モスクワの裁判所は25日、ロシアで7番目の大富豪ウラジーミル・ポターニン氏(53)の離婚訴訟で、妻ナターリアさんに月額約2400万円の養育費を支払うよう命じた。ロシアでも異例の高額養育費の裏には、140億ドル(ざっと1兆4000億円)とも言われるポターニン氏の資産を巡るトラブルがあった。
インタファクス通信などによると、裁判所の決定はポターニン氏の離婚を認める代わりに、妻のナターリアさんに月収の4分の1を養育費として支払うよう命じている。この金額が850万ルーブルで、日本円にして約2400万円となる。2人の間には、長女(29)と長男(24)、二男(13)の計3人のこどもがいる。
ナターリアさん側によると、昨年11月にポターニン氏から離婚を切り出され、金銭の要求はしないとの文書に署名するよう求められた。ポターニン氏はすでに財産は慈善事業に回しているので、支払う金はないということだった。ところが、ポターニン氏が資産隠しを画策している疑いが出てきたため、ナターリアさんは財産分与ではなく、毎月の養育費を要求して訴訟を起こしたという。
ポターニン氏は1999年に自分の名前を付けた慈善基金を設立し、毎年約1,000万ドルを基金に回している。4年前のフィナンシャル・タイムズ紙とのインタビューでは、「自分の財産をこどもたちに残すつもりはない。慈善事業に必要な分だけ渡す」と語っていた。こどもに巨額の財産を残すと、こどもたちのためにならないとの信念からとみられる。
ポターニン氏は1991年、外国貿易会社インターロスを設立。その後、オネクシム銀行を創立し、頭取に就任。96年の大統領選ではエリツィン大統領の再選に手を貸し、その論功行賞で第一副首相を務めた。その後も銀行家、企業家として経済界に影響力を行使している。ノリリスク・ニッケル社長のプロホロフ氏とはビジネス・パートナーだった。
有名人の離婚訴訟では巨額の慰謝料や養育費が話題になるが、日本での慰謝料ナンバーワンは、1998年に離婚した演歌歌手の千昌夫さんの50億円である。アーチストの小室哲哉さんが2002年に離婚した際は、慰謝料1億円、財産分与10億円、養育費月50万円だった。今回のポターニン氏の養育費約2400万円は、ロシアでも高額慰謝料の時代が到来したことを示している。(この項おわり)