正太郎さんが毎日新聞に語った北方領土問題についての発言が話題を呼んでいる。四島返還を建前にしている政府の方針に対し、個人的な意見といいながら「3・5島(返還)でもいいのではないか」と発言したためだが、麻生首相は以前から「面積等分解決案」を述べており、谷内発言は首相の意向を受けたものともいえる。ところが、この発言が問題になると、政府はまたしても「個人的見解で政府方針に変わりはない」(河村官房長官)という逃げを打って火消しに努めている。この際首相は本音を国民の前に明らかにすべきではないか。

 そもそも「面積等分解決案」は首相が外相のときに国会答弁で述べたもので、いわば首相の持論とも言うべきものだ。もっともこの知恵を授けたのは外務省の官僚だろうから、外務省自身もこの解決案を選択肢として持っていることは間違いない。この案は、ロシア側の2島返還論と日本側の4島返還論の妥協策としては一番わかりやすい考え方で、ロシア側も十分検討していると思われる。

 なぜこの案がいいかというと、4島といっても島によって大きさが違い、ロシアが返してもいいと言っている歯舞、色丹島は面積では全体の7%に過ぎない。これでは日本側としても到底納得できない。ところが、4島全体の面積を二等分すると択捉島の真ん中に線を引くことになり、日本側としては3・5島返還となる。ロシアも中国との国境紛争では面積等分の形で解決した経緯があり、むげには否定できない。日本側が交渉でこの線を押していけば解決の糸口が開ける可能性は十分ある。しかも、最終場面で日本側が3島で手を打つこともできる。いわば交渉の”のりしろ”があるというわけだ。

 戦後60数年たっても日露平和条約が締結できないのは異常であり、両国の関係発展を大きく阻害している。今こそ領土問題で双方とも良識ある解決方法を真剣に探るべきだ。日本側が4島返還を主張するのは当然だが、4島に固執していてはいつまでも解決できない。4島を返還させたいなら、千島列島全体の返還要求をするくらいでないと4島は返ってこない。


 領土問題を本当に解決したいなら首相が国民にきちんと解決案を説明して理解を得るべきだ。いつまでも逃げていては、解決が先送りされるだけだ。5月のプーチン首相来日は解決の道筋をつける絶好の機会だ。この機を逃すべきではない。

 

旧ソ連のモルドバ共和国、欧州とロシア対立の新たな火種に!

2009年04月13日 10時29分32秒 | Weblog
 モルドバ共和国は以前、ベッサラビア地方と呼ばれていた。肥沃な黒土地帯にあることから、古くから隣国のルーマニアやトルコの間で領有権争いが続いている。第一次大戦後にルーマニアに編入されたが、旧ソ連が認めず、モルドバ共和国としてソ連圏に引き入れた経緯がある。いま、このモルドバをめぐってルーマニアとロシアが綱引きをしている格好だ。

 今回、争いが起きているのは、5日に投票されたモルドバ議会選が発端だ。与党の共産党が勝利宣言したが、野党側は選挙に不正があったとして選挙のやり直しを求めて街頭デモを始めた。そして7日、首都キシニョフで暴動が起き、野党支持者が大統領府と議会を占拠する事態に発展した。翌日、警官隊が大統領府と議会を奪還したが、共産党のウォロニン大統領はルーマニアが抗議運動に関与していると批判、ルーマニア大使の国外追放を通告した。ロシアはウォロニン大統領を支持していて、欧露間の対立に発展しそうな雲行きだ。ルーマニアは欧州連合(EU)に加盟しており、ロシア対EUの紛争の火種になるかもしれない。

 ところが、13日付けのロシア・コメルサント紙によると、野党側は7日の暴動は「共産党政権が不正選挙への批判をそらすために起こしたもの」と非難しているという。その「証拠」として、暴動参加者の中に警察関係者が加わっている写真があると指摘している。これが事実だとすると、共産党側の自作自演となり、非難の矛先が大統領自身に向かうことになる。そうなると、ロシアの立場も危うくなる。

 モルドバは民族的にルーマニアに近く、共産党政権も当初、EU加盟を目指す方針を打ち出したが、その後ロシアとの結びつきを強めている。今回の騒動で共産党大統領はルーマニアを敵視し、ビザ(査証)制度を導入して入国管理を強化することを決めたが、これも狙い通りだったのか。モルドバ情勢に当分目が離せない。

北朝鮮の弾道ミサイル発射で判明した「日米同盟」の現実

2009年04月06日 10時18分58秒 | Weblog
 北朝鮮が5日、長距離弾道ミサイルを発射し、6日の各紙朝刊はこの問題で全面展開している。各紙の論調はおおむね「国際結束で脅威を抑えよ」(朝日)「安保理で共同歩調探れ」(毎日)「安保理は制裁決議の再確認を」(読売)などと国際協調で北朝鮮を封じ込めよという主張だが、はたしてそれだけで十分だろうか。

 今回の一連の問題で明るみに出てきたのは、日本政府が安全保障の根幹においている日米同盟が非常に頼りないもので、いざというときに日本を守ってくれないのではないかという疑問である。この点にはっきり言及しているのは産経の古森ワシントン駐在編集特別委員ぐらいだった。

 もちろん今回の問題でも情報収集では日米が協力し、米軍の早期警戒衛星が捉えた発射情報が大きな役割を果たした。しかし、米国は「ミサイルが米国本土に向かってこない限り、迎撃の計画はない」(ゲーツ国防長官」として日本に向けての発射には対応しない考えを示した。今回は日本が独自に迎撃を計画し、幸い何事もなかったからよかったものの、間違って日本国土に落ちた場合、日本の防衛力で対応できたかどうかわからない。

 日米同盟の実態については駐ウズベキスタン大使などを務めた孫崎享氏の著書「日米同盟の正体」(講談社現代新書)に詳しいが、同氏は日本政府が頼りにしている米国の「核の傘」は役に立たないと言い切っている。外務省の重要ポストを勤めた外交官の言だけに説得力がある。とくに氏は、日本政府が巨額の金をかけて整備しつつあるミサイル防衛について「有効に機能しない」と決め付け、軍事の枠組みの中では「核への抑止力」は達成できないとしている。

 今回の問題から「断固たる制裁を加えよ 抑止可能な防衛力の整備を」(産経)などと軍事力の拡大を主張する意見が出始めているが、その基盤となる日米同盟のあり方自体を再検討しないと日本の安全保障論議が進まないところにきている。この際、日米同盟はどうあるべきか、ミサイル防衛は有効かどうかという原点に戻って冷静に考え直すべきではないか。

初の米露首脳会談は関係急展開のきっかけになる!?

2009年04月02日 21時34分13秒 | Weblog
 ロンドンで1日開かれたオバマ・メドベージェフ両大統領による初の首脳会談は、米露関係のリスタートにふさわしく、温かい雰囲気の中で行われたと米紙は伝えている。その半面、二人とも法律家だけに、ビジネスライクに進められたようだ。

 会談はロンドンの米国大使公邸で行われ、通訳を交えた二人だけの「さし」の会談は10分程度で、残る60分間はクリントン国務長官らも加わって続けられたという。さしの会談が短かったのは、全体的に時間がかぎられていたためだろう。これでは、個人的な関係を深めるまでには至らなかったに違いない。

 しかも、会談は事務方のシナリオに従って進められたようで、あらかじめ準備された共同宣言案を確認する形で行われたとみられる。このため、懸案の東欧へのミサイル防衛計画やグルジア紛争などについては見解の相違を確認した程度で、突っ込んだ議論まではしなかったらしい。オバマ大統領としては「今回は論点整理にとどめておこう」というつもりのようだが、難しい問題は腹を割って議論しないと打開の道は開けない。弁護士としてはやり手だが、ネゴーシエイターとしてはどうかなと疑問を感じた。

 いずれにしろ、今回は二人とも手合わせ程度に終わったといえる。7月に予定されるオバマ訪露で双方とも真価を問われることになろう。その一方で、米国とロシア(旧ソ連も含め)首脳の初会談はこれまで、歴史的転換点のきっかけになるケースが多かった。1961年のケネディ・フルシチョフ会談の直後には、フルシチョフが冷戦の象徴であるベルリンの壁を築き始めた。さて、今回の会談も米露関係の急展開をもたらすきっかけになるのだろうか。