ロシアのプーチン首相は24日、最大与党「統一ロシア」の党大会で来春の大統領選への立候補を表明、4年ぶりに大統領に復帰することが事実上決まった。懸案の北方領土交渉を熟知するプーチン氏の復帰で、領土問題解決の可能性が高まるとみられるが、日本側がそれを受け入れる体制づくりを急がないと、再び解決のチャンスを逃してしまいかねない。
プーチン氏が次期大統領選への立候補を決意したのは、後継者に指名したメドベージェフ大統領が期待通りの実績を上げられなかったからだ。大国・ロシアの復活を目指すプーチン氏としては、ここで大統領と首相が入れ替わり、強力な政策を進めなければロシアの発展が遅れるとの危機感を抱いたに違いない。
今後も大統領と首相をワンセットとする双頭体制は維持されるが、メドベージェフ氏が内政、プーチン氏が外交を主に担当する形に変わるだろう。プーチン次期政権はこれまで通り、対外戦略を欧州からアジアにシフトする方針とみられ、来年9月、ロシアが議長国としてウラジオストクで開催するアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が第一関門となる。シベリア・極東開発に経済近代化の活路を求めるロシアは、日本に対しても石油・天然ガス開発への協力要請を活発化するとみられ、その過程で凍結状態の領土問題が再浮上することは間違いない。
プーチン氏は2000年の大統領就任後、平和条約締結後の歯舞、色丹2島の返還を定めた日ソ共同宣言(1956年)を基に領土交渉することを受け入れ01年3月、森喜朗首相(当時)との間で「歯舞・色丹島の引渡し」と「国後、択捉島の帰属」を並行協議することで合意した。2島の引渡しを確認した上で、残る2島の帰属問題をめぐり日露双方が交渉のテーブルに就くという画期的な合意だった。
だが、鈴木宗男事件が起きてうやむやとなり、日本政府の方針は再び「4島返還」路線に戻ってしまった。プーチン氏からすればハシゴを外された形になり、ロシア側の解決機運は一気に冷めたのである。
法律家であるプーチン氏は法治国家として国家間の条約を重視している。中国をはじめ、周辺諸国との領土問題を次々解決し、残るは日本との交渉だけとなっている。強気一辺倒のメドベージェフ氏と違って硬軟織り交ぜた難しい交渉になろうが、プーチン氏が決断すればロシア国内の愛国派も納得しよう。
対する日本政府は民主党の野田政権が発足したばかりで、当面は対米、対中問題にかかりきりになろう。だが、プーチン新政権発足時は領土問題解決の最大のチャンスである。今からそれに備えて政権基盤を固め、長期的な戦略を練る必要がある。その中で、4島一括返還などの非妥協的な考えを払拭し、解決可能な方針を検討すべきだ。今度こそ解決を先送りすれば、北方領土の解決は永遠に失われかねない。
(この記事は新聞記者OB、学者、フリーライターら約100人の同人でつくるネット新聞「メディアウォッチ100」88号=9月26日発行=に掲載したものを再録しました)
プーチン氏が次期大統領選への立候補を決意したのは、後継者に指名したメドベージェフ大統領が期待通りの実績を上げられなかったからだ。大国・ロシアの復活を目指すプーチン氏としては、ここで大統領と首相が入れ替わり、強力な政策を進めなければロシアの発展が遅れるとの危機感を抱いたに違いない。
今後も大統領と首相をワンセットとする双頭体制は維持されるが、メドベージェフ氏が内政、プーチン氏が外交を主に担当する形に変わるだろう。プーチン次期政権はこれまで通り、対外戦略を欧州からアジアにシフトする方針とみられ、来年9月、ロシアが議長国としてウラジオストクで開催するアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が第一関門となる。シベリア・極東開発に経済近代化の活路を求めるロシアは、日本に対しても石油・天然ガス開発への協力要請を活発化するとみられ、その過程で凍結状態の領土問題が再浮上することは間違いない。
プーチン氏は2000年の大統領就任後、平和条約締結後の歯舞、色丹2島の返還を定めた日ソ共同宣言(1956年)を基に領土交渉することを受け入れ01年3月、森喜朗首相(当時)との間で「歯舞・色丹島の引渡し」と「国後、択捉島の帰属」を並行協議することで合意した。2島の引渡しを確認した上で、残る2島の帰属問題をめぐり日露双方が交渉のテーブルに就くという画期的な合意だった。
だが、鈴木宗男事件が起きてうやむやとなり、日本政府の方針は再び「4島返還」路線に戻ってしまった。プーチン氏からすればハシゴを外された形になり、ロシア側の解決機運は一気に冷めたのである。
法律家であるプーチン氏は法治国家として国家間の条約を重視している。中国をはじめ、周辺諸国との領土問題を次々解決し、残るは日本との交渉だけとなっている。強気一辺倒のメドベージェフ氏と違って硬軟織り交ぜた難しい交渉になろうが、プーチン氏が決断すればロシア国内の愛国派も納得しよう。
対する日本政府は民主党の野田政権が発足したばかりで、当面は対米、対中問題にかかりきりになろう。だが、プーチン新政権発足時は領土問題解決の最大のチャンスである。今からそれに備えて政権基盤を固め、長期的な戦略を練る必要がある。その中で、4島一括返還などの非妥協的な考えを払拭し、解決可能な方針を検討すべきだ。今度こそ解決を先送りすれば、北方領土の解決は永遠に失われかねない。
(この記事は新聞記者OB、学者、フリーライターら約100人の同人でつくるネット新聞「メディアウォッチ100」88号=9月26日発行=に掲載したものを再録しました)