飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

反プーチン派と治安部隊が衝突したボロトナヤ広場事件の裁判開始!

2013年06月26日 11時09分46秒 | Weblog
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プーチン大統領就任前夜の昨年5月6日、モスクワのボロトナヤ広場で反プーチン派と治安部隊が衝突、約450人が拘束された事件の裁判が26日、モスクワ地裁で始まった。運動が下火になってから行われた大々的な裁判に対し、リベラル派は「反プーチン運動支持者への見せしめの裁判ショーだ」と批判している。

この事件は、プーチン氏の大統領返り咲きに抗議して反プーチン派がボロトナヤ広場で開いた集会で起きた。参加者は当初の予想より大幅に増え、4万人規模に達したことから、武装した治安部隊と参加者との間で衝突が起き、治安部隊が催涙ガスを発射。さらに、集会参加者をゴボウ抜きにし、ナバルヌイ弁護士、ネムツォフ元第一副首相、ウダリツォフ左派戦線指導者ら約450人を拘束した。この衝突で、治安部隊員4人が負傷したという。

その後、治安当局は事件の首謀者として14人を逮捕した。この日の裁判には、すでに別件などで審理中の2被告を除く12被告が出廷した。検察官が起訴状を朗読、12被告が暴動に参加し、警察官に暴行を働くなどしたと断定した。有罪判決が決まると、最高8年の禁錮刑が科される。

これに対し、被告全員が起訴事実を全面否認し、そのうち数人の被告は「平和的な集会に参加したが、警官隊に“理由なく”妨害された。我々は被害者だ」と訴えた。この日の裁判には市民ら多数が傍聴のため集まったが、法廷には入れず、廷外に映されたスクリーンを見守った。

一方、この事件をめぐっては「アムネスティ・インターナショナル」、「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」など国際人権団体が独自の調査委員会を設置して調査を進め今年4月、「集会で暴動は起きなかった」との結論を出している。

プーチン政権は昨年5月の大統領就任後、市民運動や非政府組織(NGO)の活動を規制する法律を次々に制定しており、反プーチン派の運動を壊滅させる方針とみられる。この裁判もその一環で、リベラル派市民に対し、権力に逆らうとどうなるかを見せつけようとしているかのようだ。政権側は、こうした強権的手法をいつまで続けようというのだろうか。
                  (この項おわり)

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露特殊治安部隊、人権団体を事務所から強制的に追い出す!

2013年06月23日 15時34分06秒 | Weblog

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プーチン政権は欧米から資金援助を受けて活動している非政府組織(NGO)への締めつけを強化しているが、22日未明、ロシアの有力な人権団体「人権擁護」(ポノマリョフ代表)の事務所に特殊治安部隊を派遣し、職員らを強制的に追い出した。この騒動で職員数人が負傷した。

インタファクス通信などによると、22日午前2時頃、モスクワ市内の「人権擁護」事務所に特殊治安部隊「オモン」が突入した。当時、事務所にはポノマリョフ代表ら職員8人がいたが、特殊部隊は代表らを踊り場まで引きずっていき、階段から突き落とした。このため職員らはアスファルトの道路に投げ出され、数人が救急車で運ばれたという。

検察庁は21日午後、事務所に検察事務官を派遣し、事務所から退去するよう要求した。事務官は室内のコンピュータを差し押さえ、ドアのカギを取り替えて事務所の賃貸契約期間が切れたことを宣言していた。

今回の治安当局の強制的な退去に対し、ルキン連邦人権問題全権委員は「当局のやり方は横暴で、連邦憲法に違反している。法律家と協議して対応策を決めたい」と語り、法的手段に訴える可能性を示唆した。

プーチン政権の主導により昨年11月、欧米の資金供与を受けて民主化や人権擁護に携わるNGOへの規制法が発効した。当局が「政治的」とみなした団体に「外国のエージェント」として登録させ、財源や活動報告を義務付けている。登録をしていない団体に対しては最高50万ルーブル(約150万円)の罰金、悪質なケースには2年間の禁錮が課される。

検察当局は今年2月からNGOに対する抜き打ち検査を実施しており、すでに欧米系の人権団体「アムネスティ・インタナショナル」支部など、数百団体を捜索して書類の提出や団体の登録を要求している。

こうした検査により、ロシアの三大世論調査機関のうち、中立系のレバダ・センターが登録を迫られるなど、「外国のエージェント」の認定枠が予想以上に広がっている。さらに、知名度の高い人権団体「人権擁護」が強制退去させられる事態が発生したため、リベラル派からの批判が高まっている。

すでに欧米諸国がこうしたプーチン政権の強権的手法を厳しく批判している。今年9月にはサンクトペテルブルクでプーチン大統領主宰のG20首脳会議が開催されるが、世界各国の批判がさらに強まることが予想される。今月、英国で開かれたG8サミットでも、シリアへの対応を巡るロシアの「異質性」が指摘されており、このままではG20首脳会議の開催すら危ぶまれかねない事態となろう。(この項おわり)
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ヤクーニン・ロシア鉄道社長が解任との報道が流れたが・・・

2013年06月20日 16時12分30秒 | Weblog
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  プーチン大統領の信任が厚いウラジーミル・ヤクーニン・ロシア鉄道社長(64)が解任されたとの報道が19日夜、複数のロシア・メディアから流れたが、30分後に取り消されるという事件があった。悪質ないたずらか、それとも不祥事の前触れなのか。

  19日付けのコメルサント紙(電子版)によると、同日午後8時すぎ、インタファクス通信、ノーボスチ通信など3社が、ヤクーニン社長が解任され、後任にミシャリン第一副社長が任命されたとのニュースを一斉に流した。いずれもロシアでは有力な通信社だけに信頼性が高いとみられたが、30分後に「ロシア政府が確認していない」として3社とも否定した。

  今回の人事異動情報は政府から発信されたが、ロシア鉄道の役員人事はその後、大統領府の管轄と判明。大統領府が公式に事実を否定して解任報道は“誤報”となった。これについてペスコフ大統領報道官は「これはサイバー犯罪だ」と述べる一方、「メディア側は報道の真偽を確認してから報道してほしい。クレムリンに電話すればわかることだ」と注文をつけた。

  また、社長解任の誤報を流されたヤクーニン社長自身は、ロイター通信に対し「これはしかるべき機関が関係している大規模な挑発行為だ」と厳しく批判した。ロシア鉄道は国有鉄道の管理運営を独占している国策会社で、社長は閣僚級とされる。

  だが、火のないところに煙は立たない、とのことわざもある。国際政治評価研究所のミンチェンコ所長は「このニュースを権威あるメディアが報道しているのは、ヤクーニン社長の地位が揺らいでいるからではないか。会社の資金繰りが厳しくなっている上、鉄道建設をめぐるロビー活動も活発化している。この活動の中心人物はヤクーニン社長の後任に擬せられたミシャリン副社長だ」と述べている。

  また、メドベージェフ首相の陣営がヤクーニン社長を追放しようとしているとの情報もある。だが、それを実行できるのはプーチン大統領しかいないとされ、ロシア鉄道社内で汚職疑惑が起きている可能性もある。

  いずれにしろ、ヤクーニン社長はプーチン大統領の友人であるだけでなく、腹心のひとりでもある。90年代にペテルブルク近郊の湖畔で、ともに別荘を持っていた関係で、今も家族ぐるみの付き合いをしているという。そのヤクーニン氏の地位が危ういということになれば、プーチン大統領の権威にも陰りが生じているという見方もできる。今回の“誤報”騒動は尾を引く可能性がありそうだ。(この項おわり)
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プーチン大統領の離婚公表は何のためだったのか?

2013年06月15日 17時23分46秒 | Weblog
 
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  先週、世界の人々をあっと驚かせたのは、プーチン大統領(60)の離婚発表だったのではないだろうか。妻のリュドミラさん(55)とは30年連れ添った仲だが、数年前から離婚状態と囁かれていた。よりによってなぜ今、何のために離婚を発表したのか。政治家の結婚と独裁度の関係を探る意味から、あえて推理してみようと思う。

  英字紙モスコー・タイムズに、こうした疑問に答えてくれる寄稿文を見つけた。「プーチン氏の管理された愛情生活と離婚」と題されたニーナ・フルシチョワさんの文章だ。現在、ニューヨークで国際問題を教えている学者である。

  寄稿文に書かれている内容は概ね、以下の通り。プーチン夫妻はこの十年ほど、一緒のところを見られていないので、多くの噂が流れていた。08年には、プーチン氏が離婚し、新体操の金メダリスト、カバエワ下院議員(30)と再婚、息子がいると報じられた。その後も、プーチン氏の家庭生活に言及し、解雇された編集長が何人かいると言われ、タブー視されていた、

  ところが、今月6日夜、プーチン夫妻がバレーを鑑賞したあと、ロシア・メディアの質問に答え、突然離婚に合意したことを公表した。多分ジャーナリストがプーチン氏と共謀して仕掛けたことだろう。プーチン氏が「結婚生活は終わった」と話しているそばで、石のように固まった妻が無言で立っている姿は言葉もなく、大声で叫んでいるように感じたという。

  「なぜプーチン氏はあのような公衆の面前で芝居じみた発表をしたのか」。ニーナさんはこう問いかけながら、「結局、プーチン氏のロシアでは、ツアーリ(皇帝)は好きな時に、好きなことができるのだ」と言い切っている。

  彼女の推理によると、プーチン氏はシリア政府への軍事支援や国内の反体制派からの批判をそらそうとしているのではないか、というのである。プーチン氏は、来年のソチ冬季五輪で壮大な結婚式を行い、もしかしたらその相手はカバエワさんとかもしれない、とニーナさんの推理は広がる。

  このあと、ニーナさんは指導者の独裁度とファースト・レディーとの関係に迫る。米大統領のクリントン夫妻、オバマ夫妻のようなオープンな関係は民主主義の印だが、ヒトラー、スターリン、金日成などの独裁者はいつも一人で立っていると強調する。

  さらに、旧ソ連・ロシアでもゴルバチョフ氏から女性の地位が変化し、ライサ夫人は公の場に姿を現し、自分の意見を発表した。ロシア初代大統領エリツィン氏のナイナ夫人もいつも大統領のそばにいたという。

  続いてニーナさんはプーチン氏について「彼は管理された民主主義を創出した。これからロシア人は管理されたクレムリンの結婚と、老人になり、人におもねる醜悪な独裁者をみることになるだろう」と皮肉っている。ニーナさんの大胆な推論について、あなたはどう思いますか?(この項おわり)



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プーチン大統領は「理想の指導者」なのか?

2013年06月10日 12時20分04秒 | Weblog
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  プーチン氏が大統領に返り咲いてから1年経過したが、プーチン大統領を「理想の指導者」とみなしている人は41%にとどまり、そう見ていない人の方が上回ったことが世論調査で分かった。ただ、大統領の支持率は64%と依然高率を維持しており、代わるべき人物がいないことを示している。

  10日付けのコメルサント紙(電子版)は、世論調査機関レバダ・センターが5月に実施した世論調査の結果を掲載している。それによると、「プーチン大統領は指導者の理想を体現している」と答えた人は41%で、そのうち6%は無条件で「理想の指導者」と崇めている。これに対し、理想の指導者でないと見ている人が46%と5ポイント上回っている。

  また、プーチン大統領の指導力について、「大統領は国内で起きていることに対し責任を自覚している」と答えた人は62%、「内政問題に戦略的な観点で対応している」と答えた人が61%、「国民のニーズに対し丁寧に対応している」と見ている人が45%だった(複数回答)。ところが、政府高官による汚職疑惑が相次いでいるのに、「大統領は部下に対し厳しく行動している」と答えた人は41%、「大統領は側近に依存していない」と見る人が36%と意外に低かった。

  この調査結果について政治評論家のコンスタンチン・カラチェフ氏は「指導者と国民の関係はお互いの協力関係に左右される。最初はプーチン氏への期待があったが、今はプーチン氏の退陣後への恐怖感がある。彼以外の対案があるのか、指導者が交代すればもっと悪くなるのではないかという恐れだ」と分析している。

  また、レバダ・センターのアレクセイ・グラジダンキン副所長は「国民は政治家のどこが強いか、弱いかをよく見ている。だから、政府高官の汚職問題では、部下を厳しく叱責できないプーチン大統領への不満が調査結果に表れている」と話している。

  レバダ・センターは今年初めにもプーチン大統領のイメージに関する世論調査を実施している。その結果、「国家安定の保証人」から「経験豊富な大統領」に変わってきたことが明らかになり、大統領の指導力が前回、2期8年間務めた頃より著しく弱まってきたことを示していた。今回も同じことがいえるが、彼に代わる指導者が現れないことが、彼にとって最大の強みであることは間違いない。(この項おわり)

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モスクワ市長選、10年ぶりに9月実施へ!

2013年06月05日 10時09分18秒 | Weblog
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  モスクワ市のソビャーニン市長は4日、市長を辞任し、今秋に市長選を行う意向を明らかにした。プーチン政権が中間層などの抗議を受け昨年、州知事などの選任を任命制から公選制に戻したのを受けたもの。実施されれば03年以来、10年ぶりの直接選挙となる。ソビャーニン市長の他、反プーチン派のナバリヌイ弁護士らが立候補する意向を表明している。

  インタファクス通信によると、ソビャーニン市長はモスクワ市社会院会議でこの意向を表明、その後、プーチン大統領と会談して了解を得た。市長の任期は1年以上残っているが、市議会が決定すれば繰り上げ選挙が実施できる。すでに各党とも繰り上げ選挙実施に賛成している。投票日は統一地方選の9月8日になる見通し。

  ソビャーニン市長は、プーチン大統領の側近で、与党「統一ロシア」も市長を支持する方針を固めている。一方、野党も候補者を擁立する方向で準備を進めている。すでに反プーチン運動の先頭に立って闘っているナバリヌイ弁護士が立候補の意向を示している。

  先月下旬に行われたモスクワ大学社会システム調査研究所の世論調査では、54%がソビャーニン市長に投票すると答えている。ルシコフ前市長に投票すると答えた人は13%、プロホロフ市民綱領党代表に投票するという人は12%だった。そのほか、クドリン元財務相7%、ナバリヌイ弁護士2%などの順。

  モスクワ市は、反プーチン運動を支える中間層が多い地域で、プーチン流強権主義への反発も根強い。このためプーチン政権も市長選の行方を注目しており、リベラル派が統一候補を立てられれば、与野党が激突する可能性もある。今後のプーチン政権を占う意味からも、この選挙は要注意だ。(この項おわり)






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ロシアで公共施設での“禁煙法”が施行されたが・・・

2013年06月01日 11時01分22秒 | Weblog

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 「喫煙天国」と言われるロシアで、1日から公共の場での喫煙を制限する法律が施行されたが、実際に違反者に罰金が課せられるのは何カ月か先になりそうだ。罰金徴収システムが決まっていないためで、文字通り“泥棒を捕まえてから縄をなう”という、ロシアらしい、ズサンなスタートとなった。

  31日付けのコメルサント紙(電子版)によると、内務省のヤクーニン・モスクワ支部長は取材に対し、まだ違反者への課金システムが決まっておらず、当面は警察官が口頭で注意するだけになるという。法律の実施規則が決まるのは2、3週間後で、実際の取り締まりはさらにそのあとになる見通しだ。

  喫煙制限法は今年2月、下院で採択された。たばこの害から市民の健康を守るための法律で、喫煙制限は2段階で実施される。まず今年6月から国家施設、病院、学校など公共施設での喫煙が禁止され、来年6月からはホテル、レストラン、旅客列車、客船などでも喫煙できなくなる。また、たばこの宣伝が全面禁止され、売店での販売もできなくなる。

  法律採択直後の世論調査では、4人に3人が公共の場所での禁煙を支持しているほか、79%がたばこの宣伝禁止を容認している。その一方、この法律が喫煙者の減少につながると考えている人は、全体の49%にとどまっていた。

  ロシアのたばこ消費量は中国、米国に次ぐ世界3位で、男性の約7割、女性の約3割が喫煙している。たばこを吸わないプーチン氏が大統領になってから禁煙の動きが強まったとされる。今回の制限法は厳しい内容で、最終的に自宅か道路でしか喫煙できなくなるといわれていて、喫煙擁護派は法律を修正するよう求めている。

  取り締まり当局の体制作りが遅れているのも、世論の反対が根強いからだろう。だが、法律が施行されても実効が上がらなければ、プーチン政権への批判が高まるのは避けられない。ゴルバチョフ時代の反飲酒政策と同様、「プーチン人気」をさらに落とすことにならないとも限らない。(この項終わり)


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