飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

ロシアに「親しみを感じる」日本人を男女比でみると男性の方が多い!

2014年12月27日 11時16分27秒 | Weblog
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この1年でロシアとの関係が悪化したとみる国民が増加していることが内閣府の行った「外交に関する世論調査」結果から明らかになった。昨年暮れからのウクライナ紛争が原因であることは明白で、ロシアに「親しみを感じない」という国民も微増している。このところ日露間の友好ムードが高まりつつあっただけに、残念な事態である。

この調査は内閣府が毎年実施している調査で、20歳以上の日本国民3000人を対象に10月中下旬に行われた(回収率60%)。調査結果によると、「ロシアに親しみを感じる」と答えた人は20.1%で、昨年より1.4ポイント減った。「親しみを感じない」と答えた人は76.4%で、昨年比で1.6ポイント増えた。この回答では男女の見方が大きく違っていて、男性で「親しみを感じる」と答えた人が25.1%だったのに対し、女性では16.1%と9ポイントの差があった。この差はどこから来るのだろうか。

最近の傾向を見ると、「親しみを感じる」と答えた人が2012年(19.5%)、2013年(22.5%)と増えつつあったが、ここにきてまた元に戻りかねない状況になった。とくに今回、「親しみを感じない」女性(79.6%)が男性(72.6%)より7ポイントも多かったのは、クリミア半島編入などでソ連時代の残忍で怖いイメージがよみがえったからかもしれない。

また、日本とロシアとの関係に関する質問では、「良好だと思う」と回答した人が21.3%で、昨年の30.4%から9.1ポイントも減ったのが目立つ。逆に、「良好だと思わない」と回答した人は昨年の64.6%から67.2%へと2.6ポイント増えている。ウクライナ紛争で西側が経済制裁を行い、ロシアが孤立を深めている現状を反映しているといえそうだ。

ただ、年齢別にみると、20代の若者の30.9%が「良好だと思う」と答えていて、20%前後の30代以上の年齢層を圧倒しているのが目を引く。若者の間では、アニメなどの文化・芸能面で日露交流が活発化しており、関係が悪化しているとは思えないのだろう。

日露関係を好転させるには、懸案のプーチン大統領訪日を早急に実現するべきだとの声が高いが、ロシアに対する経済制裁が続いている限り、訪日は難しいだろう。仮に大統領が訪日できたとしても、北方領土問題の解決は当分無理に違いない。今は民間レベルで日露関係を好転させる道を考えるべき時かもしれない。(この項おわり)
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ウクライナ紛争余話;ロシアとウクライナは和解できるのか?

2014年12月22日 16時18分51秒 | Weblog
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ウクライナ紛争は先行き不透明のまま、2度目の新年を迎えようとしている。スラブ民族同士で、ソ連時代は兄弟に擬せられたロシアとウクライナだが、今は激しく対立し、互いに不信感を募らせている。今後両国は和解できるのだろうか。

ウクライナ大統領は、紛争で解任された親ロシア派のヤヌコビッチ氏から、今年5月の選挙で親欧米派のポロシェンコ氏に代わった。それ以降、プーチン大統領は何度もポロシェンコ氏と会って協議しているが、いつも「ビクトル・アレクセービッチ」と呼びかけているという。ファーストネームと父称を組み合わせた公式的な言い方で、初対面の時しか使わない温かみのない表現である。

今秋、キエフへ取材に出かけた元同僚は、ウクライナ人が「ロシアがまさかウクライナを攻撃してくるとは思わなかった。もうロシアとは一緒にやってゆけない」と嘆くのを何回も聞いたという。ウクライナ人の間で反ロシア感情が極度に高まっているのは間違いない。

ソ連崩壊後、ロシアはクリミア半島を含むウクライナの領土保全を条約で確約しておきながら、突然ロシア領に編入するなど、帝国主義時代のような無法ぶりを見せつけたのだから、ウクライナ側が怒るのは当然だ。その一方、地政学的見地から見ると、両国が協力し合わなければ実現できないことも少なくない。

  ロシアのリベラル派政治家、ユルゲンス氏でさえ、「ロシアばかり悪者にしていいのか。それで問題は解決するのか」と、ウクライナ側の感情的な反ロシア意識を批判している。ソ連時代を通じて商工業の分業化が進み、一国だけでは完結しない構造が今も旧ソ連諸国の足かせになっている。

とはいえ、「いつもロシアに押さえつけられ、いつかロシアに先んじようとしてきた思いがやっとかなえられる」と訴えるウクライナの人々の心情も無視できない。とりわけ、西部ウクライナのポーランド系住民とロシア系住民との確執は長い歴史があるだけに、一朝一夕には解きほぐせない。

巨視的にみると、ウクライナは米露対立の舞台になっており、ウクライナのエリートの間では「米国と準同盟を結び、米国に守ってもらえばいい」という安易な考えが主流を占めているようだ。だが、そういう他力本願の考え方がウクライナ紛争を招いた遠因といえる。今こそ、ウクライナの自助努力が求められている。そうなって初めて、ロシアとの和解も可能となるだろう。(この項おわり)
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ウクライナ紛争余話;米国の過剰な関与の背景は?

2014年12月13日 11時47分03秒 | Weblog
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ウクライナ紛争について調べていると、ロシアに対する米国政府の過剰な関与が目立っている。それも的外れな対応が多いように感じる。国務省高官が自らキエフの革命広場(現地ではマイダンと呼ばれている)に出向いて反ロシアのデモ隊を激励したり、すべてをプーチン政権のせいにして批判したりしている。

なぜなのだろうかと考えていたら、パノフ元駐日ロシア大使がある研究会でこんな説明をしていた。ソ連崩壊後、ソ連・ロシアを研究する米国のシンクタンクがぐんと減ってしまった。この20年間、米国の学者はロシアのシンクタンクにも来なくなった。米国は冷戦に勝ったので、もうロシアを研究する必要がなくなったと思っているというのである。

オバマ政権のエリートは、悪いのはプーチン大統領だけで、国民は問題ないと単純に考えている。だから、ロシアの野党と付き合っていればいいと思っている。要するに、ロシアのことを研究していないので、ロシアのことがよくわかっていないとパノフ氏は嘆いていた。

さらにパノフ氏はオバマ大統領の側近によい研究者がいないので、大統領自身が国際情勢をよく知らないのではないかと話していた。あるとき、オバマ大統領が「私の父はポーランドのアウシェビッツ(ユダヤ人強制収容所)を経験した」と述べていて、びっくりしたと語っていた。

その一方で、プーチン大統領と親交のあるロシア通のキッシンジャー元国務長官のような人物もいる。最近、同氏はドイツのシュピーゲル誌のインタビューでウクライナ紛争に関し「クリミア(半島)は特別なケースだ。もし西側が誠実であろうとするのであれば、過ちを犯したことを認めるべきだろう」と語ったことが注目されている。ロシアのクリミア半島編入を暗に容認する発言だからだ。

さらにキッシンジャー氏は「(欧米は)ウクライナとEUの経済関係の交渉に始まり、のちにキエフのデモに発展した出来事の重要性を理解していなかった。これはロシアと対話すべき問題だった」と語り、米欧側の対応のまずさを指摘している。この発言を米欧側はどう受け止めているのだろうか。

ウクライナ紛争は現在、ウクライナ政府と親ロシア派武装勢力の間で停戦の話が進んでいるが、これまでの経緯をみても一時的停戦に終わるのは目に見えている。米国や欧州がもっと真剣にこの紛争に向き合わなければ、根本的な解決は難しいのではないだろうか。(この項おわり)
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プーチン大統領、絶頂期に匹敵する高支持率を得る!

2014年12月08日 11時40分16秒 | Weblog
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プーチン大統領は現在3期目だが、2期目の高支持率に匹敵する支持を得ていることがロシアの世論調査機関「レバダ・センター」の調査結果から明らかになった。これはウクライナ紛争での大統領の強硬姿勢が国民に評価されているためで、大統領の強い自信につながっているようだ。

レバダ・センターが3日に公表したプレスリリースによると、大統領の支持率に関する世論調査は毎年11月に実施しており、今回は21~24日、ロシア全土で1600人を対象に行った。大統領の支持率は72%で、過去最高だった2期目の07年時と同率。大統領の支持率は3期目に入ってから48%(12年)、47%(13年)と低迷していたが、再び絶頂期に戻った形だ。

また、大統領の全体的な印象について聞いたところ、「好ましい」と答えた人が74%にのぼり、「好ましくない」は13%だった。こうした高評価は07年の76%に次ぐ数字で、12年、13年の50%前半から約20ポイントも上昇した。

さらに、大統領がロシアで起きていることにどの程度影響を与えているかの質問に対し、「強い影響を与えている」と答えた人が71%に達した。「中ぐらい」と答えた人は19%、「弱い」との回答は5%だった。

大統領の3期目の政策の特徴についての質問には「難しい政治問題で独自の路線を採用している」と評価する人が37%と一番多く、次いで「経済問題ではリベラルだが、そのほかでは保守的な政策を取っている」と答えた人が20%だった。

  また、任期の切れる18年以降もプーチン大統領の続投を望むかどうかの質問には、過半数の58%が「望む」と答え、「望まない」の19%を大きく上回った。さらに、次期大統領選までにプーチン氏に代わる指導者が現れるかどうかの質問には「現れる」と答えた人は34%、「現れない」が31%だった。

プーチン大統領は昨年秋からのウクライナ紛争で、国際社会の反対を押し切ってクリミア半島のロシア編入を強行したうえ、ウクライナ東部での親ロシア派武装勢力を支援するなど、強硬姿勢を貫いている。こうした姿勢がロシア国民の大国意識を刺激し、強い支持につながったとみられる。

さらに、大統領はこうした国民の強い支持を背景に、4日の年次教書演説でも「(米欧の経済制裁の)圧力に屈しない」などと、強気の発言を繰り返している。大統領は今後もこの方針を堅持するとみられ、米欧との対立はさらに深まる可能性が高い。(この項おわり)





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外交は衆院選の争点にならないのか?

2014年12月05日 09時22分04秒 | Weblog

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師走の衆院選が公示され、14日の投票日に向け各党の論戦が本格化している。だが、「アベノミクス」はじめ経済に集中している感があり、外交や安保問題がおろそかになっている印象が否めない。戦後70年を目前に控え、もっと百年の計を見据えた日本外交のあり方を論議すべきではないだろうか。

そもそも今回の衆院選は本当に必要だったのか、という根本的な疑問が消えないが、すでに選挙戦が始まっており、その問題はひとまず置いておく。安倍晋三首相の思惑から始まったこともあり、安倍政権の2年間をどう評価するかが論戦の中心になるのは当然だが、今の議論は経済問題に集中しすぎているのが気になる。

安倍首相は一貫して「戦後政治の見直し」を主張しているが、外交・安保問題ではこれまでの自民党政権が継続してきた日米同盟重視路線を維持している。首相が推進している集団的自衛権の行使容認も、米国からの要請に応じて行っている面が強い。これでは米軍の行動を補完するだけにとどまってしまう。

ウクライナ紛争で日本はG7諸国に同調してロシアへの経済制裁を強化している。当初、安倍政権は北方領土問題解決を重要施策に掲げ、プーチン大統領との交渉を進めようと制裁に慎重だったが、今ではすっかり追随した形になっている。これに対し、寛容な姿勢を示していたプーチン大統領も、最近では日本への不満を公言している。

日本政府は年内の予定だったプーチン大統領訪日を来年早々にも行う腹積もりのようだが、ロシア側からは「制裁を継続しながら領土を返せというのはあまりにも虫のいい話」という声が聞こえてくる。このままではここ1、2年はロシアとの正式交渉は無理な情勢だ。

日本政府にとって当面最大の懸案は、沖縄県の米軍普天間飛行場移設問題である。沖縄県知事選挙の結果が示しているように、日米政府が決めた名護市辺野古への移設は撤回せざるを得ない情勢になりつつある。そうなったら日米同盟にひびが入ることになりかねない。

さらに、安倍政権は中国との間で先鋭化している尖閣諸島の領有権問題の解決も迫られている。日中首脳の間で本格的な会談を行い、緊張緩和策を早急にまとめる必要があるが、安倍政権にどんな具体策があるのか。また、韓国との首脳会談も近々に行わなければならない。外交課題は山積しているといっても過言ではない。

攻める野党は、こうした外交問題を選挙戦で積極的に取り上げ、安倍政権の具体策や覚悟を問いただすべきだ。それを受け止め、政権側も真剣に検討すべきだろう。選挙戦は短いが、重要な問題を素通りすべきではない。(この項おわり)
=パソコンの不調により約2カ月間、ブログ更新ができませんでした。ようやく修復できたのでブログを再開します。

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