飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

ロシアの核兵器、ベラルーシへ拡散で危険度高まる!

2023年03月28日 09時39分02秒 | Weblog

ロシアのプーチン大統領がベラルーシへの核兵器配備を表明したため、核使用の危険度が高まっている。ソ連時代には、ロシアがウクライナなどへ核を配備していたが、ソ連解体をきっかけに全てロシア国内に移していた。ベラルーシは軍事面でロシアと足並みをそろえていて、核拡散が現実味を増しつつある。

ベラルーシは、ロシアの西部に位置していて、面積は約20万平方キロで日本の約半分。人口は約1000万人とされる。ソ連時代は白ロシアと表記していたが、ソ連解体後は「白」も含めてロシア語に替え、「ベラルーシ」と呼ばれている。ロシア、ウクライナと合わせ、3カ国でロシア系民族を構成している。。

ベラルーシを有名にしたのは、ルカシェンコ大統領で、独特の風貌と激しい発言で「ヨーロッパ最後の大統領」の異名を持っている。1994年に大統領に就任し、その後任期を延長したり、3選禁止条項を一方的に撤廃したりで、すでに6選を果たし、約30年間にわたり君臨している。現在はロシア・ベラルーシ連盟国の国家元首でもある。

ベラルーシは以前、核兵器を配備しないと憲法で定めていたが、ルカシェンコ大統領は昨年2月、国民投票を経てこの条項を削除した。すでに核が搭載できる爆撃機が提供され、弾道ミサイル「イスカンデル」が配備されている。さらに7月1日までに戦術核の保管施設が完成する予定だ。

今回の決定についてプーチン大統領は「ルカシェンコ大統領の長年の希望だった」と主張している。だが、ルカシェンコ氏は欧米諸国との関係改善を目指した時期もあったが、2020年8月の大統領選をめぐる不正疑惑でロシアの支援を仰いだため、プーチン大統領に弱みを握られ、核配備を受け入れざるを得なかったとみられている。

ロシア国外への核配備は27年ぶりで、欧州各国が猛反発するのは必至である。とりわけ、NATO(北大西洋条約機構)との全面対決に繋がる危険性が強まるのは明らかだ。今のプーチン大統領は聞く耳を持たないという姿勢を崩していない。このため、ベラルーシを核拡散に引きずり込み、欧州各国に対し、今後さらなる揺さぶりをかけるのは間違いない。こうした動きを抑えるためには、欧米諸国だけでなく、世界各国が協力して国連などの場で、ロシアやベラルーシに圧力をかけるとともに、粘り強く説得する必要がある。(この項終わり)

 

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ロシアとウクライナの戦争、どうなる春の陣!

2023年03月18日 16時07分05秒 | Weblog

ロシアとウクライナの戦争は、いよいよ二度目の春の陣に突入する。ロシアはウクライナ東部のドネツク州を制圧し、一気に東部全域を勢力下に収めたい方針とみられる。だが、ウクライナ側も欧米諸国の支援を得て、反撃する構えを見せていて、どちらが春を制するかで情勢が変わって来そうな状況だ。

両国の戦闘は、二年目に入り、激しさを増している。特にウクライナが米国から高機動ロケット砲システム「ハイマース」を供与されたことからロシア軍の弾薬庫が狙われ、前進が止まった状態になった。そのため、ウクライナは東部ハルキウ州や南部ザポリュージャ州の一部を奪還し、双方は膠着状態になっている。

春になると、ウクライナがザポリュージャ州に攻勢を掛けると見られている。その際、大きな戦力になるとみられるのが、欧米諸国から提供されることになっている戦車部隊である。この戦車部隊が早めに投入されればウクライナ側の攻勢に拍車がかかるだけに、ロシア軍はその前に状況を前進させたいと考えている。

このため、どちらが先手を取るかに当面の勝敗がかかっているといえそうだ。ロシア、ウクライナ双方とも、結果を出せなければ停戦交渉に入るわけにはいかないからである。いわば、春の陣に戦争終結の行方がかかっているともいえよう。それだけに、これまで以上に厳しい戦いになるのは必至である。(この項終わり)

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ロシアとウクライナの戦争は帝国崩壊につきまとう悲劇?

2023年02月24日 08時30分18秒 | Weblog

ロシアがウクライナに攻め込んでからちょうど1年たった。戦争はいまも止むことなく続き、さらに続くとみる識者が多い。いったいなぜそうなるのか、われわれ島国の民族にはわかりにくいことだが、世界ではこうした帝国の崩壊後にほぼ必然的に起こる現象らしい。

こうした現象をわかりやすくまとめた記事が、24日付けの毎日新聞の2面に掲載された。「帝国の崩壊 復讐の紛争」という見出しで紹介されている英国ケンブリッジ大学名誉フォローのドミニク・リーベン氏のインタビュー記事だ。これを読んで納得することが多かった。読んでない人に、この概略を紹介したい。

ソ連はレーニンという思想家が指導して建国されたイデオロギー国家だった。世界一広い地域から構成され、高度な文化も持っていた帝国だった。その国家が崩壊して30年以上経ってから戦闘が起きたのは、ソ連という帝国の解体に伴い起きた事象だと考えると、より適切に理解できると、強調している。

では、帝国が崩壊するとなぜ紛争が避けられなくなるのか。リーベン氏は、その理由として第一に、国際情勢に力の空白が生じて紛争を招きやすくすることをあげる。二番目に、帝国の崩壊に伴い、新たな国境線を引かなければならないが、もともと多くの民族が暮らしてきたため対立が起こりやすくなると指摘する。

特にソ連の場合、ロシアやウクライナなど15の共和国の境界があらかじめ決められていて、ソ連崩壊と同時に境界がそのまま国境となった。この際、ロシア国外にロシア系市民2500万人が取り残された。とりわけウクライナは、ロシア系が多い南部と東部を領土に組み込んだため高いリスクを抱えることになった。

だが、しばらくは新生ロシアの力が弱かったため国境がそのまま放置されたが、2000年にプーチン氏が大統領に就任すると、ソ連崩壊を「ロシアにとっての悲劇」と強調するようになった。そしてロシアが政治、経済で安定したことから、ウクライナの国境を変えられると自信を深めたとリーベン氏は指摘する。

つまり、今回のウクライナへの侵攻は、プーチン政権の中核を占めるソ連時代の情報機関構成員による「遅れてきた復讐」であると言い切る。そして今回の侵攻は、30年に及ぶ屈辱、後退、敗北への恨みを晴らそうとしたと結論付けている。そしてこれは第二次大戦後のドイツとの共通点が多いと述べている。

今後の見通しについてリーベン氏は、ロシアとウクライナの戦闘はこれからも続くと見ている。停戦が成立しても、戦闘が再発するような状態が10年、20年と続いていくという。インドやパキスタンの対立など、根本から解決されずにいる紛争は少なくなく、これが世界の現実だと思うしかないようだ。(終わり)

 

 

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われわれ人類は世界の平和を守れるのか?

2023年01月03日 10時05分08秒 | Weblog

新年明けましておめでとうございます。今年は第二次世界大戦の終戦から78年。この間、人類は世界を揺るがすような戦争を起こさず、概ね平和でこられたが、ロシア・ウクライナ戦争をきっかけに世界平和が大きく揺さぶられつつある。この危機的状況を、われわれ人類はどうやってしのげるだろうか。

昨年2月から始まったロシア・ウクライナ戦争はまもなく2年目を迎えるが、両国とも戦いを止めるような状況にはない。ロシアのプーチン大統領は核兵器こそ使わない方向を示しているが、自ら戦争を中止させようという動きは見せていない。むしろ中国との連携を強め、あくまで戦い抜く意向を示している。

一方、ウクライナもゼレンスキー大統領が訪米し、徹底抗戦を表明するとともに、軍事支援を要請した。米国のバイデン大統領も「ウクライナが必要とする限り、支え続ける」と支援を約束した。米国は最新鋭の迎撃ミサイル「パトリオット」の初供与を含め、約19億ドルの追加支援を行う方針だ。

一方、中国も米国に対抗できる軍事力の強化を目指しており、当面台湾統一を目指し、武力行使も辞さない構えを見せている。隣国の北朝鮮も、米国本土を射程に収める弾道ミサイルを次々に発射し、日本や米国に圧力をかけている。金正恩総書記は核兵器を放棄しない考えを繰り返していて、日本にとっても脅威だ。

対する日本政府も各国の軍事力強化政策に便乗し、戦後の抑制的な防衛政策を変更する「国家安全保障戦略」などの文書を閣議決定した。浜田靖一防衛相は「戦後の防衛政策の大きな転換点となり、そのスタートラインに立った」と強調した。2023年度の防衛費は前年度の26%増となる見通しだ。

こうした各国の防衛力強化政策が世界中に広まれば、国連など国際機関の歯止めが効かなくなってくるのは必至だ。特に心配なのは、平和を守るべき国連安保理事会が米国、ロシアなど5カ国の常任理事国のうち、1カ国でも反対すればで何も決められず、機能しなくなることだ。

現在進行中のロシア・ウクライナ戦争でも、ロシアが拒否権を発動したため和平提案が否決され、有効な政策が打ち出せなかった。このままでは、有事の際にも国連は動きが取れなくなるだろう。こうしたことが繰り返されないよう、日本政府は各国に働きかけ、国連機能の強化に取り組むべきではないだろうか。(この項終わり)

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ロシアとウクライナの戦争、冬本番迎え、来春まで様子見か?

2022年12月05日 13時43分50秒 | Weblog

ロシア軍がウクライナへ侵攻してから10カ月目に入り、本格的な冬の到来を迎えている。このため戦闘自体は減ってきているが、両国とも来春を目指して戦略を練っているとされる。一方、ロシアと米国など西側諸国は表向き、対話を求めているが、ともに気が熟していないとして来春まで様子見の状態が続きそうだ。

本格的な冬を迎えるにあたり、ウクライナは停電が深刻な状態だ。ウクライナ当局は首都キーウなどの都市がロシア軍の巡航ミサイルの攻撃を受け、各地で電力インフラが破壊されたとしている。ゼレンスキー大統領はオンラインを通じた演説で、「インフラへの攻撃はエネルギーテロだ」とロシアを批判した。

こうしたロシアの攻撃に対し、米国のミリー統合参謀本部議長は「双方とも完全な軍事的勝利を達成するのは困難だ。他の手段を検討しなければならない」と発言。「冬の間に和平交渉に向けた機会をつかむべきだ」と訴えている。この背後で、米国とロシアの高官による接触も密かに行われているという。

だが、肝心のロシア側が和平交渉に真剣に向き合うかについては米国、ウクライナとも疑問視している。ロシアのプーチン大統領は政権の威信をかけてウクライナに侵攻しており、侵攻後に合併したウクライナ4州まで奪われるとすれば、犠牲を払って侵攻した意味がなくなるからだ。

プーチン大統領とすれば、このままウクライナに軍事的に押し返されていけば国内の批判が高まり、大統領の地位から引きずり降ろされかねない。そのため、プーチン政権はやみくもにウクライナを攻撃し、国民の反戦気分を高めようとしているように見える。

ロシアやウクライナの冬は厳しく、野外の戦闘はままならない。両者とも春を待って本格的な戦闘に突入することになろう。だが、すでにウクライナ側の戦死者は最大で1万3000人に上っているという。一方、ロシア側の死者、行方不明者、重症者などを加えると、9万人を超えるという報道もある。速やかに停戦を実現しないと、大変な犠牲者を生むことになる。(この項終わり)

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ウクライナ、重要拠点を奪還、「終わりの始まり」になるのか!

2022年11月15日 09時40分21秒 | Weblog

ウクライナのゼレンスキー大統領は11月14日、南部ヘルソン州の州都ヘルソン市に入り、8ヶ月に渡ってロシア軍に占領されていた領土の奪還を市民らと祝った。一方、ロシア軍は東部ドネツク州で激戦を展開しており、戦線を変えて占領地の拡大に全力をあげる方針とみられる。

ゼレンスキー大統領はヘルソン市で兵士や市民を前に「これは戦争の終わりの始まりだ。我々は一時的に占領された全ての領土に一歩一歩進んでいる」と演説した。また、ロシア軍が撤退する前に破壊した水や電気などのインフラの復旧を急いでおり、ロシア軍の戦争犯罪の捜査に乗り出したことを強調した。

これに対し、ロシア軍はすでに、ヘルソン市などドニエプル川西岸地域に駐留していた部隊を東岸地域へ移動した。ドネツク州での占領地域を拡大し、ウクライナ軍の勢いをそぐ作戦と見られる。このため米国のシンクタンク「戦争研究所」は「今後数カ月で停戦や戦闘のペース低下は考えにくい」と分析している。

一方、プーチン大統領は9月にロシアへの併合を決めたウクライナ4州のひとつ、ヘルソン州で州都を失ったことになり、国内の好戦派から批判の声が上がっている。愛国的思想家、アレクサンドル・ドゥーギン氏は「ヘルソンの全てを失った。誰を攻撃すべきかは分かっているだろう」とメディアに投稿している。

ロシア、ウクライナはすでに厳しい冬に向かっているが、戦況から見て厳冬期にも戦闘が続けられる可能性が強い。とりわけ戦場になっているウクライナでは、国民は寒さの中で、文字通り「命と健康を守る」暮らしを迫られることになりそうだ。(この項おわり)

 

 

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ロシア、ウクライナ戦争の年越しは必至の情勢。共に越冬対策を急ぐ!

2022年11月08日 15時16分30秒 | Weblog

ロシアの侵攻から始まった対ウクライナ戦争は9ヶ月目に入ったが、戦闘はいっこうに収まらず、このまま年越しを迎える可能性が高まっている。このため、両国とも越冬対策を急いでおり、国民は厳冬の中、今後も耐乏生活を続けることになりそうだ。

このところ、ロシア軍の戦死者や逃亡者が増加しているとの海外からの報道が急増している。特にロシア側が危機感を示しているのは、戦死者の多くが同士打ちによるとの見方が強まっていることだ。米政策研究機関「戦争研究所」によると、ロシア軍部隊の相互の連携不足と、司令官の相次ぐ交代による指揮命令系統の混乱が同士打ちの頻発に繋がっているという。

戦争が起きると、戦場での同士打ちは珍しくないが、対ウクライナ戦でのロシア側の同士打ちは全体の6割に上るとの見方も出ている。この数字が事実だとすれば、異常な高さといえる。

一方、ウクライナでは、ロシアが自国領土に併合した4州のひとつ、南部ヘルソン州でウクライナ軍がロシア兵士を追い出そうと必死の反撃を続けている。だが、ロシア兵は民間人を装って民間施設に入り、市街戦に備えているとみられ、奪還作戦は難航している。

最近、ロシア軍を中心に、ウソの情報を流して戦場を混乱させる「マスキローフカ=ロシア語で偽装の意」が広がっていて、双方で疑心暗鬼に陥るケースが増えているという。いわば”だまし討ち”作戦で、お互いが味方を信じられない状況が生まれてきている。

いずれにしろ、ロシア、ウクライナ双方とも近々に和平交渉に入れる状況にはなく、越冬対策を行いながら戦闘を続ける作戦に切り替えつつある。長期戦が続くと、民間人の犠牲者もますます増える可能性が高い。双方の国民にとって、この冬は寒さも加わって、厳しい耐乏生活が続くことは間違いなさそうだ。(この項終わり)

 

 

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ロシア・ウクライナ戦争を速やかに停止するため世界各国が努力を!

2022年10月24日 09時08分31秒 | Weblog

ロシアが今年2月、ウクライナへ侵攻してから満8ヶ月たったが、いっこうに戦闘が終息する兆候は見えてこない。これから冬に向かって、さらに厳しい戦いが続きそうな状況だ。とりわけ、ウクライナが戦争の長期化に耐えられるかどうか心配される。

第二次世界大戦後、国家間の戦争が長期化したケースは少ない。大半は短期で終結しているが、戦争が半年以上続いたケースでは、そのうちの7割が1年以上の長期戦になっているという。ウクライナの場合、米国など欧米諸国の支援に頼っているので、長期化すると、今のまま支援が続くかどうかは不透明だ。

一方のロシアも、兵員の部分的動員が終了し、ミサイルなどの兵器も枯渇状態になっていて、戦闘は今後、小規模化していくとみられている。ロシアの世論もプーチン大統領を支持する熱狂派が減っていて、戦争が長期化することに否定的な雰囲気が強まっているようだ。

ロシア、ウクライナ双方とも、戦争の長期化は好ましくないとみていることは間違いない。特に戦争を売られた形のウクライナから見れば、ロシア軍が繰り出す作戦はウクライナ国民を意図的に痛めつけている印象が強く、ゼレンスキー大統領も直ちにロシアとの和平交渉のテーブルにつくことを拒否している。

では、厳しい冬を乗り切るには、どうしたらいいだろうか。まず、国連など中立的な機関が双方の意向を打診しながら、一致点を探っていくのが最良の方法ではないだろうか。さらに、米国など関係各国がこれに協力していけば、必ず打開策が見つかると思う。本格的な厳しい冬を前に、速やかに打開策を見出し、戦争終結に向かって欲しいと願わずにはいられない。(この項終わり)

 

 

 

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ロシア軍はこのまま敗北するのか、それとも盛り返すのか?

2022年10月16日 13時42分40秒 | Weblog

このところロシア軍の必死の反撃が続くが、ウクライナと西側の共同戦線に打ち負かされ、敗色が濃くなっている。特に、プーチン大統領が推進してきた弾道ミサイルによる攻撃が枯渇しつつあり、打ち止めになりそうだ。プーチン政権はこの先どうするのか、決断の時期が迫っている。

最近、西側の通信網には、ロシア軍の戦局不利を指摘する内容が目立っている。それを列記してみよう。

(1)ウクライナ侵攻におけるロシア軍の損失が9万人を超えている可能性がある。一方、ロシア国防省の発表によると、ロシア軍の9月の戦死者は5937人という。この数字は明らかにおかしい。

(2)ウクライナのレズニコフ国防相は、ロシア軍が保有しているとされるミサイルのうち、すでに3分の2を使い果たし、残っているのは609発だけと公表。特に高精度のミサイルが少なくなっているという。

(3)ゼレンスキー・ウクライナ大統領は、南部で空軍がロシアの攻撃ヘリ4機とイラン製の攻撃ドローン10機以上を撃墜したと発表。

プーチン大統領は、ウクライナの領土のうち、すでに併合しているクリミヤ半島に続き、東部のドネツク州とルガンスク州、南部のヘルソン州とザポロジエ州の計4州をロシアに併合した。だが、クリミヤ半島とロシア本土を結ぶ唯一のクリミヤ大橋で爆発が起き、さらにドネツク州の都市リマンを奪還され、プーチン大統領はだいぶ弱気になっているようだ。

プーチン氏がウクライナに戦闘停止と和平交渉を呼びかけているのは、本心からかもしれない。だが、ウクライナ側はここぞとばかり攻勢に出ようとしていて、直ちに和平交渉のテーブルにつく可能性は小さい。

だが、ロシアやウクライナを凍らせる冬はもう間近に迫っている。あくまで戦闘を続けるのか、とりあえず休戦にするのか。過去の歴史は、所詮人間は冬将軍に勝てないことを示しているのだが・・・。(この項終わり)

 

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ロシア、ウクライナ領の4州併合を宣言、戦闘一層激化へ!

2022年10月01日 12時15分33秒 | Weblog

ロシアのプーチン大統領は9月30日、ウクライナの東部・南部の4州を一方的にロシア領に併合すると宣言、ウクライナに無条件の停戦を呼びかけた。だが、ウクライナや欧米諸国は「疑問の余地のない国連憲章・国際法違反」と非難して認めず、ロシアとウクライナとの戦闘はさらに激化している。

プーチン大統領はこの日、大統領府のあるクレムリン(城砦)に、ロシアの上下両院議員やウクライナ4州の親露派代表を招き、約40分間演説した。ここは帝政時代、ロシア皇帝の居城があった場所で、国家的行事に使われている。演説の模様は世界中にテレビ放映され、大統領の意気込みを示した。

とりわけ、強い意気込みが感じられたのは、演説の中盤で米国が第二次大戦末期、広島と長崎に原爆を投下したことを引き合いに出した時だ。「その目的は一つだけだ。我々(当時のソ連)を脅すためだった」と述べ、当時米国が日本よりもソ連を念頭に置いていたと指摘。今後さらに戦闘が続けば、ロシアが米国に核を投下する場合もあることを示唆した。だが、ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアに屈する様子はなく、バイデン米大統領も「ロシアによるウクライナ領の一方的な併合は決して認めない」と言明した。

プーチン大統領はウクライナの親露派が多い州を狙い、「住民投票」の結果を理由にロシア領に併合する作戦は2014年、クリミヤ半島でも実行し、成功している。だが、今回の場合、南部2州はロシア人に馴染みが少なく、最近の世論調査でも、この作戦はプーチン大統領の支持率アップにつながっていない。

プーチン大統領は、今回の大規模作戦では短期間での決着を狙ったが、ロシア軍のウクライナ侵攻以来、8ヶ月目に入っても十分な効果が上がらず、焦りが感じられる。その結果、核使用のどうかつと「住民投票」を利用したロシア領への併合に踏み切ったが、いずれも効果が不十分で、かえってウクライナの反撃を招いている。

ロシアも10月に入ると、冬将軍が猛威を振るい始め、思い切った作戦を打ちにくくなる。一方、冬の暖房源をロシアの天然ガスに頼る欧米諸国も結束を固め、安易な妥協を拒否している。満を持して始めたロシア軍への予備役投入作戦も国民の反発を招き、徴兵を嫌って20万人以上が国外へ脱出したという。ロシアは冬を目前に、作戦を継続できるかどうかの正念場を迎えている。(この項終わり)

 

 

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プーチン大統領、予備役を動員、ウクライナに反撃するというが!

2022年09月22日 14時14分32秒 | Weblog

ロシアのプーチン大統領は9月21日、ロシア軍の予備役30万人をウクライナへ投入、反撃に出るとテレビで演説した。東部・南部の激戦地域でウクライナ軍の反撃に遭い、苦戦しているためだ。さらに、プーチン氏はウクライナ東部・南部の4州で、ロシアへの編入の是非を問う「住民投票」を行うと表明した。

プーチン大統領はこれまで、「特別軍事作戦」と銘打って、軍隊の一部を動員してウクライナの「非軍事化」と「非ナチ化」を目指してきた。これに対し、ウクライナのゼレンスキー大統領は戒厳令を発動し、18歳から60歳までの男性に総動員令を出して対抗してきた。

両国の人口と兵力を比べると、ロシアの人口約1億4500万人に対し、軍人は約85万人。一方、ウクライナは人口約4400万人に対し、軍人は約20万人と約4分の1だ。今回、ロシアは総動員令ではなく、部分的な動員令を発令し、予備役30万人が対象になるとしている。だが、一部には100万人の予備役動員を目指しているとの報道もある。

さらに、プーチン大統領は演説の中で「今後、ロシア領の統一性が損なわれる恐れがあれば、あらゆる手段で対抗する」と述べ、核兵器使用の可能性を指摘した。しかも、「これはハッタリではない」と、明白に恫喝しているのだ。

一方のゼレンスキー大統領も、停戦交渉について、こう反論している。「ロシアがウクライナの領土から去る場合のみ、交渉が可能になる」。これでは、両国が交渉のテーブルにつくのはますます難しくなったと言えよう。

住民投票については今回、ロシア系住民が多い4州で実施され、投票後、プーチン大統領に結果の承認を求めるという。これはロシアが2014年、やはりロシア系住民が多い南部クリミア半島で実施し、ロシア領に編入したのと同じやり方だ。もちろん、国連憲章に反し、本来許されないやり方だ。

プーチン大統領がこうした手段に出たのは、ウクライナ軍の反撃が予想以上に激しく、このままでは冬が来る前に、ロシア軍の敗色が濃くなるとの危機感からだろう。だが、やみくもに予備役を動員しようというやり方に、ロシア全土で抗議デモが広がりつつある。さらに、一刻も早く国外に脱出しようというロシア国民が急増しており、空港周辺では警官らと脱出組との間で小競り合いも起きている。

これまでは、米国とロシアの間では、核戦争に発展しないように、いくつかの歯止めがかけられてきたと言える。だが、プーチン大統領がここまで強気に出ると、米国、さらには欧米諸国も黙って見ているわけにはいかないだろう。冬を目前にして、ロシア・ウクライナ情勢は混沌とした状態になりつつある。(この項終わり)

 

 

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ロシア、対ウクライナ戦争で「大敗北」の可能性も!

2022年09月13日 09時27分27秒 | Weblog

ロシア軍はウクライナ東部と南部の激戦地帯で、ウクライナ軍の攻勢を受けて後退を続けており、戦局の潮目が大きく変わったとの見方が強まっている。このため、ロシア国内で「反プーチン」の動きが活発化していて、今後冬に向かって事態が大きく変わる可能性も出てきた。

ロイター通信などによると、ウクライナ軍は9月11日までに、ウクライナ北東部のハリコフ州の都市、イジュームをロシア軍から奪還した。この都市は、ロシア軍が戦略拠点として利用している東部の軍事的要衝で、ロシア軍にとって3月の首都キーウ(キエフ)からの撤退以来の「大敗北」と伝えている。

ゼレンスキー・ウクライナ大統領は「反撃開始以来、約2000平方キロの領土を奪還した」と主張している。また、米シンクタンクは「ウクライナ軍が奪還した領土の面積は、4月以降にロシアが占領した全面積より大きい」と伝え、ウクライナ軍が反転攻勢を強めていることを強調している。

戦況の変化に伴って、ロシア国内での反プーチンの動きも強まっている。首都モスクワのロモノソフスキー地区議会ではプーチン大統領に辞任を要求。サンクトペテルブルク市の市民グループは、大統領に国家反逆罪の告発を議会に行うよう提案した。

この戦況の変化について防衛研究所の兵頭慎治氏はテレビ朝日の番組で「ウクライナ軍にとって、ロシア軍をキーウから撤退させたことに次ぐ大きな成果だ。これにより、ロシアは東部ドネツク州の完全制圧という最低限の軍事課題も難しくなり、戦局の潮目が大きく変わった可能性がある」と指摘している。

こうした状況が続けば、ロシアが核兵器の使用に踏み切る恐れもある。米国は今後もウクライナと東欧など近隣諸国に総額22億ドル(約3170億円)の軍事支援を行う意向を示しているが、ロシアを追い詰めすぎても禍根を残しかねない。これから冬に向かい、米露とも難しい判断を迫られそうだ。(この項終わり)

 

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冷戦終結に導いたソ連初の大統領、ゴルバチョフ氏死去。巨星墜つ!

2022年09月03日 17時36分22秒 | Weblog

旧ソ連大統領のミハイル・ゴルバチョフ氏が8月30日、病気のためモスクワで死去した。享年91。1980年代半ばに機能しなくなったソ連型社会主義を立て直す「ペレストロイカ」政策を推進。米国との冷戦状態を解消し、民主化を進めたが、1991年8月のクーデター未遂事件で失脚した。

ゴルバチョフ氏はロシア南部のスタブロポリ地方に生まれた。秀才が集まるモスクワ大学法学部を卒業し、郷里で共産党官僚の道へ進んだ。1971年、中央委員に引き上げられ、85年に54歳の若さでトップの党書記長に登りつめた。当時ソ連はアフガニスタンへの軍事介入が泥沼化し、政治、経済とも疲弊していた。

ゴルバチョフ氏は個人営業を認めるなど、経済改革を推進する一方、チェルノブイリ原発事故が引き金になった情報公開(グラスノスチ)路線を進めた。一方、外交では「新思考外交」を推進し、米国など西側諸国との協調を進め89年末、米国とともに冷戦終結を宣言した。この功績により、ノーベル平和賞を受賞した。

外交では、冷戦後の緊張緩和に大きく貢献したが、内政面では共産党の一党独裁廃止、ソ連大統領への就任などで党内保守派の反発を招き、クーデター未遂事件で権力を失った。その後はゴルバチョフ基金総裁として国内外で評論活動を展開したが、国民的人気はイマイチ盛り上がらなかった。

その理由は、ゴルバチョフ氏の理想が高すぎて人々がついていけない面があったうえ、理想を実行に移すのが早すぎたともいえよう。ゴルバチョフ氏も最後まで社会主義にこだわり、民主主義との調和に苦労したが、頭でっかちの英才の面があったことも否定できない。

ゴルバチョフ氏は、日本へは3度来ている。1度目は91年4月の公式訪問で、海部首相と会談した。大統領退任後の92年と93年にも、いづれも桜の花が咲く時期にやって来た。3度目の時は、「日本の春は満開の桜に象徴される絢爛豪華で、非の打ち所のない、完全な美しさである」と『ゴルバチョフ回想録』(新潮社)に書いている。日本のサクラの花の美しさに打たれたに違いない。

ゴルバチョフ氏の退任後、エリツィン、プーチン両氏がロシア大統領に就任している。2人とも日本的感覚からすると、相手を力でねじ伏せようというタイプで、ゴルバチョフ氏とは真逆な性格といえる。筆者はロシアで特派員として6年間働いたが、ロシア人は元々こういう性格の政治家を好むようだ。だが、ゴルバチョフ氏のような指導者が現れないと、ロシアの国際的な地位は今後も上がらないのではないだろうか。(この項おわり)

 

 

 

 

 

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ロシアとウクライナの戦争状態はいつまで続くのか?

2022年08月27日 15時08分00秒 | Weblog
ロシア軍がウクライナに侵攻してから半年が経過したが、依然として激しい戦闘が続いている。少し前までは双方ともかなり消耗していて、早ければ秋にも停戦へ動くのではとの見方が強かった。だが、半年経っても戦闘はレベルダウンしないどころか、激しさを増しているところもある。このため、戦争状態の長期化は避けられず、見通しが立たない状況が続きそうだ。

ロシアとウクライナの戦線は、今年2月下旬の開戦以来、ウクライナのほぼ全土に広がり、全体状況が見えにくくなっている。当初はウクライナの首都キーウ(キエフ)の攻防から始まり、ロシア人住民の多い東部戦線から南部のヘルソン州などに拡大。現在はロシアが強制編入したクリミヤ半島も主戦場の一つになっている。ロシア軍の投入した地上兵力は、正規軍や武装兵力を合わせて30万人程度に対し、ウクライナ軍は総勢30万人から国民総動員令で百万人規模に膨れ上がったという。

最初、ロシア軍は兵力で優っていたが、ウクライナの大量動員で兵力はほぼ五分五分になった。そのうえ、ウクライナは西側諸国から供与された高機動ロケット砲システムなどの最新兵器により、反撃に本腰が入りつつある。その結果、ロシア軍も「このままでは押し返されてしまう」として、現在の「特別軍事作戦」から総動員令を含む「宣戦布告」に格上げするのではという見方も出ている。そうなると、ロシアが核兵器を使うという懸念も現実味を帯びて来る。

ロシアからの報道では、プーチン大統領は最近、「我々はまだ本気で何かを始めたわけではない」とも述べていて、今後さらなる戦闘強化もあり得る事態になっている。一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は、旧ソ連からの独立記念日(8月24日)の前日に開催されたオンライン国際会議で「クリミヤの奪還は欧州における反戦の大きな一歩になる」と述べ、妥協せずに戦い続ける姿勢を示している。

ウクライナを支援する西側諸国も、依然としてウクライナを物心両面で支えており、引き下がる気配はない。早くも2年後のロシア大統領選挙まで、プーチン大統領がこの戦いを続けるのでは、という観測も出ている。これから秋、冬が近づくと、天然ガスをロシアに依存する西側諸国も心おだやかではなくなるため、新たな動きが出て来るかもしれない。ますます戦況から目を話せない状況が続くことは間違いない。(この項終わり)


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ウクライナ戦争開始から半年、今秋以降の停戦交渉がヤマ場に!

2022年08月09日 10時05分02秒 | Weblog
ロシアが2月下旬にウクライナに侵攻してから間もなく半年になる。ロシアは当初、短期決着を目指したが、ウクライナの思わぬ抵抗で戦線が拡大してきている。双方とも激戦が続き、体力が消耗しているとの見方が強い。そこで、これまでの経過を振り返りながら、今後の展開を探ってみた。

今回の戦闘開始のきっかけになったのは、2021年7月12日、ロシア大統領府のホームページに掲載されたプーチン大統領の「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について」と題する論文だった。この中でプーチン氏は、ロシア人、ウクライナ人、ベラルーシ人の三つの民族は基本的に同一のルーツから発生した。だから同じ民族なんだ」と主張した。ロシアでは帝政時代からある議論で、ロシアは「大ロシア人」、ウクライナは「小ロシア人」、ベラルーシは「白ロシア人」と呼ばれていた。

最初に軍事的な動きが出てきたのは、昨年9月10日のロシアとベラルーシの軍事演習だった。これは毎年行われているものだが、この時はベラルーシとウクライナの国境付近で行われた。その後、米紙が「ロシアはウクライナへの侵攻を計画している」とスッパ抜き、ロシアと欧米諸国との間で、一気に緊張が高まった。プーチン氏は今年2月21日、国家安全保障会議を開催し、軍隊派遣を命じた。そして3日後、プーチン氏はウクライナ東部での演説で「特別軍事作戦」を開始したと発表したのだ。

侵攻の当初、戦闘は1週間で終わると見られていた。ロシアとウクライナとでは軍人の数だけでも4倍以上の差があり、さらに兵器の面でも圧倒的な差があったからだ。これに対し、ウクライナのゼレンスキー大統領は徹底抗戦を呼びかけ、市民もこれを受けて結束して戦った。その後、ウクライナ軍は米国・NATO軍が提供した最新兵器で武装し、かなり訓練していたことが分かった。このため、早い段階にウクライナの大統領を拘束し、傀儡政権を立てるというロシア側の試みは失敗に終わった。

さらに、ロシアにとって誤算だったのは、米やNATOは軍事介入しないといいながら、ウクライナに巨額の軍事支援を行い、携帯用対戦車ミサイルや対戦車砲などの最新兵器を提供していたのだ。こうした事態にプーチン大統領は軍に対し、抑止力を「特別警戒体制」に引き上げるよう命令した。事実上、核兵器をいつでも覇者できる状態に置くという命令だった。これで一気に核兵器使用の危険性が高まった。

これから秋、冬が近づくと状況はさらに変わってくる。ドイツなど欧州諸国は現在、石油や天然ガスの脱ロシア化を急ピッチで進めており、ロシアに対する空前の経済制裁の効果が出てくることは間違いない。一方、米国は11月に中間選挙を控えており、バイデン大統領ら幹部はウクライナ問題に専念できない状況になってくる。このため、ロシアと米国・西欧諸国との間で近い将来、停戦を含めた和平交渉を行わざるを得ないだろう。いずれにしろ、これから冬までの数ヶ月間に、双方とも停戦交渉のテーブルに付くかどうかのヤマ場を迎えることになるだろう。(この項終わり)


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