飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

ロシア紙、安倍首相の露戦勝記念式典欠席についての公式説明を疑問視!

2015年04月28日 23時57分00秒 | Weblog
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安倍晋三首相は5月6日の対ドイツ戦勝70周年記念式典にロシア側から招待されていたが、菅義偉官房長官は28日の会見で「日程調整がつかないため欠席する」と発表した。これについてロシア・メディアは様々な分析をしているが、最終的に米国の意向を受けて決めたとの印象は払しょくできそうもない。

28日付けの経済紙コメルサント(電子版)は「安倍首相は非常にタイトな日程のため戦勝記念式典を欠席」との見出しの記事で欠席決定までの経緯を取り上げている。信頼すべき消息筋の話として同紙は、安倍首相側が出席の可能性を最後まで残しておいたとみる。その理由は、昨年のソチ冬季五輪の時のように直前に開会式への出席を決める場合と、メルケル独首相のように記念日の翌日モスクワへ行き、無名戦士の墓に献花するという選択肢もありうるからだ。

コメルサント紙は、日本のメディアがウクライナ紛争を理由に欠席を決めたとの報道を伝えているが、これを信じているとは思えない。現在訪米中の安倍首相が、米政府の意向を聞いて欠席を決めたとの外交筋の見方を同紙は正しいとみているようだ。さらに、日本メディアが欠席のもう一つの理由として、現段階では北方領土問題で進展が望めないことを挙げていると書いている。

また、英字紙モスコー・タイムズ(電子版)は「安倍首相は式典欠席を決めた最後の指導者」との見出しのロイター電を転載している。その中で、安倍首相はロシアのエネルギー資源に目をつけ、ロシアとの関係を改善したが、ウクライナ紛争で同盟国・米国と歩調を合わせるため、ロシアへの経済制裁の実施で苦労してきたと報じている。ただ、安倍政権が目指しているプーチン大統領の年内訪日については、これまで通り行う方針だと指摘している。

一方、コメルサント紙はプーチン大統領が国民との対話番組で、「自ら記念式典への欠席を決めた人は許すが、ワシントンの意向を聞いて欠席を決めた人は許せない」と語ったことを取り上げている。この伝だと、安倍首相は許せないということになるが、プーチン大統領は今回の日本政府の決定をどう受け止めているのだろうか。(この項おわり)

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ロシアの民主政党、来年の下院選に向け“選挙連合”結成を宣言!

2015年04月18日 19時06分47秒 | Weblog
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2月に暗殺されたロシア野党指導者ネムツォフ氏が共同代表を務めていた「共和党・国民自由党」と、リベラル派のナバリヌイ弁護士が党首の「ロシア発展党」は17日、来年末の下院選に統一候補を擁立して臨むことを宣言した。ネムツォフ氏の暗殺を機に民主勢力結集の機運が高まってきたためで、議会の絶対多数を占めるプーチン与党体制に風穴を開けることができるかどうか注目される。

インタファクス通信によると、両党は政治連合を結成し、下院選に統一候補を擁立して闘うことを決めた。また、両党は国家の未来に責任を持ち、現政権が維持する不公平、「虚偽と汚職」政治に対抗できる唯一の政治勢力であり、今年から来年に実施される各種の選挙に全力を挙げるとしている。

さらに、両党は来年末の下院選に向けて共和党・国民自由党をベースに統一候補を擁立する仕組みを決めるとともに、「両党と価値観を共有する人々に門戸を開いている」として、幅広い民主勢力の結集を呼びかけている。

今回の動きは、暗殺されたネムツォフ氏が進めていた野党勢力の合同提案から始まった。18日の経済紙コメルサント(電子版)によると、ネムツォフ氏は暗殺される直前、ナバリヌイ氏と元石油王のホドルコフスキー氏が共和党・国民自由党に共同代表として加入するという条件で民主政党の合同を提案していた。だが、合同するには手続きに時間がかかるため、今回の選挙連合になったという。

プーチン氏は2000年に大統領に就任して以来、保守勢力を糾合して圧倒的な政権基盤を築いている。これに対し、民主勢力は強力な指導者がいないうえ、政権側が政党結成などに厳しい条件を付けたことから幅広い結集が困難になっている。

このため、共和党・国民自由党の共同代表だったカシヤノフ元首相とナバリヌイ氏は比較的容易な選挙連合を選択したとされる。だが、野党の中では一定の支持を集めている政党「ヤブロコ」(リンゴの意味)がこの連合に加わらないと明言していて、選挙連合がどの程度広がるかは不透明な情勢だ。

反プーチン運動に不屈の闘志を見せたネムツォフ氏の暗殺をきっかけに、ウクライナ紛争で強硬姿勢を崩さないプーチン大統領に対抗するためには民主勢力を結集するしか方法はないとの機運が高まってきた。ネムツォフ氏の遺志を継いで反プーチン運動を強化するには、議会で民主勢力の議席を増やしていくのが最善の策だ。今度こそ、民主勢力は小異を捨てて大同団結するべきではないか。(この項おわり)

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ロシア人の2人に1人は「国家の安定性がなくなった]と嘆いている!

2015年04月04日 23時36分51秒 | Weblog
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ロシア人の過半数が国家の安定性がなくなり、3人に1人は停滞期に入ったと考えていることがロシアの世論調査基金の調査で明らかになった。4日付けの経済紙コメルサント(電子版)が伝えた。この世論調査は3月下旬、全国規模で行われた。その結果、ロシアに安定性がなくなったと考えている人が57%にのぼり、「安定している」と答えた人は31%にとどまった。回答を保留した人は12%だった。

政治学者のドブロメーロフ氏は「この調査結果はリーマン・ショックが起きた08年11月の時の結果に似ている。安定性はプーチン大統領がこの15年間にわたって築いてきたものだが、1年前に政治経済状況は完全に変わり、現在は明日の人生設計を考えようと思う人はいない」と分析している。

また、世論調査で「ロシアは発展し続けているか」との質問に対し、半分の人は「その通り」と答えたが、「停滞期に入っている」と回答した人が34%にのぼった。回答を保留した人は16%だった。

一方、プーチン政権への評価に関しては「政権側は安定性を維持するのに追われている」と答えた人が43%と最も多く、次いで「改革の実行に不安がある」が25%だった。つまり、約3人に2人は安定性を維持するのが大事と考えていることになる。これに対し、「抜本的な改革を行う必要がある」と答えた人は20%だった。

世論調査基金のプレスニャコワ主任研究員は「国家の安定性がなくなっているという印象が強まっているなら、権力への国民の信頼に深刻な影響が出てくる可能性がある。つまり、改革が必要だという人はそれほど多くはないが、権力に否定的な意識を持っているといえる」と語り、政権側に警告している。

この記事では、ウクライナ紛争との関係に直接言及していないが、プーチン政権の対ウクライナ、対米欧への強硬姿勢により国家の安定性が崩れたことを示唆している。さらに、欧米の経済制裁などを受け、ロシア経済に深刻な影響が出ていることを暗示している。プーチン政権は国民生活を犠牲にしてまで国家第一主義を貫こうとしているが、それはいったい何のためなのだろうか。ロシアは、国民を軽視したソ連時代の過ちを再び繰り返そうとしているのではないか。(この項おわり)





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