飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

ぺりかん社『裁判官になるには』重版に。法曹界シリーズ3冊とも重版達成!

2024年07月28日 08時37分05秒 | Weblog

人気の職業への道をわかりやすく紹介する”ぺりかん社”の「なるにはBOOKS」法曹界シリーズの1冊である『裁判官になるには』がこのほど重版となりました。これで『検察官になるには』『弁護士になるには』に続いて3冊とも重版を達成しました。これはひとえに読者の皆さんのお陰と出版社共々、深く感謝しております。

 このシリーズは、現役の裁判官、検事、弁護士にインタビューして仕事ぶりややりがいを詳しく聞き出し、とかく難しいとみられている法曹界の仕事が丸ごと分かるようにした入門書です。法曹界に入るには難関の司法試験を突破する必要があり、相変わらず狭き門となっています。そこでぺりかん社では、中高生に焦点を当て、写真やイラストをふんだんに使って編集をしています。将来、こういう仕事に就いてみたいと思っている人には格好の本だと思います。

 このシリーズの取材・執筆を担当した私は、毎日新聞社の記者として法曹界を4年間取材し、当時日本中を沸かせたロッキード事件など多数の裁判を取材しました。そうした経験から学んだ裁判のリアルを織り交ぜながら、裁判の流れや問題点を分かりやすく解説しています。裁判所の仕事に興味のある方には、きっと役に立つと思います。

 本の中身をざっと紹介します。1章では東京地裁民事部、千葉地裁刑事部、さいたま家裁家事部の3裁判官へのインタビュー記事を掲載し、実際にどのような仕事をしているのか、やりがいを感じるのはどういう場合かなどを詳細に書いてあります。2章では裁判の歴史、日本の裁判所と裁判官制度の仕組み、刑事、民事、家裁、少年事件などの裁判の実際が詳しくまとめてあります。さらに、刑事、民事の調査官だけでなく、家庭裁判所の調査官にもインタビューし、仕事ぶりをまとめてあります。3章では、裁判官に必要な資質や司法試験制度についても詳しく書いてあります。

 こうした取材で感じたのは、現役の裁判官や書記官は決して特別な人たちではなく、興味とやる気があれば誰でもできる職業だということです。そのためには、学生の時から社会に目を向け、様々なことに関心をもち、多くの人たちとコミュニケーションしていけば、必ず目標に到達できると思います。この本を是非一度手に取って読んでいただければ、十分理解していだだけると思います。

 『裁判官になるには』の定価は本体1500円+税です。 

  ぺりかん社;東京都文京区本郷1ー28ー36      TEL 03 -3814-8515(営業)(この項終わり)

 

 

 

 

 


裁判官への女性進出が急増している理由は?

2024年07月12日 09時08分01秒 | Weblog

NHK連続テレビ小説「虎に翼」が大きな話題になり、司法界で働く女性の生き方やジェンダーの問題がクローズアップされている。特に、今年に入り、日本弁護士連合会や検察庁のトップに女性が相次いで就任していて、残るは裁判所のトップのみになってきた。この背景を探ってみたい。

今、テレビ小説で描かれているのは戦前から戦後にかけての時代で、現状ははるかに進んでいることをまず指摘したい。私も新聞社の司法記者として1970年代に東京地裁で取材に当たったが、当時は女性の裁判官や検察官は少なかった。法廷で女性裁判官や検察官を見かけると、つい目が惹きつけられる感じだった。

だが、最近の数字を見ると、びっくりするほど女性の進出が増えているのがわかる。最新の「弁護士白書2023」を見ると、女性の採用比率が一番高いのは裁判官で 28、7%。次いで検察官27、2%、弁護士は19、8%となっている。大ざっぱにいうと裁判官、検察官とも約3人に1人が女性といえる。

この数字を見て驚くのは、裁判官の女性の採用比率が大きく伸びていることだ。この理由について最高裁判所広報課は「女性にとって働きやすい職場だからではないでしょうか。裁判官は自分が受け持つ事件の審理をきちんと行っていくことが重要で、その他の業務は柔軟に対応できる面があります」と話している。

一方、女性弁護士の採用比率が2割弱というのが気になる。過疎地などでは女性弁護士が少なく、司法にアクセスできないという問題が起きているという。女性でなければ理解してもらえないケースも少なくない。このドラマがきっかけとなり、女性弁護士が増えるよう期待したい。(この項、終わり)

 

 

 


ロシアと北朝鮮が事実上の軍事同盟を結んだ意味は?

2024年07月08日 09時32分21秒 | Weblog

ロシアのプーチン大統領は6月下旬、北朝鮮の平壌を訪問し、金正恩・朝鮮労働党総書記と「包括的戦略パートナーシップ条約」に署名した。条約では、ロシアと北朝鮮のどちらか一方の国が武力侵攻を受けた場合、他方は「遅滞なく全ての手段で軍事などの援助を提供する」と定めている。事実上の軍事同盟である。

旧ソ連と北朝鮮は冷戦時代の1961年に同様の条約を結んだが、1991年にソ連が崩壊したことから旧条約は失効していた。新条約は「覇権主義的な企てと、一極の世界秩序を強要しようとする策動から守る」と表明。一方が他方の核心的利益を侵害する協定を結ばないことを義務付けている。さらに、食料やエネルギーの分野でも共同して対処すると定めている。

この条約は、1961年に結ばれた条約同様、どちらかが外部の攻撃を受けた際に自動介入する条約の復活を意味している。ただ、両国の間には温度差があり、条約発表後の記者会見では、金総書記が「同盟」と言う言葉を3回使ったが、プーチン氏は一度も使わなかったことから、必ずしも一枚岩とは言えないようだ。

一方、中国外務省は定例会見で新条約について「ニ国間の協力問題だ」として論評しなかった。中国としては、北東アジアや西太平洋などの国家間の対立が激化する恐れがあることから、当面は静観するとみられている。日本の防衛研究者も、日米韓とロシア・北朝鮮という新しい対立構図ができたことから、地域の緊張がさらに高まる恐れがあると警戒している。(この項終わり)

 


「全国紙」がなくなる日は、そう遠くない!?

2024年05月04日 09時12分01秒 | Weblog

メディアの実情を伝える月刊誌「FACTA]は5月号で、『「全国紙」がなくなる日』というタイトルの記事を掲載。その中で、全国紙の発行部数が年々落ち込み、その影響で人件費の削減が続き、特に地方支局でその影響が広がっていると指摘している。

まず全体状況から見てみよう。2023年末に日本新聞協会が公表した同年の日刊110紙の総発行部数が前年に比べ7・5%減った。6年連続の減少だ。日本ABC協会がまとめた日刊紙の朝刊販売部数(月間)は昨年同期に比べ7・2%の減少で、その約7割を全国紙が占めている。つまり、地方紙の減少率は全国紙に比べ全体として低いというのだ。

そこで、新聞業界で大手紙の朝刊販売部数を10年前と比べると、各紙とも大幅に落ち込んでいる。読売新聞と朝日新聞は年平均で約40万部の減少。読売新聞と毎日新聞、日経新聞は半分以下になったという。部数が減れば当然売上高が減ってくる。例えば朝日は22年度の売上高が10年前の6割弱に落ち込んだ。

売り上げが減った場合、帳尻合わせの最も手っ取り早い方策は人件費の削減だ。新聞各紙、特に全国紙は「部数減→支局・記者減→取材力低下→紙面の質低下→部数減の負のスパイラルに陥っている」という。中でも地方の取材拠点を急速に減らしているのは朝日新聞で、10年7月に296ヶ所あったのが、23年7月には158ヶ所に大幅に落ち込んだ。このうちの大半は支局の削減だ。

削減の方法は新聞社によって多少異なるが、毎日新聞、産経新聞も取材拠点を半減させている。中でも産経新聞は支局や通信部を大幅に減らし、そうした地域では共同通信の配信に依存している。これに対し、読売新聞は05年以降、300を越す取材拠点を保持している。「唯一無二の全国紙」を目指しているという。

こうした全国紙の地方撤退は「道府県版などの紙面の劣化として表れてきている」とFACTA誌は指摘している。こうした地方取材網の削減は、記者の労働強化につながる。特に選挙の時には担当地域が2倍になれば2倍忙しくなるので、部数減のしわ寄せは地方記者に重くのしかかっているという。

以上の実態から、FACTA誌は「このままのペースで取材網縮小、記者削減が続けば5、6年後には100万部を上回る新聞は読売新聞だけになる見通しだ。名実ともに『全国紙』と言える新聞はほとんどなくなってしまうだろう」と指摘している。果たしてこれで良いのだろうか。(この項終わり)

 

 


岸田首相は、なぜこの時期にあえて渡米するのか?

2024年04月08日 16時52分54秒 | Weblog

岸田文雄首相が8日から米国を訪問し、バイデン大統領らと会談すると発表された。安全保障分野などで日米の連携がさらに深まっていることを示し、強固な日米同盟をアピールするため、と日本政府はピーアールしている。だが、自民党の裏金問題でズタズタになっている現状を改善し、政権浮揚につなげるのは困難な情勢だ。

今回は2015年の安倍晋三元首相以来、9年ぶりの公式訪問で、日本の防衛力強化に向けた取り組みを共有し、防衛装備品に関する新たな協議体の創設で合意する予定だ。さらに、ロシアによるウクライナ侵攻などで脅かされる「自由で開かれた国際秩序」を日米両国がパートナーとして維持・強化する姿勢を示す方針という。

自民党総裁である岸田首相にとって今一番肝心な仕事は、自民派閥の政治資金パーティー券を巡る裏金事件を解明し、国民にきちんと説明することだ。だが、首相は自らの責任を取らないばかりか、自身を処分の対象外にしているのは納得できない。それらを放置して米国へ飛ぶのは、国民への裏切りと言っても過言ではない。

このままでは、自民党に対する国民の不満や怒りが募り、政治不信は深まる一方だ。党内からも不満の声が噴出していると聞く。こうした事情は米国にも伝わっているので、首相への信頼感が低下しないとも限らない。

一方、米国でもバイデン大統領への支持率が低下気味で、秋の大統領選では再起を図るトランプ前大統領の優勢も伝えられている。この状況で岸田首相が無理して訪米しても、逆効果にならないとも限らない。今後の岸田首相の発言や米側の反応を注視したい。(この項終わり)

 

 


ロシアのプーチン政権、今夏にもウクライナへ大攻勢を仕掛ける?

2024年03月19日 14時45分20秒 | Weblog

プーチン・ロシア大統領は3月の大統領選で通算5選を達成し、今後6年間、大統領の地位を維持できる態勢ができた。だが、後継者が育っていないうえ、ロシアでは高齢の71歳だけに、先行きへの不安も指摘されている。このため、プーチン大統領は今夏にもウクライナへ大規模攻勢を仕掛けるとの見方が出ている。

プーチン氏はロシア初代大統領であるエリツィン氏の推薦で2004年3月、大統領選に立候補して圧勝、2代目大統領に就任した。平和的な政権交代は、ロシア史上、初めてといわれている。当初は前大統領の方針を踏襲して民主的な政策を実行していたが、その後、暴力と恐怖で押さえ込むソ連時代のスターリン流統治に変化している。

特に近年は、プーチン氏を批判する政敵が謀殺される事件が相次いでいる。中でも、リベラル派の旗手だったネムツォフ元副首相や、傭兵部隊ワグネルの指導者プリコジン氏殺害の背後には政権側の影が感じられる。国民も混乱を恐れ、強い指導者を求める傾向が強いため、プーチン氏の抑圧指導体制が今後も続くと見られる。

一方、西欧諸国はロシアを恐れる余り、NATO( 北大西洋条約機構)に結集する傾向が強まった。これまで一貫して中立の立場をとっていたフィンランドとスウェーデンのNATO加盟が決まり、バルト海に面する国はロシア以外、全てNATOの勢力圏となった。対するロシアは中国との連携を強化して、西欧側に対抗しようとしている。

中でもロシアは、ウクライナとベラルーシを生命線とみなし、両国がNATOへ加盟すれば、ロシアは存亡の危機に追い込まれると恐れている。そこでプーチン政権は今夏にも先手をとって、ウクライナへ大規模攻勢を仕掛けるとの見方が浮上している。そうなると、ロシア・中国の連合軍と西欧諸国との総力戦になる恐れもある。それこそ、第三次世界大戦に直結しないとも限らない。(この項終わり)


プーチン氏、15日からの大統領選で当選が確実視されているが・・・

2024年03月13日 10時43分25秒 | Weblog

プーチン大統領の通算5選の是非を問うロシア大統領選が3月15日から3日間、行われる。ロシアはウクライナとの戦争の渦中にあるが、プーチン氏の当選はすでに確実視されている。とはいえ、反体制派の有力者、ナワリヌイ氏の急死が国民の間に影を落としていて、選挙に微妙な影響を与える可能性もある。

プーチン氏は2000年、エリツィン氏の後を継いで大統領選に当選。その後、4年間、大統領職を後輩に譲ったものの、それ以降はずっと大統領を務め、毎回危なげなく当選を続けている。今回の選挙前の2月下旬に発表された世論調査でも、80%以上の支持率を維持している。

プーチン氏の長期政権の理由は何だろうか。毎日新聞のモスクワ支局員が市民にインタビューした結果でも、長期安定政権を評価する声が多かった。68歳の男性は「西側の絶え間ない挑発に対抗するプーチン氏の忍耐力を称賛する」と語り、ロシアの”救世主”という見方をしていた。

元々、ロシアは広大なユーラシア大陸に位置し、国内に大きな山地もなく、四方八方から外国軍に侵入された歴史がある。他の民族には計り知れない脅威があり、現在、その脅威は欧米だという主張が国民の間に根強く残っている。その結果、政権を国民の守護者と頼りにするようになるというのだ。

それだけに、ロシアは今後、欧米のウクライナへの支援ぶりや、11月の米大統領選の行方に左右される面もある。日本としても北方領土問題などを抱え、”北の大国”の行方には十分注意を払う必要がある。(この項終わり)

 


露のウ侵攻から2年、ウ在住のロシア語作家はこう考える!

2024年02月22日 14時24分18秒 | Weblog

ロシア軍がウクライナに侵攻して2年が経過し、各紙誌が色々な角度から今日の状況を伝えている。その中で印象に残った記事は、22日付けの毎日新聞朝刊が掲載したウクライナ在住の国民的作家、アンドレイ・グルコフ氏のインタビューだ。両国を知り尽くした作家だけに両国民の感情をズバリ突いていると感じた。

グルコフ氏はソ連時代にロシアのレニングラードで生まれ、子どもの頃、ウウライナの首都キエフ(現キーウ)へ移住した。ロシア語で小説を書き、『ペンギンの憂鬱』(新潮社刊)で一躍有名になった。両国の国民感情を知り尽くした作家だけに、両国民の気持ちをうまく代弁していると思い、要旨をまとめてみた。

グルコフ氏はウクライナ軍が昨年6月に始めた「反転攻勢」に大いに期待した。だが、夏には早くも期待がしぼみ、ウクライナの人々は現実を直視する段階に入ったという。つまり、欧米からの支援は十分でなく、終戦は誰にも想像ができないと明確に認識した。人々は希望を捨てたわけではないが、何年も戦争状態が続くことを受け入れているというのだ。

この後、グルコフ氏はロシア人とウクライナ人の違いを指摘する。曰く、ロシア人は自由よりも安定を重視するが、ウクライナ人にとっては安定より自由が重要だ。一方、ロシア人はウクライナの文化や言葉を破壊し、ロシア人になることを強制する。ウクライナ人はこうした押し付けを最も懸念する。ウクライナ人は個人主義的で、集団主義のロシア人とは大きく異なるとしている。

続けてグルコフ氏は、ロシアは侵略をやめることはなく、どんな停戦も一時休止にすぎないと断定。プーチン大統領は世界地図からウクライナという文字を消したいだけでなく、米国などの民主主義国家に屈辱を与え、「ロシアが決めたら彼らは何もできない」と誇示したい考えを持っていると断言する。

さらに同氏は、ウクライナとロシアの将来の関係について、「ロシアの暴力はこの国に深い憎しみを植えつけた。子供たちは自国の東側には『手が血まみれの敵』がいて、西側には友人やパートナーがいると学びながら成長する」と指摘する。

その半面、文化的な影響力は敵意を和らげるので、ウクライナの若者文化などにロシア人が影響を受けるようになれば、変化があるかもしれないと語る。「ウクライナは独立した主権国家で独自の文化を持つ。そのようにロシアが認識を改めれば、40〜50年後には新たな関係が始まるかもしれない」と将来に希望をつないでいる。(この項終わり)

 


ロシアの反体制派、ナワリヌイ氏が極北の刑務所で急死!

2024年02月17日 14時09分19秒 | Weblog

ロシアの反体制派指導者、アレクセイ・ナワリヌイ氏が2月16日、北極圏のヤマロ・ネネツ自治管区の刑務所で死亡した。47歳だった。プーチン大統領を厳しく批判し続け、反体制派の中でも最もプーチン大統領を追い詰めた人物だった。3月の大統領選前の急死だけに、プーチン政権への批判が強まるのは必至だ。

弁護士のナワリヌイ氏は、若い頃からプーチン大統領の独裁政治を批判し、国民の支持を得た。このため2020年、毒を盛られて重体になるなど、政権側の迫害を受け続けた。翌年、いったん回復したが、2023年には過激派団体を創設したなどとして新たに懲役19年の判決を受け、北極圏の刑務所に移送されていた。

ロシアのインタファクス通信によると、矯正施設で散歩した後、気分が悪くなり意識を失った。医療機関関係者が現場に到着し蘇生措置を施したが、快方に向かわず死亡した。ナワリヌイ氏の母親が2月12日に刑務所で面会した時には元気だったという。ロシア国営メディアは、死因は血栓症と伝えている。

ナワリヌイ氏の突然の死去に西側諸国から非難の声が相次いでいる。バイデン米大統領は「間違いなくプーチン大統領の責任だ」と非難。カナダのトルドー首相は「プーチン大統領が怪物であることを全世界に再認識させた」と批判している。(この項終わり)

 

 


ロシア・ウクライナ戦争は今後どうなるのか、目が離せない!

2024年01月29日 12時58分16秒 | Weblog

プーチン露大統領は3月中旬に予定されている大統領選を前に、ウクライナとの戦争を「できるだけ早く終わらせたい」と述べている。だが、あくまで「ロシア側の条件下であれば」という”しばり”を付けている。これに対し、ウクライナのゼレンスキー大統領はロシア側の撤退が条件との立場を変えず、歩み寄りは見られない。

プーチン氏は毎年年末に多数の記者を集めて大規模会見を開いている。昨年12月14日の会見では、ウクライナの「非ナチ化」や「非軍事化」の目標が達成されていないとして、戦争を継続する意向を示していた。ただ、国民に不評な軍隊の徴兵に付いては「新たな動員は必要ない」として予備役などの招集は行わないことを明言した。

その一方、プーチン氏は昨年末と今年始め、北朝鮮のミサイルを使用してウクライナを攻撃した。使用されたミサイルはロシア製の「イスカンデルM」に似た弾道ミサイル「KN23 」だった。ロシアは弾道ミサイルが不足しているので、このミサイルでウクライナの防空能力の弱点を突くためだ。

プーチン氏は現在71歳。3月の大統領選で勝利すると5期目となり、今後さらに2期12年間、続投することができる。戦時下の選挙となるが、プーチン氏の人気は相変わらず高く、最近の世論調査では8割前後の支持率を得ている。そのうえ、強力な対抗馬がいないため、今回も楽勝と予測されている。

それに引き換え、ゼレンスキー大統領は昨年6月に「反転攻勢」を開始してからも、期待通りの成果が得られていない。それどころか、軍内部からも不協和音が出ていて、大統領は厳しい状況に追い込まれている。特に、大統領が頼りとする米国や欧米諸国で「支援疲れ」が広まっているのが響いている。

中でも不安要素を抱えているのは欧州連合(EU)だ。表向きは「必要な限り支援を続ける」としているが、早くも足並みが乱れ始めた。その張本人はハンガリーで、大規模なウクライナ支援に難色を示している。この動きがEU内で、さらに広まる可能性もある。

今年はロシアのほか、米国などで大統領選を控えていて、その結果いかんでは西側のウクライナ支援が得られなくなる事態も考えられる。そうなったら、ウクライナは戦争どころではなくなる。新冷戦下で起きた初めての「ホット・ウオー」だけに、その行方が今後の世界情勢を大きく変えることになりそうだ。

    (この項終わり)

   

 


ロシアとの戦闘で苦境に立つウクライナは2024年中にも正念場を迎える?

2023年12月31日 17時31分31秒 | Weblog

ロシアとの戦闘で追い込まれたウクライナは、2023年6月から「反転攻勢」を開始したが、欧米諸国の支援が思うように増えないうえ、軍部との関係にもほころびが出ている。一方のロシアは、2024年3月の大統領選で5選を目指すプーチン大統領を先頭にウクライナに軍事攻勢を掛けていて、同年中にも正念場を迎えるという見方が出ている。

ウクライナが苦境に陥っている最大の理由は、ウクライナを全面的に支援していた米国、ドイツなど欧米諸国の間で乱れが生じ、統一した支援が成り立たなくなったことが挙げられる。特に最大の支援国の米国が2024年1月から始まる大統領選の予備選を契機に、バイデン民主党政権と野党・共和党保守強硬派との間で支援を続けるかどうかを巡って対立が起きているからだ。米国防総省は米軍のロケット砲などの在庫が減っていて、現状では追加予算の拠出は難しいと警告している。

バイデン政権はロシアの侵攻開始から、すでにウクライナに対し442億ドル以上の軍事支援を行っている。だが、対抗する共和党保守強硬派は、これ以上の支援には難色を示している。2024年に入ると、両国とも大統領選が本格化するため、双方とも譲歩しにくい状況になっている。

こうした情勢を見てロシア軍は12月29日、ウクライナ侵攻後最大規模の各種ミサイルと無人機による空爆を行った。ウクライナのメディアによると、この空爆で死者が39人、負傷者が160人を超えたという。ロシア側は、厳しい冬にウクライナ側の士気を下げようという目論見のようだ。今後ともロシア軍のウクライナへの攻勢が強まるのは必至で、西側諸国の対応が注目される。(終わり)

 

 

 


著者は男性か女性か?新刊『ロシア 奪われた未来』は話題がいっぱい!

2023年12月10日 09時35分29秒 | Weblog

ウクライナとの戦争を続けるロシアのプーチン大統領への批判が国内外で強まっている中、「プーチンのロシア」がソ連崩壊後つくられた過程を克明に描いたノンフィクション『ロシア 奪われた未来』(白水社発行、訳・三浦元博・飯島一孝)が好評発売中だ。著者のマーシャ・ゲッセンはロシア人男性だが、名前が女性に多いマーシャなので、専門家でも女性と間違える人が少なくない。

著者は1967年、モスクワで生まれた。ソ連末期のブレジネフ政権当時、家族とともに米国へ移住した。その後、ソ連崩壊直前の1991年にロシアへ帰国、作家、ジャーナリストとして活動していた。だが、LGBT運動の活動家でもある著者は、反同性愛キャンペーンが激しくなった2013年、家族と自らの身の危険を感じて再び米国へ戻っている。

マーシャ・ゲッセンは、これまでにプーチンを題材にした作品など、多くの著作を残している。この新刊本は2023年、権威ある全米図書賞のハンナ・アレント賞を受賞している。

著者が男性か女性かの問題では、ロシア政治研究の大家として知られる木村汎(ひろし)北海道大学名誉教授が9年前、産経新聞に掲載された文章のなかで、マーシャ・ゲッセンを女性と明記。プーチン政権下の「報道の自由」抑圧に幻滅して米国移住を決意したと書いている。そのほかにも、米国などでは女装の写真を「マーシャ」とルビを振って掲載するなど、マーシャを女性として扱っている記事が散見される。

また、マーシャ・ゲッセンはメディアのインタビューに対し、「私はノンバイナリーです」と答えている。ノンバイナリーとは、自分自身が認識している性が男性・女性という性別のどちらにもはっきりと当てはまらない、または当てはめたくないという考え方を指している。こうした考え方は我が国では市民権を得ているとは言えないが、今後広まっていく可能性は否定できない。(この項終わり)

 


「核戦争の危機」の高まりを深刻に受け止めるべき時ではないか!

2023年11月30日 10時08分34秒 | Weblog

ウクライナと中東のガザでの戦闘で、核戦争の危機が目前に迫っていることに警鐘を鳴らす演説が相次いだ。とりわけ唯一の被爆国・日本の被爆者が行った演説の中で「犠牲者は一瞬で人生を消し去られた」と語った言葉が参加者の胸を打った。11月27日からニューヨークの国連本部で始まった、核兵器禁止条約の締約国会議でのことである。

この会議は昨年6月に続く第2回会議で、非核保有国や市民団体などが参加している。当然ながら米国・英国・フランス・中国・ロシアの核保有5カ国は条約に加わっていない。今回はウクライナとガザで行われている戦争で、核兵器が使われかねないという危機感が迫っているため、日本の被爆者団体のほか、北大西洋条約機構(NATO)加盟国のドイツ、ベルギーなどがオブザーバーとして参加している。

「ウクライナとガザから伝えられる光景は、被爆者にとって『あの日』の再来だ」。日本から参加した日本被団協(日本原水爆被害者団体協議会)の木戸季市(すえいち)事務局長(83)は、こう語り出して注目を集めた。5歳の時、長崎市の自宅前で母らと一緒に米軍機の音の空を見上げた瞬間、閃光と爆風に襲われた。爆心地からわずか2キロでの被曝がふるさとを「何もない真っ黒な街に変えた」と言い切った。

だが、被爆国・日本なのに、日本政府は昨年に続いてこの会議への参加を見送った。米国などの核保有国に安全保障を委ねていることから遠慮したのだろうか。だが、核兵器禁止は国民の願いであり、世界中の人々の願いでもある。せめてオブザーバーでも送って核廃絶への意志を示すべきではないだろうか。岸田文雄首相の支持率がどんどん下がっていくのも宜(むべ)なるかなと思わずにはいられない。(終わり)

 


中東情勢の悪化でウクライナのロシアへの反攻が厳しい情勢に!

2023年11月11日 11時59分15秒 | Weblog

ロシアが昨年2月にウクライナへ侵攻してから、両国間の戦闘が続いている。その一方で、今秋からイスラエルによるパレスチナ自治区ガザ地区への攻撃が始まり、ウクライナに厳しい情勢になりつつある。特にイスラエル側に立つ米欧と、それを非難する中東諸国などに国際世論が二分されてきたのが大きな要因だ。

中東情勢に変化が起きたのは、ガザを支配するイスラム組織ハマスが10月7日、イスラエルを越境攻撃したのがきっかけだった。これに対し、イスラエル軍はガザへの空爆や地上侵攻を開始したため、中東諸国はイスラエルへの批判を強めた。特に欧米諸国が民間人を巻き込んでガザを攻撃するイスラエルを擁護したため、中東諸国は「二重基準だ」と強く反発した。

当初、イスラエルを擁護していたウクライナのゼレンスキー大統領もその後、「紛争地域の全ての側が民間人や子供に配慮しなければならない」と軌道修正した。だが、ウクライナを支える米国でもバイデン政権と野党・共和党の意見が分かれ、下院では共和党が提案したイスラエルに限定した予算案しか通らなかった。

一方、ウクライナ側の反攻作戦も大きな成果が上がらず、苦戦が続いている。その要因は、空軍力がロシアに比べ劣っているためとされる。当のロシア軍は、東部ドネツク州での占領地域拡大を目指していているといわれる。近く同地域で大規模な攻撃が準備されているとの情報も流れ、冬を間近に控え、予断を許さない状況が続いている。(この項終わり)

 

 

 


日本政府はプーチン露大統領の対話の呼びかけにどう応えるのか!

2023年10月12日 10時52分56秒 | Weblog

ロシアのウクライナ侵攻に対し、日本政府は米欧の主要国と足並みを合わせ、ロシアに批判的な立場を続けている。これに対し、プーチン大統領は国内外の有識者を集めた10月5日の「バルダイ会議」で、日本側が対話姿勢に転じれば「応じる用意がある」と表明した。この呼びかけに岸田政権はどう答えるのか。

会議の参加者は、各国の学者、研究者が多く、大統領と比較的自由に意見交換する場になっている。大統領に質問したのは、日本から参加した笹川平和財団の畔蒜(あびる)泰助主任研究員。毎日新聞によると、大統領は「私たちは日本に制裁を科しておらず、『窓』を閉ざしたわけでもない。閉ざしたのは日本の方だ」と述べた。

さらに、大統領は「もし日本が(ロシアと)対話する必要があると考え、何らかのイニシアチブを発揮することが可能だと思うのであれば、それは悪くない。(ロシアには)応じる用意がある」と述べた。続けて「あなたたちがその『小窓』を少し開ける時が来たと考えるならば、どうぞ開けてください。私たちは反対だと言ったことは一度もない」と述べたという。

今回のプーチン発言に対する日本政府の反応は不明だが、日本政府は米国など西側諸国と歩調を合わせ、ウクライナを支援しているため、日本だけでロシア政府と協議するシナリオは考えにくい。その一方、日本は北方領土問題を抱え、いつまでも西側諸国と同じスタンスを維持し続けるわけにもいかない。ウクライナ紛争については西側諸国と意見を共有しつつ、北方領土問題の解決も図らなければならないだろう。(この項終わり)