飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

ロシアとの戦闘で苦境に立つウクライナは2024年中にも正念場を迎える?

2023年12月31日 17時31分31秒 | Weblog

ロシアとの戦闘で追い込まれたウクライナは、2023年6月から「反転攻勢」を開始したが、欧米諸国の支援が思うように増えないうえ、軍部との関係にもほころびが出ている。一方のロシアは、2024年3月の大統領選で5選を目指すプーチン大統領を先頭にウクライナに軍事攻勢を掛けていて、同年中にも正念場を迎えるという見方が出ている。

ウクライナが苦境に陥っている最大の理由は、ウクライナを全面的に支援していた米国、ドイツなど欧米諸国の間で乱れが生じ、統一した支援が成り立たなくなったことが挙げられる。特に最大の支援国の米国が2024年1月から始まる大統領選の予備選を契機に、バイデン民主党政権と野党・共和党保守強硬派との間で支援を続けるかどうかを巡って対立が起きているからだ。米国防総省は米軍のロケット砲などの在庫が減っていて、現状では追加予算の拠出は難しいと警告している。

バイデン政権はロシアの侵攻開始から、すでにウクライナに対し442億ドル以上の軍事支援を行っている。だが、対抗する共和党保守強硬派は、これ以上の支援には難色を示している。2024年に入ると、両国とも大統領選が本格化するため、双方とも譲歩しにくい状況になっている。

こうした情勢を見てロシア軍は12月29日、ウクライナ侵攻後最大規模の各種ミサイルと無人機による空爆を行った。ウクライナのメディアによると、この空爆で死者が39人、負傷者が160人を超えたという。ロシア側は、厳しい冬にウクライナ側の士気を下げようという目論見のようだ。今後ともロシア軍のウクライナへの攻勢が強まるのは必至で、西側諸国の対応が注目される。(終わり)

 

 

 


著者は男性か女性か?新刊『ロシア 奪われた未来』は話題がいっぱい!

2023年12月10日 09時35分29秒 | Weblog

ウクライナとの戦争を続けるロシアのプーチン大統領への批判が国内外で強まっている中、「プーチンのロシア」がソ連崩壊後つくられた過程を克明に描いたノンフィクション『ロシア 奪われた未来』(白水社発行、訳・三浦元博・飯島一孝)が好評発売中だ。著者のマーシャ・ゲッセンはロシア人男性だが、名前が女性に多いマーシャなので、専門家でも女性と間違える人が少なくない。

著者は1967年、モスクワで生まれた。ソ連末期のブレジネフ政権当時、家族とともに米国へ移住した。その後、ソ連崩壊直前の1991年にロシアへ帰国、作家、ジャーナリストとして活動していた。だが、LGBT運動の活動家でもある著者は、反同性愛キャンペーンが激しくなった2013年、家族と自らの身の危険を感じて再び米国へ戻っている。

マーシャ・ゲッセンは、これまでにプーチンを題材にした作品など、多くの著作を残している。この新刊本は2023年、権威ある全米図書賞のハンナ・アレント賞を受賞している。

著者が男性か女性かの問題では、ロシア政治研究の大家として知られる木村汎(ひろし)北海道大学名誉教授が9年前、産経新聞に掲載された文章のなかで、マーシャ・ゲッセンを女性と明記。プーチン政権下の「報道の自由」抑圧に幻滅して米国移住を決意したと書いている。そのほかにも、米国などでは女装の写真を「マーシャ」とルビを振って掲載するなど、マーシャを女性として扱っている記事が散見される。

また、マーシャ・ゲッセンはメディアのインタビューに対し、「私はノンバイナリーです」と答えている。ノンバイナリーとは、自分自身が認識している性が男性・女性という性別のどちらにもはっきりと当てはまらない、または当てはめたくないという考え方を指している。こうした考え方は我が国では市民権を得ているとは言えないが、今後広まっていく可能性は否定できない。(この項終わり)