飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

ロシアとウクライナの戦争状態はいつまで続くのか?

2022年08月27日 15時08分00秒 | Weblog
ロシア軍がウクライナに侵攻してから半年が経過したが、依然として激しい戦闘が続いている。少し前までは双方ともかなり消耗していて、早ければ秋にも停戦へ動くのではとの見方が強かった。だが、半年経っても戦闘はレベルダウンしないどころか、激しさを増しているところもある。このため、戦争状態の長期化は避けられず、見通しが立たない状況が続きそうだ。

ロシアとウクライナの戦線は、今年2月下旬の開戦以来、ウクライナのほぼ全土に広がり、全体状況が見えにくくなっている。当初はウクライナの首都キーウ(キエフ)の攻防から始まり、ロシア人住民の多い東部戦線から南部のヘルソン州などに拡大。現在はロシアが強制編入したクリミヤ半島も主戦場の一つになっている。ロシア軍の投入した地上兵力は、正規軍や武装兵力を合わせて30万人程度に対し、ウクライナ軍は総勢30万人から国民総動員令で百万人規模に膨れ上がったという。

最初、ロシア軍は兵力で優っていたが、ウクライナの大量動員で兵力はほぼ五分五分になった。そのうえ、ウクライナは西側諸国から供与された高機動ロケット砲システムなどの最新兵器により、反撃に本腰が入りつつある。その結果、ロシア軍も「このままでは押し返されてしまう」として、現在の「特別軍事作戦」から総動員令を含む「宣戦布告」に格上げするのではという見方も出ている。そうなると、ロシアが核兵器を使うという懸念も現実味を帯びて来る。

ロシアからの報道では、プーチン大統領は最近、「我々はまだ本気で何かを始めたわけではない」とも述べていて、今後さらなる戦闘強化もあり得る事態になっている。一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は、旧ソ連からの独立記念日(8月24日)の前日に開催されたオンライン国際会議で「クリミヤの奪還は欧州における反戦の大きな一歩になる」と述べ、妥協せずに戦い続ける姿勢を示している。

ウクライナを支援する西側諸国も、依然としてウクライナを物心両面で支えており、引き下がる気配はない。早くも2年後のロシア大統領選挙まで、プーチン大統領がこの戦いを続けるのでは、という観測も出ている。これから秋、冬が近づくと、天然ガスをロシアに依存する西側諸国も心おだやかではなくなるため、新たな動きが出て来るかもしれない。ますます戦況から目を話せない状況が続くことは間違いない。(この項終わり)


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ウクライナ戦争開始から半年、今秋以降の停戦交渉がヤマ場に!

2022年08月09日 10時05分02秒 | Weblog
ロシアが2月下旬にウクライナに侵攻してから間もなく半年になる。ロシアは当初、短期決着を目指したが、ウクライナの思わぬ抵抗で戦線が拡大してきている。双方とも激戦が続き、体力が消耗しているとの見方が強い。そこで、これまでの経過を振り返りながら、今後の展開を探ってみた。

今回の戦闘開始のきっかけになったのは、2021年7月12日、ロシア大統領府のホームページに掲載されたプーチン大統領の「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について」と題する論文だった。この中でプーチン氏は、ロシア人、ウクライナ人、ベラルーシ人の三つの民族は基本的に同一のルーツから発生した。だから同じ民族なんだ」と主張した。ロシアでは帝政時代からある議論で、ロシアは「大ロシア人」、ウクライナは「小ロシア人」、ベラルーシは「白ロシア人」と呼ばれていた。

最初に軍事的な動きが出てきたのは、昨年9月10日のロシアとベラルーシの軍事演習だった。これは毎年行われているものだが、この時はベラルーシとウクライナの国境付近で行われた。その後、米紙が「ロシアはウクライナへの侵攻を計画している」とスッパ抜き、ロシアと欧米諸国との間で、一気に緊張が高まった。プーチン氏は今年2月21日、国家安全保障会議を開催し、軍隊派遣を命じた。そして3日後、プーチン氏はウクライナ東部での演説で「特別軍事作戦」を開始したと発表したのだ。

侵攻の当初、戦闘は1週間で終わると見られていた。ロシアとウクライナとでは軍人の数だけでも4倍以上の差があり、さらに兵器の面でも圧倒的な差があったからだ。これに対し、ウクライナのゼレンスキー大統領は徹底抗戦を呼びかけ、市民もこれを受けて結束して戦った。その後、ウクライナ軍は米国・NATO軍が提供した最新兵器で武装し、かなり訓練していたことが分かった。このため、早い段階にウクライナの大統領を拘束し、傀儡政権を立てるというロシア側の試みは失敗に終わった。

さらに、ロシアにとって誤算だったのは、米やNATOは軍事介入しないといいながら、ウクライナに巨額の軍事支援を行い、携帯用対戦車ミサイルや対戦車砲などの最新兵器を提供していたのだ。こうした事態にプーチン大統領は軍に対し、抑止力を「特別警戒体制」に引き上げるよう命令した。事実上、核兵器をいつでも覇者できる状態に置くという命令だった。これで一気に核兵器使用の危険性が高まった。

これから秋、冬が近づくと状況はさらに変わってくる。ドイツなど欧州諸国は現在、石油や天然ガスの脱ロシア化を急ピッチで進めており、ロシアに対する空前の経済制裁の効果が出てくることは間違いない。一方、米国は11月に中間選挙を控えており、バイデン大統領ら幹部はウクライナ問題に専念できない状況になってくる。このため、ロシアと米国・西欧諸国との間で近い将来、停戦を含めた和平交渉を行わざるを得ないだろう。いずれにしろ、これから冬までの数ヶ月間に、双方とも停戦交渉のテーブルに付くかどうかのヤマ場を迎えることになるだろう。(この項終わり)


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