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反政府デモが2カ月以上続くウクライナで25日、ヤヌコビッチ大統領が正副首相ポストを野党に渡すなどの妥協案を提示したが、デモ隊側の不満は依然強く、一気に解決へ向かうような情勢ではない。来年の大統領選を控え、野党側の思惑もあり、政府側とのギリギリの交渉が今後も続きそうだ。
27日付けの有力紙コメルサント(電子版)によると、ヤヌコビッチ大統領は25日の野党側との交渉で最大野党「連合野党・祖国」の指導者ヤチェニク氏に首相ポスト、野党第2党「ウダル」のクリチコ党首に副首相ポストを示したほか、逮捕されたデモ隊メンバーへの恩赦、大統領権限を弱める憲法改正案の検討などを提案した。
このあと、ヤチェニク氏は独立広場に集まったデモ隊の前で「我々は国家の命運に応えることを恐れていない」と述べ、首相ポストを受諾する可能性を示唆した。この発言に対し、デモ隊から激しい怒りの声が上がり、この妥協案に不満が強いことを浮き彫りにした。
集会後の会見でヤチェニク氏は、交渉でティモシェンコ元首相の釈放と欧州連合(EU)への加盟につながる「連合協定」への署名問題が協議されたかどうかは定かでないと述べた。大統領のサイトでは、ティモシェンコ元首相の処遇については触れられていない。
このためコメルサント紙は、野党側が大統領の提案を受諾するとしても、独立広場やグリシェフスキー通りでバリケードを張る人々を説得して退去させられる内容ではないのは明らかだと指摘。デモ隊は今後も、ヤヌコビッチ大統領の退陣と大統領選の繰り上げ実施を要求し続けるとみている。
ウクライナの最高会議(国会)は28日に開かれ、この会議で大統領と野党側との交渉結果が明らかにされる見通しだ。それにより、混乱が回避されるかどうかはっきりするが、混乱のきっかけであるEU加盟問題そのものが国論を二分しており、対立がすんなり解消するわけがない。今後も政府側と野党側との息の長い交渉が求められている。(この項おわり)