飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

トリノ五輪金メダリストのプルシェンコ選手、ソチ五輪に出場せず!

2013年12月26日 11時23分10秒 | Weblog
 
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   ソチ五輪で金メダル奪還に執念を燃やしていたロシア男子フィギュアの第一人者、プルシェンコ選手(31)は25日、ソチで行われたロシア選手権大会でコフトゥン選手(18)に敗れ、2位となった。この後、後進に道を譲るとして、ロシア代表を決める来年1月の欧州選手権大会への出場を辞退した。

   かつて男子フィギュアでは敵なしと言われたロシアだが、近年は有力選手が故障で出場できないなど、メダルから遠ざかっている。来年のソチ五輪も出場枠は1人だけ。この1枠をめぐって2006年のトリノ五輪金メダリスト、プルシェンコ選手と若手のホープ、コフトゥン選手が激しい代表争いを続けてきた。

   その成果を競うロシア選手権大会で、コフトゥン選手がプルシェンコ選手に10点以上の差をつけ、逆転優勝した。この結果を受け、プルシェンコ選手は「若い選手に道を譲ることを決めた。私はソチ五輪の団体戦に出る」と語り、ソチ五輪のシングルに出場しないことを明らかにした。

   コフトゥン選手はジュニア・グランプリ・ファイナルで優勝しているが、ロシア選手権で優勝したのは今回が初めて。だが、プルシェンコ選手は「彼は五輪で金メダルを取れる選手だ。一番重要なことは精神的プレッシャーに勝ち抜くことだ」とエールを送った。

   プルシェンコ選手はトリノ五輪で金メダルに輝いたほか、その前後の五輪で銀メダルを獲得しているロシア・フィギュア界の星である。さらに、世界で初めて4回転からの4-3-2、さらに4-3-3の連続技を成功させた選手としても有名だ。いったんはアマチュアを引退したが、ソチ五輪を前に2011年から復帰していた。

   昨年の「ロシアNOW」(10月号)とのインタビューでも「私の最強のライバルは私だ。私にとっては自分に打ち勝てることが一番重要だ」と述べ、ソチ五輪での金メダル奪還に自信を示していた。だが、若手が力をつけてきたことから、後進に道を譲る決意をしたのだろう。(この項終わり)


プーチン大統領の「政敵」釈放の真の理由は何か?

2013年12月24日 11時44分38秒 | Weblog
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   プーチン大統領の政敵と言われたホドルコフスキー元石油大手ユコス社長が大統領の恩赦で釈放された理由についてロシア・メディアは様々な見方を紹介している。「ソチ五輪成功のため」「人権批判回避のため」などだが、大統領が政権掌握に自信を深めてきたことが最大の理由とみられる。

   プーチン大統領は3期目の就任前から反プーチン運動にさらされ、昨年5月の就任後も長期政権を嫌う中間層からの厳しい批判を受けていた。このため大統領の支持率も第一次大統領期に比べ、大幅に低下していた。

   だが、就任直後からデモ規制法やNGO(非政府機関)取締法などの法律を矢継ぎ早に成立させ、反プーチン派指導者を中間層から切り離す作戦をとってきた。その結果、今秋の地方選挙ではモスクワなど大都市を除いて野党側を押さえ込むことに成功した。

   民主派の政治学者、トレーニン・カーネギー財団モスクワセンター所長は「モスクワ市長選で反プーチン運動の指導者ナバリヌイ弁護士が得票率27%を得たが、それほど大きい数字ではない。勝者はプーチン大統領だ」と英字紙モスコー・タイムズのインタビューで答えている。今回の恩赦は、政敵に寛大な措置を取れるほどに政権側の支配が強いことを示す大統領のメッセージだと分析している。

   さらに、プーチン大統領はシリア紛争で化学兵器廃棄を実現させ、ウクライナのEU加盟問題でも加盟の第一歩となる「連合協定」締結を延期させるのに成功している。ペトロフ高等経済学院教授は「ウクライナとシリアの国際的勝利で、プーチン大統領は不敗を信じるようになり、ホドルコフスキー元社長に対する措置をガラリと変えたのだろう」と分析している。

   釈放後、ホドルコフスキー元社長は今後政治活動をしないと述べているが、民主派の間では、ゴルバチョフ・ソ連共産党書記長(当時)によって流刑を解除された反体制派の物理学者サハロフ氏(故人)のような民主勢力の精神的指導者になるのを期待する声も上がっている。

   その一方、「いかなる政治的脅威もないから釈放された」とのクールな見方もあるが、「どんな場合でも世論を指導する立場になることは明らかだ」と見る人が少なくない。ミンチェンコ国際政治研究所長は「彼は何よりもまず民主勢力に影響力を持つだろう」と分析している。

   いずれにしろプーチン政権に投獄され、10年も獄中で罪を認めず闘ってきた人物が、政権に対する恨みを忘れるわけがない。当面はドイツで生活するにしても、近い将来ロシアに戻ってきて、プーチン政権への反旗を翻すに違いない。その時こそ、プーチン大統領との本当の戦いが始まるだろう。(この項終わり)


プーチン大統領、恒例の大記者会見で自らの実績を自慢!

2013年12月19日 22時14分06秒 | Weblog
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   プーチン大統領は19日、恒例となった大記者会見をモスクワで開き、内外の記者約1300人を相手に丁々発止とやりあった。今回が9回目ということもあり、攻める相手には反撃し、本音を聞き出そうとする質問ははぐらかした。経済成長の実績を自慢するなど、自信たっぷりな会見となった。

   記者団の一番の関心は、プーチン大統領の後継者問題。記者たちはあの手この手で大統領を攻め立てた。ある記者は、「もしプーチン大統領がいなかったら、誰が大統領を務められるか、という声をよく聞く」と、政権幹部の発言を披露して持ち上げた。

   プーチン大統領は「遅かれ早かれ、私はこの職を退く。私の後を誰が務めるかに無関心ではいられない」と語り、まんざらでもない様子。続けて過去の実績に触れて「私は在任中、ロシアのGDPをほぼ2倍に増やした。よく考えると、これは大変な業績だ」と自画自賛した。

   一方、西側の記者が「石油王」と呼ばれ、新興財閥のトップに君臨しながらプーチン政権に投獄されたホドルコフスキー元ユーコス社長に言及。「刑期を短縮するとの決定が報じられたが、この決定は大統領と裁判所の合意がなければできないことは明白」と指摘、元社長を早く釈放するよう求めた。

   大統領は「あなたは我が国の司法制度を誤解している。彼は政治家でも議員でもない。単なる経済犯罪者に過ぎない。この問題を政治問題化するのは間違いだ」と反論した。だが、会見後、記者団の質問に答え、近く恩赦の大統領令に署名すると述べた(その翌日、釈放された)。人権政策への批判から、ソチ五輪への出席を見送る欧米の首脳が増えているためとみられる。

   記者がプーチン政権の独裁体制を槍玉に上げ、「あなたは19年かけてかなり厳しい権力体制を築いたが、これは独裁主義だ。現在もそれは有効だと思うか」と質問した。すると大統領は「我々は安定を保証した。これが極めて重要なことだ。この体制を独裁と呼ぶのは間違いだ。私は憲法改正をやろうと思えば簡単に出来たが、それをしなかった」と独裁を否定した。

   また別の記者は「大統領の今の任期が終わると、大統領が権力に就いた時、生まれた子供が成人に達する。安定が停滞に変質する恐れがないだろうか」と指摘、長期政権が停滞の時代を生むとの懸念について質問した。大統領は「とてもうまい表現だが、根拠はない。発展にとっての絶対的条件は安定だ。そうでなければ誰が金を貯めることができるだろうか」と語り、中国の経済成長を引き合いに出して自説を強調した。

   こうしたやり取りをみると、プーチン大統領の方が記者団より一枚も二枚も上手だ。頭の回転の速さと長年の経験に裏打ちされた自信が成せる技とでも言うのだろうか。彼に代わり得る指導者は当面出てこないだろうから、さらにもう1期6年、2000年の大統領就任から数えると計24年の長期政権が現実性を帯びてきたと感じた。(この項おわり)

ウクライナ首相、EUとの「連合協定」署名延期の真相を公表!

2013年12月15日 11時44分36秒 | Weblog
 
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   ウクライナのアザロフ首相は14日、首都キエフで開かれた与党の集会で、EU(欧州連合)との「連合協定」に署名しなかった理由について「あのとき署名したら国家が破産する恐れがあったからだ」と語った。首相は懸案のロシアとの貿易交渉が終了、16日に協定を結ぶと述べ、野党が喧伝している「ロシアとの関税同盟締結」を強く否定した。

   インタファクス通信などによると、この日の集会は、野党の集会に対抗して与党「地域党」が開いたもので、約1万人が参加した。集会で演説したアザロフ首相は、EUへの加盟の第一歩となる連合協定署名を延期したのは「みなさんのことを考えたため」と述べ、ロシアとの貿易正常化が緊急の課題だったことを強調した。

   続けて首相は3年半続いていたロシアとの交渉がようやく合意に達し、16日に包括協定に署名することを明らかにした。これにより、航空、宇宙、機械製作などすべての分野で、ロシアとの貿易が正常化するメドが立ったとしている。

   さらに首相は、EUとの連合協定に署名しても直ちにビザ(査証)不要の体制が導入されるわけではないと指摘。「我々の目的は一つ。将来的な欧州国家の実現だ」と述べ、「政治家は円卓会議に参加を!集会参加者は家庭に戻ってほしい」と、事態の収拾を呼びかけた。

   首相の説明は、ロシアがウクライナに貿易面で圧力をかけ、EUとの連合協定署名を阻もうとしていたことをうかがわせる。この交渉がようやくまとまったことから、経済的には安定のメドが立ったとみられるが、これでEU加盟の見通しが立ったとは言い難い。今後もロシアとEUの間で、ウクライナをめぐる激しい綱引きが予想される。(この項おわり)

ウクライナ大統領、野党の反対振り切り、ロシアと「関税同盟」締結か!

2013年12月09日 11時24分19秒 | Weblog

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    ウクライナ政府がEU(欧州連合)との「連合協定」に署名しなかったことに対し、野党は8日、再び十万人規模の集会を開き、大統領選、議会選の繰り上げ実施を要求した。一方、ヤヌコビッチ大統領は17日にもロシア主導の「関税同盟」に加盟する構えとされ、ウクライナ情勢は混迷を深めている。

    8日のインタファクス通信(電子版)によると、EUへの早期加盟を求める野党がキエフの独立広場で開いた集会には、10万人以上の市民が参加した。野党「ウダール(こぶし)」のクリチコ代表は「我々は権力の総入れ替えを要求する。大統領選と議会選の繰り上げ実施が必要だ」と演説した。

    8日付けの地元紙「ウクライナの真実」によると、野党側はアザロフ内閣が48時間以内に総辞職しなければ、大統領官邸を封鎖することを申し合わせたという。一方、ティモシェンコ元首相は集会に宛てた書簡の中で、現政権が選挙の繰り上げ実施を約束しない限り、交渉しないよう呼びかけている。

    一方、英国誌「エコノミスト」のツイッターによると、ヤヌコビッチ大統領は近くロシアと関税同盟を結ぶことで合意。さらに、同大統領はプーチン露大統領との会談で、天然ガスの購入価格引き下げなどで合意し、ウクライナ側はロシアから総計150億ドルを得ることになると伝えている。

    これに対し、ペスコフ・ロシア大統領広報官は両大統領が7日、ソチで会談したが、ウクライナの関税同盟加盟問題については協議しなかったと述べ、報道を全面的に否定した。

    一方、ウクライナの野党代表の一人は、ヤヌコビッチ大統領が17日にロシアと関税同盟を含む戦略的協力に関する協定に署名するとの情報を得ていると述べたが、「大統領は関税同盟に加盟する権限は得ていない。最高会議(議会)はそういう協定は批准しない」と強調した。

    ヤヌコビッチ大統領は親露派で、EUへの加盟問題に慎重な姿勢を示している。世論も欧州との連携か、ロシアとの同盟かをめぐって二つに割れている。17日にモスクワで2国間委員会が予定されているが、今の状況でロシア主導の関税同盟に加盟すれば、再び国内を二分する混乱状態に陥りかねない。大統領は野党側と真摯に話し合い、妥協の道を探すしか平和的解決の道は開けないだろう。(この項おわり)

プーチン大統領の不支持率、初めて30%を超す!

2013年12月03日 15時46分17秒 | Weblog
 
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   プーチン大統領の不支持率が、00年に大統領に就任して以来、初めて30%を越したことが世論調査機関レバダ・センターの最新の調査結果から分かった。昨年5月の大統領復帰以来、国民の間で長期政権への不安感が広がり、その結果、支持率の長期低落傾向が続いているとみられる。

    3日付けのロシア経済紙ベードモスチ(電子版)によると、今回の調査は11月15~18日までロシア全土で行われた。その結果、大統領の不支持率が31%となり、過去最高だった昨年11月の29%を上回った。支持率は47%で、そのほか16%が大統領に不満を示している。

    また、プーチン大統領の印象を尋ねたのに対し、52%が「好ましい」と答え、「好ましくない」と答えた人は29%だった。「好ましくない」が29%にも達したのは今年3月に続いて2回目。第一次プーチン大統領時(00~08年)に「好ましくない」と答えた人は最高でも15%だったので、ざっと2倍に増えたことになる。

    この調査結果についてレバダ・センターのグラジダンキン副所長は「昨年11月と今年11月の指標を比べると、違いはそれほど大きくない。支持率の低下傾向は長期的な観点からみられるが、月単位の変化は地域的だ」と分析している。

    一方、政治学者のパジャロフ氏は「この秋の支持率低下は大統領だけでなく、メドベージェフ首相にもみられるが、大統領の低下の方が大きい。これは予算審議の中で、食料とガソリンの価格が高騰するという悲観的な見方が出たことが原因だろう」とみている。

    ベードモスチ紙の記事では、大統領の支持率低下の理由ははっきりしない。大統領を「好ましい」と見る国民が過半数に上っていることから、記事の中では「国民の大統領に対する全体的な印象は肯定的だ」と書いているが、昨年10月時点でも大統領の支持率は60%以上あったので、大きく低下していることは明らかだ。

    プーチン大統領は今年9月、内外のロシア研究者を集めたバルダイ会議で、5年も先の次期大統領選に立候補する意向を示唆した。現在、大統領任期は6年間なので、2期12年間務めることを目指しているとみられ、第一次大統領期と首相勤務を合わせると、事実上24年間も指導者の地位に居続けることになる。今回の世論調査結果は、こうした長期政権に対する国民の無言の抵抗といえないだろうか。(この項おわり)