飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するホットなニュースを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外に面白い!

北方領土交渉への過度の期待は禁物!

2018年12月03日 14時07分43秒 | Weblog
日露間の懸案である北方領土問題をめぐり、安倍首相とプーチン大統領は12月1日の会談で、今後の交渉の担当者などの人的枠組みを決めた。これにより、領土交渉は北方四島のうち、「歯舞・色丹の2島返還プラスアルファ」をベースに本格的に進められることになった。

このことは、戦後自民党政権が主張し続けてきた北方四島返還の旗をおろし、最大限2島返還と残る国後・択捉2島の共同経済活動で決着をつけようということになる。ただし、これによって2島が日本に帰ってくると考えるのは早計である。プーチン大統領は一度も島を返還するとは言っていない。そればかりか、「島の主権は今後の交渉次第」と常に釘を刺しているからだ。

そもそも両首脳は11月14日の会談で「日ソ共同宣言(1956年)を基礎に交渉を加速させることで一致した」と日本側は発表しているが、ロシア側は「加速」ではなく、「活性化させる」という表現を用いているという。この表現の微妙な違いに両首脳の思いが図らずも見え隠れしている。安倍首相としては自分の任期中に決着をつけたいという思いが強く、こうした前のめりの表現になったのだろう。

一方、プーチン大統領とすれば、ウクライナ問題で西側の反発が再び強まっている時期だけに、日本側を北方領土問題でロシア側に引き止めておきたいという戦略的発想があるからに違いない。大統領のこうした“したたかさ”を忘れてはならない。

もう一つは、ロシアが最近、米国との対立を強めており、核兵器体制を強化しようとしている点である。ロシアの対米核抑止力を左右するオホーツク海への出入り口にある千島列島を簡単に返還することは考えられない。もちろん、日本側に日米同盟を破棄するという選択肢があれば、ロシア側も検討するだろうが、安倍政権にはそういう選択肢はあり得ないだろう。もし、安倍政権がそれを考えているとしても、米国側が直ちに認めるわけがない。

そう考えれば、安部首相の本心は任期内の決着というより、本格的な交渉をしている状態を継続することのように思えてくる。安倍首相の最大の目標だった憲法改正が難しくなった今、残るは北方領土しかないという思いがあるのではないだろうか。首相個人の人気維持、あるいは任期の期限切れに起きるレームダック化を防ぐために領土交渉が使われるとすれば、国民にはまたしても裏切られたという思いが残るだろう。

もし、首相が本気で北方領土問題を解決しようというのであれば、きちんと国民に交渉経過を説明し、理解を求めるべきではないか。それを曖昧にしたまま、国民の頭越しに領土交渉の決着を急げば、国家百年の計を危うくしかねない。安倍首相が有終の美を飾りたいと心底願うなら、国民に対してもっと謙虚になるべきだ。
(この項終わり)
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日露の北方領土交渉、最大限2島返還に絞られる!

2018年11月15日 08時19分36秒 | Weblog
シンガポールで11月14日夜、行われた安倍首相とプーチン大統領との日露首脳会談で、北方領土交渉は日ソ共同宣言(1956年)を基礎に本格化されることになった。つまり、日本は北方4島から2島に返還要求を引き下げ、交渉を続ける方向が決まったと言える。森喜朗首相時代の「2島先行返還論」に戻ったことになり、日本側の大幅な譲歩となる。

安倍首相は会談後、記者団に「北方領土問題を解決して平和条約を締結する。この戦後70年以上残された課題を次の世代に先送りすることなく、私とプーチン大統領で必ず終止符を打つ」と言い切った。安倍首相としては自分の首相任期を考慮して解決する道筋ができたことを喜んでいるが、日本国民からすれば戦後一貫して自民党が進めてきた4島返還要求をおろし、2島で手を打つということに他ならない。これでいいのかという点が最大の問題である。

プーチン大統領からすれば、当初から2島返還で決着をしようとしてきたので、ようやく日本側の要求を押さえ込んだという面がある。ただ、日ソ共同宣言では「平和条約締結後に歯舞、色丹両島を日本に引き渡す」と書いてあるものの、2島返還を必ずしも約束したわけではない。つまり、共同宣言を基礎にして今後の交渉が続けられ、最大限で2島であり、場合によっては1島、つまり一番小さい歯舞諸島だけになる可能性もある。なぜなら、プーチン大統領は以前から「返還がどういう形になるかは定めていない」との立場を取ってきたからだ。

一方、日本側からすれば戦後一貫して要求してきた4島返還要求が「最大限2島」になることに対し、国民の間からかなりの反対論が起きることは間違いない。安倍首相はこれまで解決方法について「双方が納得できる現実的な解決案」としか説明しておらず、返還要求をトーンダウンしたことへの説明が必要だ。今回のトーンダウンについて「安倍首相の任期終了の2021年までに決着をつけようという算段」との見方が出ており、自身の政権浮揚策との批判が高まる可能性もある。

今回の会談では、首相と大統領との2人だけの会談が約40分間に及んだとされる。この密談でどのようなことが話されたか、が重要だ。安倍首相は今後、できるだけ密談の内容を国民に説明し、理解を得る必要がある。個人の利益のために外交を弄んだという批判を避けるためにも、首相には説明責任がある。また、国会でもこの点をできるだけ明らかにして国民の理解を得る必要がある。(この項終わり)



   
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ニキータ山下さんのディナー・コンサート開催!

2018年11月02日 08時15分14秒 | Weblog

    (熱唱するニキータ山下さん(中央)とアコーディオン奏者、後藤ミホコさん)


男性ボーカルグループ「ロイヤルナイツ」のリードボーカルとして活躍したニキータ山下さんのディナー・コンサートが11月1日夕、東京・高田馬場のロシアレストラン「チャイカ」で開かれた。「マガダン、ハルビン、上海」と題してロシアの歌曲を熱唱、熱心なニキータファンを喜ばせた。

このコンサートは、レストランの経営者、麻田恭一さんがニキータ山下さんに呼びかけて一昨年から開いていて、今回が4回目。あいさつに立った麻田さんは「山下さんが今夏、生まれ故郷のハルビンを15歳で引き揚げて来てから初めて訪問したと聞いて今回の企画を考えた。亡命ロシア人のベルチンスキーら、異郷・異端の詩人たちの歌を思いきり歌っていただきたい」と語った。

山下さんは、長年のコンビ、後藤ミホコさんのアコーディオンをバックに、ロシアの歌曲「黄金の樹々は語り終えた」、「秋の木の葉」など、秋の歌を中心に12曲を歌い上げた。旧満州のハルビンで日本人の父親と白系ロシア人の母親との間に生まれた。日本に帰国してから東京芸大声楽科を卒業。ロシア語通訳、商社勤務を経て1966年、「ロイヤルナイツ」に加入し、旧ソ連などを回って公演し、一躍人気グループになった。81歳の現在もロシア歌曲を中心に歌い続けている。

この日は、ソ連時代に体制批判を歌い続けたビソツキー、上海とハルビンで亡命ロシア人の憂愁を歌ったベルチンスキー、マガダンに流刑され、流刑が解かれた後も生涯、マガダンで歌い続けたコージンら、異端の歌手の歌を次々に熱唱した。中でも、日本初演というベルチンスキーの「黄色い天使」「あなたの手にお香の薫りが」の2曲は、ロシア語を母国語とする歌手ならではの絶唱で観客を魅了した。

12曲を歌い終えてから、さらに日本でも有名なロシア民謡「鶴」など3曲を歌い挙げた。年齢を感じさせない歌声に拍手が鳴り止まず、ニキータ山下さんは「これからも歌い続けるので、また聴きに来てください」と、次回以降の公演を約束していた。麻田さんも、今後もニキータ山下さんのコンサートを随時続ける予定と語っていた。(この項終わり)




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安倍首相はプーチン発言に乗せられた?それともそのフリをした?

2018年10月05日 23時06分32秒 | Weblog
プーチン露大統領による前提条件なしの日露平和条約締結の提案を巡って未だに議論が続いているが、ほぼ結論が出たようだ。日経電子版記事が引用しているトレーニン・カーネギー・モスクワセンター所長の見方が正しいようだ、とロシア政治専門家の畔蒜泰助さんがフェイスブックに書いている。

それによると、9月12日にウラジオストクで開かれた「東方経済フォーラム」でのプーチン氏発言は偶発的なもので、事前に準備していたものとは考えにくいと指摘。では、なぜそのような発言をプーチン氏がしたのかというと、そのフォーラムで安倍首相が直前に演説し、平和条約締結へ向かう強い歩みを強調したので、プーチン氏としては何か反応しなければ弱みを見せたことになると思い、アドリブで提案したというのだ。

つまり、プーチン氏としては、「日本に領土を引き渡すのは不可能」というメッセージを伝えたかったのだという。その後、毎日新聞がパノフ元駐日ロシア大使の発言として、領土問題を棚上げする「中間条約」案が日露間で作られたことがあるという発言を伝えている。私は、プーチン氏がとっさにそのことを思い出して、ああした発言をしたというのが正解だと思う。

問題は、その発言をめぐる日本政府の対応だ。安倍首相は16日のN H Kの討論番組で「プーチン氏は平和条約を締結すると強く前に打ち出した。むしろ日本は積極的に受け取って行くべきだ」と、とんだ「勘違い発言」をしている。領土抜きの平和条約の無意味さを全く理解してないような発言だからだ。

だが、冷静に考えれば、プーチン氏と何回も会談している安倍首相が、そんなことを知らないというのはおかしい。むしろ、それを知っていて、プーチン氏に乗せられた振りをしているという方が正しい見方かもしれない。そう考えたくなるのは、こうした日露首脳のやり取りの裏で、実は領土返還の密約が進められているという情報が流れているからだ。

それによると、安倍首相は北方2島の返還で領土交渉を打ち止めにして、自分の首相期間中に平和条約を締結しようと目論んでいるというのだ。日本政府の主張は四島返還だが、プーチン氏、安倍首相とも「双方が了解できる解決案を」と繰り返しており、ロシア側としては歯舞、色丹の2島返還なら最小限の損害で済むことになる。

だが、日本側はそれで納得できるのだろうか。面積でいえば歯舞、色丹の2島は四島全体の7%しかないからだ。これでは、いくら痛み分けと言っても、戦後70年余も頑張ってきた旧島民や北海道民の理解は得られがたい。安倍政権としては、憲法改正が難しくなってきたので、北方領土返還で国民の目をくらますつもりなのではないだろうか。(この項終わり)









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プーチン大統領、また安倍首相との首脳会談に2時間半も遅れる!

2018年09月11日 09時30分16秒 | Weblog
 またまた、首脳会談に大幅遅刻!この遅刻が安倍首相との会談に対するプーチン大統領側の思いがはっきり表れているのではないか。両国メディアの報道ぶりを見ても、中身の無さをどう取り繕うかに費やされているようにさえ、うかがえる。今回の首脳会談が、自民党総裁線選の最中に、わざわざ日程を入れるほどの結果ではなかったことははっきりしている。

 日露の報道を重ね合わせてみると、ロシア側が最大の成果として報道しているのは、来年6月に大阪で開催されるG20にプーチン大統領が出席するという日程である。そして大統領は、現在両国で開かれている日露文化交流イベントの修了式に出席するということだ。大統領が訪日するというのは大きな出来事だが、G20の大阪開催はすでに決まってることで、プーチン大統領が出席することは一つのニュースだが、その際にじっくり日露の首脳が話し合うという予定はないようだ。

 日本側メディアがメインの見出しに上げているのは、北方領土での共同経済活動の対象5項目の進め方で一致したという北方領土関連が大半だ。これはすでに予想されていたことだし、これによって肝心の北方領土交渉の進展に繋がるわけではない。その上、進め方の中身についての発表も見送られた。安倍首相はこれに関連して「北方4島の未来像を描く作業の道筋がはっきりと見えてきた」などと能天気なことを述べているが、領土問題で進展がないことを糊塗しようとしているとしか思えない。

 そのことは、プーチン大統領の発言に明確に表れている。領土問題の解決は一朝一夕ではできないことを指摘した後、「両国国民に受け入れ可能な解決方法を探すという意味で共同経済活動に着手した」というのだ。だが、共同経済活動をいくら積み重ねても近い将来、領土返還に結びつく保証はなく、最近ロシア側が事あるごとに強調している「北方領土は第二次大戦の結果で解決済み」発言と符丁が合う感じが強い。

 こうした事情が、プーチン大統領の首脳会談への大幅遅刻に表れているのではないだろうか。今年7月、ヘルシンキで行われたトランプ米大統領との首脳会談にもプーチン大統領は約50分遅れたという。それでもまだ、1時間程度なら許されないこともない。だが、2時間半も遅れるというのは外交上の失態ではないか。それほどプーチン大統領は、安倍首相に会いたくなかったということでなないかと思わざるを得ない。(この項終わり)



 





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安倍首相はウラジオでプーチン大統領と何を話すのか?

2018年09月04日 10時21分54秒 | Weblog
 安倍晋三首相は9月3日、ロシアの極東・ウラジオストクで開催される「東方経済フォーラム」に出席するため、10日から13日まで訪露し、プーチン大統領と会談すると発表した。大統領と北方領土問題の共同経済活動について協議し、平和条約締結を前進させる考えとされるが、大統領は最後の任期途中で、早くもレイムダックの兆しが見えており、とてもそんな余力はない。逆に利用される可能性の方が高い状況だ。

 安倍首相は自民党総裁選渦中に産経新聞との単独インタビューに応じ、プーチン大統領との会談で「北方領土の帰属問題を協議し、平和条約を締結したい」と述べた。この時期に首相シンパの新聞とだけ、インタビューに応じるというのは世論の反発を受けかねないリスクがある。それを度外視して単独インタビューに応じたのは、何故なのか。憲法改正問題で読売新聞と単独インタビューした時と同様、政府寄りのメディアしか相手にしないという意思表示なのかもしれない。それだけでも、国家の指導者としての認識のズレを感じざるを得ない。

 さらに、この時期に訪露しても、プーチン大統領とまともな議論ができないことは明らかだ。ロシアの年金制度改革問題で年金支給年齢の引き上げを提案し、世論の猛反発に遭い、肝心の年齢引き上げ案を一部修正したばかりだ。この問題で高率を保ってきた大統領の支持率も70%台から60%台に低下し、早くもレイムダック状態に落ち込みつつあるとの見方が出ている。

 その上、米国のトランプ政権が発足してから一層悪化している米露関係が足かせになり、プーチン政権は軍事力強化の方向に動きつつある。その一つの現れが、極東やシベリアで中国と共同で実施中の大規模軍事演習「ボストーク(東方)2018」だ。この軍事演習は旧ソ連時代の1981年以来の規模で、中国軍も3000人以上参加しているという。まさに軍事面の中露連携を内外に示すとともに、日米軍事同盟へのけん制であることは疑いない。

 そんな状況の中で、国家の威信がかかった領土問題を首脳同士で協議しても、事態打開に向かうような結論が出るはずはない。まして、ロシアは領土問題に関して「これは第二次世界大戦の結果だ。それを認めようとしない日本はおかしい」との論調を強めている。冷静に考えれば、安倍首相は日本側の領土返還への熱い想いを真剣に受け止めようとしないロシア相手に、無駄なパフォーマンスをしようとしているとしか言いようがない。

 安倍首相は自民党総裁を2期務めたが、経済はそれほど良くならず、かけ・もり問題では依然として世論の不信を買っており、頼みの綱は外交だけといっても過言ではない。今回の訪露でも、プーチン大統領との会談をなんとかして外交の成果につなげようという、安倍政権の末期症状が垣間見える。自民党員はこうした現状をきちんと把握し、総裁選び、つまりは首相選びをしないと、そのツケは必ず国民に返ってくることを肝に銘じるべきだ。(この項終わり)

 
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チェブラーシカ原作者の死を世界中のファンが悼む!

2018年08月19日 15時34分47秒 | Weblog
  (モスクワで購入した赤色のチェブラーシカ)

ロシアのキャラクター「チェブラーシカ」の原作者で、14日に死去した児童文学作家、エドアルド・ウスペンスキー氏(80)のお別れ会が18日、モスクワ市内の「文学者の家」で行われた。子熊と猿の中間のような不思議な小動物が世界の子供から大人まで、幅広いファンに親しまれていて、世界各地で原作者を追悼する催しが開かれた。

チェブラーシカを人形アニメとして映画化したスタジオのマシコフツェフ代表はモスクワのお別れ会で「ウスペンスキー氏の作品はユーモアの感覚や、動物が社会の一員であることを教えてくれた」と讃えた。また、プーチン大統領も弔電を寄せ、「友情や真実、優しさを教えてくれる素晴らしい児童文学の古典を残してくれた」と、原作者を持ち上げた。

チェブラーシカは日本でも多くのファンに支えられ、チェブラーシカの人形などがロシア民芸品店などで人気になっている。私の娘も大ファンで、成人になってからも私がモスクワへ旅行に行くたびに「買って来て」とせがみ、五輪冬季大会ごとに特製された白、赤、青色のチェブラーシカが一時、部屋の中にかざってあった。

チェブラーシカは「ばったり倒れ屋さん」と言う意味で、「どすんと落ちる」などの意味を持つ古い俗語から来ていると言われている。物語の中のチェブラーシカは天涯孤独で寂しがり屋。アイデンティティを求めてさまようシーンが目立った。

ソ連末期の1960年代以降にアニメ作品が公開され、旧ソ連の体制を批判する内容が多く描かれているのが特徴だ。街で行列にぶつかると、取りあえず並ぶという、当時のソ連の物不足を皮肉ったり、特権を利用して私服を肥やす役人を貶したり、といった内容が多かったように思う。

外見のおかしさとともに、社会主義社会への不満を描いたところがロシア人の共感を誘ったのかも知れない。その一方で、役人などから厳しい検閲を受けた際、「架空の作品だ」と言い逃れるために当初、絵本にしたと言う、したたかさもあった。ロシアのアニメ作品の面白さと、ロシアの奥深さを教えてくれたウスペンスキー氏に心からお悔やみを申し上げたい。(この項終わり)








 


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日露外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)で何が話されたのか?

2018年08月01日 11時35分26秒 | Weblog

日本とロシアの外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)が7月31日、モスクワで開かれた。日露間の2プラス2は3回目だが、モスクワで開催されたのは初めて。双方とも自国の安全保障上の懸念を表明し、議論は平行線のまま終わったようだ。

31日付けのロシア紙・独立新聞(電子版)によると、2プラス2には日本から河野外相、小野寺防衛相が出席、ロシアからラブロフ外相、ショイグ防衛相が加わった。この会議はこれまで13年と17年に、いずれも東京で開かれており、日本の防衛大臣が訪露するのは12年ぶり。このため、ショイグ防衛相は会談冒頭、「我々は今日の会談に大いに期待している」と述べる一幕もあった。

2プラス2では、両国が関係する地域の安保問題を中心に論議した。日本側からは、極東地域、特に北方領土(ロシアは南クリル諸島と呼ぶ)周辺でのロシア軍の軍事的プレゼンスが活発化していることへの懸念が表明された。
一方、ロシア側からは日本が23年までに陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」2基を国内に配備する決定をしたことに対し、「ロシアの安全保障上、深刻な不安を呼ぶものだ」と指摘した。特にロシア側は、今回の配備決定は米国のミサイル防衛システムの一環だと強調した。

独立新聞は迎撃ミサイル配備問題について「日露平和条約交渉継続にとって良好な雰囲気を損なうものだ」と指摘する一方、「すでに70年以上決まっていない問題だけに、協議で触れないわけにはいかない」とも述べている。さらに、同紙は河野外相がタス通信との最近のインタビューで「一歩一歩、我々の目標である平和条約締結に近づいていくことが重要だ」と語ったことも付け加えていた。

最後に、同紙は日本側が第二次大戦の結果を受け入れて平和条約を結ぶとみており、「日本の降伏後に旧ソ連に編入された北方領土をロシアに返還すると書き換えることなどできない」とのロシア側の見方を伝えている。

独立新聞はロシアでも民主的とみられており、政府の発表を鵜呑みにする保守系新聞とは違うと私はみている。それでも、これだけ第二次大戦の結果にこだわるのは、日本側がすでにこの問題の解決には妥協が不可欠で、現実的な考えに傾いているとみているからだろう。

この背景には、安倍政権が北方領土の2島返還で解決を急ごうとしているという見方がロシア国内で広がっているからではないか。だが、日本国民は今の段階で2島返還で納得しているとは思えない。そうであるなら、やはり安倍政権がきちっと国民に説明して理解を得るべきだ。この間、安倍政権は常に国民への説明責任を後回しにして、国民をないがしろにしてきた。これは領土問題という国家の大問題だけに、必ずきちんとした手続きを踏んでほしい。(この項終わり)






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プーチン大統領、トランプ大統領に貫禄勝ち!

2018年07月18日 08時20分18秒 | Weblog
プーチン露大統領は16日、トランプ米大統領とヘルシンキで首脳会談を行った。米露首脳会談は、トランプ大統領の当選以来、3回目だが、2人だけでじっくり話し合うのは今回が初めて。流石のトランプ大統領も百戦錬磨のプーチン大統領に押されてか、失言や言葉足らずが多く、貫禄負けしたようだ。

トランプ大統領の出だしから両国関係悪化の足かせになっている米大統領選へのロシア介入疑惑をめぐってトランプ大統領は「両国間に溝を産んだ災難。ばかげている」と発言、米議会の共和党だけでなく、民主党からも「暴君の前にへりくだっている」「自国の諜報機関を否定するとは何事か」と総スカンを食い、あとで否定を余儀なくされた。今秋の中間選挙を前に、米国世論を盛り上げようというトランプ大統領の狙いが裏目に出たと言える。

もう一つの大きなテーマだった核戦力の見直し問題でも、核軍縮への具体的な協議には入れなかった。この問題でも、プーチン大統領は米国の推進する世界規模でのミサイル防衛(MD)システムを厳しく批判しており、トランプ大統領はロシア側の攻勢を押し返せなかった形だ。

一方、プーチン大統領はサッカーW杯でのロシアの快進撃をバックに、米国との関係改善の糸口を求めていただけに、予想以上の「勝利」と言っていいだろう。米朝首脳会談を成功させ、意気が上がっていたトランプ政権も、経験豊富なプーチン大統領にやり返されたことになる。

首脳会談でプーチン大統領から、W杯で使用されたボールをもらってニヤついていたトランプ大統領も、米露関係改善へ向けてのボールを投げ返されたと気づき、イラついているというのが真相ではないか。米側にも「次の一手」への展望がなく、当分は様子見ということになろう。日米同盟を至上命題にしている安倍首相も、米露関係が改善されないと、ロシアとの北方領土問題を含む平和条約交渉を進めることができない情勢だ。

さらに、安倍首相は北朝鮮との拉致被害者救出交渉を迫られているが、トランプ政権は中間選挙を控えて消極的にならざるを得ず、米側の支援がなければ交渉前進はとても望めない。内政では、もり・かけ問題をはじめ、やることなすことがうまくいかず、「外交の安倍」に矛先を変えて自民党総裁3選を勝ち取ろうという戦略も暗雲が漂い始めた。世論も、中身のない安倍政権をいつまでも支持するとは思えない。いよいよ世論に見放される局面が近づいていると言えそうだ。(この項終わり)

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ガルージン駐日ロシア大使が日露関係について講演!

2018年06月30日 16時56分11秒 | Weblog

  (講演後、プレセントを受けるガルージン大使)

ロシアのミハイル・ガルージン駐日大使は6月29日、東京・六本木の国際文化会館で、日露関係と日露外交の行方について講演した。大使はロシア外務省切っての知日派で、講演・質疑応答とも日本語で行い、北方領土問題に対する日露間の認識の違いなど、いくつかの問題点が浮き彫りになった。

ガルージン大使は、 01年から08年まで駐日公使を務め、さらに日本担当の外務省第3アジア局長を歴任した対日専門家だが、北方領土問題などでは強硬派と見られている。

大使は開口一番、「私は親日露友好家といってもいいと思う」と述べ、日露友好を目指して行動する考えを示した。
まず国際関係全般について「紛争が発生しやすい状況になっていて、心配感を抱かせる時代に入っている」と指摘した。特に、世界が多極化の傾向を強めている中で、米国中心の一極主義的な考え方が強まり、西側諸国のルール違反の行為が目立ってきていると警告した。

その一方、日露関係については「内政不干渉や国家の対話の原則がきちんと守られ、G7の中でも日露関係は良好な状態にある」と持ち上げた。とりわけ、プーチン大統領と安倍首相との首脳会談が21回に上るなど、首脳外交が順調に進められていると指摘した。

懸案の平和条約締結問題、つまり北方領土問題についても、四島の共同経済活動、ビザなし交流などで両国の合意が進んでいるとし、「過去から引き続いた大変敏感な問題解決のための条件、環境が作られると期待している」と述べた。

ガルージン大使の講演について主催団体の一つ、安全保障問題研究会の袴田茂樹会長がコメントした。最初に「日露間のパイプが細くなっている点に危機感を持っている。政府で検討している計画の多くが名目に終わっている」と警鐘を鳴らした。また、ロシア側が最近、北方領土問題で、「戦争の結果、北方領土はソ連(ロシア)領になり、それが受け継がれてきているので、返還要求は受け入れられない」などと発言している問題を取り上げ「歴史的にみても、おかしい」などと反論した。これに対し、大使は「4島がソ連に引き渡されたのは戦争の結果、ということはずっと前から言っている。その一方、プーチン大統領は最近の会見でも『日露双方が歩み寄って妥協的合意に到達する必要がある』と発言している」と述べた。

この後、会場から北方領土問題やロシアの軍事費などについて多くの質問が出された。外務省時代、ロシアとの領土交渉を何度も経験している東郷和彦・元駐オランダ大使は「プーチン大統領の時代に領土問題が解決できなければ、ロシアにとってもマイナスではないか」と質した。ガルージン大使は「領土問題の未解決は不健全だ。どちらが損か得かの問題ではない。仲良く進めていきたい」と話し合い解決に期待感を示した。

講演会では大使の講演が約1時間、質疑が約1時間と質疑応答にかなり時間が割かれたが、論点が多く、日本側の参加者が納得するようなところまでは進まなかった。だが、大使はこれからもこうした機会を持つことに同意しており、対話を重ねることで日露両国民の理解が進むことが期待される。今回主催した安保研、ユーラシア21研究所、後援した日本ロシア協会、日ロ交流協会、日本対外文化協会にご検討をお願いしたい。(この項終わり)







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日露首脳の信頼関係で何度会談を開いても「領土」進展の見通しなし!

2018年05月27日 22時28分51秒 | Weblog
安倍晋三首相とプーチン大統領による日露首脳会談は5月26日深夜、モスクワのクレムリンで行われたが、北方領土交渉での進展ばかりか、共同経済活動の具体化も進展がなく、無駄骨になったと言っても過言ではない。安倍首相にとってはプーチン氏と21回目の会談になるが、平和条約交渉の先行きは全く見通せないのが偽らざる現実といえよう。

安倍政権はプーチン氏との個人的な信頼関係を足場に、プーチン氏が領土問題解決に踏み切ることを期待して首脳会談を重ねてきた。特に今回は、プーチン氏が大統領選で通算4選を果たした直後だけに、領土問題で思い切った政治決断を行うのではという甘い期待があったが、見事期待を裏切られた。世界を相手に強面外交を演じているロシアが、そんな甘い考えに乗るわけがなく、政権内部からも「前のめりになりすぎた」との声が出ているという。

こうした結末は、5月25日に外国通信社代表団と会見したプーチン大統領の発言から十分予想できたはずだ。日露平和条約締結の見通しを質問した記者に対し、最初は「我々は相互に受け入れ可能な譲歩を見つけられるよう試みてゆく」と切り出しながら、具体的な解決策に触れると「どのようになるかは現時点では述べられない。それを話せるのなら、もう(平和条約に)署名しているだろう」と突き放した言い方をした。もはや、問題解決への意欲も期待も持っていないことを暗示した発言とも受け取れる。

現に安倍政権が平和条約締結の突破口と位置付けている、北方領土での経済共同活動の前提になる「特別な制度」導入問題が一歩も進んでいないことからも明らかだ。このため、活動の重点5項目に挙げられたウニ養殖やイチゴ栽培の事業化も具体化までには至らなかった。記者会見で安倍首相はこの問題について「新しいアプローチのもと、平和条約に向け着実に前進する決意をした」と述べたが、単なる日本側の期待にすぎない。こうした期待をいつまでも国民の前にぶら下げて、世論をミスリードしていく手法はもうやめたほうがいいだろう。

むしろ、いま日露の首脳が真剣に討議すべきは北朝鮮を中心とするアジア・太平洋の安全保障をどうするかだろう。こちらの問題についても両首脳は話し合ったというが、これまでの双方の立場を述べ合っただけといえなくもない。

今安倍首相が問われているのは、誠実な言葉で政治・経済などの状況を国民に説明することだ。それをせずに、口先だけで誤魔化す発言をしているから、森友・加計問題などが沈静化するどころか、国民の不満が高まるばかりなのではないか。少なくとも「(我々は)一点の曇りもない」「政治を捻じ曲げるようなことは一切していない」などという無責任な発言は、今後一切して欲しくない。(この項終わり)

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プーチン露大統領の最後(?)の任期がスタート!

2018年05月05日 00時23分29秒 | Weblog

3月のロシア大統領選で圧勝したプーチン氏の4期目の任期が7日からスタートした。任期は6年で、任期満了時には71歳の大台を迎える。憲法では任期は連続2期までとされているが、本当に最後の任期となるのだろうか?

大統領就任式は7日、クレムリンで約1,500人の招待客を迎えて行われた。宣誓後の就任演説でプーチン大統領は「ロシアは国際社会で強く活発で影響力のある国であり、国家の安全は保障される」と強調する一方、「今は国内の重要課題に対応するため、経済と技術の躍進に全ての能力を注力しなければならない」と、内政重視の方針を示した。その上で、去就が注目されたメドベージェフ首相の続投を提案した。下院は8日にもこの提案を承認する見通しだ。

プーチン氏は初めて大統領に就任した2000年以来、大学の後輩、メドベージェフ氏を首相に任命。プーチン氏の大統領任期である2期8年が切れると、今度は自分が首相に、メドベージェフ氏が大統領に就任、二頭立ての政治体制を続けてきた。この政治体制は縦列の二人乗り自転車を指す「タンデム」と呼ばれている。今回はメドベージェフ氏の蓄財ぶりが世論の反感を買っているため、首相を交替させるのではとの見方もあったが、タンデム体制を維持した。首相交代に伴う政治権力の不安定化を嫌ったためだろう。

プーチン氏は首相時代を含め、大国の指導者をすでに18年間務めている。さらに今回の任期6年加えると、四半世紀近くの長期政権となる。いかに国民に人気があると言っても、飽きられ、不満を持つ人が増えてくるのは避けられない。そこは本人自身も十分認識していて、若手やリベラル系を多数起用するとみられている。特に、閣僚や州知事など、政権の中枢には実務能力のあるリベラル系を抜擢するとの見方が有力だ。4月にモスクワ支局長に赴任した大前仁・毎日新聞特派員のルポ企画「プーチンのロシア〜4期目始動」(上)によると、昨秋イワノボ州知事代行に就いたバスクレセンスキー氏がその典型だという。

プーチン氏は、任期満了の2024年以降について「今のところ憲法を改正する、いかなる考えもない」と発言している。モスクワ大学法学部出身だけに、表立った法律破りはしないだろうが、大統領と権限を二分するような、憲法裁判所長官のようなポストに就くことは考えているかもしれない。今後、プーチン氏の権力への執着ぶりをじっくりみていきたい。
(この項終わり)



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19回目のハルピン学院記念碑祭、高尾霊園で開催!

2018年04月16日 22時35分44秒 | Weblog


 (参加者全員でハルピン学院寮歌「松花の流れ」を合唱)

中国東北地方(旧満州)にロシア語のスペシャリスト養成のため設立されたハルピン学院の卒業生らが集う第19回ハルピン学院記念碑祭は4月16日、東京都八王子市の高尾霊園で開かれた。これまでずっと記念碑祭のまとめ役を務めてきた麻田平蔵さん(24期)が今年2月に亡くなった他、この1年間にわかっているだけでも計8人が鬼籍に入り、卒業生の参加者は4人に止まった。

例年4月16日に開かれている記念碑祭では、霊園の中の桜が咲き乱れ、花吹雪の中での慰霊祭になっていたが、今年は大半の桜が散ってしまい、心なしか、彩の少なさが感じられた。25期の中村誠さん(91)の開会の挨拶で始まり、卒業生とその遺族や家族ら全員で1分間黙祷した。続いて、この1年間に亡くなった卒業生8人の分骨や遺品が共同墓地に収められた。

この後、例年麻田平蔵さんが卒業生の現況報告を行うのだが、今回は2月8日に亡くなった平蔵さんに代わって息子の恭一さんが報告。生前、平蔵さんと話をした結果、「卒業生の高齢化が進んでいるので、懇親会を屋外で行うのは考え直そう」ということになったと語り、今回霊園内の龍雲閣で行うことにした経緯を述べた。続けて恭一さんは「今後記念碑祭をどう続けていくかをみなさんと相談したい」と呼びかけた。卒業生1,412人のうち、生存者は4月9日現在、76人となり、とうとう80人を切ったという。

現況報告の後、参加者全員でハルピン学院寮歌「松花の流れ」を合唱した。麻田平蔵さんが生前、テープに吹き込んだ寮歌をバックに歌い、記念碑祭を支えてきた平蔵さんをしのんだ。最後に、26期の奥田哲夫さん(89)が閉会の辞を述べた。この中で、生存している卒業生がこの5年間で急激に減ったと語り、「記念碑祭が永久に続くよう、みなさんのご健康とご協力を祈念します」と述べた。また、最高齢の上野信男さん(93)も飛び入りで発言し、「体の調子が良くなり、参加できた。これからも生ある限り、参加したい」と意気込みを語った。

ハルピン学院は日露戦争から日本の敗戦までの間、日本の支配下にあった満州国のハルピンで1920年、開校された。当時は外務省所管の旧制専門学校だったが、1932年にハルピン学院と改称、40年に満州国国立大学に昇格した。1945年、日本の敗戦に伴い、解散された。戦後、同窓会が開かれていたが、1999年4月、同窓会を閉じて記念碑祭として続けられてきた。2020年に創立100年を迎えることから「それまで頑張ろう」が卒業生の合言葉になっている。(この項おわり)
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日本がロシア外交官大量追放に追随しない理由は?

2018年04月07日 12時09分46秒 | Weblog

英国で露軍情報部門の元幹部と娘が意識不明で発見された事件をきっかけに、過去最大規模の外交官追放の応酬が続いている。さらに米国はサイバー攻撃などの対外「有害活動」に関与したロシアの個人・団体にまで制裁措置を発表、歯止めがきかない状況に陥りつつある。

ここまで拡大した直接の原因は、ロシアによる不法な干渉や「有害活動」が全世界的に広がりつつあることへの警戒感からだろう。それだけではなく、英国のE U離脱やトランプ米政権が仕掛けた通商戦などで、米英歐の関係がギクシャクしているため、結束を示す良い機会と便乗した面もあるに違いない。その半面、ブルガリアやギリシャなど対露経済関係を重視する国が慎重な姿勢を示していることも記憶にとどめておく必要がある。

そうした情勢の中で、米欧の対露非難に同調していない日本の姿勢は、ある意味で注目に値する。主な理由は、ロシアとの間で領土問題を抱えている上、北朝鮮情勢が不安定な状態が続いているだけに、対露関係を慎重に進めたいという意向の表れだろう。だが、それだけなら日米同盟の観点から米国に追随せざるを得ないといえるが、常日頃、日露関係に神経をすり減らしている日本外交からみて、もっと深謀遠慮が働いているに違いない。

ロシアのこれまでの外交を振り返ってみると、ソ連時代、ロシアになってからも含め、他国が強硬手段を取れば取るほど強硬な対抗手段を取ってくる傾向が強い。まして、プーチン政権が大統領選を前にして国民に弱気を見せられないという事情もあったことは否めない。そうした中で、米英歐に追随するだけでは脳がないと言っても過言ではない。

安倍首相は5月に訪露してプーチン大統領と会談することになっており、日本の今の政治状況からすれば「北方領土問題を打開する最後の機会」と言えないこともない。それだけに慎重の上にも慎重に事を運び、懸案の北方領土交渉で解決策を見出したいところだろう。そうした背景があるだけに、ここはじっくり様子を見ながら対露方針を決めたいところだ。憲法改正が事実上不可能になった今の段階で、安倍首相としてはプーチン大統領との会談に政治生命を賭けるしかないというのが本音かもしれない。(この項おわり)

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プーチン大統領、圧勝だが投票率70%に届かず!

2018年03月20日 09時22分22秒 | Weblog


ロシアの大統領選は3月18日、投開票が行われ、プーチン大統領の4期目の当選が決まった。得票率は開票率99%の段階で76%に上ったが、投票率は67%と、70%の目標には達しなかった。反プーチン派の投票ボイコット運動の成果ともいえ、これが今後、プーチン政権崩壊の「蟻の一穴」となるかもしれない。

プーチン大統領は選挙前から「投票率、得票率とも7割以上」の目標を掲げていた。プーチン氏の唯一のライバルともいえる反プーチン派のナワリヌイ氏が立候補を中央選管から拒否され、選挙ボイコットを訴えていたのが大きな理由だろう。それとともに、今後任期6年間を無事乗り切るには、国民、とりわけ若者の支持が必要と考えていたからに違いない。その意味では、今回の勝利はプーチン氏にとって5分5分といっても過言ではない。

ロシア紙ノーバヤ・ガゼータによると、投票率は地方より都市部に低いところが多く、最大票田のモスクワ市は59・86%と6割を切っている。これは都市部に反プーチン派が多いことを裏付けており、中でも若者の政治不信・政治離れが進んでいることの証しだろう。今後、こうした政治不信を払拭できるかどうかが、安定政権を目指すプーチン大統領の大きな課題になる。

もう一つの課題は、プーチン氏の年齢にあるといってもいいかもしれない。現在65歳のプーチン氏も6年後には71歳になるからである。ロシアの平均寿命は男性66歳、女性77歳。とくに男性の平均寿命はウオツカの飲み過ぎもあってソ連崩壊前後、ぐんと下がった。徐々に回復しつつあるものの、男性の平均寿命は依然、女性に比べかなり低い。プーチン氏にとっても健康問題は他人事ではない。

それ以上に、プーチン氏にとって大きな問題は、これがプーチン氏の最後の任期になるという点だ。憲法上、大統領任期は連続2期までと定められ、本人自身、「この問題で憲法改正はしない」と断言している。そうなると、一時は支持率8割の高率を誇ったプーチン氏でも「レームダック」になる可能性は低くない。

そうなった場合、プーチン氏がどう出るかが焦点になろう。彼の性格からすると、強硬策を打ち出して人気回復を図る可能性が高い。今の政治状況からすると、トランプ米大統領とのツバぜり合いが激化する恐れが高い。つまり、米露の軍拡競争が今後さらにエスカレートする危険性があるのだ。

ロシアとの北方領土問題を抱える日本にとって、この問題を解決できるロシアの指導者はプーチン氏以外考えられない。それだけに、これからの6年間は、プーチン政治24年間の集大成を行うためにも、穏健な政治路線を歩んで欲しいと願わずにはいられない。(この項おわり)


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