飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

米露大統領の初顔合わせはどうなるのか?

2009年03月30日 11時38分04秒 | Weblog
 ロシアのメドベージェフ大統領と米国のオバマ大統領との初顔合わせは4月1日、主要20カ国・地域(G20)の金融サミットが開かれるロンドンで行われる。43歳と46歳の若い大統領が新しい価値観で、新たな米露関係を、さらには新たな国際社会をどう築いていくのか、大いに注目されるところだ。

 この二人は、もちろん会うのは初めてだが、メドベージェフ大統領は「テレビで何度も見ているので、彼を良く知っている」と英BBCとのインタビューで答え、笑わせた。実際二人は電話で2回会談し、手紙のやり取りもしている。このやり取りについてメドベージェフ大統領は「手紙を読んで多くの点で私の感覚と一致しているので驚いた」と語っている。人と人とのいい関係を「フィーリングが合う」という言い方をするが、この二人の関係はそういえるのかもしれない。

 二人が歩んできた道をみると、ともに一流大学を卒業したエリートで、大学では法律を専攻し弁護士あるいは会社顧問として働いた共通点がある。世代がほぼ同じだし、考え方も似ている点が少なくないだろう。

 米露関係はブッシュ・プーチン大統領時代の後半に冷却化したが、新政権になってから「リセット」することで米露外相が合意している。さらに、キッシンジャー元米国務長官、プリマコフ元露首相ら双方の賢人グループが会談し、それぞれの政権に色々アドバイスしている。今回の会談では、すでに「米露関係と戦略兵器に関する共同宣言」が発表されることになっていて、いい方向に向かっている。

 だが、両指導者とも国家を背負っており、国益がぶつかる場面では譲れないだろう。イラン核問題や東欧のミサイル防衛計画などの懸案事項はそう簡単には解決しないと思う。それでも、お互いの価値観や国家観をぶつけあう意味は大きい。それをすることでお互いが理解し合い、いい関係をつくれれば今後につながっていく。初めての出会いだけに、あまり目先のことにとらわれず、腹を割って議論してほしいものだ。
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NHKスペシャル「プーチンの子供たち」は情緒的過ぎる!

2009年03月23日 23時50分08秒 | Weblog
 「プーチンの子供たち」というタイトルのNHKスペシャルが23日夜、全国放映された。「プーチンのロシア」と銘打った4回の特別企画の最終回で、軍人養成学校に長期間カメラを入れ、生徒たちの家庭まで取材した力作だ。しかし、「復活する”軍事大国”」というサブタイトルをつけている割には軍事大国の全体像が見えず、情緒的な描き方が目立った。

 今回のシリーズでは、ロシアの金融危機、ロシア正教、グルジア戦争、そして軍事大国化が取り上げられている。どの回も、大統領から首相に降格したプーチン氏が今も実権を握っているとの見方から「プーチン主義」なるものを描いているようだ。この見方自体は間違っていないと思うが、いずれもテレビの特性からか、現場ロケが大半で、ロシア全体についての説明や、他国との比較などの解説が少ないという印象が強かった。

 とくに最終回は、「軍事予算が8年間で5倍に増えた」「100万人の軍人をすべて志願兵にする計画」などと説明しているが、軍事予算はソ連時代と比べてどうなのか、米国などよりも多いのか、軍人100万人は他国より少ないのか、などの説明がなく、全体像がつかみにくかった。その一方では「米国と並ぶ軍事大国を目指している」、あるいは「(空軍は)冷戦時代さながらの緊張が続いている」などと解説し、ロシアの軍事大国化をやたら強調している感じがする。

 ところが実際には、ロシアの軍事予算は米国の10分の1程度であり、人員兵力も中国の225万人、米軍の150万人などに比べて少ないのが実態だ。ロシアが今、ソ連崩壊で失った軍事力を復活させつつあることは確かだが、脅威を強調しすぎるのはどうかと思う。やはり客観的な数字を示して説明しなければ、いたずらに恐怖をあおることになりかねない。

 世界の国々の状況を克明に取材して、われわれ国民に現実をきちんと教えてくれるのは、いまや資金力の豊富なNHKしかできないことだ。それだけに、正しく客観的に報道していただきたいものだ。
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強まるEUの対ロシア包囲網

2009年03月22日 14時34分57秒 | Weblog
 欧州連合(EU)は20日、ロシアを怒らすような二つの決定を行った。一つは、ロシアの同盟国であるベラルーシを「東のパートナーシップ」プログラムに加えるもの。もう一つは、ロシアを迂回する天然ガス・パイプライン敷設計画に資金を投入する決定だ。

 EUの「東のパートナーシップ」プログラムは、旧ソ連諸国をEUに加盟させるための準備段階で、すでにアゼルバイジャン、アルメニア、グルジア、モルダビア、それにウクライナの5カ国が今年5月に加わることになっていた。ところが、20日の会議でさらにもう一カ国、ベラルーシを加えることを決めたのだ。ロシアにとっては不意打ちともいえる決定だ。とくにロシアとしては唯一ともいえる同盟国・ベラルーシを失うことにもなりかねない措置である。

 この裏には、未曾有の経済危機で窮地に陥っているベラルーシ側が、親EU国のウクライナに”頭を下げて”入れてもらったという経緯がある。だが、EU側は、ベラルーシの独裁者といわれたルカシェンコ大統領を許したわけではない。このため、5月にプラハで開かれるEU首脳会議にルカシェンコ大統領を招くかどうかは「大統領と政府の今後の行い次第」(チェコ外相の話)という。

 二つ目の決定は、中央アジアの天然ガスを欧州に運ぶナブッコ・パイプライン計画を推進しようというもので、ロシアが強く反対しているものだ。ロシアとウクライナのガス紛争のとばっちりを受けた欧州側が主導している。

 今回の二つの決定は、「ロシアを敵視する決定ではない」というものの、対ロシア包囲網の強化につながることは明らかだ。ロシア側も不快感を隠しておらず、何らかの対抗策をとるかもしれない。だが、EUは安保同盟ではなく、経済同盟である。だから、北大西洋条約機構(NАΤO)加盟問題で、ウクライナ、グルジアの加盟を先送りさせたような有効な対抗策はとれないだろう。

 
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マトリョーシカ製造業者にロシア政府が救いの手!

2009年03月13日 11時03分23秒 | Weblog
 外国人観光客に親しまれているマトリョーシカやパレフなどの伝統工芸産業が経済危機でピンチに陥っている。そこでロシア産業貿易省はこうした工芸品を買い上げるなどの方法で援助することになった。

 産業貿易省のフリステンコ大臣が13日、伝統工芸品製造業者20人を招いて明らかにしたもの。政府が約28億円を投入して土産品を買い上げるほか、減税措置をとるという。また、国内外でフェアーを開いて販売に協力することにしている。


 ロシアにはマトリョーシカ(木目込み人形)やパレフなどの細密画を施した工芸品を製造する業者が240社あり、全国で約3万人が働いている。こうした工芸品はモスクワの赤の広場などで販売され、観光客に喜ばれているが、昨今の経済危機で売れ行きが激減している。


 このため大方の業者は今回の措置を歓迎しているが、買い上げる業者を役所が選別することになり「汚職が増えるだけ」という冷めた見方もある。「大国復活」を推進するプーチン首相にとって、ロシアの伝統工芸を守ることも重要な政策の一つなのだろう。

 
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刊行された私の本が「話題」になってます!?

2009年03月05日 15時30分52秒 | Weblog
 私が書いた本「ロシアのマスメディアと権力」(東洋書店「ユーラシア・ブックレット」)が2月下旬に出版され、比較的大きな本屋に並んでいます。そして6日の毎日新聞夕刊3面「読みたい」の「話題です」コーナーに、大沢在昌さんらの本と一緒に写真つきで紹介されました。

 この本は、ソ連時代から新生ロシア、そして現在までのマスメディアと権力の攻防を描いたものです。ソ連時代、マスメディアは共産党一党独裁の下で押さえ込まれていましたが、ソ連崩壊後、新聞やラジオが続々誕生し「表現の自由」を謳歌しました。だが、それも短期間で終わり、プーチン大統領の登場とともに政権側に支配されてしまいました。そればかりか、独立派のポリトコフスカヤ記者が射殺されるなど、政権に批判的なジャーナリストが圧殺されています。こうした事実を踏まえて、ロシアで「言論の自由」が育つのかどうかを展望したものです。

 ロシアは日本の隣国ですが、なかなか情報が伝わらず「近くて遠い」状態が続いています。その一方、サハリンの天然ガスが日本に輸入され、自動車メーカーが現地生産を開始するなど、経済的な結びつきが強まっています。ロシアとうまく付き合うには、ロシアを良く知ることが大切だと思います。この本は小さい本ですが、ロシアを知るための参考になると信じています。ぜひ読んでみて下さい。
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プーチン首相は経済危機を乗り切れるか!

2009年03月01日 16時01分50秒 | Weblog
 ロシアの経済危機はますます深刻化しているが、プーチン首相は懸命に鎮静化を図っている。企業家らに対しては「カタストロフィーは起きない」と説得する一方、野党勢力に対しては「違法な行動とは断固戦う」と脅しつつ。この硬軟両様の対応でロシアの難局を乗り切れるかどうか。

 プーチン首相は2月27日、モスクワ郊外の公邸に与党「統一ロシア」の幹部を招いて演説した。すでにクドリン財務相が、ロシアの歳入は1年間で3割減ること、基軸通貨ルーブルの価値が昨年秋以来、3分の1下がったことなどを明らかにしていて、国民の間に危機感が広がっている。

 プーチン首相は演説で経済状況が悪化していることを認めつつも、政府は今年の予算総額は減らさないこと、国防産業や医療・教育などの国家プロジェクトは優先して実施することなどを約束した。

 その半面、「政府への批判は許すが、法律の範囲内で行うべきだ」と述べ、バルト三国などで起きたような暴動を断固取り締まる姿勢を示した。野党は政府に対する批判キャンペーンを開始しており、これをけん制する狙いもある。

 プーチン首相がこうした発言をしたのは、経済危機が表面化した昨年秋以降、首相の支持率が低下している上、メドベージェフ大統領から再三政府批判がなされているからだ。2月の世論調査では首相の支持率は昨年8月の62%から48%に落ちている。こうした状況が続けば首相の責任問題に発展する可能性が強い。そうなった場合、首相が辞めるのか、それとも大統領が辞任するのか。政権内で権力闘争が起きるのは必至で、ロシア政治が不安定化するのは避けられない。

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