飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

反プーチン派のナバリヌイ氏は強力な大統領候補になれるのか?

2013年09月28日 15時16分40秒 | Weblog
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(質問に答える政治評論家のシェフツォーワさん)
反プーチン運動の指導者、ナバリヌイ弁護士(37)はモスクワ市長選(9月8日実施)で善戦し、有望な大統領候補の一人と目されている。ロシアの有名な政治評論家、シェフツォーワさんは、ナバリヌイ氏がプーチン大統領と同様、民族派や左派など幅広く支持を呼びかけるポピュリストであると分析。将来の見通しについては「(エリツィン政権時に大統領選で3位になった)レベジ将軍のようにあっという間に消える政治家もある」として明言を避けた。

われわれ日露学術報道専門家会議の一行は、モスクワのカーネギー財団センターで、シェフツォーワさんに最近のロシア情勢について尋ねた。市長選で現職のソビャーニン市長に敗れたものの、事前に実施された世論調査の結果を大幅に上回る27%の得票率で次点になったナバリヌイ氏に関する質問が多かった。

シェフツォーワさんはまずナバリヌイ氏善戦の理由について「新しいタイプの政治家で、プーチン反対派の若い世代が政治に参加し始めた。彼はどのイデオロギーにも属せず、民族派とリベラル派に橋を架けようとしている」と語った。その半面、リベラルな主張はせず、「リベラル派は投票できず、分離された形」と述べた。ただ、今後リベラルな主張をする可能性もあると付け加えた。

一方、再選されたソビャーニン市長については「プーチン大統領の後継者になるとみていた人が多かったが、(得票率は51%と過半数ぎりぎりで)クレムリン内での地位は弱くなった。戦略的には敗北した」と指摘した。反プーチン派候補を容認しても現職市長の得票率が6割を超すとのクレムリンの目算が外れたことを強調した。

シェフツォーワさんは反プーチン派の論客として知られている。プーチン大統領が昨年5月に復帰してからの政権について「ある期間、方向を失ったような時期があったが、すでにロシアのコントロールを取り戻した。この1年半で弾圧的、抑圧的な機関を構築したからだ」と分析した。

さらに、プーチン政権の現在の目標に関して「プーチン政権は今の体制を永遠に続けることに努力を注いでいる。改革や近代化の計画も期待もすでになくなっている」と語り、今後の政権運営に悲観的な見方を示した。

  昨年もわれわれはシェフツォーワさんと会見したが、当時はプーチン政権発足直後で、街頭行動やNGO(非政府機関)への規制強化策などを厳しく批判、「革命が起こりかねない状況」と指摘していた。今回はそうした厳しい批判は少なく、ロシアの民主主義の将来に絶望的な感じを抱いているような気がした。(この項おわり)


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「プーチン大統領は健康なら24年まで続投する」!

2013年09月25日 14時36分31秒 | Weblog
 
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(日露会議一行の質問にジョークを交えて答えるベネディクトフ編集長)
  シリアの化学兵器廃棄問題で存在感を世界に示したプーチン大統領は、内外のロシア専門家を集めた19日の「バルダイ会議」で、18年の次期大統領選への立候補を示唆した。これについて民主派の論客、ベネディクトフ・ラジオ局編集長は「健康なら立候補し、(2期目の任期が切れる)24年まで続投する」との見方を示した。この通りだとすれば、ソ連時代のブレジネフ政権(18年間)を上回る24年間の長期政権となる。

  ロシアに関心がある学者・ジャーナリストで組織する「日露学術報道専門家会議」の一行は20日、モスクワのラジオ放送局「エホ・モスクブイ(モスクワのこだま)」を訪れ、ベネディクトフ編集長と会見した。いつもの格好で我々の前に現れた編集長はプーチン大統領の進退について「大統領はいつも運がいい。大統領を(8年に)辞め、メドベージェフ氏に譲ってから経済危機(リーマン・ショック)が起きた」と語り、運の良さを強調した。

  また、大統領のバルダイ会議での再選示唆発言について「私は選挙に関する政治家の発言はあまり信じないが、今回の大統領の発言は信じる。以前、大統領と個人的に話したとき、お互いに24年まで今の職務を続けようということで意見が一致したからだ」と述べ、大統領と“密約”を交わしたことを明かした。

  さらに編集長は、シリアの化学兵器廃棄問題について「プーチン大統領は米国では共和党右派のマケイン上院議員のような人物だ。プーチン大統領から見ると、オバマ米大統領は弱すぎる。それを知っていたから、オバマ大統領がロシア側の化学兵器廃棄提案を受け入れると分かっていた」と語り、ロシア側の今回の廃棄提案を「よく考えたうえでの対応」と評価した。

  また、プーチン大統領が北方領土問題の早期解決を目指し、日本側に「引き分け」を提案したことについて「大統領にはプラグマチズムと国家主義の二つの特徴がある。北方領土問題の解決を望んでいるが、陳腐な解決案ではなく、これまでにない案を検討する用意がある」と、独創的な案を提示する可能性を示唆した。

  プーチン大統領は昨年5月に復帰して以来、人権や民主主義を規制する法律改正を推進している。それに関して編集長は「大統領本人は民主主義的な手続きには疑問を感じていて、悪用されていると思っている。一方で、選挙の時は世論を利用しないといけないと感じている。片手でアクセルを握り、片手でブレーキを踏んでいる」と分析した。

  ベネディクトフ編集長はプーチン大統領の世界戦略について「大統領は今の世界秩序を固定させたいと考えている。ソ連時代に失ったものが大きかったので、旧ソ連地域への影響力を維持しながら、ロシアの影響力を拡大すれば、ソ連時代の地位を維持できると見ているのではないか」と語った。

  我々は毎年のように編集長に会見しているが、ジョークを交えながらロシアの政治、経済、社会を鋭く分析してみせるので、毎回楽しみにしている。プーチン大統領との対立で取締役解任が伝えられていたが、大統領同様、24年まで編集長を続投すると明言しており、今後もハギレのいい分析が聞けそうだ。(この項おわり)
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反プーチン派のナバリヌイ弁護士、モスクワ市長選の無効を要求!

2013年09月12日 11時19分47秒 | Weblog

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  反プーチン運動の指導者ナバリヌイ弁護士(37)は11日、ソビャーニン前市長(55)が再選されたモスクワ市長選(8日実施)には多数の違反がある、として市長選を無効とするよう要求した。「前市長の得票率が過半数に達していないのは明らか」と主張、近く訴訟を起こすと宣言し、今後法廷で争われる可能性が出てきた。

  モスクワ市中央選管はこの日、市長選の最終結果を発表。ソビャーニン前市長が51.37%の得票を獲得、再選されたと公式に認定した。ナバリヌイ弁護士は27.24%の得票率で次点とされた。就任式は12日に行われる予定。

  これに対し、ナバリヌイ弁護士は自己のツイッターで「最も問題のある投票は有権者の自宅で行われた投票で、これを除くと前市長の得票率は49.47%にしかならない」と指摘、第1回投票での当選に必要な過半数の得票率に達していないと主張した。

  同弁護士によると、年金生活者は自宅での投票が認められるが、自宅での投票率が異常に高い地区がいくつかある。自宅での投票には違反がつきまとうので、意図的に行われた可能性がある。また、年金生活者に対する食料品無料配布が行われた地区では、投票行動に影響を与えた恐れがある。さらに、選挙期間中、前市長の国営テレビへの露出が非常に多く、不公平だと主張している。

  ナバリヌイ弁護士は「選挙違反の資料は5万ページにのぼり、トラックで運ぶ」と述べ、早ければ12日にもモスクワ市裁判所に提訴する方針を示した。反プーチン派は14日に抗議集会を行う予定だが、同弁護士は当分裁判闘争に専念するため、集会を延期するよう支持者に要請した。

  一方、連邦中央選管は「(モスクワ市長選では)検討に値するようなクレームは一件もなく、選挙結果に満足している」と不正選挙を否定している。プーチン大統領も11日、秋の地方選挙で当選した州知事やモスクワ市長をクレムリンに招き、祝福した。

  政権側はモスクワ市長選が適法に行われたとして、ナバリヌイ弁護士の主張を無視する構えだ。今後、裁判所側がナバリヌイ陣営の選挙違反の申し出にどう対応するかが焦点になる。だが、今回の選挙でモスクワ市民の約3人に1人がナバリヌイ弁護士に投票しており、無視し続けることはできないだろう。(この項終わり)=筆者は15日から海外旅行のため、しばらくブログを休載します。
 
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モスクワ市長選で善戦のナバリヌイ弁護士、不正選挙を告発!

2013年09月10日 01時04分35秒 | Weblog
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  モスクワ市長選は8日、投開票が行われ、プーチン政権の支持を受けたソビャーニン前市長(55)が再選された。だが、反プーチン運動の指導者ナバリヌイ候補(37)は「選挙に不正があった」と主張、再調査を求めている。反プーチン派が街頭に繰り出した2年前の下院選に似た状況になりつつある。

  モスクワ市中央選管は9日未明、ソビャーニン前市長が51.37%の得票を獲得、第1回投票で再選が決まったと公表した。ナバリヌイ候補は27.24%で次点となった。投票率は32%と、これまでの市長選に比べてかなり低かった。

  これに対し、ナバリヌイ候補はツイッターで「選挙結果は偽造されたもので、我々は認めない」と主張、ソビャーニン前市長に面会を求めた。不正選挙の根拠としてナバリヌイ候補は①投票率の発表が遅かったのは当局が操作したため②ソビャーニン前市長の得票率は実際には過半数に達しなかったので水増しした、などと指摘。決選投票の実施や投票用紙の再点検を求めている。

  前市長は投開票前、「ナバリヌイ氏と会談する用意がある」と述べ、同氏と協力していく構えを見せていた。ところが、開票後、前市長陣営は一転して「会談する必要はない」と面会を拒否した。さらに、「投票用紙の再点検は選管か、裁判所が行うもの」として、要求に応じない意向だ。

  今回の市長選の結果について、メディアも投票率の異常な低さなどに疑問を呈している。今回の市長選は首長任命制から公選制に戻って10年ぶりの選挙となったが、これまでは投票率は毎回50%を超えていた。それが一転して09年の市議会選(35%)よりも低下しており、「不正があったのでは」との見方の根拠となっている。

  さらに、ナバリヌイ候補が予想以上に高い得票率だったことから、反プーチン派が勢いづいており、再び街頭での抗議行動が強まる可能性がある。このため、政権側もうかつに手を出せない状況で、しばらくは双方がにらみ合う緊張状態が続きそうだ。(この項おわり)

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ロシアに対する世界のイメージは依然として否定的!

2013年09月05日 15時34分13秒 | Weblog

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  ロシア・サンクトペテルブルクでのG20首脳会議を前に、米国の著名なシンクタンク「ピュー・リサーチ・センター」が世界各国でロシアのイメージについて世論調査を行ったところ、「否定的」が39%で、「肯定的」の36%を上回ったことが分かった。

  5日のコメルサント紙(電子版)によると、この調査は世界の人々3万8千人を対象に行われた。国ごとの調査で肯定的なイメージが圧倒的多数を占めたのは、ギリシャ(63%)と韓国(53%)の2カ国だけだった。

  逆に、否定的なイメージが最も多かったのはイスラエルで77%、次いでヨルダン(70%)、トルコ(66%)、そのあとにフランス、日本、エジプトの64%が続いた。米国は否定的が43%、肯定的が37%だった。

  同センターはこの結果から、ここ数年、ロシアのイメージが悪化していると結論づけている。とくに悪化の著しい国はヨルダンで、前回の07年調査に比べ23ポイント増加、次いでエジプトが16ポイント増えている。イメージが良くなっている国はインドネシアとアルゼンチン。年代別では18歳から29歳の若い世代で良くなっている。

  ロシア下院外交委員会のカラシニコフ副委員長は「西側でのロシアの否定的イメージは、多くは価値観の違いに由来している。最近ロシアで同性愛者への西側の対応を批判する傾向が強まっていることも一因だろう。一方、中東ではシリアへのロシアの対応に不満を抱いている人が多い」と分析している。

  また、コサチョフ・ロシア国際人文協力局長は「西側には、我が国の信用を失墜しようという一貫した流れがある。つまり、何事もロシアが悪いという前提があり、否定的な情報への社会的な要請があるからだ」と悲観的な見方をしている。

  プーチン政権は、ロシアのイメージアップのため様々な手段を講じているが、かえってイメージが悪化しているのが実態だ。その背景には「ロシアは何をするかわからない」という固定観念があるからで、この観念を解消するには事あるごとに行動で示していくしかないだろう。(この項終わり)
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プーチン大統領、極東開発相の後任にトルトネフ元天然資源相を指名!

2013年09月02日 07時21分59秒 | Weblog

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  プーチン大統領は8月31日、イシャエフ極東開発相(65)を解任し、後任に地方自治体の首長から中央政界に引き上げたユーリー・トルトネフ元天然資源相(57)を副首相格で任命する方針を示した。これにより、2年越しの極東開発を巡る政権内抗争は終結に向かいそうだ。

  極東開発省は、プーチン大統領がシベリア・極東開発に全力を挙げて取り組むため昨年5月、第二次プーチン政権発足と同時に新設された。そして初代大臣にハバロフスク地方知事を務めたイシャエフ氏が任命された。だが、極東開発を所管するシュワロフ第一副首相との間で開発を実行する組織などをめぐって対立が続き、開発は思うように進んでいなかった。

  イズベスチヤ紙(電子版)によると、プーチン大統領は7月、イシャエフ氏に対し「地域発展に関する指示の8割が実行されていない」と名指しで批判した。一方、イシャエフ氏は大統領に権限の拡大を要求、大統領令の案文を送りつけるなど抵抗。大統領もついにイシャエフ氏の解任に踏み切ったという。

  後任のトルトネフ氏は副首相と極東連邦管区大統領全権代表に任命され、その後、極東開発相に就任する見通し。同氏は地方政界からプーチン政権の閣僚に引き上げられた異色の政治家。96年に中部ロシアのペルミ市長選に立候補して当選。00年にはペルミ州知事選に出て、また1回で当選、政界から注目された。04年には第一次プーチン政権の天然資源相に任命された。

  トルトネフ氏のもう一つ異色な点は、趣味が極真カラテだということである。このため柔道家のプーチン大統領ともウマが合うようだ。現在、極真空手をオリンピックの正式種目にする運動の呼びかけ人もしている。

  同氏の政治的手腕は未知数だが、地方政界でみせた行政手腕で停滞する極東開発を活発化させる“救世主”になるのでは、と期待されている。08年の大統領選に立候補するとの下馬評もあった政治家だけに、ロシア政界の注目株といえよう。(この項終わり)

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