飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

プーチン露大統領の今秋訪日は大丈夫か?

2014年06月26日 23時33分24秒 | Weblog

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   ウクライナ紛争は依然として解決のめどが立たず、今秋に予定されているプーチン大統領の訪日に暗雲が垂れこめている。ロシア外交関係者は「(大統領の訪日は)テーブルの上に残っている」としながらも、「一番大事なことは準備のプロセスが止まっていることだ」と語り、岸田文雄外相の訪露準備が再開しないことに不安感を示している。

   岸田外相の訪露は、もともと4月下旬にモスクワで予定されていた主要8カ国(G8)外相会合に合わせて計画された。ところが、ウクライナ南部クリミア半島の編入問題で外相会合の開催が見送られ、さらに、米欧とロシアの対立が深まったことから日本政府は4月17日、岸田外相の訪露を延期した。

   その後も日本政府は外相訪露を「プーチン氏来日に向けて欠かせない」として可能性を探ってきた。だが、ロシアがクリミア半島編入を強行し、米欧主導のG8首脳会合がロシアの出席停止を決め、経済制裁を発動したことから、外相訪露の見通しが立たなくなった。

   プーチン氏来日を何とかして実現したい安倍晋三首相は欧州歴訪中の4月30日、メルケル・ドイツ首相との会談後の会見で「ロシアとの意思疎通が重要だ」と発言、ロシアとの対話の重要性をアピールした。だが、その後もロシアはウクライナの親露派勢力を支援、事態解決に真剣に取り組まないとして米欧側は経済制裁に踏み切り、解決の見通しはたっていない。

   その後、日本政府もG7に同調して対露制裁に加わったため、プーチン大統領は通信社との会見で不快感を示し、「日本が(北方領土問題の)交渉プロセスを止めている」と批判したほど。その後、大統領は共同通信の質問に答え、今秋予定される日本訪問について「招待があれば当然行く」と実現への意欲を示していた。

   ところが、最近になってロシア外交関係者は「日本政府から岸田外相の訪露の準備の話がまだない。日本側はロシアとの対話復活のため、なぜ何もしないのか」と不満を漏らしている。例年7.8月はロシアの夏休みの季節なので準備が難しいことから、それ以前に準備に入ることが望ましいと話している。

   日本側とすれば、米欧がウクライナ情勢を憂慮し、懸命に対応しているだけに、それを無視して外相訪露の準備に入るとG7諸国との関係だけでなく、日米同盟にも影響が出かねないと考えているのだろう。だが、欧州諸国からは様々な接触があるのに、日本側は欧米諸国との約束を守って非公式の接触さえも控えていることにロシア側は不満を募らせているようだ。

   安倍政権は特定秘密保護法制定、さらには集団的自衛権問題などに精力を集中する余り、重要な外交が手薄になっているのではないか。米国に気兼ねして手をこまねくのではなく、もっと知恵を絞って対露関係の改善に本腰を入れるべきではないだろうか。(この項終わり)
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ロシア下院で「外来語を使用したら罰金」の法案基本承認!

2014年06月19日 11時00分48秒 | Weblog

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   「セール」「ディーラー」「マネジャー」「ブティック」「シングル」…かつて米国と世界を二分して争ったロシアにも、今では西側の外来語が溢れているが、これを規制する法案が下院文化委員会で基本承認された。こうした外来語を公的に使ったら罰金を科すというもので、愛国主義的な機運の中で成立する可能性も出ている。

   18日のインタファクス通信によると、この法案はロシアの極右政党と言われる自由民主党の議員グループが昨年提案したもの。同党の党首は過激な発言で知られるジリノフスキー議員だ。この法案は「外来語はロシア語の標準的な基準を侵害している」と決めつけ、使用した個人、法人に罰金を科すとしている。

   下院の文化委員会は18日の審議で「ロシア語の純粋性を守ることを目指したもの」として基本承認し、7月1日の本会議に提案することを決めた。ステパーノワ副委員長は「この法案のコンセプトは結構だが、本会議で採択するには法案の中身をもっと詰める必要がある」と注文をつけている。

   法案の提案者によると、ロシア語は長い歴史の中で外来語を取り込んで発展してきたが、その頃はロシア語にそうした言葉・表現がなかったからで、現在はすでに妥当な言葉があるのに、外来語を使ってロシア語の純粋性を奪っていると主張している。罰金は個人に最高2500ルーブル(日本円で7400円)、法人には最高5万ルーブル(14万8000円)の支払いを科すという。

   この法案はこれまで下院の事務局に眠った状態だったが、昨年暮れからのウクライナ紛争で国民の愛国心が高まり、日の目を見ようとしている。だが、言葉は生き物で、国民が使っていく中で自然淘汰されていくものだ。一方的に外来語の使用を禁じようとすれば、ファシズムにつながりかねない。下院として法案を採択するとは思えないが、我々としても無関心ではいられない。(この項終わり)


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プーチン大統領、インターネットで市民の自由を制限しないと明言!

2014年06月11日 11時28分32秒 | Weblog

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   このところ、ウクライナ紛争に関するニュースばかりで辟易しているという方に、ちょっと変わった話題をひとつ。プーチン大統領はインターネットを警戒、スキあらば制限しようと狙っているとの見方が強い。だが、ネット業界の大手幹部らと10日に懇談した大統領は「ロシアのオンライン市場は有益でGDPの8.5%を占めている」と語り、政府の制限によって市民の自由を奪わないと言明した。

   ロシアでもインターネットの普及は目覚しく、全人口の約半分の6100万人が利用し、欧州の中でも最も普及率の高い国に入るとされる。ロシア大手のヤンデックス創設者兼CEOのボロス氏は「ロシアのオンライン分野が世界に誇る市場に成長したのは保護や支援があったからではなく、この業界が競争的環境の中で発展することが許されたからだ」と語り、国家の干渉の欠如を成功の要因にあげた。

   プーチン大統領も政府の過度の干渉が有害であることを認める一方、「政府の制限はビジネスや国民の権利を侵害するためではない。子供たちをウエブの悪い影響から守るためだ」と強調。小児愛者やドラッグの販売、テロや自殺の勧誘などの制限に限る意向を示した。

   一方、連邦マスメディア監視機関は過激な内容を含んだウエブサイトを裁判所の決定抜きで禁止する権限を持っている。先月、プーチン大統領はウエブサイトをさらに制限する法律に署名したが、現在法律の修正案を検討しているという。

   市民の表現の自由に関する政府と国民との綱引きは、どの国でも頻繁に行われている。国民がきちんと監視していないと、政府は規制に走りがちである。とくに強権主義的国家では、国民が黙っていると次々に規制が強まっていく傾向にある。ネット規制問題は、ロシアの民主主義がどの程度成熟しているかのバロメーターでもある。(この項終わり)
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ウクライナ、ロシアにクリミア半島編入の賠償金を請求?

2014年06月02日 18時21分52秒 | Weblog
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   ウクライナ大統領選(5月25日投開票)が終わり、ロシアとの紛争は沈静化に向かいつつあるが、ウクライナ側はクリミア半島編入の賠償金をロシアに請求する意向を明らかにした。これまでウクライナはクリミア半島の編入に強く反対していただけに、突然の方針転換に疑問の声が上がっている。

   2日付けのロシアの中立系新聞「独立新聞」(電子版)によると、ウクライナのプロダン・エネルギー石炭産業相が出張先のベルリンで「欧州仲裁裁判所にロシアへの賠償金請求訴訟を起こす準備をしている」と語った。法務省によると、訴訟は人権問題、経済の損失、クリミア編入に関与した人物への財産要求の3本立てになるという。

   ウクライナはこれまでクリミア半島を自国領と主張、ロシア側に返還を要求していた。賠償金請求訴訟を起こすことになると、公式の立場を大きく変更することになる。これについて政治学者は「いかなる戦争や紛争でも、たいてい政治的見通しなどを検討してから訴訟を起こすものだが、今回はそういうことがなかった」と首をかしげる。

   また、ロシア上院で経済政策委員を務める議員は「ウクライナ官僚の行動はペテン師を思い起こさせる。取引の提案なら直接そう言うべきだ」と語っている。別の政治学者は「今後の交渉を見越してウクライナの立場を強化するための試みではないか」と見ている。

   いずれにしろ、ウクライナ紛争は今後、ロシア政府とウクライナ政府との間で“戦後処理”の交渉を行い、協力関係を構築する必要がある。そのための予備交渉がすでに始まっているのだろう。だが、お互いに騙し合うようなマネはして欲しくない。これまでのことは水に流し、百年先の両国関係を見通して双方の国民が幸福になるよう努力してもらいたいものだ。(この項終わり)

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