飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するホットなニュースを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外に面白い!

ナゴルノカラバフ紛争の原点はロシア帝国以来の民族問題!

2020年10月04日 16時52分27秒 | Weblog
9月下旬から始まったアゼルバイジャンのナゴルノカラバフ自治州を巡る紛争は、アゼルバイジャンとアルバニアに加え、トルコが介入して国際的軍事衝突に発展しつつある。このため旧ソ連の盟主・ロシアが懸命に停戦を呼びかけているが、軍事衝突は収まるどころか、拡大に向かっている。この紛争の原点は、ロシア帝国時代からの複雑な民族問題で、それを探らないと根本的な問題が見えてこない。

黒海とカスピ海に囲まれたカフカス地方は、古来から民族構成が複雑。ロシア帝国・ソ連時代は為政者の命令で国境が決められ、民族分布と一致していないところが多かった。その中でも特に、キリスト教信仰の国・アルメニアと、イスラム教信仰の国・アゼルバイジャンとは、古くから民族衝突を繰り返してきた。最大の対立点は、ナゴルノカラバフ地方をどちらの帰属にするかだった。アルメニアがソ連に加わった1920年には、アルメニア人が94%を占めていたことから、アゼルバイジャンもいったんは、アルメニアへの帰属を認める宣言を出した。ところが、1年後、スターリンの介入により逆転決定がなされた。

1923年7月、ナゴルノカラバフ自治州が正式にアゼルバイジャン共和国に帰属となった。だが、その後、アルメニア人の民族的権利が度々無視されたことから、アルメニア人は帰属替え要求を繰り返し出してきた。1988年6月、アルメニア共和国最高会議がナゴルノカラバフ自治州編入要求を決議したため、アゼルバイジャン共和国と対立、両共和国の間で大規模な軍事衝突が相次いだ。多数の死傷者が出たため、ソ連最高会議幹部会は同自治州を中央直轄にしたが、その後も衝突が続いたことから、幹部会は中央直轄を解除した。それでも対立が収まらず、1990年1月、ついに非常事態宣言が発令される事態となった。

1994年、ロシアの仲介でようやく停戦を迎えたが、紛争が長期化した結果、死者3万人以上、負傷者約5万人がでた。その上、アルメニア人約34万人、アゼルバイジャン人約100万人が難民及び国内強制移住者になったとされる。その後も双方とも自国領を主張して、「戦争でも平和でもない状態」が続いていた。今回はさらに、アゼルバイジャンと民族的に近いトルコの軍隊が軍事衝突に介入しと見られている。この紛争はすでに1世紀城も続いているだけに、当事国はもちろん、国連加盟国全体が和平に向けて積極的に行動すべき時を迎えている。(この項終わり)
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旧ソ連のナゴルノカラバフ紛争、死者100人超え戦闘拡大!

2020年10月01日 10時36分07秒 | Weblog
旧ソ連南部のアゼルバイジャンとアルメニアが領有権を争っているナゴルノカラバフ自治州で9月下旬、軍事衝突が起き、民間人を含む死者数が100人を超えた。両国とも戒厳令を敷き、軍隊を動員していて1994年の停戦以来、最大級の衝突になりつつある。両国と友好関係にあるロシアが戦闘停止を呼びかけているが、アゼルバイジャンの友好国、トルコも加わり、戦闘はさらに拡大する勢いだ。

今回の衝突は9月27日朝始まったが、原因ははっきりしない。アゼルバイジャン、アルメニアの双方が「相手が先に攻撃してきた」と主張しているからだ。今回の戦闘は今年7月、アゼルバイジャン北西部のトブス周辺で起き、十数人が死亡したのが始まりだ。これに対し、アゼルバイジャンのアリエフ大統領は「アルメニアが新たな戦争の準備をしてる」と非難、緊張が続いていた。

そもそも両国の紛争はソ連時代末期の1988年に始まり、それ以降、紛争が続いている。ナゴルノカラバフ自治州はアゼルバイジャン共和国内にあるが、多数派を占めるアルメニア人住民がアルメニア共和国への編入を求めたのがきっかけだった。それがアゼルバイジャンとアルメニアの国家同士の紛争に発展し、約2万人の死者がでた。ソ連崩壊後の94年にようやく停戦したが、その後はアルメニアが実効支配している。

今回はアルメニア側が積極的で戦闘が始まった27日、パシニャン首相がいち早くナゴルノカラバフの独立を承認する可能性を公式に言明した。これに対し、アゼルバイジャンのアリエフ大統領も「アゼルバイジャン領の占領を終わらせる」と失地回復への意欲を示した。このため両国とも本気で領土紛争の武力解決を目指して動いていると言えそうだ。

これに対し、ロシアのラブロフ外相は27日、両国やトルコの外相と相次いで電話会談を行い、戦闘停止を呼びかけた。さらに、プーチン大統領もロシア主導の「集団安全保障条約機構」(CSTO)に加盟するアルメニアのパシニャン首相と電話会談を行い、戦闘激化を防ぐよう要請した。だが、トルコ軍のF16戦闘機が29日、アルメニア軍のスホイ25戦闘機を撃墜、パイロットが死亡したことから、軍事衝突が拡大している。このため国連安全保障理事会は29日、非公式に協議し、議長国が武力行使を非難する談話を発表するなど、波紋が広がっている。今後、戦闘拡大防止に向け、国際社会がどう動くかに注目が集まっている。(この項終わり)
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プーチン露大統領、ベラルーシに15億ドルの緊急融資を約束!

2020年09月15日 21時10分58秒 | Weblog
ベラルーシ大統領選後の混乱収拾を目指してロシア南部のソチで会談したプーチン露大統領とルカシェンコ・ベラルーシ大統領は9月14日、ロシアがベラルーシに15億ドル(約1580億円)の緊急融資を行うことで合意した。プーチン大統領はベラルーシを「ロシアの最も近い同盟国」と呼び、全面的に支援することを明らかにした。だが、ベラルーシの反政権派はあくまでルカシェンコ大統領の退陣を要求する構えで、事態の収拾には時間がかかりそうだ。

タス通信などによると、首脳会談はプーチン氏とルカシェンコ氏のサシで行われ、プーチン氏はルカシェンコ氏の大統領選勝利を改めて容認、支援していくことを明らかにした。その上で、ベラルーシ支援のため、15億ドルの緊急融資を行うことを約束した。さらに、ルカシェンコ氏が混乱収拾策として国民に提案しているベラルーシ憲法の改正に賛意を示した。これに対し、ルカシェンコ氏は「選挙後にわれわれを支援してくれた全てのロシア人に感謝する」と謝意を述べた。

また、プーチン大統領はベラルーシ情勢を監視するため、国境周辺に出動させた治安部隊を撤退させることを約束した。これにより、ベラルーシは今後、反政権派対策に専念することになるが、国民はルカシェンコ政権の5期25年に及ぶ”強権政治”に飽き飽きしており、どのように反政権派を説得していくかがカギとなる。現在、反政権派は市民各派の代表による「調整評議会」を結成して抗議行動を指揮しているが、政権側の相次ぐ弾圧で大半のリーダーが拘束されているのが実情。このため、双方が話し合いのテーブルにつけるかどうかが当面の焦点となろう。(この項終わり)
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ベラルーシの混乱激化、ルカシェンコ大統領がプーチン大統領とサシの緊急会談!

2020年09月14日 16時32分48秒 | Weblog
8月9日のベラルーシ大統領選の結果に対する市民の大規模な抗議行動は首都ミンスクを中心に続けられ、1ヶ月たっても収まるどころか拡大する一方だ。このためルカシェンコ・ベラルーシ大統領は14日、急きょ空路ロシア・黒海沿岸の都市ソチへ飛び、プーチン・ロシア大統領と会談に入った。現地からの報道によると、会談は一対一で行われ、両国の協力関係から国際関係まで幅広く協議しているもようだ。

大統領選の結果についてベラルーシ選管は現職大統領の6回連続当選を発表したが、反政権側は政権側による大規模な不正が行われたとして抗議行動を続けた。その後、ルカシェンコ大統領の退陣を要求して連日のように抗議集会やデモ行進を行なっている。9月13日夜にはミンスク市内で15万人以上が参加する抗議活動が行われ、タス通信によると、内務省治安部隊はデモ隊に向けて”警告発砲”を行った。けが人などの被害状況は不明だが、この抗議行動で市民約770人が拘束された。

こうした事態を受け、ルカシェンコ大統領は14日、プーチン大統領との会談を要求、ロシア南部のソチでサシの首脳会談を開くことになった。ルカシェンコ大統領が国外に出るのは選挙後の混乱が始まって以来、初めて。プーチン大統領とは親密な関係にあり、すでに選挙後、数回電話で会談している。今回は会談後の合意文書調印などは予定されておらず、ルカシェンコ氏は今後の対応をプーチン氏と細かく打ち合わせるものと見られる。

一方、ベラルーシの反政権側は各代表による「調整評議会」を結成して再選挙の実施などを求めてきた。だが、評議会のメンバーが次々に政権側に拘束され、特にメンバーの象徴的存在のコレスニコワ氏が7日に何者かに連れ去られ、存続の危機に陥っている。反政権派によると、大統領選後の拘束者数は延べ1万人以上に達しているという。このため政権派、反政権派とも手詰まり状態になっており、両大統領の会談でどういう結論が導き出されるか注目される。(この項終わり)
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プーチン露大統領、ベラルーシ大統領選の正当性を容認、混乱長期化へ!  

2020年08月30日 16時19分27秒 | Weblog
8月9日の大統領選後、混乱が続く旧ソ連・ベラルーシで29日、新たな動きがあった。一つは首都ミンスクで女性たちが参加するデモがあり、約1万人が参加、これまでに拘束された人々を釈放するよう求めたこと。もう一つは、大統領選後、沈黙を守っていたプーチン・ロシア大統領が選挙の正当性を明確に認め、ルカシェンコ大統領の当選を支持したことだ。このためプーチン氏は不正選挙と認定した欧州連合(EU)と対立することになり、ベラルーシの混乱は長期化する見通しとなった。

ミンスクでのデモは「女性の行進」と命名され、首都中心部を女性達がプラカードや花束を持参して行進した。そして警備する多数の治安部隊の隊員に対し、花束を手渡し、拘束されたり暴行を受けたりした人々への支援を訴えた。治安部隊員は花束を受け取らなかったが、現地で取材していたロシア人特派員は「デモ参加者はミンスクの有能な女性達で、彼らの平和を求める行動は見ている人たちに大きな印象を与えた」と書いている。

一方、プーチン大統領は親密なルカシェンコ大統領の6回目の当選を認めることで、今後も積極的に支援していく決意を固めたと見られる。プーチン氏は旧ソ連の崩壊で失われた国家連合を再構築しようと努力しており、その第一弾としてベラルーシとの連合を強く呼びかけている。ルカシェンコ大統領はこれまで趣旨には賛成しながら、自国の事情を考慮して積極的には動かなかった。だが、今回の事態を受けてロシアとの関係を強化しつつ、自らの大統領権限を維持する考えと見られる。

これに対し、ルカシェンコ大統領を「欧州最後の独裁者」とみなす欧米諸国は、今回の事態を「ベラルーシを民主化するチャンス」ととらえている。このため、大統領選で善戦した主婦候補のチハノフスカヤ氏をリトアニアに脱出させ、ルカシェンコ大統領を追放する方針と見られる。だが、双方とも決定的な打開策を持っておらず、混乱は長期化する可能性が高い。今後、米国など大国が解決に乗り出さない限り、泥沼化する恐れもある。(この項終わり)
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ベラルーシで選挙不正への抗議行動が全国に拡大!

2020年08月20日 10時32分29秒 | Weblog
8月9日に旧ソ連・ベラルーシで行われた大統領選で不正があったとして、6選したとされるルカシェンコ大統領の退陣を求める抗議行動が全国的な広がりを見せている。抗議行動の主役をつとめているのは選挙で2位と見られる主婦のチハノフスカヤ氏で、政権側に経済的圧力を加えるため、全国的なストを呼びかけている。これを受けて欧州連合(E U)は選挙結果に改ざんがあったと認定、選挙結果や抗議行動への暴力に関わった責任者への制裁を行う方針を決めた。

今回の選挙もこれまで同様、ルカシェンコ大統領の圧勝と見られていたが、逮捕され選挙に出られなくなった著名ブロガーの夫に代わって立候補した妻のチハノフスカヤ氏が得票を伸ばし、自身の得票が6、7割に上ったと語っている。反大統領派への弾圧が激しくなったため、いったんリトアニアに脱出したが、市民代表らが参加する政権移行のための「調整評議会」をベラルーシに設置する準備を進めている。こうした動きを受けて、国営の車両生産や金属加工の大工場が相次いでストに参加している。また、国営放送の従業員の間でもストが始まっていて、一部の放送が再放送の番組に差し替えられる動きも出ている。

一方、ルカシェンコ大統領は憲法改正後に大統領権限を移譲する可能性に言及したが、即時辞任や再選挙は拒否している。その陰で、大統領と親しいロシアのプーチン大統領に連日電話をかけ、支援を求めている模様だ。プーチン氏はこれまで、ベラルーシとの連合国家構想を推進するため、ルカシェンコ大統領に働きかけていたが、当面積極的な支援は行わず、E U諸国の首脳らと連絡を取り合い、事態の収拾を目指す考えと見られる。

ベラルーシはロシア、ウクライナとともにスラブ系住民が多数を占めている。プーチン氏はこの三カ国を基盤に、旧ソ連のような連合国家を建設したい考えだが、ウクライナとはクリミヤ半島の強制編入問題で依然対立が続いていて、解決の見通しは立っていない。このためプーチン氏は、一番親近感のあるベラルーシをまず連合に加えたいとしており、今後も様々な手を使ってベラルーシの取り込みに動くものと見られる。これに対し、米国やEU諸国はベラルーシを親欧米国家にしようと狙っており、ポスト・ルカシェンコ政権を巡ってロシアと米国、EUとの間の綱引きが活発化する可能性が強い。(この項終わり)


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ロシアの憲法改正案巡る全国投票終了、賛成票は78%に達し採択決定!

2020年06月30日 23時00分11秒 | Weblog
プーチン・ロシア大統領の音頭取りで憲法改正案の是非を問う全国投票は7月1日夜、投票が終了し、即日開票された。タス通信によると、中央選管は2日未明、開票率99%の段階で開票結果を発表。賛成票は78・03%に達し、反対は21・16%にとどまった。この結果、改正案の採択が事実上決まった。投票率は65%だった。

コロナ禍のため投票は6月25日から1週間に渡って行われた。6月29日夜の段階では投票率が半数に達していないためプーチン大統領は30日、テレビを通じて有権者に投票を促す異例の呼びかけを行った。大統領はテレビ演説の中で「明日7月1日は最後の投票日だ。どの投票も極めて重要で、最も力強いものである。憲法改正案はすでに出来上がっているが、国民の皆さんの承認とサポートを得て、大きな力になる」と力説した。

さらに大統領は、憲法改正により人々の生活がますます発展すると指摘した上で、「われわれの責任、真摯な愛国主義、母国を思う気持ちがロシアの独立を強化することに繋がる」と述べ、賛成票を投じるよう要請した。改憲案には、2024年に任期が切れるプーチン大統領の続投を可能にする条項や、国家権力機構の再編条項が含まれている。

プーチン大統領は6月下旬のテレビ番組の中で「改憲案が全国投票で認められれば、次期大統領選に立候補するだろう」と述べており、憲法改正案が高率で承認されれば、続投は間違いないと見られている。ロシアでも新型コロナウイルスの感染拡大が続いており、長期の外出禁止や経済活動停止などの厳しい規制に市民の不安が強まっている。このためプーチン大統領は改憲案支持者をできるだけ増やし、その後の政権強化を目指していると見られる。(この項終わり)
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駐日ロシア大使のガルージン氏、コロナ終結後の日露首脳会談に期待感示す !

2020年06月06日 16時01分51秒 | Weblog
ガルージン駐日ロシア大使は6月5日、日本対外文化協会の研究会で、ロシアの対外政策と日露関係について約40分間講演した。ガルージン氏はトランプ米大統領が「G7は時代遅れで、世界で起きていることに適応していない」と述べ、ロシアや豪州を含めた拡大G7を提案したことに対し、「拡大G7は正しい方向と思うが、(中国を含めた)G 20の方が今は効果的だ」と指摘した。

講演会はオンラインで行われ、ガルージン大使は都内のロシア大使館で、ロシア研究者やジャーナリストらと意見交換した。まず、ガルージン氏が新型コロナウイルスの拡大が起こした国際関係の変化についてロシア側の考えを明らかにした。コロナ禍により人的交流が大きな影響を受けており、「全ての国々がコロナのテストに合格したわけではない」と指摘した。その上で、「一部の国はパンデミックな状況を競争相手の抑圧に利用しようとしている」と批判。その例として、ロシアが医療支援をめぐり地政学的な影響力を強める為に行ったとの見方に対し、「事実無根の主張だ」と強調した。

ガルージン氏はこうした状況に対し、国連の活動を微調整して多角的な世界の現実に適応させるとともに、G 20などのポテンシャルを効果的に使うべきだと指摘した。また、コロナ禍は世界経済に大きな打撃を与えたとして、団結を促すため総合プロジェクトのポテンシャルを有効活用しないといけないと述べた。

続いて日露関係についてガルージン氏は、5月7日の安倍首相とプーチン大統領との電話協議で日露対話を維持するよう努めることで合意したと述べるとともに、日露間の地域交流や文化交流を通じて両国関係の発展をさらに進めたいと強調。「日露間に良好な関係が作られることにより、平和条約のような両国間の複雑な問題解決に貢献すると思っている」と力を込めた。

この後、質疑が行われた。「コロナ対策で日露首脳の状況が似ている。2人は早く会って話し合うべきだ」との提案に対し、ガルージン氏は「コロナ禍がなかったら2人は対話ができていたと思う。今後、再び日露首脳の対話をどう進めるか、協議することになると思う」と述べた。コロナ禍の先行きが見通せない状況が続いているが、ガルージン氏の発言から、状況が好転すれば日露首脳の協議が進展するとの期待感が感じられた。(この項終わり)
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「日本政府はロシアとの平和条約締結を期待せず」との露紙報道に一言!

2020年05月20日 09時38分51秒 | Weblog
日本外務省は19日、2020年版外交青書の中で北方領土の主権を明記し、2019年版で削除した法的立場の記述を復活させたが、ロシア紙「独立新聞」は同日付の電子版で「日本政府はもはやロシアとの平和条約締結を期待せず」との見出しで伝えた。この報道は何を意味するのだろうか。

独立新聞の電子版によると、日本外務省は毎年報告する外交青書の中で、北方領土の主権明記を定式化していたが、昨年の報告では「北方領土は日本に帰属する」との表現が削除され、ロシアとの平和条約締結への期待を含ませていた。ところが、今年の報告では北方領土の主権明記が復活したことから「日本政府の平和条約締結への期待が消えたのだろう」と書いている。独立新聞はロシアの中でも政府寄りではない、中立的な新聞とみられている。

独立新聞によると、ロシアとの領土問題が日本側に有利な条件で解決するという期待が日本で浮上したのは、2014年のウクライナ危機後である。そこで安倍首相はロシアから譲歩を引き出せると判断してプーチン大統領と会談を重ねた。そして2018年11月、安倍首相は大統領との会談で「われわれはこの問題を次世代に引き継がないことを確認した」と述べ、ロシアとの平和条約締結を誓った。これを受け、日本メディアは2019年1月、ロシアが日本側に2島返還を提案したと報じた。

だが、ロシア極東日本研究センターのキスターノフ代表は、ロシア側の現在のスタンスについて「プーチン大統領が2019年6月に述べているように、クリル諸島(北方4島)には日本に引き渡す島はない。日本側が第二次大戦の結果を認めるのが先決だ。こうした条件では日本側が平和条約締結を受け入れないだろう」と指摘した。その上で、同代表は「日本側は北方領土交渉はまだ終わったわけではないと思っているが、安倍首相自身は任期中の解決は無理だと思っているに違いない」と述べた。

安倍政権としては、2019年の外交青書で北方領土の主権明記を削ったため、保守層の反発を食らったことから今回、復活させたのだろう。だが、ロシア側が、この変更には裏があると深読みするのも無理はない。このところ、日本は韓国や中国との関係が良好ではないうえ、新型コロナウイルスが猛威を振るっているだけに、ロシア側は日本政府の平和条約締結への熱意が冷めたと理解したに違いない。だが、その理解は間違っているとロシア側にあえて言いたい。日本はすでに75年間も待っているのだから。(この項終わり)

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カザフスタン・ナザルバエフ終身大統領の長女、上院議長解任!

2020年05月03日 13時40分38秒 | Weblog
中央アジアのカザフスタンで5月2日、ナザルバエフ終身大統領の後継者とみられていたダリガ・ナザルバエワ上院議長が突然解任された。上院議長は終身大統領の長女で、昨年3月、ナザルバエフ氏の大統領辞任後に選出されていた。解任された理由は不明だが、事実上の任命権はナザルバエフ氏にあり、後継者争いが再燃化するのでは、との見方も出ている。

ナザルバエフ終身大統領は、ソ連時代からカザフスタンの指導者として君臨し、独裁的権力を握っていた。だが、78歳になる直前の昨年3月、大統領職を辞任し、トカエフ上院議長を後任に任命した。ダリガ氏はナザルバエフ終身大統領の3人姉妹の長女で56歳。3女のアリヤ氏はキルギスの元大統領の息子と結婚している。ナザルバエフ氏は現在も大統領代行を務め、国家安保会議議長、さらに与党党首も兼務して院政を敷いている。

3日付けのロシアのコメルサント紙電子版によると、ダリガ上院議長解任の第一報は2日朝、カザフスタン大統領府のサイトから流された。「大統領の命令により、ダリガ上院議員の権限が停止された」という内容で、解任の理由などの説明は一切なかった。上院議員を解任されると、自動的に上院議長職から外される。一方、トカエフ大統領は自分のツイッターで「ダリガ氏の活発で実り多い仕事ぶりに感謝する」とのコメントを発表した。

元老院とも呼ばれる上院は定員49人で、このうち15人はナザルバエフ終身大統領が指名し、残り34人は地方機関から選出される。このため、今回の上院議長の解任はナザルバエフ終身大統領の同意を得て行われたか、あるいは終身大統領の意に反して行われたかのどちらか、との見方が出ている。ナザルバエフ氏の後継者には、長女のダリガ氏、マシモフ国家保安委員会議長、次女ディナラ氏の娘婿で富豪のクリバエフ氏らの名前が上がっている。

トカエフ氏は外交官出身で、後継者決定までのつなぎの大統領と見られている。このため、長女ダリガ氏が本命とされていたが、今回の上院議長解任でその目は消えたとの見方が強い。残る後継候補の中から本命が選ばれる可能性が高い。カザフスタンは石油・天然ガスに依存しているが、ロシア同様、資源価格の伸び悩みで限界が見えてきている。このため本格的な経済立て直しが求められており、思い切った人事が行われるのではとの見方も出ている。(この項終わり)
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番外編 ぺりかん社から『検察官になるには』出版!

2020年04月26日 10時29分59秒 | Weblog


 このほどぺりかん社から『検察官になるには』を出版しました。これから職業を選ぼうという若者向けに、検察官とはどんな職業なのか、どうしたらなれるのかを詳しく書いた本です。検察官の元締めである最高検察庁の協力を得て、全国紙記者として司法記者を勤めた経験を元にまとめました。ご覧頂ければきっと役に立つと思います。

 本の内容を簡単にご説明します。1章は「ドキュメント 正義の心で勝負する!」のタイトルで、全国の検察庁で日々活躍している現役検察官4人にインタビューし、なぜ検察官を選んだのか、どんな仕事をしているのか、やりがいは何か、などをまとめました。検察官のナマの声が聞こえてくると思います。2章は「検察官とはなんだろう?」のタイトルで検察官はどんな仕事をしているのか、どんな組織なのか、を詳しく説明しています。検察を支える副検事、検察事務官の仕事についても、現役の人のインタビューを通して仕事の内容を解説しています。3章は「なるにはコース」のタイトルで検察官の適性と心構え、検察官になるのに必要な法曹資格は何か、などをわかりやすく説明しています。

 本の中では、検察庁の組織や刑事事件の流れなどをわかりやすくまとめた図を多用しています。中高生の皆さんにも、きっと参考になると思います。最後に、検察官をモデルにしたミステリー小説や解説書を参考に取り上げています。

 この本は1冊1500円(税抜)で各書店、ぺりかん社ホームページ、アマゾンなどで購入できます。ぜひ手にとってご覧ください。(この項終わり)
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『ハルビン学院の人びとー百年目の回顧』群像社から出版!

2020年04月10日 09時53分10秒 | Weblog


日露戦争後、旧満州のハルビンに設立されたロシア専門家養成の学校「ハルビン学院」は今年、創立百年を迎えます。ロシアとの共存の道を探ろうと設立した満鉄初代総裁、後藤新平の願いとは裏腹に、日中戦争、第二次大戦に巻き込まれ、終戦と同時にわずか25年で閉校となりました。そんな激動のただ中で、卒業生1,514人はいかに学び、戦後の混乱期を生き延びたのか。その軌跡をわずかな生存者を探してインタビューしてまとめたのがこの本です。

私は1991年のソ連崩壊前後に、モスクワで毎日新聞特派員として6年間駐在し、社会主義の盟主が倒れるのを目撃しました。日々の取材に追われる中、旧ソ連で活躍したハルビン学院卒の先輩たちの話を聞く度に、彼らの活躍の原動力は何だろうかと気になっていました。モスクワ駐在を終えて帰国後、ハルビン学院24期の麻田平蔵さんを取材した縁で、毎年4月に東京・八王子の高尾霊園で行われているハルビン学院記念碑祭に出席するようになりました。そこで知り合った学院同窓生たちの話は、波乱万丈で興味を引くことばかりでした。いつかこうした話をまとめられないだろうかと考えていました。

そんな時、ユーラシア文庫を出版している「ユーラシア研究所ユーラシア文庫編集委員会」の方に後押しされ、本格的に取材を始めました。ただ、卒業生で生存している人は全体の5%ほどで、しかも取材に応じていただけそうな元気な方は10人前後という状況でした。それでも、同窓会の事務などを担当されているハルビン学院連絡所の方々から連絡先を伺い、取材をお願いする手紙を出して返事を待ちました。そしてようやく数人の方にお会いして話を聞くことができました。なぜもっと早く取材をしなかったのか、と何度悔やんだかしれませんでした。

取材を通じて、終戦直後の国民の反ソ感情と、GHQの有形無形の圧力を跳ね返し生き抜いてきた知恵と勇気に感服しました。こうした先輩たちのおかげで、われわれロシア研究者のはしくれも何とかやってこれたのではないかと感謝したい気持ちでいっぱいです。こんなご時世ですから、じっくり読書とはいかないかもしれませんが、逆にこういう時だからこそ、先人の生きてきた道をたどり、今後の生き方の参考になればありがたい限りです。

この本は1冊900円(税別)で、アマゾンでも、群像社ホームページ(http://gunzosha.com)のネットショップからも購入できます。(この項終わり) 

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ロシア連邦自主労組、コロナ禍への連帯デモ行進を計画!

2020年04月08日 09時28分05秒 | Weblog
新型肺炎コロナウイルスの感染が拡大しているのは、ロシアも例外ではない。4月7日現在、感染者数は7,497人に増え、首都モスクワでは外出を原則禁止する措置が取られている。こうした状況の中、労働者約2千万人が加盟するロシア最大の労働組合組織「連邦自主労組」は7日、5月1日のメーデーにあわせて、「強力な伝染病に対する連帯デモ行進」を実施する方針を決めた。

ソ連時代、ロシアは社会主義の盟主を自認し、5月1日のメーデーでは、世界中に存在をアピールするとともに、ロシアの春を告げる全国的な祭典と位置付けていた。1991年のソ連崩壊後は一時の勢いを失ったものの、「連邦自主労組」は毎年、組織をあげてメーデーのデモ行進を続けている。今年は世界的に猛威を振るっているコロナウイルスと闘う労働者との連帯を掲げ、全国各地でデモ行進を行うことを打ち出した。ソ連当時から組織を引っ張っているシュマコフ議長は「今回は強力な伝染病と闘う全世界の労働者との連帯を統一スローガンにする」と表明した。

だが、7日付けの独立新聞電子版によると、ロシアのコロナウイルスは、4月に入ってからも勢いが衰えるどころか、感染者数は拡大を続けている。4月6日の1日だけで新たに1,154人が感染、11人が死亡している。特に人口が集中しているモスクワ州とモスクワ市では、6日だけで計7人の死者が出ている。ロシアの感染者総数7,497人は、わが国の4,257人(8日現在)を3,000人以上上回っている。こうした状況を受けて全土で大衆行動が禁止され、プーチン大統領も4月22日に予定した憲法改正の是非を問う全国投票を延期したほどだ。

このため、民主派政党の「ヤブロコ」(りんごの意味)からも、5月1日のデモ行進の延期を促す意見が出ており、デモ行進が実現するかどうかは定かではない。最終的にはプーチン大統領ら政権首脳の判断に委ねられることになろう。だが、シュマコフ議長もそう簡単にデモ行進を引っ込めるとは思えない。今後、ロシアのコロナウイルス感染拡大の行方とともに、労組側と政権側のメーデーをめぐる攻防に目が離せそうもない。(この項終わり)

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プーチン大統領の任期延長改憲案が急きょ決まった背景は?

2020年03月24日 10時19分55秒 | Weblog
 プーチン大統領の2024年の再出馬を可能とする憲法改正案がロシア憲法裁判所で承認され、4月22日の全国投票にかけられることになった(その後、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、延期された)。投票により、改正案が可決されるのは確実で、プーチン氏は4期目の任期が切れる24年以降も大統領職を務めることが事実上決まった。プーチン氏自身、任期満了後は大統領以外の公職に就く考えを示していただけに、急きょ考えが変わったのは何故なのか、探ってみた。

 プーチン氏は大統領を24年の任期満了で退任し、国家評議会議長などの要職に就いて院政を敷くとの見方が大勢で、プーチン氏自身、それをほのめかしていた。その流れが変わったのは、元宇宙飛行士のテレシコワ下院議員が3月10日、下院の審議中に歴代大統領の任期を「セロ」に戻すという奇想天外な提案をしてからだ。それを受け、プーチン氏が下院で演説し、新型コロナウイルスの感染拡大やルーブル暴落など、ロシアを取り巻く状況が厳しくなっていると強調。憲法裁判所や国民の支持を得られれば大統領の任期制限の撤廃に反対しない考えを示した。

 「プーチン氏が心変わりしたのはなぜなのか?」
 これを巡ってロシア国内では様々な憶測が流れているが、本人はその辺の事情について詳しく説明していない。そこで、ロシアの新聞などからプーチン氏の本心を突いた記事を探った。目を引いたのは、22日付けの独立新聞電子版に掲載された「なぜプーチン氏に24年の選挙で選出される権利が与えられたのか」の記事だった。この記事は、ソーシャル・マーケッティング研究所が実施した世論調査で、57%の人たちが24年の大統領選でプーチン氏に投票するとの結果を示し、プーチン氏がなぜこういう選択をしたかを分析している。

 記事では、「何のために大統領のこれまでの任期数をゼロにする工作をする必要があったのか」と問いかけ、プーチン氏も任期満了時の24年の政治状況がわからず、エリートや国民が退任後も自分に忠誠を尽くしてくれるかどうか、不安だったのではないかと指摘している。さらに、これまで20年間、権力を握ってきて、指導者の個人的な権威は自力で強化できるものではなく、退任すればエリートたちの対応が変わることを体験的に感じ取ったためではないかと推測している。最後に著者は「政治的予言は、21世紀のロシアで起きた主な事件よりも、様々な事実の組み合わせで生まれるのかも知れない」と書いている。

 プーチン氏は2000年に大統領に初当選し、2期8年務め、4年間、首相に転じた。その後、12年に大統領に返り咲き、現在は連続2期目。通算すると4期、20年間、指導者の地位にある。ソ連時代のスターリン書記長の過去最長記録、29年に次ぐ長期政権を維持している。それでもまだトップの座に座り続けたいのか。それとも、退任後の自らの安全に不安を感じているからなのだろうか。(この項終わり)

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プーチン大統領、北方領土返還を事実上封じる憲法改正案提案!

2020年03月03日 22時38分54秒 | Weblog
ロシアのプーチン大統領は、政治機構の抜本的改革を柱とした憲法改正を行う方針だが、3月2日に下院議会に提案した憲法改正の改訂版では、隣接国との国境画定交渉は認めるものの、領土の割譲を目指した行為は禁止する内容となっていることが分かった。この改訂案は、北方領土問題をめぐる日本への譲歩や交渉自体を禁止することを狙ったもので、この改正案が成立すると、北方領土の日本への返還は事実上不可能になりかねない。

プーチン大統領は2024年に大統領の任期が満了となり、退任する意向を固めている。そのため、任期満了前に政治機構を改革し、実質的な院政を敷くとの見方が強い。こうした流れの中で、プーチン氏は北方領土返還に向けた行為や呼びかけを禁止する方針を打ち出したものと見られる。その一方、国境画定については認めるとしており、日本との北方領土返還交渉を国境画定に限定する狙いとも言える。

こうした考え方は、憲法改正に関する政府主催の会議に出席した俳優のマシュコフ氏が提案したもので、プーチン氏の後継者の時代になっても、北方領土返還を封じる狙いがあるとみられる。この提案についてプーチン氏は会議の場で賛成する意向を示し、専門家に具体案を検討させていた。この条項が新憲法に盛り込まれても、日本との領土交渉を「国境画定のための交渉」と言い逃れることはできる。

その半面、この条項が盛り込まれた場合、議会などを中心に北方領土交渉に反対する機運が一層高まる恐れがある。プーチン政権は現在も日本側に対し、日露の国境は第二次大戦の結果、決まったものだと主張し、交渉の前提としてそれを認めるよう求めており、交渉が進展しない大きな理由になっている。

プーチン氏は憲法改正を急いでおり、改正案をできるだけ早く国民投票などに付して成立させる意向と見られる。これに対し、安倍首相は後手後手になった新型肺炎コロナウイルス対策に専念せざるを得ず、有効な手が打てない状況だ。このままでは、外交の重点事項に掲げた北方領土返還も水泡に帰す可能性が高い。(この項おわり)
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