飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

プーチン大統領のロシア軍部隊撤収の狙いは何か?

2014年10月13日 17時22分47秒 | Weblog
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  プーチン露大統領は11日、ウクライナ国境で軍事演習に参加していたロシア軍部隊約1万7600人を常駐基地に戻すよう国防省に命じた。イタリア・ミラノで16、17日に開催されるウクライナ・欧州首脳との会談を前に緊張緩和を演出する狙いとの見方がある一方、外交交渉を有利に運ぼうとの深謀遠慮との説もある。いずれにしろ、ロシアは今後もウクライナへの干渉を続けるとみられ、プーチン大統領の出方が注目される。

   ウクライナ政府軍と親ロシア派武装勢力は9月5日にウクライナ東部での停戦で合意したが、国境地帯に多数展開しているロシア軍部隊が撤収しないため、NATO(北大西洋条約機構)は不安定な状況が続くと懸念していた。今回撤収命令が出された部隊は、ロストフ地方で夏期軍事演習に参加中とされていた。

   カーネギー財団モスクワセンターのマラシェンコ研究員はモスコー・タイムズ紙のインタビューで「ロシアはプーチン大統領とウクライナ・欧州首脳との会談を前に緊張を緩和したいと考えているが、こうした動きがウクライナへの干渉を放棄することを意味しない。(撤収した軍部隊を)再配置することは簡単にできるからだ」と語り、外交交渉の取引の可能性を示唆した。

   また、ウクライナ・キエフにあるペンタ・シンクタンクのフェセンコ氏は「ミラノの首脳会談や11月にオーストリアで開かれるG20首脳会議はプーチン大統領にとって、孤立した外交関係を修復する絶好の機会だ。ウクライナへの内政干渉と批判されている軍部隊の撤収は、表向き戦線の段階的縮小をアピールするパフォーマンスだ」と言い切った。

   さらに、マラシェンコ研究員は「プーチン大統領のウクライナに対する長期戦略はまだはっきりしない。ということは、再びロストフ地方で軍事演習が行われることもあるということだ」と懸念する。フェセンコ氏も「とにかくウクライナ紛争は今後も続く。停戦は明らかに無意味だった」と述べた。

   モスコー・タイムズ紙は、ウクライナ東部での停戦を確実にするため、ウクライナ政府軍と親ロシア派武装勢力が9月20日、幅30キロの緩衝地帯を設置することで合意したのに、戦闘が続いていることを重視する。この背景には、プーチン大統領が板挟み状態になっている事情があるという。つまり、戦闘を縮小すれば大統領の国際的地位は上がるが、国内での大統領支持率は下がるからである。

   今後の焦点は、プーチン大統領が一連の首脳会談でどんな解決策を提示するかだ。つまり、大統領は国際社会の評判と国内の支持率のどちらを選択するのだろうか。それとも、一挙両得の妙案があるのかどうか。プーチン氏のお手並み拝見である。(この項おわり)

プーチン大統領の訪日は「日本次第」とロシア側が強調!

2014年10月01日 09時51分40秒 | Weblog
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   今秋に予定されているプーチン露大統領の訪日は困難との見方が広がっているが、ロシア外交関係者は「年内の訪日が実現するかどうかは日本側次第だ」との見方を示した。さらに、首脳会談の前提とされる日露外相会談について「外相会談を凍結しているのは事実上日本側だ。日本が会談を提案すればロシアはすぐ行う」と述べ、日本政府に早期決断を促した。

   日露双方とも早急に首脳会談を行いたいという点で一致していることは、9月21日に行われた安倍首相とプーチン大統領との電話協議で確認済みだ。ただ、その前に定例的に行われる外相会談の日程が合わないことが、ギクシャクする直接の原因になっている。そのいい例が9月下旬に行われるはずだったニューヨークでの外相会談だ。

   安倍首相はプーチン大統領との電話協議で、プーチン氏の訪日に代わるものとして11月のAPEC首脳会議(北京)で首脳会談を行うことを提案した。ちょうど国連総会出席のため、岸田、ラブロフ両外相ともニューヨークに滞在していたので、日本側は直ちに日程調整などの外相会談を行うつもりだった。

   だが、日本のメディアは日本政府への取材を元に、ロシアは「日程が合わない」との理由で外相会談を拒否したと報道した。しかも、日本がウクライナ紛争に関して追加制裁の発動に踏み切ることを見越し、ロシアが日本をけん制するために拒否したと解説していた。

   ところが、ロシア外交関係者は「(外相会談を)断ってはいない。ラブロフ外相の日程がきつかった上、岸田外相も日程上余裕がなく、会談は結局実現しなかった」と語った。さらに、日露関係の重要性について「日本はG7の一員だが、露日関係は相互利益をもたらすもので、エネルギーや食料などの分野で十分協力出来る余地がある」と強調した。

   ちょうどこの時期に、イワノフ露大統領府長官が北方領土の択捉島を訪問した。ロシアの要人が北方領土を訪問するのは約2年ぶりだったので、日本では「なぜこの時期に」と、ロシア側の意図を疑問視する声が強まった。だが、ロシア外交関係者は「要人訪問は日露平和条約交渉とは全く関係ない。ロシアの領土訪問と条約交渉を結びつけてとらえるのは日本のマスコミの伝統だ」と一蹴した。

   ここで明確になってくるのは、ロシア側が「露日関係は米欧との関係とは別」と考え、「露日関係を今の状態に落としたのは日本側である」と見ていることだ。ロシアは日本と他のG7諸国との仲を裂こうとしていると勘ぐれないこともない。だが、その一方でロシア側は、日本とロシアとは海を隔てて最も近い隣国であり、切っても切れない関係にあることを力説している。日本には「遠くの親戚より近くの他人」ということわざもある。親戚との関係に気兼ねして近隣の住人を軽視したら、いざという時困るのは我々自身ではないだろうか。(この項終わり)