飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

ウクライナ反政府デモ隊、ヤヌコビッチ大統領の妥協案に怒りの声!

2014年01月27日 11時48分25秒 | Weblog
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   反政府デモが2カ月以上続くウクライナで25日、ヤヌコビッチ大統領が正副首相ポストを野党に渡すなどの妥協案を提示したが、デモ隊側の不満は依然強く、一気に解決へ向かうような情勢ではない。来年の大統領選を控え、野党側の思惑もあり、政府側とのギリギリの交渉が今後も続きそうだ。

   27日付けの有力紙コメルサント(電子版)によると、ヤヌコビッチ大統領は25日の野党側との交渉で最大野党「連合野党・祖国」の指導者ヤチェニク氏に首相ポスト、野党第2党「ウダル」のクリチコ党首に副首相ポストを示したほか、逮捕されたデモ隊メンバーへの恩赦、大統領権限を弱める憲法改正案の検討などを提案した。

   このあと、ヤチェニク氏は独立広場に集まったデモ隊の前で「我々は国家の命運に応えることを恐れていない」と述べ、首相ポストを受諾する可能性を示唆した。この発言に対し、デモ隊から激しい怒りの声が上がり、この妥協案に不満が強いことを浮き彫りにした。

   集会後の会見でヤチェニク氏は、交渉でティモシェンコ元首相の釈放と欧州連合(EU)への加盟につながる「連合協定」への署名問題が協議されたかどうかは定かでないと述べた。大統領のサイトでは、ティモシェンコ元首相の処遇については触れられていない。

   このためコメルサント紙は、野党側が大統領の提案を受諾するとしても、独立広場やグリシェフスキー通りでバリケードを張る人々を説得して退去させられる内容ではないのは明らかだと指摘。デモ隊は今後も、ヤヌコビッチ大統領の退陣と大統領選の繰り上げ実施を要求し続けるとみている。

   ウクライナの最高会議(国会)は28日に開かれ、この会議で大統領と野党側との交渉結果が明らかにされる見通しだ。それにより、混乱が回避されるかどうかはっきりするが、混乱のきっかけであるEU加盟問題そのものが国論を二分しており、対立がすんなり解消するわけがない。今後も政府側と野党側との息の長い交渉が求められている。(この項おわり)
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プーチン大統領、再選に向けて意欲的な発言!

2014年01月20日 16時06分23秒 | Weblog

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   プーチン大統領は19日、内外テレビとのインタビューで、次期大統領選(18年)について「立候補するかどうかを議論するのは時期尚早」と述べつつも、「政治家は自分の仕事の成果を考えるべきだ」と指摘、再選に向けて実績を積み重ねる意向を示した。

   プーチン大統領は英国BBC、米国ABC、ロシア第一チャンネルなどのテレビ局記者らと会見し、次期大統領選、ソチ冬季五輪、同性愛宣伝禁止法などに関する質問に答えた。来月のソチ五輪を前に、国際社会の不安や疑問に応えようという狙いとみられる。

   最大の関心事である次期大統領選への立候補問題で大統領は次のように答えた。「政治家にとって最も好ましくなく、危険なことは自分の地位にしがみつき、悶々とすることだ。そうなると変なことをしてしまうのではないかといつも恐れて失敗してしまう。そういうことは考えず、自分の仕事の成果を考えることが大事だ」

   続けて大統領は、「立候補問題で考えがまとまったのか」との質問に、こう答えた。「私の抱負を語るのはまだ早すぎる。今はまだ2014年で、大統領選は2018年だ。今は働かなくてはならない。そうすれば見えてくる」

   昨年暮れの恒例の内外記者会見でも、大統領は次期大統領選に関し「私は在任中、ロシアのGDPをほぼ2倍に増やした。よく考えると、これは大変な業績だ」と、自分の成果を自画自賛していた。今回の発言と重ね合わせると、自分は大統領として十分な成果を残しているので、再選の資格は十分あると示唆しているように受けとれる。

   その一方、プーチン大統領は引退後、好きなアイスホッケーを楽しみたいとも語った。ロシアには40歳以上のアマチュアが参加できる夜間アイスホッケー・リーグがあり、大統領も何度かこの試合に出たことがある。「2年半前まではスケートを履いて立つこともできなかったが、今ではなんとかプレイできる」と話した。

   さらに、大統領は「毎日少しでも時間があればスポーツをしている。今朝もジムに通い、1キロほど泳いだ」と明かした。そして、こう付け加えた。「ロシアには、こういうコトワザがあるのを知っているかな?鳥は一粒ずつついばむ」。日本のことわざにあてはめると『千里の道も一歩より始まる』ということのようだ。

   プーチン大統領は今、自分が誘致したソチ五輪を成功させることに全力を挙げている。それがうまくいけば、さらに業績を重ねることができる。そうなると、また一歩、再選に近づくことになる。そんな思いが伝わってくるインタビューだった。(この項おわり)

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ドイツ映画に新風吹き込む新人監督の『コーヒーをめぐる冒険』!

2014年01月16日 17時19分50秒 | Weblog
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   2013年ドイツ・アカデミー賞を総なめにした映画『コーヒーをめぐる冒険』が3月1日、東京・渋谷シアター・イメージフォーラムを皮切りに全国で上映される。大学中退の青年に24時間密着し、「ツイてない一日」を追うというスタイルで描いた作品。大事件や面白いことが起きるわけではないが、なぜか心にしみる作品だ。

   この映画の監督は、ヤン・オーレ・ゲルスター氏(35)。自ら脚本を書き、キャスティングもした。ドイツ映画テレビ・アカデミーで演出と脚本執筆を学び、卒業作品として取り組んだ本作でいきなり賞を次々に取ってしまった。まさに鮮烈デビューといえる。

   驚いたことに、この監督はボルフガング・ベッカー監督のアシスタントとして『グッバイ、レーニン』(2003年)の準備、撮影、編集にかかわった経験の持ち主なのだ。東西ドイツ統一時に庶民の家庭で起きた悲喜劇を描いたこの作品はドイツで大ヒットし、歴代興行記録を更新したのである。むしろ筋金入りの新人監督といえよう。

   映画評論家諸氏によると、新人監督はデビュー作で後に撮る作品群の原型めいたものを埋め込むのだという。いわばデビュー作には特権のようなものがあり、色々な実験や冒険が許されるのだ。ゲルスター監督もその例に漏れず、いくつもの実験をしている。

   その一つが、モノクロで撮影していることだ。本人の弁によると、物語に主人公の私的な要素を取り入れる場合、一種の距離感を持たせることができ、観客に客観的に見るか、共感するかの選択肢を与えられるのだという。確かに最初は主人公の行動がわからなかったが、見ているうちにだんだん共感する部分が出てきて、見方が変わった感じがする。

   もう一つの実験を挙げると、舞台となったベルリンの風景を効果的に画面に取り入れたり、ドイツの歴史を会話に取り込んだりしている。こうすると現代だけでなく、時代空間を超えたリアリティを観客に示すことができるのだという。

   この作品の主人公は朝からコーヒーを飲もうとするが、いつも邪魔が入って飲みそこねてしまう。色々なことがあって最後にようやく飲めてホッとするところでエンディングを迎える。つまり、監督はコーヒーを舞台回しに使い、日常を描いた映画のアクセントにしているのだ。新人監督らしからぬ手練手管である。

   ドイツ映画界には詳しくないが、この監督はこれからもどんどん実験や冒険にチャレンジし、映画界に新風を吹き込んでくれそうな予感がする。今後も映画ファンの目を引きつけ、離さないと期待させる監督の誕生を祝福したい。(この項おわり)


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チェチェン過激派、ソチ五輪の閉会式をテロ攻撃?!

2014年01月13日 13時45分09秒 | Weblog

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   プーチン大統領はソチ冬季五輪をテロから守るため、厳重警戒体制を敷いているが、2月23日の閉会式がスターリンによる少数民族強制移住満70年に当たることから、チェチェン共和国などの過激派がテロ攻撃を行うのでは、との見方が出ている。

   この見解を明らかにしたのは、スターリンや反体制派物理学者サハロフの伝記などで知られる作家リチャード・ラウリー氏。英字紙モスコー・タイムズは12日付けの電子版で「ソチの復讐」の見出しをつけ、この見解を伝えている。以下はその概要である。

   ロシアと北カフカス民族との闘争の歴史は古く、ある歴史学者によると、最初の衝突は18世紀の初めのピョートル大帝の時代、あるいは18世紀終わりのエカテリーナ時代という説がある。とにかく北カフカスの民族は不平不満が多く、犠牲を伴う敗者の記憶も長いのである。

   その中でも最も際立つのが、1944年にスターリンの命令で行われたチェチェン人、イングーシ人らの強制移住である。女性も子供も全員が貨物車に積み込まれ、カザフスタンに追放された。スターリンは彼らが独ソ戦でナチスを助けたとして断罪したが、大半の人々は祖国のために戦ったのである。

   戦後の57年、彼らは祖国に帰国できたが、追放されて荒地で苦しめられた記憶は消えず、モスクワに対する恨みとして残っている。彼らは様々な理由で攻撃対象を選ぶが、象徴的な面は決して外さない。昨年暮れ、爆弾テロがロシア南部ボルゴグラードで3件続いて起きているが、この都市の名称は以前、スターリングラードだった。五輪閉会式が行われる2月23日は、チェチェン人らが強制移住させられた日であるだけでなく、ロシアの祖国防衛記念日でもある。

   イスラム過激派の指導者ウマロフは「あらゆる手段でソチ五輪を阻止する」との声明を出しており、彼らにとって閉会式の日は二重の意味で象徴的な日である。この日を攻撃の日とすることで、ロシアにひどい目に遭わせるだけでなく、侮辱を加える日になるのである。

   さらに、ラウリー氏はテロ攻撃の手段として無人機による攻撃を予想している。なぜなら、チェチェン過激派は常に新しい手段を使うことで革新的であると証明してきたからだという。最後にラウリー氏は「イスラ過激派が実際に無人機で五輪を攻撃すれば、ロシア人もこの日を決して忘れなくなるだろう」と締めくくっている。

   ソチ五輪を誘致した立役者のプーチン大統領といえども、期間中毎日ソチに来るわけにはいかないが、必ず来るのは開会式と閉会式である。安倍首相も開会式には出席できないので、閉会式に出席できるよう日程を調整しているという。もし万が一閉会式が狙われれば、大変な事態になりかねない。(この項おわり)
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日本政府は日露間の人的交流を活発にするため、ビザの廃止を!

2014年01月06日 00時41分55秒 | Weblog

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   プーチン大統領の今秋訪日に向けて日本政府は様々な政策を検討しているが、今一番大事なのは経済交流だけでなく、人的交流を活発化することだ。ロシア側はすでに日本側にビザ(査証)の廃止を提案していると聞く。今こそ、その提案を受けてビザ廃止を決断すべきではないだろうか。

   プーチン大統領の訪日は、安倍晋三首相が北方領土問題の解決に力を入れていることもあって、この問題の突破口が開かれるのでは、との期待感が出ている。その一方、戦前、戦後の不幸な日露関係も加わって、日本側にロシアに対する不信感が依然強いことも事実である。

   この大きな要因として、日露間の人的交流が近隣諸国に比べて少なく、相互理解が不十分なことが挙げられよう。毎年往来する人的交流の規模は13万人ほどで、日中間の約600万人、日韓間の約400万人と比べると、わずか数パーセントにとどまっている。こうした現状を打開するには、煩わしい手続きが必要なビザを廃止するのが一番の近道である。

   ところが、日本政府はロシア側の提案に慎重で、ビザ廃止を当面受け入れる考えはないようだ。治安優先の発想から、ロシア・マフィアなどが入国することを心配しているのだろうか。それとも、未だにソ連時代の冷戦思考にとらわれ、スパイが入り込むのを恐れているのだろうか。

   日本政府は一方で、観光立国を宣言、外国人旅行者の受け入れに熱心である。昨年は年間1000万人が日本を訪れ、政府目標を達成したという。外国人旅行者が増えた大きな理由のひとつは、東南アジア諸国のビザの発給要件を緩和したことが奏功したとされる。日露間でも、条件は同じだろう。

   ロシアは韓国に対してもビザ廃止を提案したところ、直ちに受け入れたという。日本はなぜ、ビザ廃止ができないのだろうか。日本政府はやはり、20年以上前の冷戦思考にとらわれているのだろうか。決める政治を推し進めるという安倍政権の早急な決断を求めたい。(この項終わり)
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プーチン大統領の訪日で北方領土解決の突破口が開けるか?

2014年01月01日 00時39分33秒 | Weblog
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   新年あけましておめでとうございます。今年も「飯島一孝ブログ ゆうらしあ!」をよろしくお願いします。

 
   今年はプーチン大統領が訪日する年。長年の懸案である北方領土問題の解決に向け、日露首脳会談で何らかの突破口が開けるのでは、との期待が高まりつつある。安倍晋三首相は父・安倍晋太郎氏が果たせなかった領土問題解決をどのように実現しようとしているのか。一方、プーチン大統領はどうやって「引き分け」に持っていこうとするつもりなのか。両首脳の動きに目が離せない1年になりそうだ。

   安倍首相は昨年4月、首相として10年ぶりにモスクワを公式訪問し、北方領土交渉を加速するとともに、首脳が定期訪問することで合意した。今回はそれを受けてプーチン大統領が訪日する。現在、今秋に訪日を実現する方向で両国政府が日程を調整している。

   国政の重要課題である領土問題を平和的に解決するには、首脳同士の会談で合意するしか方法はない。しかも、双方の首脳の政権基盤が安定しており、国民の大半が支持しているという状況でないと解決は難しい。安倍政権の復帰で日本の首相もようやく「年替り首相」状態を脱却でき、交渉の条件がそろったと言える。

   一方のプーチン大統領は12年5月、3期目の大統領に復帰して以来、着々と政権の基盤固めをしてきた。とくに昨年はスノーデン元CIA職員の一時亡命受け入れやシリア化学兵器廃棄で国際的にポイントをあげ、18年以降の次期政権(任期6年)を視野に入れた政権運営に自信を見せている。

   問題は、双方で受け入れられる現実的な解決案を提示出来るかどうかだ。つまり、日本側が主張している歯舞、色丹、国後、択捉の4島返還と、日ソ共同宣言に基づく歯舞、色丹の2島返還の間で、どうやって妥協点を見い出すかだ。これまでに日本側からは3島返還案、面積等分案(最大の島・択捉島の南部に国境線を引く)、2島返還プラス2島共同統治案などが浮かんでいる。

   だが、ロシア側からは「百年後の4島返還案」などが民間から出ている程度で、どこまで譲歩できるか不透明な部分が多い。プーチン大統領も「引き分け」解決が望ましいと述べているが、具体的な解決案には言及していない。

   ロシア側からすれば、「(交渉の)ボールは日本側にある」として、日本側から具体案を提示するよう求めているとみられる。だが、日本側の方針はまだ確定しておらず、政党間の対話も行われていないのが現状だ。まず、与党の自民・公明党が十分協議して具体案を出し、野党と協議すべきだろう。

   もちろん、交渉の手の内は見せられないだろうが、国内での討議を十分行わなければ、自信を持ってロシア側と交渉できない。自民党だけをとっても様々な意見があり、一本化するのは大変である。安倍首相はまず党内の議論をまとめるために指導力を発揮する必要がある。(この項終わり)

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